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機能訓練指導員の仕事内容とは?必要資格や給料についても解説!

機能訓練指導員の仕事内容とは?必要資格や給料についても解説!

高齢化が進む日本において、介護の現場でますます注目を集めているのが「機能訓練指導員」という職種です。

利用者の身体機能の維持・向上を支援し、日常生活をより快適に過ごせるようサポートする重要な役割を担っています。

本記事では、機能訓練指導員の仕事内容から必要な資格、気になる給料事情まで解説していきます。

これから介護・福祉分野で働きたいと考えている方や、キャリアチェンジを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

機能訓練指導の概要

まずは、機能訓練指導員とは具体的にどのような職種か、介護や福祉の現場においての役割など、基本的な概要を詳しく解説していきます。

あわせて名称が似ていて混同されやすい「機能訓練士」や「介護予防運動指導員」との違いも、整理しておきましょう。

機能訓練指導員とは

 

介護保険法における機能訓練指導員とは、理学療法士や看護師、柔道整復師などの有資格者を指します。

これらの職種が連携して専門性を高め、地域包括ケアに貢献することを目的に、2019年12月1日に「日本機能訓練指導員協会」が設立されました。

活動は医師管理下のリハビリとは異なり、ケアマネジャーのプランに基づき、他職種と連携して実施されます。

要介護者を減らすべく、地域と連携しながら地位向上を目指します。

機能訓練士との違い

 

この職種は「機能訓練士」と呼ばれることもありますが、介護業界において正式に定められている名称は、機能訓練指導員です。

両者の間に、必要とされる資格や日々の業務内容に明確な違いはありません。

理学療法士や作業療法士などの「〇〇士」といった国家資格の呼称に影響され、「機能訓練士」という略称が一部で広まってしまったと考えられます。

しかし、厚生労働省が発行する通知や制度資料などでも、使用されている名称は一貫して「機能訓練指導員」であり、これが正しい表記です。

公的な文書や求人票などで誤って機能訓練士と記載してしまうと、事業所としての専門性や信頼性が疑われる恐れもあるため、正式な呼称を正確に使用しましょう。

介護予防運動指導員との違い

 

介護予防運動指導員の主な役割は、高齢者それぞれの状態に合った介護予防プログラムを作成し、実施・指導することです。

まずは対象者の生活環境やADL(日常生活動作)を踏まえて、専門的な知識を活かしたプログラムを立案し、筋力トレーニングや生活習慣への助言などを行いながら、健康維持と目標達成を目指します。

他職種と連携しながら支援を行うこともあり、また、定期的に効果を評価し、必要に応じてプログラムを見直すことも重要な業務です。

なお、介護予防運動指導員は民間資格を取得した人を指すのに対し、機能訓練指導員は介護予防に対応できる有資格者による「職種」です。

どちらも介護予防に関わる点は共通していますが、資格と職種という点で明確な違いがあります。

機能訓練指導員の仕事内容

 

機能訓練指導員は介護保険法で定められた職種のひとつで、利用者の心身の状態に応じて訓練を行い、自立した生活を支援します。

利用者の生活環境や身体機能の評価から始まり、本人や家族の希望も考慮しながら、必要な訓練内容を検討して機能訓練計画表を作成するのが主な仕事内容です。

機能訓練計画表は3ヶ月ごとの見直しが義務付けられており、経過や心身の変化を踏まえて、定期的に内容を更新していきます。

 

【個別機能訓練(Ⅰ)】

個別機能訓練(Ⅰ)は、利用者が日常生活を送るうえで必要不可欠な身体機能の維持・向上を目的として実施されます。

機能訓練指導員の指導や管理のもと、介護職員などほかのスタッフが関わることもあります。

訓練内容は利用者一人ひとりの状態や目標に応じて複数の項目を準備し、そのなかから利用者自身が選択できるようにすることで、自発性を引き出せるでしょう。

また、施設内に設けられた設備を活用した反復的な訓練の実施が、算定要件として求められています。

 

