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【介護コラム】寝ている場合じゃない!①

【介護コラム】寝ている場合じゃない!①

その人らしさを尊重し尽して、「いい人生だった」と言ってもらえるのであれば、これほど福祉職冥利に尽きることはないのではないでしょうか。

しかし現実的にはそうもいかないことが多く、例えば「ご本人がすでに意思表示が難しい」状態にあったり、時には「制度の制約が邪魔をする」といったことが障壁となって、「果たして本当にこれで良いのだろうか」と首を傾げながら支援に当たることも少なくないのではないでしょうか。そんな毎日を過ごしている中で出会った、これこそ正に「福祉職冥利に尽きる」と言える印象的なエピソードを書き残してみたいと思います。

高齢と呼ぶにはまだまだ早い、70歳そこそこの男性。とても温厚でユーモアがあって、何より人を否定することがないので、接していて本当に気持ちの良い好人物でした。彼は末期の癌を患っており、後は緩和ケアを主にいかに痛くなく、辛くなく残された時間を過ごすのかがテーマになっていました。

担当者会議で初めてお会いした時、見た目こそ骨と皮だけでいかにも終末期といった様子でしたが、背上げして上体を起こしたその眼光には「自分らしく生き抜いて見せる」という強い意志が込められていたことを今でもはっきりと覚えています。訪問看護師による医療的な確認ごとを中心に会議は進んでいき、さて、当のご本人の意向を確認しようと意見を求めてみると「やっとの思いで帰ってきた我が家だから、病院っぽく過ごしたくない」とのこと。

不謹慎かもしれませんが、その瞬間に私の中で一気に好奇心が膨らんでいくのを感じました。「だったら寝ている場合じゃないでしょ」と。

Illustrator/エム・コウノ