ポータブルトイレの使い方ガイド【基礎的な知識から選び方まで徹底解説】

ポータブルトイレは、介護が必要な方やトイレへの移動が困難な方にとって、生活の質を高めることにつながる心強いアイテムです。
ですが、ポータブルトイレの使い方や種類について理解し、その上で購入を検討したいという方もおられるのではないでしょうか?
そこで本記事では、ポータブルトイレの使い方を始めとした基礎知識や選び方のポイントなどを分かりやすく解説していきます。
ポータブルトイレ関連のグッズについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
ポータブルトイレに関する基礎知識と使い方
ポータブルトイレは、介護が必要な方や移動が困難な方の排泄をサポートする福祉用具です。
一般的なトイレと異なり持ち運びができるため、場所や使用方法に応じて任意に設置できます。
まずはポータブルトイレの設置や使用方法に関する情報から解説していきましょう。
設置場所の決め方
ポータブルトイレは自由に設置できますが、実際に設置する場所は慎重に検討して決める必要があります。
具体的には、利用者が移動しやすいことに加え、介助者の動線や介助のしやすさも確保できる場所に設置することが大切です。
プライバシーも考慮することが求められるため、場所によっては間仕切りの設置スペースも勘案しましょう。
設置場所を先に決めておくことで、用意すべきポータブルトイレのサイズや機能も厳選できます。
基本的な使用手順
次に、ポータブルトイレの基本的な使用手順を解説していきます。
細かな手順は自力での排泄が可能かどうかで変わってくるので、利用者の状況にあてはまるほうをチェックしてみてください。
【自力で排泄が可能な場合】
自力で排泄が可能な場合は、以下の手順で使用します。
- 手すりやひじ掛けを使って身体を安定させつつ、ポータブルトイレのフタを開ける
- 手すりやひじ掛けを使って、転倒に気を付けながら脱衣し着座する
- 排泄が終わったら拭き取り、ペーパーはバケツに捨てる
- 着衣を戻しポータブルトイレのフタを閉める
ポータブルトイレの前では転倒しないよう、できるだけ体を安定させることが大切です。
必要に応じて手すりやひじ掛けを使用しましょう。
【介助を必要とする場合】
介助を必要とする場合は、以下の手順で使用します。
- ポータブルトイレまでの移動を介助し、フタを開ける
- 手すりやひじ掛けを使ってもらいながら、介助者が脱衣させる
- 手すりやひじ掛けを使ってゆっくり腰掛けさせる
- 排泄が終わったら拭き取り、ペーパーはバケツに捨てる(自身で無理なら介助)
- 手すりやひじ掛けを使ってもらい立ち上がったら、介助者が着衣を戻す
- ポータブルトイレからの移動を介助する
- ポータブルトイレのフタを閉める
介助を必要とする場合は体の支えやすさを考慮しつつ、移乗しやすい位置にポータブルトイレを設置しましょう。
利用者の腕や腰に負担がかからないよう、できるだけサポートしやすい環境を構築することが大切です。
排泄物の処理方法
排泄後はポータブルトイレのバケツ部分を取り出し、以下の方法で衛生的に処理します。
- 個室のトイレに排泄物を流す
- 処理袋や凝固剤を使って適切に処理する
1回の排泄ごとに処理できるのが理想ですが、状況によって利用者や介助者の負担が増大することも考えられます。
こまめに処理できない場合は消臭剤や凝固剤を使うことで、不快な環境や処理のしにくさをできるだけ軽減しましょう。
清掃とにおい対策
ポータブルトイレの使用において重要となるポイントが、清掃とにおい対策です。
基本的な清掃の仕方や、代表的なにおい対策について解説していきます。
【基本的な清掃の仕方】
ポータブルトイレの基本的な清掃方法は、バケツを取り外しての水洗いです。
バケツを取り外して排泄物をトイレへ流したあとに、水を使って清掃します。
お風呂に運びシャワーで清掃するのがよくあるケースですが、個室のトイレにペットボトルの水を用意しておき、そのままトイレ用ブラシで洗うという選択肢もあります。
清掃方法はある程度限られますが、事前にできる対策は複数あるので順に紹介していきましょう。
【バケツに水を入れておく】
あらかじめバケツに水を入れておくことで、排泄物が付着しにくく処理が楽になります。
一般的な水洗トイレと同じ仕組みで、排泄物のにおいも軽減することが可能です。
加えて水の上にトイレットペーパーを敷いておくと、排泄物の付着やにおいをさらに軽減できます。
水やトイレットペーパーを使って、極力バケツに排泄物を触れさせないこと、この点が対策のポイントです。
【フタを使用して換気に気を付ける】
使用後はしっかりとポータブルトイレのフタをしておくことで、不快なにおいを抑えられます。
