介護におけるケアカンファレンスとは?目的やメリット、進め方までを詳しく解説

介護現場でよく耳にするケアカンファレンスとは、利用者に最適なケアを実現するための話し合いの場です。
しかし、名前は知っていても、具体的な目的や効果、進め方までは把握できていない方も多いでしょう。
この記事では、ケアカンファレンスの目的やメリット、開催方法や頻度、必要な準備、進め方や記録の取り方までを詳しく解説します。
うまくいった事例も紹介するので、利用者さんによりよいケアを届けたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ケアカンファレンスとは?
ケアカンファレンスとは、介護や医療現場で行われる会議のことです。
介護スタッフや看護師、リハビリ職など多職種が集まり、利用者さんの情報を共有するだけでなく、現場での課題解決や新人スタッフの育成などを目的として行われます。
よくサービス担当会議や医療カンファレンスと混同されますが、それぞれは明確な違いがあるため注意が必要です。
ここでは、介護現場におけるケアカンファレンスについて解説し、サービス担当会議や医療カンファレンスとの違いを紹介していきます。
自発的に行われる介護に関する会議
ケアカンファレンスは、一般的に介護に関する会議のことを指します。
さまざまな職種の方が集まって開催されますが、「ケア」が中心であることから、利用者さんのことについて話し合われる場合が多い傾向です。
開催頻度やルールなどは決まっていないため、自発的に行われるのが一般的です。
そのため、月に1回のところもあれば、週に1回、必要であれば開催するなど、施設によってタイミングが異なります。
一般的な会議やサービス担当会議との違い
ケアカンファレンスと一般的な会議やサービス担当会議との違いは、目的と参加者です。
介護における一般的な会議は、施設運営や今後の方針、法人全体の課題解決などが話し合われる場で、参加者は施設長や管理者など運営に関わる方が対象です。
一方、サービス担当会議は、ケアマネジャーを中心にケアプランの作成や要介護認定の判断が行われる会議です。
このように、ケアカンファレンスは利用者さんが中心となる会議ですが、そのほかは施設全体の運営や制度上必要な書類作成が主な目的となります。
医療カンファレンスとの違い
ケアカンファレンスと医療カンファレンスとの違いは、対象者です。
医療カンファレンスは、医療や看護に関する会議のことで、主に患者さんのことを中心に情報共有が行われます。
参加者も医師や看護師、リハビリ職、管理栄養士など、さまざまな専門職が集まるところが特徴で、介護スタッフが参加することはほとんどありません。
つまり、ケアカンファレンスは利用者さん中心、医療カンファレンスは患者さん中心の会議ということです。
ケアカンファレンスの目的
介護現場で行われるケアカンファレンスは、利用者さんの生活をよりよくするために多くの目的を持っています。
情報の共有や人材育成、サービス改善だけでなく、他職種との連携や家族の支援にもつながる重要な会議です。
以下では、具体的な目的を詳しく解説します。
利用者さんの情報を把握・共有できる
ケアカンファレンスは、利用者さんを中心に情報を把握・共有することを目的とした会議です。
介護現場では自分の担当以外の利用者さんの様子を知る機会が少なく、情報が偏ってしまうこともあります。
そこでカンファレンスを通じて全員で情報を共有することで、見落としを防ぎ、チーム全体で利用者さんを支えられるようになります。
また、新人介護スタッフにとっては、共有された情報から課題の解決策やケアの工夫を学ぶ機会にもなります。
人材の育成に役立つ
ケアカンファレンスは、利用者さんの問題点や課題を挙げ、それを解決する目的も含まれます。
このような話し合いから、新しい視点や解決方法を得ることも多く、結果的に人材育成にも役立ちます。
特に違う職種からの意見は、新たな知識やスキルを磨く上でも貴重な機会といえるでしょう。
よりよいサービスにつながる
ケアカンファレンスで聞いた対応方法を、そのまま現場で活用することはよくあることです。
例えば、自分の担当ではない利用者さんの課題や改善策などを意見交換している際に、ほかのケースにも応用できることも多くあります。
具体的な対応方法や改善策などを直接聞けるので、自分のケアにすぐ取り入れられ、サービス全体の質の向上につながります。
他職種の知識や経験に触れられる
介護の現場では、同じ職種の人と働くことが多く、そのほかの職種の方と意見交換する機会はほとんどありません。
ケアカンファレンスは、多様な職種の知識や経験を聞く機会にもなりますので、違う視点や考え方を学ぶ場にもなります。