【個別機能訓練(Ⅱ)】

個別機能訓練(Ⅱ)は、基本的な身体機能の維持・向上を目的とする(Ⅰ)とは異なり、日常生活動作の改善に焦点を当てています。

単なる身体訓練だけでなく、地域活動や社会参加といった視点を踏まえた支援が求められます。

この訓練では個別機能訓練(Ⅰ)の要件に加え、厚生労働省へ個別機能訓練計画の情報を提出し、国からのフィードバックを受け取ることが必要です。

訓練を実施したあとには評価を行い、その結果をもとに計画の見直しやサービス全体の質の管理を行うことが求められます。

こうした専門的な判断や対応が必要なため、個別機能訓練(Ⅱ)は機能訓練指導員のみが担当できる業務とされています。

機能訓練とリハビリの違い

 

介護の現場でよく耳にする機能訓練とリハビリは、似た意味で使われがちですが、実際には目的や担当できる専門職に違いがあります。

機能訓練は身体機能の改善や維持を目的とし、自立した生活を支援するために介護施設などで行われます。

一方でリハビリとは、病気やけがで失われた機能の回復・維持が目的で、医師の指導のもと、主に医療機関で実施されることです。

機能訓練は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、看護師・准看護師などの資格を持つ機能訓練指導員が担当しますが、リハビリは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が実施できます。

機能訓練指導員の需要

 

高齢化が進む日本において、機能訓練指導員の需要は年々高まっています。

介護者を必要とする方が増えるなかで、できるだけ自立した生活を維持するためには、身体機能の維持・向上を図る支援が欠かせません。

デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設では、機能訓練指導員の配置が義務付けられており、専門的な知識を持つ人材が求められています。

機能訓練指導員になるには

続いては、機能訓練指導員として働くために必要とされる資格について、詳しく説明します。

どのような資格が該当するのかに加え、それぞれの資格が持つ専門性や役割の違いも分かりやすく紹介します。

福祉系の資格では機能訓練指導員になれない

 

介護福祉士や社会福祉士といった福祉系の資格では、機能訓練指導員としての要件を満たすことはできません。

介護職としての経験がある方が機能訓練指導員を目指す場合は、別で該当する資格の取得が必要となります。

どの資格を選んでも取得には一定の時間や費用がかかりますが、資格を取得することで介護分野だけでなく医療分野へのキャリアの幅も広がります。

将来的に医療現場での活躍を視野に入れている方は、機能訓練指導員の資格取得がおすすめです。

機能訓練指導員に必要な資格

 

機能訓練指導員という名称の資格は存在しませんが、次の8つの国家資格のいずれかを取得することで、機能訓練指導員として働くことが可能です。

いずれも高度な専門性を持つ資格であり、それぞれの知識や技術を活かしながら、一人ひとりの利用者を総合的に支援していくことが求められます。

 

【看護師・准看護師】

看護師・准看護師が機能訓練指導員として働く場合には、医療の専門知識を活かし、利用者の健康状態や体調の管理などを行います。

デイサービスなどでは、機能訓練指導員と看護師の役割を兼務するケースも珍しくありません。

ただし、看護師資格を取得する過程では、機能訓練やリハビリに関する知識や技術が十分に身につかないこともあります。

そのため、現場で機能訓練指導員として働きながら実践を通して経験を積み、専門性を高めていくのが一般的です。

 

【理学療法士】

理学療法士が機能訓練指導員として勤務する場合、病気やけがなどによって運動機能に障がいを抱えた利用者に対し、専門的なリハビリテーションを行うことが可能です。

理学療法士はリハビリの専門職として運動療法や物理療法を用いながら、日常生活で必要とされる動作や姿勢の改善、筋力やバランス機能の向上を図ります。

再発や症状の進行を防ぐことも重要な目的の一つであり、利用者の自立支援と生活の質の向上を目指して支援します。

 

【言語聴覚士】

言語聴覚士が機能訓練指導員として働く場合、言葉によるコミュニケーションに障がいを持つ方に対して、発語や理解、表現などの機能回復を目的とした訓練や指導、リハビリテーションを行います。

言語機能だけでなく、食べることに関わる嚥下障害や口腔機能のリハビリテーションも重要な役割の一つです。

飲み込みの力が低下した高齢者に対し、安全に食事ができるようサポートし、誤嚥性肺炎などのリスクを軽減することも、言語聴覚士に求められる大切な業務です。

 

【作業療法士】

理学療法士が歩行や立ち上がりといった日常的な基本動作のリハビリテーションを得意とするのに対し、作業療法士は入浴や食事、読書、掃除など生活に密着した応用的な動作のリハビリテーションを中心に行います。

