【介護コラム】ALS(コイツ)と戦うー第4話ー

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介護ヘルパーとALSを発症した医師との実話
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お風呂に入るための工程は長い。
立位の工程をクリアすると、次の壁は、衣服の着脱だ。筋力がほとんどないSさんはちょっとしたことで簡単に脱臼してしまう。関節の可動域に気を付けながら丁寧かつ迅速な介助が求められる。
浴室まで介助者は歩行器に徹しながら歩行介助し、手すりに本人の両手指を引っ掛け、丸まった指先で必死に掴まり立ちをしてもらっている間に下衣をおろし、すぐさま後ろからシャワーチェアを差込み、臀部を支えながら着座すると同時に、限界を向かえて滑り落ちてくる彼の両手を受け止め、両膝の間にそっと置く。
この一連の流れを終えてはじめて介助者は呼吸を整えることができる。しかし、ゆっくりしている暇はない。
洗髪中は、軽く首を前傾してくれるのだが、首が頭部の重さを支えられるのはごくわずかな時間だ。ブラシを使用し、頭頂部から縦方向に洗っていく。横向きや本人が予想しない動きをすると、その負荷に首が耐えられなくなってしまう。そのため、常時介助者は片手をそっと額に当て首にかかる荷重をフォローし、一動作ごとに「せいの」の合図で一櫛一櫛洗っていく。
つづく