自立支援やリハビリに対する介護報酬の引き上げ
自立支援に努める施設 介護報酬引き上げへ(日テレNEWS24)
こんなニュースが出ていました。
記事の内容としては、自立支援に積極的に取り組む施設、ロボットの導入を進める施設に対して加算をつけよう、ということを現在政府が検討中、というもの。
自立支援を行う事業所に加算、というのは以前から少し話題に上っていたのですが、やっと!という感じですね。
医療・介護のジレンマ
医療、介護両方に共通するものとして、「元気になると売上が減る」というのが非常に厄介な問題です。
介護に関しては、積極的にリハビリなどをさせて介護度を下げるような努力は特にしない、というぐらいのものでしたが、医療において起きていたことはもっと深刻です。
治療を長引かせるために効き目の弱い薬から投与していったり、必要のない検査を大量に行ったり、といったことが平気で行われていたのです。これを解決するために包括医療費支払い制度(DPC)という制度が導入されました。
この制度は、出来高払いではなく、病気の種類によって標準的な価格を先に定めてしまうものです。その結果、病院側としては売上は一定なので逆にコストを抑える必要があり、治療が効率的に行われるようになった、と言われています(賛否両論あるようですが・・・)
インセンティブの大切さ
世の中を動かしたいのであれば「インセンティブ設計」が不可欠です。
医療・介護に関しては、あまりに関係者の善意に頼りすぎていて、インセンティブ設計がおろそかになっていたように思います。個人対個人においては性善説に基づいて動いてもよいかもしれませんが、マクロを動かすためにはインセンティブを法律や制度などで正しく設計してあげない限り、うまくいきません。
今回の、自立支援をしたら報酬加算、というのはまさに、これまで善意に頼っていた自立支援に対してのインセンティブ設計と言えるものであり、注目しています。
手間をかけて自立させ、上限金額が下がってしまったとしてもプラスとなるくらいのインセンティブを設計する必要があるため、その加算の多寡がキーと言えるでしょう。
ちなみに、ロボット加算については、ちょっと個人的にはネガティブな意見です。
ロボットの普及が本質的に効率化に寄与するのであれば大歓迎なのですが、正直なところ現状のレベルのロボットが普及しても、そこまで業務の効率化はなされないように思います。
腰につけるパワードスーツタイプのロボット、HALについては、サイズが少しでも違うとうまく機能しない、だったり、装着に時間がかかり面倒、など、まだまだ多くの問題があります。
また、導入事業者に加算がついたとしても、結果的には購入資金をロボット産業側に支払っているわけで、言ってみれば介護スタッフの待遇改善や人材不足に対して使われるべき介護保険財源が、現場と関係のない外部に流出してしまうことになります。
そうすると、結果としては介護報酬が介護現場にいきわたらないという結果を招くことになります。
人材紹介や、用具、ロボットなど、働く人ではなく周辺産業ばかりが儲かる業界構造にも、大きな問題があるように感じています。