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居宅介護支援の利用料、いわゆるケアプラン有料化の影響とは?

居宅介護支援の利用料、いわゆるケアプラン有料化の影響とは?

久しぶりのニュース解説記事となりますが、今回は「ケアプランの有料化」に関する話題です。

消費税が8%から10%に上がって1か月が経ちました。
軽減税率の話でいろいろと混乱をきたしたりもしていましたが、ようやく消費者も慣れてきたのではないでしょか?

さて、この消費税、元々はそれで得た財源は社会保障費に使う、という約束でした。
実際、この消費税増分を財源として、10月から特定処遇改善加算が導入されています。

ただ、一方では今後の社会保障費削減の様々な議論が行われているようです。

要介護1・2の総合事業への移行、というプランについては反対も多く今回は見送り、となりそうですが、どうやら導入される可能性が高そうなのが、ケアプランの有料化、です。

「例えば1000円」 老施協、居宅介護支援の利用料導入で提案 「定額の負担を」(出典; Joint介護)

このように、昨年から議論はされているのですが、現状はどうなっているのでしょうか?

ケアプラン有料化議論の現状

ちょうど最近の記事で、議論の現在の様子が取り上げられていました。

ケアプランの有料化をめぐり対立 経済界が導入を強く主張 (出典; Joint介護)

この記事を見る限り、議論自体はあまり進んでいません。
これまでどおり、経団連側、健康保険側は、一定量の自己負担を、と訴えており、一方事業者側はせめて月額定額制にしてほしい、と訴えている(以前は500円か1000円、と言ってたのに、今回はいつの間にか例えば500円、と言い方は変わってますが。)状況です。

ただ、ひとつ新しい話としては、

  • 利用者のセルフケアプランに基づくサービスを保険給付の対象から外すことも検討すべき
  • ケアマネの事務を軽減し、処遇改善加算を行う

といった議論が加わったところでしょうか。

有料化の財政的なインパクト

まず、有料化することによって、財政的にはどのくらいのインパクトがあるのでしょうか。

現状、年間4000億円強の居宅介護支援費用がかかっていると言われています。
もしこのうち1割が自己負担となれば、400億の削減となります。

これ自体、今回の特定処遇改善加算に使われる費用が1000億円(国保連負担分)と考えると、まあまあ大きな削減とは言えるかもしれません。

しかし、費用削減の本命はおそらく、ケアプランを有料化することでそもそもケアプランを作成する人を減らし、介護保険そのものの利用者を減らす、というところなのでしょう。

もちろん、事業者側も「ケアマネジメントへのフリーアクセスの観点は不可欠であり、過度の負担増によってサービス全般の利用を控えなければならない状況は避けるべき」とその狙いをけん制はしていますが、実際に介護保険の利用者は減少する可能性があります。

セルフプランが拡大する可能性は?

有料化すると考えられるもう一つの可能性は、セルフプランの拡大です。

現在でも、セルフプランは許されていたりしますが、現在はケアマネジャーに作ってもらっても無料なので、セルフプランを作っている人は0.1%以下と言われています。元ケアマネで非常にこだわりの強い人などに、おそらく限られている状況でしょう。

しかし、もしケアプランが有料、ということになれば、これを何とかして自分で作りたい、と言う人が増える可能性があります。

しかし、セルフプランが拡大すると大きな問題が2つあります。

1つは、作る能力がない人が無理やりおかしなケアプランを作り、実際に介護を行う現場と衝突するなどといったトラブルが起きる可能性があります。
有料となると、できるかどうかはわからないが、自腹を切るのは嫌なので何が何でも自分でやる!という人が出てくるのは自明でしょう。

またもう1つは、介護事業者が無料でセルフプランを請け負い、自社に有利なプランを作る、という可能性です。
これはルールで禁じておかないと、事業者の立場を考えれば100%起きうる事態です。

そのため、今回の議論では、セルフプランを作っても介護保険の対象としない、という案が織り込まれているのです。おそらく他に上記の2つの予想されるトラブルを回避する方法もないため、おそらくこれはそのまま実行される可能性が高いでしょう。

ケアマネの今後

このように、みんながセルフプランに流れることはおそらくなさそうですが、経済的理由からケアプラン作成を避け、結果として介護が受けられなくなる人が増える可能性は否定できません。

そうなると、ケアマネの数が余る自体となるわけですが、おそらくこれを見越して、昨年からケアマネの受験要件を厳しくし、合格者数を減らしたのではないでしょうか。

実際、昨年のケアマネ試験では、受験者数が6割減り、さらに合格率まで15%から10%まで下がっています。
通常、これだけ受験者数が減れば合格率を上げて少しでも調整するはずですが、そうではないことから、ケアマネの数を絞りたい、という明らかな国の意図が感じられます。

こういったケアマネにとって厳しい施策を実行するかわりに、今回の特定処遇改善加算の対象にならなかったケアマネに対して、新たな処遇改善加算を用意することでガス抜きを図る、そんなあたりが落としどころになるのではないでしょうか。

ケアプランのAI化も浸透してくるようになると、より一層、ケアマネには医療との連携や業務外での利用者のサポートといった役割が求められていくようになるのではないか、と思います。

CURATOR/WRITER
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。