また、窓を開けて換気をし、空気の流れを確保してにおいがこもらないようにすることも、におい対策の重要な部分です。
フタを使用して換気に気を付けるだけでも一定の効果が期待できるので、積極的に取り組んでみましょう。
【消臭剤を使用する】
バケツの水にトイレットペーパー、さらに専用の消臭剤を使うことで、においの発生を抑え、より快適な室内環境を保てます。
消臭剤にもさまざまなタイプがあるので、使いやすさやコストなどの優先ポイントを明確にしておくと商品も選びやすくなるでしょう。
使いやすさならシートタイプ、持続時間なら液体タイプが選択肢に挙がります。
商品の保管場所やポータブルトイレまわりの環境も考慮しつつ、最適な消臭剤を探してみてください。
【防水マットを使用する】
床の汚れや水濡れを防ぐために、トイレの下に防水マットを敷いておくと安心です。
床に敷かれた絨毯に尿が付着してしまうと、清掃も困難でにおいの発生源にもなってしまいます。
清掃の手間を軽減し、においの発生源を防止する上で、防水マットの使用はおすすめです。
ポータブルトイレの購入方法
ポータブルトイレは、福祉用具を取り扱っている販売店や、インターネットでアクセスできる介護専門のwebサイトなどを通じて購入することが可能です。
また、ポータブルトイレは特定福祉用具に含まれるため、介護保険を利用して補助を受けられる場合があります。
補助を受けるための要項は以下のとおりです。
- 「要支援」または「要介護認定」を受けている
- 都道府県の指定を受けた業者から購入
- 特定福祉用具の購入費用が年間で合計10万円以内
特定福祉用具の購入費用が10万円を超えていた場合、ポータブルトイレの購入に介護保険は適用できません。
ポータブルトイレ購入の際に介護保険の適用で悩まれている方は、ケアマネジャーや在宅介護支援センター・福祉用具専門相談員に相談してみるのがおすすめです。
参照:厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準について」
ポータブルトイレを利用するメリット
ポータブルトイレの基礎知識や使い方に続いて、ポータブルトイレを利用するメリットについて解説していきます。
メリットの内容は以下のとおりです。
- 自力での排泄が可能になる
- 個室に比べてスペースを広くとれる
- 転倒のリスクを抑えられる
- 介助者の負担を軽減できる
各項目の詳細を見ていきましょう。
自力での排泄が可能になる
ポータブルトイレを使えば移動距離が短くなり、夜間であっても自分でトイレに行ける可能性が高まります。
また、個室トイレまでの途中に段差があって移動が難しい場合も、ポータブルトイレを利用することで解決が可能です。
移動に関する問題を解消し、自力での排泄が可能になる点が、ポータブルトイレのメリットとして挙げられます。
個室に比べてスペースを広くとれる
一般的なトイレの個室よりもまわりの空間に余裕ができるため、利用者も身体を動かしやすく、介助者のサポートもしやすくなります。
個室トイレまでの通路スペースが狭くても、適切な場所にポータブルトイレを設置することで介助のしやすさがアップするでしょう。
個室に比べて、広いスペースを確保できる点も、ポータブルトイレならではの大きなメリットです。
転倒のリスクを抑えられる
ベッドの近くに設置できることで移動距離が短くなり、夜間や体調不良時であっても転倒やケガのリスクを抑えることができます。
特に排泄の回数が多い方にとっては、その利便性や安全性の高さをより実感しやすいでしょう。
介助者の負担を軽減できる
トイレまでの移動を短縮できることで、抱きかかえや移乗の回数が減り、介助する人の身体的負担を減らせます。
また、利用者が自力で排泄できる場合でも、転倒や緊急時の不安が軽減されるため、介助者にとっての精神的負担も和らぎます。
そのため、ポータブルトイレを使用するメリットは十分に残されているといえるでしょう。
ポータブルトイレの主な種類
ポータブルトイレは素材や機能により、さまざまな種類に分類されます。
ここでは、それぞれ異なるメリットを持つ6種類のタイプを例に挙げ、ポータブルトイレの主な分類についてわかりやすく解説していきます。
樹脂(プラスチック)製タイプ
樹脂(プラスチック)製タイプのポータブルトイレは、素材の特性から軽量で扱いやすく、比較的安価な点が特徴です。
掃除も簡単で衛生的に使えることから、ポータブルトイレを初めて導入する場合にもおすすめできます。
商品によっては安定性に多少の不安があるため、立ったり座ったりする動作にあまり問題のない方に最適です。
家具調(木製)タイプ
見た目が家具に近いことから、家具調(木製)タイプと呼ばれるポータブルトイレもあります。
