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【介護コラム】 明日に向かって - 第5回- 迷走④

【介護コラム】 明日に向かって - 第5回- 迷走④

移動支援を引き受けてくれる事業所はなかなか見つかりませんでしたが、友人がボランティアとして外出をサポートしてくれたおかげで、買い物や花見などを満喫する機会を設けることができていました。

外出に使用する車椅子はオーダーメイドで、担当してくださった方が、僕と同じアイスホッケーファンだったことは、今思えば運命だったのかもしれません(部屋に飾っていたジャージを見てピンときたそうです)。すっかり意気投合して、プライベートで数名連れ立って一緒に試合観戦に行くこともありました。

ある時の試合会場で同席していた方から「安部さんだったらもっとできることが色々あると思いますよ」と言われました。自分よりも若い世代の方から教え諭されたような気がして、軽いショックを受けたことを覚えています。

翌日には仲介会社に勤める友人を紹介され「就職」という言葉が現実味を帯びてきました。ほどなく面接が設定され、とある会社に出向いたのですが、面接というよりはただの顔合わせといった具合。障害に対しての理解はまるでないという状態でした。当然その会社に根を張る気持ちにはなれず、小一時間ほど説教をして帰ってきてしまいました。

ちょうど同じくらいのタイミングで、当時ヘルパー派遣をお願いしていたケアリッツでも障害者雇用を始めると聞き、面接を受けることにしました。今度は自宅まで採用担当の方が来てくださったこともあって、お世話になってみようという気持ちになりました。当初は文書作成の業務でしたが「もっと人前に出て喋りで伝えることがしたい」とアピールを続けた甲斐あって、今は社内研修の講師としての業務を任せてもらえるようになっています。

ようやくスタートに立てた今、ここから何をなすべきかをしっかりと考えていかなければなりません。

 

推奨BGM

「福笑い」高橋優(2011年)

コラム原案/安部隼人
障害者の目線から、社内での研修講師をしたり、啓蒙活動のためのレポート作成等を担当しています。
晩酌のお供はカニカマ派です。
Illustrator/エム・コウノ