また、職種間でコミュニケーションをとっておけば、施設全体のチームワークの強化にもつながるといった、よい機会にもなるでしょう。
家族の負担を相談できる場にもなる
カンファレンスは、場合によってご家族が出席されるときもあります。
その際、ご家族からスタッフが知らない利用者さんの家庭での様子や負担になっていることを聞かされる場面もあるでしょう。
こうした情報は、ご家族の不満を吐き出す場になることはもちろん、スタッフがケアに生かす大切な情報となります。
ケアカンファレンスの基本的な進め方
ケアカンファレンスは、チーム全体で利用者さんのよりよいケア向上のために行われます。
そのため、会議の進め方は非常に重要なポイントとなります。
ここからは、カンファレンスの基本的な進め方を見ていきましょう。
1.担当者が資料を用意する
まずは、カンファレンスに必要な資料を用意します。
用意する資料は、カンファレンスを有意義にするために必須ですので、より具体的な資料を用意しましょう。
具体的には、以下のものをそろえておきます。
- 利用者の基本情報
- 利用者の健康状態・病名
- 利用者のケアプラン
- 利用者の課題や目標
- 過去の介護記録
- 会議の議題
ポイントとしては、数値やデータを具体的に記載しておくことです。
具体的にしておくことで、利用者さんのことを共通認識しやすくなり、改善方法もより詳しい内容を提示しやすくなります。
また、今回のカンファレンスで何を話すのか、解決したい課題や問題点は何なのかを事前にまとめておくと、意味のある会議になりやすいでしょう。
2.議題や問題点について話し合う
ここからは、実際のカンファレンスが始まります。
初めに、利用者さんの現状や基本情報を共有し、その後問題点や課題について話し合います。
会議中は、自分一人だけが発言するのではなく、周りのスタッフに疑問がないかなどを確認しながら進めることが大切です。
また、自分やスタッフが発言したことを細かくメモを取っておくと、会議で話した内容をまとめるときに役立ちます。
3.注意点や具体的なケア内容を確認する
カンファレンスで話し合う議題が終了した後は、話した内容に対しての注意点や具体的なケア内容を確認します。
ケア内容は、個人・チームそれぞれの行うことを具体的に決めておけば、実際の行動に移しやすくなります。
具体的な確認ポイントとしては、「誰が」「何を」「どのように」「いつまでに」を明確にするのがよいでしょう。
こちらを確認しておけば、次のカンファレンスでの評価もしやすくなるでしょう。
4.次回の開催について確認する
最後に、次回の開催について確認します。
カンファレンスは基本的に一度行えば終了するものではなく、話した内容を実行し、評価するまでが必要です。
次回の開催日や確認すべき議題を整理しておくことで、スタッフ全員が継続して利用者さんのケア改善に取り組むことが可能となります。
ケアカンファレンスの開催タイミング・頻度・参加者
ケアカンファレンスを効果的に行うには、いつ・どのくらいの頻度で開催するか、誰が参加するかを理解しておくことが重要です。
ここでは、開催のタイミングや頻度、参加者について具体的に解説します。
ケアカンファレンスを開催するタイミングや頻度
実はケアカンファレンスは、行わなければならないと決められているわけでもありません。
しかし、利用者さんの情報共有が目的でもあることから、最低でも月に1回は開催されます。
また、現場が必要と判断した場合に緊急的に行われることも少なくありません。
人によっては、多ければ多いほどよいと考える方もいますが、頻度よりもどれだけ有意義な会議だったかのほうが重要です。
ケアカンファレンスの参加者
ケアカンファレンスは、介護スタッフはもちろん、さまざまな職種が参加します。
具体的には、以下のとおりです。
- 医師
- 看護師
- 介護スタッフ
- ケアマネジャー
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 管理栄養士
- 薬剤師 など
もちろんすべての方が参加必須ではなく、内容に合わせた職種の方が参加すれば問題ありません。
ケアカンファレンスの記録の取り方
ケアカンファレンスが終了した後は、話した内容を担当者がまとめる必要があります。
まとめた内容は、情報共有や確認はもちろん、ケアの質の向上にもなるため、記録の取り方は重要ポイントです。
ここでは、有意義な会議にするための記録の取り方を紹介していきます。
5W1Hを意識して書く
カンファレンスで話した内容は、5W1Hを意識して書くことがおすすめです。
