低賃金が背景で介護職を辞めたい人が増えている? – 新聞に騙されないために

介護の養成学校が、定員割れで苦しんでいるという話題を取り上げましたが、さらに関連してこんなニュースも報道されていましたのでご紹介します。

「介護職やめたい」2年前の1.5倍に 低賃金が背景か(朝日新聞デジタルより)

いやー、なかなか扇情的なタイトルですね。
介護=低賃金=離職率高、というステレオタイプな印象を持っている層には、「ほら、やっぱりね!」と溜飲が下がるようなタイトルとなっています。

でもこの記事、本当にこのタイトル通りの内容なのでしょうか??

今回はちょっと趣向を変え、このニュースをただご紹介するのではなくて、記事について正確に読み解くとともに、この記事を新聞がいかに世論誘導やイメージ誘導をしているのかを理解してもらう教材にしてみようかな、と思っています。

記事の正しい読み解き方

まず、回答者は日本介護クラフトユニオンの組合員2994名、ということなので、そもそも若干サンプルに偏りがあるように思えます。

組合に入っているくらいなので、何らかの不満を持っている、あるいは不満を声高に主張したい・発信したいタイプの人が比較的多いのでは?というのが、個人的な感想です・・・

とはいえ、一応過去の数字との比較は少なくとも参考になるデータかとは思いますので、まあここは目をつぶるとしましょう。

記事によれば、「この仕事を続けたいか」との問いに、「介護業界以外の仕事をしたい」と答えたのは、月給制で14・3%で、前回調査の9・7%から大きく上昇した、とのことです。

まずこの数字を見てどう思うでしょうか?

一つは、2年前から比べると1.5倍に上昇しているのは事実ですので、介護職から他の仕事に人が流れていく傾向は強まっている、とは言えると思います。

一方、この14.3%が大きな数字と見るのか、小さな数字と見るのかは、正直これだけの情報ではわかりません。
例えば金融業界において、金融業界を辞めたいという人が20%です、というデータがあるならば、「あれ?意外と少ないじゃん!」という結論になるでしょうし、5%です、というデータがあるなら「やっぱり介護は人気がないな」という結論になり、まったく違った結論が導き出されます。

正直肌感覚でいえば、もう少し高いのではないか?と思っていましたし、他の業界もそんなに変わらない数字なのでは?と個人的には思います(あくまで感想なので、悪しからず)。

また、記事によると、

「今の会社で続けたいと思わない理由」を、「介護業界以外の仕事をしたい」「介護業界の違う会社で続けたい」「(どの業界であっても)働きたくない」と回答した人たちに、複数回答で尋ねたところ、「賃金が低い」と答えた人が月給制で56・5%、時給制も51・0%と最多だった。

とのことです。

この結果をもって、タイトルに「介護職を辞めたいのは低賃金が背景」と結論付けたわけですね。

あれ??でもちょっとおかしな点に気が付きませんか?

回答者の中に、介護業界から離れたい人だけでなく、「介護業界の違う会社で続けたい」「(どの業界であっても)働きたくない」、という人も含んで、しかも複数回答で尋ねています。

この中で、介護業界の違う会社で続けたい、という人は、介護=低賃金=辞めたい、ではなく、今の会社が低賃金だから別の介護の会社を探したい、と言っているだけです。
そして働くこと自体が嫌、という人は、おそらくすべてに不満があることでしょう・・・

そう考えると、この結果からだけでは、「介護職を辞めたいのは低賃金が背景」とは言えないはずです。

アンケート結果をそもそも、「介護業界以外の仕事をしたい」、と答えた人だけで分析することも当然できたはずです。それをなぜ、あえてごちゃまぜにしてデータを発表しているのでしょうか?

記事の思惑

そもそもこのアンケート自体、趣味でやったものではなくもちろん思惑があります。ヒントは、アンケート主体が組合であること。
このアンケートの目的は、「こんなに低賃金が原因で介護がさらに人手不足になってるんだ、給料上げろ!」というメッセージを出したいがために行ったアンケートなのです。要は結果ありきで作ったもの、とも言えます。

そう考えてみると、これはあくまで推測ですが、「介護業界以外の仕事をしたい」と答えた人では、ここまで低賃金が原因、というはっきりした数字が出なかったのではないでしょうか?

組合はある特定のメッセージを打ち出したい、新聞は人の心に刺さるキャッチーな見出しが作りたい、こうした利害が一致した結果、こういった報道のされ方になった、と考えられるわけです。

新聞の印象操作に騙されないために・・・

実際、新聞はいろいろな印象操作を仕掛けています。
例えば、この前の自民党総裁戦の結果について見てみましょう。

総裁戦では、議員票と党員票に分かれているのですが、結果は、

安倍 議員票329票 党員票224票 に対して、
石破 議員票 73票 党員票181票 となっています。

これに対して、毎日新聞、AERA、毎日新聞と言った反安倍陣営は、

AERA(朝日新聞出版):自民総裁選 安倍3選でも求心力低下
毎日新聞20日:じわり広がる不満圧勝逃す 「安倍1強」転換点
朝日新聞20日:「安倍1強」おごりの芽つみ合意形成を 根強い不信露呈

といった感じですが、一方安倍応援団の読売、産経は、

産経ニュース:安倍晋三首相が3選「憲法改正に取り組む」 10月1日に内閣改造へ
読売オンライン:安倍総裁3選 長期的課題で着実な成果を

といった感じです。

他にもテレビでは、「石破は党員票をこんなにとった!安倍はこの数年で党員の求心力を失っている」といった報道を目にしました。しかし、数字を見てみると、前回の総裁選では、党員票は石破さんの方が安倍さんよりも多かったのです。
むしろそう考えると求心力は上がっていると言えます。

要は、半分も残ってる!というか、半分しか残っていない・・・というかで、同じ事象も全然違う印象に誘導できる、というわけです。

こうした印象操作に騙されないようにするためには、

・まず、実際の数字はどうなのか
・その数字を過去と比較すると増えているのか、減っているのか
・その数字を他のものと横比較してみると、大きいのか小さいのか

をしっかり把握し、自分なりの結論をそこから考えること重要なのです。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。