インフルエンザについて知っておいた方がよいこと

昨シーズンは、インフルエンザにかかってしまった、という人も多かったのではないですか?
実際私のまわりでもA型の人、B型の人が入り乱れ、とにかくインフルエンザで倒れる人が多かったように感じています。

実際データから見ても、昨年のインフルエンザ罹患者数はピーク時には相当な猛威を振るったようです。

東京都のインフルエンザ情報

グラフを見てみると、特に1-2月あたりの患者数は驚異的で、過去5-6年では最高レベルに達していたことが分かります。低いときの2倍以上にも達しています。ただ一方で、3月以降はすぐに例年並み以下にまで下がっているため、バーッと患者が増えた後、急速に収束していった、というのが昨年の傾向と言えそうです。

予防接種の意味は?

インフルエンザの予防接種、皆さんもう済みましたか?
昨年の様子から、これまでは受けたことがないけれど、今年こそは!という方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、インフルエンザは予防接種をしておけば大丈夫!と思っている人、インフルエンザワクチンには様々な誤解がありますので要注意です。

①インフルエンザの予防接種をしたら、インフルエンザにはかからない?

そんなことはありません。
インフルエンザの予防接種は、ウイルスが体内に入った後にそれを退治するような仕組みとなっており、人によっては少量のウイルスが影響してインフルエンザの症状を示す場合は十分にあります。

どちらかというと感染率を下げるというより、主に感染しても発症しなかったり発症した場合の重症化を防止する、という効果を持つものです。

実際、うちの会社でも軽くアンケートをとったところ、1000人近い社員において、インフルエンザワクチンを受けた人、受けなかった人でそこまでインフルエンザになった人の率は変わりませんでした・・・

また、後にも書きましたが、流行する型の予想を外してしまうとワクチンの効果は十分に発揮されません。

ですので、重症化すると命にかかわるような幼児や高齢者が率先して受けるべきである反面、成人に関しては医療関係者以外はむしろ受ける必要はあまりないのでは、とも言われています(諸説あり)。

②インフルエンザワクチンによって、インフルエンザになってしまうことがある?

ちなみに、免疫の落ちている人や弱っている人は、ワクチンによってむしろインフルエンザを発症してしまう、といった都市伝説がありますが、これは明確に「ウソ」です。

生ワクチンと言われる、毒性を落としたワクチンについては、この可能性がゼロとは言えません。生ワクチンはロタ、BCG、MR(麻疹風疹混合ワクチン)、水疱瘡、おたふくかぜ、などです。

しかし、インフルエンザを始めとするワクチンは、「不活化ワクチン」と呼ばれ、感染力はゼロになっています。なので、いかに体が弱っていようと、ワクチンによってインフルエンザになってしまう可能性はありえません。

なぜこういった都市伝説があるかというと、むしろ免疫力の高い人の場合ですが、不活化ワクチンが体内に侵入した際に免疫機能が過剰に働き、熱っぽい症状になることがあるからだ、と考えられます。

③インフルエンザには型がある?

インフルエンザには、大きく分けると2つの型があります(それぞれに細かい亜種もあります)。

A型の方が症状は激しく、風邪の諸症状に高熱を伴うことが多く、B型では熱は上がらないが胃腸の不調を伴うことが多い、と言われています。これらも覚えておくとよいでしょう。

ちなみにワクチンは型によっても効果が異なり、ワクチンと違う型のインフルエンザに罹患した場合には、十分にワクチンの効果が得られません。ですので毎年、どちらの型が流行るかを予測して、その年のワクチンを流通させています。
通常は1つの型が中心で流行するのですが、特に今年のように2つの型が同時に流行ってしまっている場合には、予防接種の効果が上がらない可能性も高いです。

 

罹ってしまったらどうする?