室内に置いても違和感がなく、生活空間になじみやすいデザインが特徴です。
重量があるため安定感は抜群ですが、比較的お手入れが難しく価格も高価になりやすい傾向にあります。
コモード型(金属製)タイプ
コモード型(金属製)タイプは、金属フレームで頑丈に作られており、安定性と軽量性を兼ね備えたポータブルトイレです。
掃除がしやすく、さまざまな機能を備えた製品が多く展開されている点も魅力です。
一方で、ほかのタイプと比べると、室内の雰囲気にやや馴染みにくいデザインである点がデメリットとして挙げられます。
ベッドサイド設置型(スチール製)タイプ
ベッドサイド設置型(スチール製)タイプは、ベッド横に常設しやすい設計になっており、移動の負担を最小限に抑えたタイプのポータブルトイレを指します。
座面の高さ調整やひじ掛け・手すりのない設計など、横移乗に特化した機能を持ち合わせている点が特徴です。
ただし、「移動のしやすさ」というポータブルトイレのメリットは若干失われており、本体の重量も重めの部類に属します。
ラップ式ポータブルトイレ
排泄物をラップで自動密封する機能を持つタイプを、ラップ式ポータブルトイレと呼びます。
においが漏れにくく、衛生面でも優れており、快適性の高さはトップクラスです。
地域別のルールにもよりますが、排泄物は燃えるゴミとして処理できるため、介助者の負担も軽減できます。
ポータブルバイオトイレ
ポータブルバイオトイレは、水や電気を使わず、微生物などの分解作用によって排泄物を処理する、環境にやさしいタイプです。
分解作用を促すための専用チップも、年に1回〜3回の交換で済むため、手間がかかるという印象は少なく、使い勝手にも優れています。
災害時にも有効に活用できることから、近年では介護業界にとどまらず、さまざまな分野での導入事例が増えつつあります。
ポータブルトイレに見られる主な機能
近年では、さまざまなニーズに対応したポータブルトイレが発売されています。
そのため、座面の高さ調整や暖房便座など、利便性や快適性を高める機能も豊富に備わっている傾向です。
ここでは、ポータブルトイレに見られる主な機能をピックアップして紹介していきます。
座面の高さ調整
ポータブルトイレによく見られる主な機能の一つが、座面の高さ調整機能です。
この機能により、利用者の体格に合わせて座面の高さを調整できるため、立ち上がりやすさや安全性の向上が期待できます。
また、座面の高さを適切に合わせることで移乗がしやすくなるため、ベッドのそばに設置する場合にも非常に有効な機能です。
さまざまなタイプのひじ掛け
ポータブルトイレのひじ掛けには、さまざまな機能を備えたモデルがあります。
跳ね上げ式や取り外し式のひじ掛けは、移乗のしやすさや介助のしやすさに大きく影響するため、選ぶ際にはぜひ確認しておきたいポイントです。
また、機能面だけでなく、利用者の身体をしっかり支えられるかどうかも考慮して選ぶことが重要です。
トランスファーボード
トランスファーボードと呼ばれる補助板が付属したポータブルトイレも要注目です。
座った状態でもベッドから滑らせるように体を移せるため、立位での移乗に不安がある方におすすめとなります。
ベッドとの隙間が大きくなってしまう場合でも設置できる上に、介助者の負担軽減にも役立つ機能です。
シャワー式洗浄
ウォシュレットトイレのように、排泄後に温水でおしりを洗浄できる機能です。
清潔を保ちやすく刺激も少ないため、肌トラブルの予防にも効果があります。
利用者自身で拭き取れない場合にも、シャワー式洗浄のポータブルトイレがおすすめです。
ソフト便座
ソフト便座とは、クッション性を備えた便座のことで、長時間座っても痛くなりにくい効果が見込めます。
座り心地もよいため、排泄に時間を要する場合や、痩せ型の利用者に最適です。
暖房便座
寒い季節でも快適にポータブルトイレを使用できるのが、暖房機能付き便座を備えたモデルです。
冬場にありがちな冷たさによる刺激を避け、排泄時のストレスを軽減できます。
脱臭機能
ポータブルトイレ使用後のにおいを自動で吸引・除去してくれるのが脱臭機能です。
においを抑える効果で、利用者や介助者が感じる不快感を低減してくれます。
ポータブルトイレは室内で利用するため、必ずチェックしておきたい機能と言えるでしょう。
水洗機能
排泄物を水で流せる水洗機能もあり、処理や清掃が簡単になるほか、衛生面でも優れた環境が保てます。
2層式・真空圧式・ピストン式など複数のタイプがありますが、水道工事のような大掛かりな計画は必要ありません。
ある程度の本体設置スペースや外部ユニットの設置を求められるケースはあります。
ポータブルトイレ関連グッズの使用方法