心理面への支援も重視しており、レクリエーションや創作活動を取り入れることで、心のケアも含めた包括的なサポートを提供します。

身体と心の両面からのリハビリを通じて、利用者が再び社会生活へとスムーズに戻れるよう支援するのが、作業療法士の大きな役割です。

 

【あん摩マッサージ指圧師】

あん摩マッサージ指圧師が機能訓練指導員として働く場合、肩や首のこり、腰痛、筋肉の張りなど、利用者の身体に現れる違和感や不調を、マッサージや指圧といった手技療法によって緩和・改善することを主な目的としています。

ただ施術を行うだけでなく、不調の根本的な原因を把握するために問診や身体の状態の検査を行い、その結果に基づいて運動機能の回復を目指すための個別の指導を実施することも多くあります。

利用者一人ひとりに合わせた対応が求められる、専門性の高い役割です。

 

【柔道整復師】

柔道整復師が機能訓練指導員として働く場合、骨折や捻挫、打撲といった身体の損傷に対して、整復や固定、後療法などの手技を用い、機能の回復を目指す支援を行います。

外科的手術や投薬に頼らず、自然治癒力を引き出す独自の施術法を活かせる点が特徴です。

また、整骨院や接骨院での勤務経験がある柔道整復師は、高齢者への対応にも慣れていることが多く、その経験は介護現場でも大いに活かされます。

 

【鍼灸師】

鍼灸師の方も機能訓練指導員として働くことは可能ですが、ほかの資格とは異なり、資格取得だけでは要件を満たせない点に注意が必要です。

鍼灸師単独では機能訓練指導員として認められず、すでに他の機能訓練指導員が在籍している施設で、半年以上の実務経験を積むことが条件となります。

そのため、初めて機能訓練指導員として働く場合には、応募先の条件や施設の体制などをしっかり確認し、自分が該当するかどうかを事前に把握しておくことが大切です。

機能訓練指導員が活躍できる職場

機能訓練指導員として活躍できる代表的な職場や、その配置が義務付けられている施設について詳しく解説していきます。

どのような現場で求められているのかを知ることで、今後のキャリアの参考にもなるでしょう。

介護施設

 

機能訓練指導員の人員配置が義務付けられているのは、デイサービス(通所介護)、短期入所生活介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの施設です。

これらの施設では、機能訓練指導員を少なくとも1名以上配置することが求められており、施設によっては看護師などの他職種と兼務することも認められています。

配置基準が定められていない施設であっても、機能訓練指導員として勤務しているケースも多く、活躍の場は広いです。

要介護者向け医療施設

 

介護療養型医療施設や病院併設型のリハビリテーション施設、介護老人保健施設(老健)などの医療系施設においても、機能訓練指導員は重要な役割を担いながら活躍しています。

これらの施設に入所・通所する利用者は、一般的な介護福祉施設の利用者に比べて、要介護度が高かったり、重度の障がいを抱えていたりするケースが多いのが特徴です。

その分、機能訓練を通じて身体機能が回復して在宅での生活に復帰できたときの達成感や喜びは大きく、支援する側としてもやりがいを感じられるでしょう。

配置基準について

 

デイサービスをはじめ、ショートステイや特別養護老人ホームなどの介護施設では、機能訓練指導員の配置が1人以上義務付けられています。

これらの施設では、利用者の心身機能の維持・向上を目的とした支援が求められるため、専門的な知識を持つ機能訓練指導員の存在が欠かせません。

このような人員配置の基準があることからも、介護施設の数が増えるにつれて機能訓練指導員の需要も広がっており、今後ますますその役割が重要になっていくことが予想されます。

機能訓練指導員に向いている人の特徴

機能訓練指導員に向いている人の特徴について詳しく解説していきます。

目指そうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

円滑にコミュニケーションを取れる人

 

機能訓練指導員は利用者本人やそのご家族、医療職や介護職のスタッフなど、さまざまな職種の現場スタッフと密接に連携しながら業務を行う必要があります。

日々のやり取りのなかで円滑なコミュニケーションを図り、情報の行き違いが起こらないよう、正確かつ丁寧に伝達する力が求められます。

チームの一員として他者と協力しながら働くことが得意な方に、向いている職種です。

リハビリを通じて支援したい人

 

