介助用車椅子の特徴とは?自走式との違いや選び方、移乗介助するコツも紹介

大切な家族や利用者の方のために「最適な介助用車椅子を選びたい」と考えている方もいるでしょう。
しかし、車椅子は種類が豊富でどれを選べば良いのか悩んでいる方も多いと思います。
そこで、本記事では介助用車椅子の特徴や選び方のポイント、移乗介助する際の具体的なコツまで詳しく解説します。
適切な車椅子選びのポイントや、負担のない移乗方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
介助用車椅子の特徴や種類
介助用車椅子と聞くと「一般的な車椅子と何が違うの?」と、疑問に感じる方が多いと思います。
介助用車椅子は、一般的な車椅子よりも介助しやすい特徴が豊富にあります。
まずは、介助式の特徴と種類を確認していきましょう。
介助式の特徴と種類
介助式とは、後部の手押しハンドルを介助者が握り、操作して使用する車椅子です。
後輪の外側に、乗車している方が自ら操作できる「ハンドリム」が付いていないため、一般的な車椅子のように自分で動かすことはできません。
また、ハンドル部分に車椅子の動きを止めるブレーキが備えられており、緊急時にも迅速な対応が可能です。
タイヤのサイズもコンパクトで小回りが利くため、介助者がスムーズに操作できます。
なお、介助式車椅子の種類は以下の4つが挙げられます。
種類 | 特徴 |
標準タイプ | 操作しやすいドラム式やブレーキ付きなどの機能が備えられている また、シートベルトなどの安全装備がついている |
モジュールタイプ(多機能型) | 肘掛けの跳ね上げや、脚部の取り外しが可能 |
座位変換タイプ | 座面が腰から頭まで支えられる 麻痺や嚥下障がいの方に便利な角度調整が可能 |
特殊タイプ | コンパクトにでき10kg以下など、持ち運びしやすい |
自走式との違い
自走式は、その名の通り、乗っている方が自分で操作できるタイプです。
後輪の外側にあるハンドリムを手で動かすことで、車椅子を前進させたり方向転換したりします。
また、電動で動く電動車椅子も自走式に含まれます。
自分で操作しやすいように、後輪のタイヤサイズが20~25インチと大きめに設計されているところも特徴です。
タイプによっては、自動ブレーキ機能や片手操作可能など、特殊な機能が備えられているものも存在します。
自走式の種類や特徴は以下の通りです。
種類 | 特徴 |
標準タイプ | 体型や目的に合わせて前座高や座幅が選べる |
モジュールタイプ(多機能型) | 移乗が多い方に使いやすい機能が備えられている 使用者に合わせたフィッティングが可能 |
座位変換タイプ | 座面が腰から頭まで支えられるタイプ 使用者が移乗しやすい機能が豊富に備えられている |
特殊タイプ | 自動ブレーキ機能や片手操作可能など、特殊な機能が備えられている 電動車椅子や駆動性の高い6輪駆動もある |
車椅子の方を移乗介助する手順と注意点
車椅子の方を移乗介助する際には、安全に配慮しつつ、適切な手順で行うことが重要です。
ここでは、移乗介助の前に確認すべきポイントや、3つの状況に応じた移乗手順について詳しく解説します。
移乗介助する前に確認すべきポイント
移乗介助する前に確認すべきポイントは、次の2つがあります。
【車椅子の位置や準備】
- 移乗するものと車椅子を適度に近づける
- フットサポートやレッグサポートを上げるもしくは外しておく
- アームサポートやサイドガードを上げるもしくは外しておく
車椅子の位置は、ベッドや椅子などの移乗するものと適度な距離にすることが基本ですが、要介護者の方の身体状況に合わせて調整しましょう。
また、移乗の邪魔になるものは取り除いておくと、負担が減らせます。
【要介護者の基本姿勢】
- できるだけ浅く座る
- 臀部が膝よりも高い位置にする
- 足をひく
- 足底が床に付いている
- 足を肩幅に開く
座位が難しい方の場合は、柵を用意し掴まってもらったり、バランスがとれるよう補助したりするなどサポートしましょう。
移動介助の手順
移乗手順を紹介する前に、車椅子の基本的な移動介助について紹介しておきます。
【押し方】
- 要介護者の方にフットサポートに足を載せてもらい、アームサポートに前腕を置いてもらう
※麻痺がある場合は介助する
- 介助者はグリップをしっかり握る
- 動く前は必ず声掛けし、周囲の状況を確認しながらゆっくり進む
※押すときはスピードを出しすぎないよう注意する
【ブレーキ・駐車】
- グリップの下にブレーキがあるのでしっかり握って止める
- 駐車時は片手でグリップを握り、もう片方の手でタイヤ前にある駐車ブレーキをかける
- もう一方の駐車ブレーキも同様にかける
【段差】
- 段差を上がるときは車椅子を正面に向ける
- 介助者はティッピングレバーを片足で踏み、押しながら前輪を段差に上げる
- 後輪も押し上げる
- 段差を下がるときは段差に対して車椅子を後ろ向きにする
- そのままゆっくり下がり後輪をおろす
- ティッピングレバーを片足で踏み、後に進みながらゆっくり前輪をおろす