ポータブルトイレの後処理をより簡単にしてくれるのが、消臭液や処理袋、凝固剤などのトイレ関連グッズです。
関連グッズの使い方が分からない方も散見されるため、代表的なアイテムの使用方法に絞って解説していきます。
ポータブルトイレ用消臭液の使い方
まずは、ポータブルトイレ用消臭液の使い方から解説していきましょう。
消臭液は多くは、バケツ内に溜めた水に適量を入れ溶かして使用します。
においを抑える効果以外に洗浄効果も併せ持つため、バケツ清掃時も快適に作業できるのが利点です。
ポータブルトイレ用処理袋の使い方
次はポータブルトイレ用処理袋の使い方です。
一般的にはバケツの内側にセットして、排泄後そのまま袋ごと処分します。
処理袋には吸収性のある素材が入っており、排泄物はすぐさま吸収・固化される仕組みです。
においの発生を防ぎながら衛生的に処理できる上、清掃の手間も減らしてくれます。
トイレ処理用凝固剤の使い方
最後に解説するのは、トイレ処理用凝固剤の使い方です。
排泄後にバケツ内にふりかけることで、排泄物をすばやく固めて処理を簡単にします。
最初に排泄用袋をセットして使用するため、凝固剤をふりかけたあとは袋の口を結んで可燃ゴミとして廃棄するだけです。
こちらのグッズもポータブルトイレのバケツを汚すことなく使用できます。
ポータブルトイレ選びのチェックポイント
記事の最後に解説するのは、ポータブルトイレ選びのチェックポイントについてです。
実際には設置スペースや体型との相性、使用頻度に応じた機能の有無を確認して、使いやすく快適な製品を選ぶ必要があります。
以下にポイントをまとめたので、ポータブルトイレ導入時の参考にしてください。
設置場所と本体サイズ
最初に見るべきチェックポイントは、設置場所と本体サイズの関係です。
設置予定の場所にポータブルトイレが無理なく置けるか、本体サイズを必ず確認する必要があります。
ドアの開閉や介助スペースも考慮し、介助者の動線を妨げない設置位置を先に決めておくことが重要です。
体型に合ったサイズ
ポータブルトイレは、利用者の身体や体格に合ったサイズを選ぶことも重要です。
体型に合ったサイズを選択することで安定感が増し、無理のない姿勢で排泄できます。
便座とひじ掛けの高さ
便座やひじ掛けは利用者の身長に合わせて選び、立ち上がりやすさも考慮することが重要です。
調整機能が付いた製品であれば、利用者に合わせて簡単に調整できるため、安心して使用できます。
ひじ掛けの内幅
最適な便座の幅は、座ったときのお尻の幅と、ひじ掛けの内寸を目安に判断しましょう。
幅が狭すぎると窮屈になり、広すぎると体が不安定になります。
設置スペースに収まる本体サイズの商品から、適切な幅を持つ製品をピックアップしていけば、快適かつ安全なポータブルトイレの選定が可能です。
安定感
ポータブルトイレ選びは、運搬性と安定性のバランスをとることが大切です。
軽量で運びやすいことも大事ですが、ぐらつきのない安定した構造のものだと転倒のリスクをより抑えられます。
座り姿勢を長く維持できない状態であるなら、しっかりとした安定感を持つ製品がおすすめです。
背もたれ
背もたれがあると、座った状態での姿勢保持がしやすく、長時間使用でも疲れにくくなります。
排泄時のストレスと肉体的な負担を軽減できるので、利用者の身体的状況を踏まえながら背もたれの有無も検討してみましょう。
着脱・調整機能の有無
ひじ掛けや背もたれが取り外せたり、高さが調整できたりすると、介助や移乗がしやすく、使い勝手も向上します。
パーツの着脱・調整機能があれば、身体的状況の変化にも対応しやすくなるので、チェックポイントのひとつとして意識しておきましょう。
キャスターの有無
キャスター付きのポータブルトイレであれば、移動や掃除の際に便利です。
介助者が頻繁にポータブルトイレを動かさなければならない場合、キャスターの有無も必ずチェックしておきましょう。
必要な機能の有無
暖房便座や脱臭機能など、利用者の状況や生活環境に応じた機能があるか確認しましょう。
必要な機能の有無は、利用者や介助者の快適性・利便性に影響します。
まとめ
ポータブルトイレは、介護が必要な方や個室トイレまでの移動が困難な方の排泄をサポートする福祉用具です。
使用方法を正しく理解し、清掃・におい対策の工夫を取り入れることで、利用者も介助者も快適に日常生活を送れる可能性が高まります。
ポータブルトイレ購入時には介護保険の適用を受けられることもあるので、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
実際にポータブルトイレを導入する際は、本記事で紹介しているチェックポイントも参考にして、利用者と介助者のニーズを満たした適切な商品を選びましょう。