リハビリテーションを通じて利用者を支援したいと考えている人や、一人ひとりの利用者としっかり向き合いながら丁寧にリハビリを行いたい人にもおすすめです。

専門的な知識や技術だけでなく、信頼関係を築けるコミュニケーション力も必要です。

体力のある人

 

利用者の身体を支えたり、立ち上がりや歩行の補助をしたりといった場面では、瞬間的な力だけでなく、全身のバランスや持久力も必要です。

施設内では長時間立ち続ける場面も多く、一日を通して身体を動かす仕事のため、健康管理や体調維持ができる人にも向いています。

自分の身体をしっかりと整えながら、利用者の生活を支える役割に責任を持って取り組める方に適しています。

向上心がある人

 

機能訓練指導員として長く活躍していくためには、向上心を持って常に学び続ける姿勢が欠かせません。

介護やリハビリに関する知識や技術は日々進化しており、制度の改正や新しいアプローチ、ケアの手法などが次々と登場しています。

そのため、最新の情報や現場での実践的な技術を積極的に取り入れ、自身のスキルアップを継続して目指せる人が、現場でも信頼されて必要とされる存在になります。

自己研鑽を続けられる人は、利用者に対してより良い支援を提供することができるでしょう。

機能訓練指導員の給料

厚生労働省が公表した「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、または機能訓練指導員の平均給与は以下の通りです。

勤務形態平均給与額
常勤362,800円
非常勤290,460円

 

給与水準は地域や勤務先の種類、経験年数などによって異なるものの、安定した処遇が期待できるでしょう。

参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果

機能訓練指導員が給料をアップさせるコツ

最後に、機能訓練指導員が給料をアップさせるコツを解説します。

昇進を目指す

 

管理職に就くことで業務の幅や責任は増えますが、その分やりがいや達成感を得られる場面も多く、給与アップも見込めます。

いきなり主任を目指すことに不安がある方は、新人職員のサポートや現場リーダーなど、比較的身近なポジションから始めてみるのも良いでしょう。

段階的に副主任、主任と目標を設定していくことで、自分のペースに合ったキャリアアップが可能になります。

経験と信頼を積み重ねながら、自分の成長を実感できる道のひとつとして、昇進も視野に入れると良いでしょう。

スキルを高める

 

機能訓練指導員として、専門性を高めていくというキャリアの築き方もあります。

特定の技術や知識をさらに深めることで、専門家として信頼される存在を目指せるでしょう。

例えば認知症予防や嚥下機能訓練、運動療法など特定の分野に特化することで、より質の高い支援が行えるようになります。

日々の業務を通して経験を積み重ねながら専門性を追求したい方にとっては、やりがいを感じられる方法です。

給料の高い会社へ転職する

 

各種手当が受け取りにくい、または役職ポストが埋まっていて昇給が見込めない場合には、思い切って転職を検討するのも一つの選択肢です。

現在は超高齢社会へと進んでおり、高齢者向けの介護施設は増加の一途をたどっています。

それに伴って機能訓練指導員の需要も高まっており、好条件の求人を出している事業所も見られます。

「技術を磨きたい」「やりがいのある仕事がしたい」「キャリアアップを目指したい」と感じている方は、今の職場にこだわらずに新たな環境に目を向けるのも良いでしょう。

独立する

 

機能訓練指導員としての経験を活かし、独立を目指すという選択肢もあります。

独立には事業計画や資金調達、運営管理など多くの準備が必要となりますが、自身の理想とするサービスを形にできる点が魅力です。

また、地域のニーズに応じた柔軟な支援を提供できるため、やりがいを感じながら事業を進めることもできます。

専門性と現場経験を積み重ねてきた方にとって、次のステップとして独立を視野に入れるのも一つの手段です。

まとめ

機能訓練指導員は、理学療法士や看護師などの有資格者が担い、利用者の身体機能の維持・改善を支える専門職です。

高齢化が進むなかで需要は年々高まり、介護・福祉の現場で欠かせない存在となっています。

日々のリハビリを通じて利用者の前向きな変化を支援できることは、大きなやりがいにつながります。

機能訓練指導員に興味がある方は、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。