おろす際は、要介護者の方の足が段差に当たらないよう注意する
【坂道】
- 上り坂の場合はそのまま斜面に沿って車椅子を正面に押す
- 下り坂の場合も、斜面が緩やかな場合は進行方向に沿って押していく
※急な下り坂の場合、介助者が後ろ向きに下りていきます。その際、後方に注意し、ゆっくりと下りるようにしましょう。
ベッドから車椅子への移乗手順
ベッドから車椅子への移乗手順は以下の通りです。
- ベッドの高さを調節する
- 要介護者の方の基本姿勢を作る ※深く座りすぎている場合は、身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながらお尻を上げて手前に引くようなイメージで動かす
- 車椅子をベッドに対して30度の角度に設置する ※ブレーキがかかっていることを確認し、移乗に邪魔なものがあれば取り除いておく
- 車椅子側の要介護者の方の足を一歩前に出し、もう片方は後にひく
- 身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながら前傾姿勢になってもらう
- 前傾姿勢になってもらいつつ臀部を浮かせる
- 臀部の高さを維持した状態で一緒に回転する
- 密着したまま車椅子に座る
- フットサポートやサイドガードを元に戻す
座位が難しい方の場合は、はじめに車椅子を適切な位置に設置してから移乗した方が、負担を減らせます。
車椅子からベッドへの移乗手順
車椅子からベッドへの移乗手順は以下の通りです。
- 車椅子をベッドに対して30度の角度に設置する ※ブレーキがかかっていることを確認し、フットサポートやサイドガードを上げるもしくは取り外す
- ベッドを車椅子の高さに調整する
- 要介護者の方の基本姿勢を作る ※深く座りすぎている場合は、身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながらお尻を上げて手前に引くようなイメージで動かす
- 身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながら前傾姿勢になってもらう
- 前傾姿勢になってもらいつつ臀部を浮かせる
- 臀部の高さを維持した状態で一緒に回転する
- 密着したままベッドに座る
- 姿勢を整える
車椅子からベッドへ移乗する際は、フットサポートやサイドガードに当たらないように気をつけましょう。
車椅子からトイレへの移乗手順
車椅子からトイレへの移乗手順は以下の通りです。
- 車椅子をトイレに近づける
- 要介護者の方の基本姿勢を作る ※深く座りすぎている場合は、身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながらお尻を上げて手前に引くようなイメージで動かす
- 要介護者の方を手すりに向かって、前傾姿勢にしつつ立ち上げる ※介助者は斜め前に立ち前方に転倒しないように胸や腰を支える
- 立位できれば便座に向かって回転しズボンと下着を下げます
- 身体を密着させ肩甲骨と腰を支えながらゆっくり座る
- 安定した姿勢が保持できているか確認する
はじめに車椅子をトイレに近づけますが、前傾したときに壁や手すりに当たらないように調整してください。
全介助の場合は、ベッドや車椅子への移乗と同様に行ってください。
また、排泄中は見守りつつプライバシーに配慮することを忘れずに行いましょう。
介助用車椅子の選び方
車椅子からの移乗介助を負担なく行うためには、適切な選び方が不可欠です。
5つのポイントを紹介しますので、車椅子選びの参考にしてください。
購入するかレンタルするかを選ぶ
車椅子の手に入れ方は、購入とレンタルから選択できます。
長期間使用したい方や傷や汚れを気にせず使いたい方は、購入がおすすめです。
購入には、初期費用がかかるかもしれませんが、長い目でみるとレンタルよりもお得となります。
また、介護保険が適用できれば、安く購入できる場合もあります。
一方、短期間の使用で問題ない方や、メンテナンスなどの手間をかけたくない方は、レンタルがおすすめです。
レンタルは、長く使用すればするほどかかる費用が高額になりますが、短期間であれば購入するより安く済みます。
また、メンテナンスや返却といった手間もかかりませんので、手軽に利用可能です。
使うシーンを考慮しながらタイヤを選ぶ
車椅子のタイヤは、大きさ、数、種類などから選択できます。
タイヤは操作性や乗り心地にも関係してきますので、どこで使うかをしっかり考慮してから選ぶことが大切です。
タイヤの大きさは、大きいほど安定感が高く、走行時の振動も少なめです。
一方、小さいタイヤは小回りが利き、狭い部屋でも移動と旋回がしやすいところが特徴となっています。
タイヤの種類は、ノーパンクタイヤとエアタイヤから選択できます。
ノーパンクタイヤは、名前の通りパンクしないタイヤで、メンテナンスが不要なので扱いやすいです。
一方、エアタイヤはクッション性が高く振動が伝わりにくいため、乗り心地を重視したい方におすすめです。
要介護者に合わせた座面のサイズを選ぶ