より詳しい内容を記載できるので、別の方が見ても共有しやすくなります。
例えば、以下のようにまとめるとよいでしょう。
いつ(When):カンファレンスの日時
どこで(Where):カンファレンスが行われた場所
誰が(Who):カンファレンスの参加者
何を(What):カンファレンスで話した内容
なぜ(Why):カンファレンスの目的・背景
どのように(How):具体的に実行する内容
内容は分かりやすく簡潔にまとめる
記載する内容は分かりやすく、簡潔にまとめることも重要です。
カンファレンスには、豊富な職種が参加するため、それぞれ使用している専門用語や略語が異なる場合があります。
多用してしまうと見た方が理解できず、情報共有が難しくなります。
また、長すぎる文章も分かりにくくなるので、一文を短く書いたり箇条書きを用いたりと、簡潔にまとめることが重要です。
構成やテンプレートを活用すれば書きやすくなる
カンファレンスの前に構成やテンプレートを作成しておけば、記録を残す際に書きやすくなります。
具体的には、以下を作成するとよいでしょう。
- 利用者の基本情報(氏名・年齢・病名など)
- アセスメント表
- ケアプラン・目標
- 話したい議題や課題
これらはカンファレンスをする前から分かっている内容ですので、あらかじめ作成しておけば無駄な時間を減らす際にも役立ちます。
AIやツールを活用するのもおすすめ
最近では、カンファレンスにAIやツールを活用する機会も増えてきています。
例えば、話した会話を録音し、AIに読み込ませることで、内容を簡潔にまとめられるので時短につながります。
また、Zoomなどのツールを使用すれば、参加者が集まらなくても会議を開くことが可能です。
ただし、AIやツールの使用は個人情報の漏えいにつながる可能性があるため、上司に確認するとともに、内容をまとめた後は削除を忘れずに行いましょう。
ケアカンファレンスを有意義にするためのポイント
ただカンファレンスを開くだけでは、十分な成果は期待できません。
事前準備や会議中の取り組み方によって、得られる情報や気づきが大きく変わってきます。
ここでは、ケアカンファレンスを有意義に進めるために意識したいポイントを紹介していきます。
利用者さんの状態を日頃から詳しく記録に残しておく
ケアカンファレンスを有意義にするためには、利用者さんの様子を日頃から詳しく残しておくことが重要です。
詳しく記録しておけば、情報共有もしやすくなり、質の高いケアの向上にも役立ちます。
伝える内容や問題点についてもまとめておく
カンファレンスを実りある時間にするには、あらかじめ「何を伝えるのか」「どこが問題なのか」を整理しておくことが大切です。
準備なしで臨むと、自分の思いが十分に伝わらず、改善につながらないことも少なくありません。
難しく考えず、気になる点や要望をメモにして持参するだけでも十分です。
ちょっとした準備が、建設的な話し合いに大きく役立ちます。
ケアカンファレンスで得た情報はメモする
ケアカンファレンスで聞いた情報は、必ずメモしましょう。
中には自分には関係ないといった理由からメモを取らない方もいますが、活用する意識がなければ、自身の成長はもちろん質のよいケアにもつながりません。
そのため、積極的にメモを取りながら、必要であれば現場でアウトプットもしていきましょう。
担当ではない利用者さんの情報もメモする
ケアカンファレンスでは、自分の担当ではない利用者さんの情報も共有されます。
これらをメモすることは、ケアを向上させることや多様な視点を持つことにもつながります。
場合によっては、新たな発見につながったり、現場で活用できるアイデアにつなげたりできますので、積極的にメモしましょう。
積極的な意見や聴く姿勢を見せる
ケアカンファレンスの場で、ただその場にいるだけで意見しない方もいますが、それでは有意義な会議につながりません。
特に、経験が少ないスタッフの場合「こんなこと聞いてもいいのかな?」「場の雰囲気を乱さないかな…」と、積極性が出しにくいと思います。
しかし、利用者さんに対しての見え方や感じ方は、個々によって違っており、そこに上司も部下も関係ありません。
そのため、感じたことや疑問点、改善策があれば、どんどん意見していきましょう。
一人ではなくチーム意識を持つ
ケアカンファレンスでは、情報共有するだけでなく、今後の改善策や具体的な取り組み内容を決めていきます。
その際に重要なのは「自分だけで解決しよう」とせず、チーム全体でどう取り組むかを考えることです。
役割分担を明確にし、互いにサポートし合う意識を持つことで、利用者さんにとって最適なケアにつながります。
守秘義務は必ず守る