これまでインフルエンザの薬は主に、タミフル、リレンザ、イナビル、という3種類でした(もう1種類ラピアクタという薬もありますが、点滴なので通常は処方されません)が、いずれも、ウイルスを退治するものではなく細胞外へのウイルス排出を防ぐもの、です。つまり、増えてしまった後では意味がありません。どれだけ発症から早くこれらの薬を飲むかが勝負なのです。

インフルエンザは、最初に風邪のようなのどの痛みや咳、鼻水に加えて、筋肉痛や関節痛が現れます。もしこうした体の痛みがあるようならすぐに病院に行き、確定診断をしてもらうことをおすすめします。

そして、今年の3月には、塩野義製薬から全く新しいタイプのインフルエンザ薬も登場しました。

その名も「ゾフルーザ」。なんだかドラクエの呪文のような名前ですが、なんと1回錠剤を飲むだけでOK、かつウイルス排出を防ぐだけでなく細胞内でウイルスの増殖を抑える、という、より強力な作用を持っています。

承認を急いだものの、ピークシーズンには間に合わなかったため、本格的に使われるのは今シーズンになるはずです。また、錠剤が最初に承認されましたが、先ごろ顆粒も承認されたため、幼児や高齢者にも使いやすくなりました。

まだ使用歴があまりない薬なので、未知の副作用を嫌って様子見、という選択をされる医師もいるかとは思いますが、作用機序などを見る限りは、現状第一選択であるタミフルよりも優位性のある薬剤であることは間違いありません。
他人への感染リスクも既存の薬剤より早く減らせるため、これが本格的に使われだすと、インフルエンザもただの風邪以下のリスクになるかもしれない、と期待しています!

(追記12/13)

現在、11月時点ではゾフルーザが処方率で1位、という状況  (産経新聞より) のようで、医師の間でも(オフシーズンとは言え)良く使われているようですが、一方で、本格的にシーズンが始まる前に安易な処方に対するリスクを指摘する声もかなり上がってきているようです。

まず、効果の面でいえば、臨床データを見る限りタミフルに比べて症状の緩和は大きな差がなく、一応ウイルスの排出は少しタミフルより優位性がある、といったレベルのようです。
そもそもタミフルなどの既存薬自体、本来数日続く症状を1日早く抑える、程度の効果、と言われています。ですので、医師によっては、副作用リスクとの天秤でそもそもインフルエンザには既存薬もゾフルーザも処方しない、という人もいるようです。

また、何より一番大きな問題になりそうなのが、耐性化のリスクです。どうやら臨床試験の結果として、成人9.7%小児23.3%においてアミノ酸が変異し、耐性ウイルスが出現することがわかっています。

耐性ウイルスが発生すると、症状がまたぶり返すためかえって症状が長引いてしまい、ウイルス排出期間が延び、周囲に感染させるリスクを高める可能性もあります。
またマクロに見ると、一気に市場でゾフルーザが広まることで耐性株が急に増えていき、ゾフルーザ自体があっという間に無効化されてしまうリスクもあります。そのため、タミフルを第一選択として使いつつ、タミフルが効かなかった場合(タミフルにも一定の耐性化リスクがあります)の切り札とした方が、世の中全体でみれば理想的な使い方、と言えるかもしれません。

コスト面でもジェネリックもあるタミフルに比べだいぶ高価になるため、効果に大きな差がなく、耐性化リスクがあるならば、公衆衛生を考えた場合、第一選択薬にはしづらいでしょう。

こういったことから、神戸大学病院では院内にはゾフルーザは使わず、院外処方のみ、という方針になったそうです。また、医療業界で大きな影響を持つ亀田病院では、採用を取りやめたという発表もありました。(亀田総合病院感染症科の発表より)

ただ、対患者個人、という目線で考えた場合、1度の投与で済む、というのは、正直圧倒的なメリットと言えます。薬が効かない大きな理由としては、何より服薬コンプライアンスがあげられます。要は、飲み忘れ、です。
特に抗生物質や抗ウイルス薬は飲み忘れがあると耐性も発生しやすいため、飲み忘れが発生しないというのは大きなメリットと言えます。

マクロで見るか、個人で見るか、視点によってもスタンスは変わってきますし、それぞれのメリットとデメリットをどう判断するのか、医師によって大きく意見は分かれそうです。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみにペーパー薬剤師です。