座面のサイズは、要介護者の方が座りやすいように、ある程度ゆとりがあるものを選ぶことが大切です。
ある程度のゆとりがあれば介助もしやすくなります。
座面のサイズは、幅が要介護者の方のお尻の幅プラス2〜3cm程度、奥行きがお尻から膝裏までの長さ5〜7cm程度を目安にすると良いでしょう。
また、高さは膝からくるぶしまでの長さにプラス5cm程度を目安に選ぶと、立ったり座ったりする動作が楽にでき、加えて転倒のリスクを減らせます。
できれば購入前に、使用する方に一度座ってもらい計測すると選びやすくなります。
持ち運びを考慮した重量のものを選ぶ
持ち運びが多い場合は、軽量と言われる13kgのものを選ぶのがおすすめです。
軽量タイプの車椅子が欲しい場合はアルミ製の商品を選ぶと、力に自信のない方でも扱いやすくなるでしょう。
持ち運びが少なく安定性を求めている方は、14kg以上のものを選ぶのがおすすめです。
こちらの場合は、安定感が高く耐久性にも優れているスチール製を選ぶと良いでしょう。
ブレーキは要介護者と介助者が使いやすいものを選ぶ
ブレーキが備えられている車椅子が欲しい方は、状況に合わせて使いやすいものを選びましょう。
ブレーキには、車椅子を駐車させる「駐車ブレーキ」と、操作によって止められる「介助ブレーキ」があります。
駐車ブレーキには、手動タイプと自動タイプがあります。
ブレーキのかけ忘れが心配な方は、使用者が立ち上がると自動で作動する自動タイプがおすすめです。
一方、介助ブレーキには手元で操作するタイプと、足元で操作するタイプがあります。
手元なのか足元なのかの違いだけなので、操作する方が使いやすい方を選ぶと良いでしょう。
使用者・介助者にとって快適な機能がついているものを選ぶ
車椅子には、そのほかにも便利な機能が豊富にあります。
たとえば、以下のものが挙げられます。
- アームレストやヘッドレストが取り外せる
- 走行をサポートできる電動アシスト機能
- 背中の形状に合わせられる座面調整機能
- 姿勢を保てるリクライニングやティルト機能 など
これらの機能は、使用者が快適に乗車できたり、介助者の負担を軽減できたりしますので、状況に応じて選択しましょう。
介助用車椅子の購入とレンタルの違い
介助用車椅子は購入する以外にも、レンタルという選択が可能です。
それぞれのメリットを紹介しますので、自分にあった方を選びましょう。
購入する場合のメリット
購入する場合のメリットには、以下が挙げられます。
- 長期間使用したい方
- 自由に扱いたい方
車椅子を長期間使用する際は、レンタル費用を長期間支払うよりも、購入したほうがコストを抑えられる場合があります。
使用する期間を決めるのは難しいかと思いますが、長い期間使うことが確実であるなら購入するのがおすすめです。
また、汚れや傷を気にせず使用したい方も、購入することをおすすめします。
レンタルする場合のメリット
レンタルする場合のメリットは以下の通りです。
- 費用を抑えられる
- メンテナンスを任せられる
- 使用しなくなったら返却だけで済む
レンタルする場合は、購入するのとは逆に短期間使用する方におすすめです。
使用する期間にもよりますが、短期間であれば費用を抑えて使用できるので、負担を軽減できます。
また、基本的にはメンテナンスもレンタル業者が行ってくれるので、手間をかけずに済みます。
使用しなくなった場合は、返却だけで済むのもレンタルの大きなメリットといえるでしょう。
なお、車椅子のレンタル料金の相場は以下の通りです。
種類 | 料金の相場 |
一般的な車椅子 | 月額5,000円〜8,000円程度 |
ティルト・リクライニング車椅子 | 月額8,000〜15,000円程度 |
電動車椅子 | 月額10,000円~40,000円以上 |
また、使用する方の介護度により介護保険が適用できますが、適用された場合は料金の1割(所得に応じて2〜3割)でレンタルできます。
レンタルできる場所は、福祉用具や介護用具を取り扱っているレンタルショップで借りられます。
介助用車椅子はオーダーメイドでも作成できる
介助用車椅子は購入とレンタルのほかに、オーダーメイドでも作成可能です。
オーダーメイドであれば、使用する方のサイズはもちろん、身体の状態や使いやすさなどを考慮した車椅子が作成可能です。
たとえば、介助時に邪魔になりやすいフットサポートを取り外しできるようにしたり、ペダルを踏むことで横移動が可能になったりと、使いやすさや快適さがより向上できます。
ただし、オーダーメイドで作成すると価格が高くなりやすいので、予算と必要な機能を考慮して選ぶことが大切です。
まとめ
本記事では、介助用車椅子の特徴や自走式との違い、選び方、移乗介助するコツを紹介しました。
介助用車椅子を選ぶ際は、利用者の体調や生活環境に合ったものを選ぶことが大切です。
また、移乗介助する際には、事前の準備や正しい手順、安全に配慮した方法が重要です。
車椅子の使い方や介助方法をしっかり理解することで、利用者の負担を軽減し、快適な移動をサポートできます。
本記事を参考に、安心で安全な介助を心がけましょう。