ケアカンファレンスは、利用者さんの個人情報を必ず守らなければなりません。
もし情報が漏れた場合は、訴訟に発展する可能性もあります。
会議中に聞いた内容や記録したメモなどは、関係者以外に話したり見せたりすることは絶対にNGです。
また、議事録のために残したメモなどは、必要なければ適切な方法で削除しましょう。
カンファレンスに必要な問題提起の方法
ケアカンファレンスでは、事前準備をしてきたにもかかわらず、問題提起だけで終了してしまうことも少なくありません。
カンファレンスの最大の目的は問題解決であるため、「何が問題なのか」「どうしたいのか」を明確にする必要があります。
ここでは、カンファレンスに必要な問題提起の方法を紹介していきます。
具体性を意識する
問題提起をする際は、具体性を意識することが重要です。
例えば、「よいケアができていない」「ケアがうまくいかない」といった具体性がない意見は、人によって捉え方が変わってくるため、ばらつきが出てきてしまいます。
そのため、数値やデータなどを用いながら、具体的で計測できる指標を持つことを意識することが大切です。
現状を正確に整理し、どうしたいのかを明確にする
ケアカンファレンスで利用者さんの問題を提起する際、どこで困っているのか、どうしたいのかを整理し、明確にする必要があります。
例えば、「Aさんは◯◯で困っている」「△△している」だけでは、困っているのが利用者さんなのかスタッフなのかが分かりません。
この状態が続くと、本来の目的である解決というところがまったくできず、そのまま終了してしまい、同じ問題に悩み続けることになりかねません。
だからこそ、現状を正確に整理し、課題の焦点を明確にしてから会議に臨むことが大切です。
SMART(スマート)を活用するのもおすすめ
SMARTとは、以下の文字の頭文字をとった、目標設定のためのフレームワークのことです。
Specific :具体的
Measurable :測定可能
Achievable :達成可能
Relevant :関連性がある
Time-bound :期限が明確
これらを意識することで、問題点の把握や問題解決がしやすくなります。
ケアカンファレンスがうまくいった事例
最後に、ケアカンファレンスがうまくいった事例を紹介していきます。
現場でも活躍できるかもしれませんので、ぜひ参考にしてください。
いつも食事を残してしまうAさん
Aさんは食欲不振が続き、食事をほとんど口にしない日もありました。
スタッフが1人で対応しても改善が見られず、カンファレンスで全員が意見を持ち寄ることになりました。
歯科医は「義歯の調整が必要」と指摘し、リハビリスタッフは「座位を安定させるリハビリ用クッションの活用」を提案しました。
介護スタッフは「食卓の配置を変えて、ほかの利用者と一緒に食事ができるようにする」案を出しました。
それぞれの専門性を生かした協力の結果、Aさんの食事量は大幅に改善し、生活の質も向上しました。
散歩中に転倒してしまったBさん
Bさんは認知症があり、施設内を歩行中にバランスを崩して転びそうになりました。
幸い介護職員の素早い対応でケガは防げましたが、このような事故は今後の大きなリスクになります。
そのため、カンファレンスでスタッフ全員が状況を共有し、改善策を検討しました。
リハスタッフからは「歩行訓練や下肢の筋力維持」、看護師からは「体調変化の観察強化」、介護スタッフからは「移動時の付き添い」などが提案されました。
チームで対策を練ったことで、Bさんも安心して生活できる環境づくりが進みました。
認知症ケアに悩むCさん
ある施設で生活するCさんは、夜間になると不安から施設内を歩き回るため、職員の対応が課題となっていました。
そこでケアカンファレンスを開催し、看護師は薬の副作用や体調面を確認し、リハビリスタッフは「日中の運動量を増やす」プログラムを提案しました。
さらに介護士からは「午後の時間帯に軽い体操や散歩を取り入れる」案も出されました。
これらを組み合わせたケアを実施したところ、Cさんの睡眠が安定し、徘徊の頻度が減少。
夜勤スタッフも安心して業務にあたれるようになり、チームの協力が成果を生んだ事例となりました。
まとめ
本記事では、介護におけるケアカンファレンスの目的やメリット、進め方までを詳しく紹介していきました。
ケアカンファレンスは、利用者さんを中心にさまざまな職種が協力し合う大切な場です。
情報共有や問題解決だけでなく、スタッフの育成や家族の負担軽減にもつながります。
日常のケアをよりよくするために、ぜひ定期的なカンファレンスを活用してみてください。
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