オンライン診療市場に決定打?LINE×エムスリーの衝撃

今回は、介護というよりも医療の話題になりますが、1/8にこんなプレスリリースが発表されました。

LINEとエムスリー、オンライン医療事業を目的とした共同出資の新会社「LINEヘルスケア株式会社」を設立(m3プレスリリースより)

おそらく、これまで群雄割拠だったオンライン診療の市場に衝撃が走ったのではないでしょうか?
正直、これで上場の望みが潰えたと考えるベンチャーもいるのではないか?と思うほど、大きなインパクトのあるニュースです。

オンライン診療とは

オンライン診療とは、以前から「遠隔診療」などと呼ばれていましたが、リアルタイムでコミュニケーションを取ることが出来る通信プラットフォーム上で診察や医学管理(生活習慣病の生活指導など)を行うことを指します。

はじめて遠隔診療、という言葉が取り上げられたのは、1997年のこと。
厚生省健康政策局長通知の中で、医師法第20条(無診察治療の禁止)の解釈について触れられ、ここでいう診察とは手段はどうあれ疾病に対して一応の診断を下しうるもの、と定義されています。すなわち、遠隔診療は医師法20条に完全に反する行為ではない、という見解が示されたわけです。

しかしその時点では、初診や急性期ではなく慢性で安定した病状の患者に限ること、そして離島や僻地など対面では不可能な事情がある場合にはやむを得ない、といった形で限定的に許可される、という内容でした。

その後時を経て、2015年8月に行われた厚生労働省医政局長事務連絡において、新たな見解が示されます。そこでは、地理的条件や疾病についてはあくまで例であり、対面診療と組み合わせることで遠隔診療を行うのは差し支えない、と述べられています。

これが実質的な遠隔診療の解禁、となったわけです。これを受けて、多くの医師や起業家がこぞって、この遠隔医療のプラットフォームを作ろうと起業していきました。

2017年には、遠隔診療をSNSやメールで行っても差し支えないこと、禁煙外来については医師が健康診断などを確認した上で診察しても良い、という見解が示されるなど、徐々にその裾野が広がっていきました。

そしてついに2018年の報酬改定の際に、対面診療を原則として有効性や安全性への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」などが新設されるに至った、というのがこれまでの経緯です。

発表された新会社について

上記のように、2015年から徐々にオンライン診療解禁の機運が高まり、Curon、CLINICS、YaDoc、Remote Doctor、など多くの会社がこの業界で立ち上がっています。

しかし、今のところその中で面を制した会社はなく、まだお互い競り合っているというのが現状でした。
オンライン診療を取り入れるクリニック側も、直接患者が診察に行きづらいEDの薬やAGAの薬などを診察なしで処方する、といった使い方を中心にしているところがあったり、まだまだ未成熟な業界です。

そこに、今回発表された、LINEとエムスリーという2社が合弁で作ったLINEヘルスケアという会社が満を持して参入することになった、というわけです。

LINEはご存知の通り、月間7000万人以上のアクティブユーザーを誇る通信アプリです。さらにはLINE payといった決済プラットフォームも持ち合わせています。

一方、エムスリーは、一般の方にはあまり知られていませんが、医療業界では比類なきポジションを築いている巨大企業です。
元々は、医師や医療関係者向けの医療情報専門サイトであるm3.comの運営を主なビジネスとして、2000年に起業された会社です。起業するや医師のパネルを着々と増やし、今ではサイトの会員は日本の医師の大半を占めるまでになりました。ちなみに同じく薬剤師についても大半を抑えています。彼らに対して即時にアクセスできるチャネルを持っている、というのは他にはない最大の強みと言えるでしょう。

製薬会社などは、一般向けに広告が打てなかったこともあり、医療関係者のみが多く集まるサイトに広告を打ちたい、という強いニーズがあったため、彼らが何億円という広告をここに投下することになり、非常に成功したビジネスとなりました。

実際、製薬会社ではエムスリー依存が社内で議題として挙がるほど、医師への広告については予算をつぎ込んでいます。特に既存薬の売り込みに関しては、今までのようにMRが営業に行くのではなく、オンラインMRという形で情報提供を行うのが主流になってきています(MR君、というアプリが提供されています)。

こうした医師のパネルを活かし、医師向けの市場調査を請け負ったり、医師の転職サポートを行ったりと、様々な医療関係のビジネスを現在では展開しています。現在では、積極的に海外にも進出を果たしています。

このように、日本の国民の大半が情報通信として用いているアプリであるLINEと、圧倒的多数の医師・薬剤師を抑え、医療機関・製薬メーカー、そして海外展開まで行っているm3が組む、というのは、それだけでこの市場の趨勢が決した、といっても過言ではないインパクトがあるのです。

まずは、医療に関するQ&Aや遠隔健康医療相談から始め、1-2年内には本格的なオンライン診療に乗り出す予定とのこと。この市場がどうなっていくのか、注目です。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。