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認知症で被害妄想の症状がある場合はどうする?適切な対応策について解説

認知症で被害妄想の症状がある場合はどうする?適切な対応策について解説

被害妄想は認知症でよくある症状の一つです。

どのような対応をとるのが正しいのでしょうか。

この記事では、認知症で被害妄想が起こる原因や、正しい接し方について解説しています。

認知症による被害妄想に悩む方が利用できるサービスも紹介しているので、参考にしてください。

認知症の被害妄想に対する適切な付き合い方

認知症を患っている方に、被害妄想の症状がある場合の正しい対応について解説します。

話を否定しない

 

事実とは異なる話や明らかな妄想であっても、聞き手は否定しないことが大切です。

「違う」や「間違っている」と言葉で否定してしまうと、理解してもらえないという気持ちが強くなり、孤独感や不安感が高まってしまいます。

興奮により感情が昂ってしまうと、より攻撃的な言動にエスカレートしてしまうでしょう。

認知症患者が間違ったことを話している場合でも、まずは「そうですね」と受け止めてあげてください。

否定も肯定もする必要はありません。

本人の気が済むまで話を聞き続けることが、正しい対応になります。

共感する

 

話を聞きながら共感する姿勢を見せることも、認知症患者には有効な対処法です。

「悪口を言われたら嫌な気持ちになりますね」や「お財布を盗られて心配ですね」というように、妄想や作り話に共感するのではなく、その背景にある感情に寄り添うことがポイントになります。

受け入れてもらえたと安心できれば、攻撃的な気持ちの緩和にもつながるでしょう。

いったん距離を置く

 

あまりにもひどい悪口や暴言、攻撃的な態度が続く場合は、無理に取り合わずに物理的な距離を置くことをおすすめします。

介護者が我慢をしてまで、話を聞き続ける必要はありません。

心に余裕がなく、冷静に対応できないと思ったらすぐにその場を離れましょう。

別室に移動したり、外に出て深呼吸をしたりすれば、気持ちが落ち着くこともあります。

デイサービスやショートステイを利用して、介護者がゆっくり休める時間を作ることも有効です。

誰かに相談する

 

被害妄想の悩みやストレスは一人で抱え込まず、誰かに相談するようにしましょう。

精神的な負担が大きくなってしまうと、介護者が体調を崩してしまう可能性があります。

ほかの家族や友人、かかりつけ医やケアマネジャーに相談すれば、新しいアイデアやアドバイスがもらえるかもしれません。

インターネットのコミュニティサイトや、SNSで同じ悩みを抱える方を探すのもおすすめです。

話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることもあります。

自信を持たせる

 

認知症による被害妄想は自尊心が傷つけられたときに起こりやすいので、自信を持たせるために、日常生活の簡単なことを自分でやらせてみるのも効果的です。

小さな成功の積み重ねが自信につながります。

趣味や特技で活躍できる場をつくれば、症状が改善されるかもしれません。

声がけでうまく誘導しながら実践してみましょう。

認知症によって被害妄想が起こる原因

認知症の被害妄想は、さまざまな原因によって引き起こされます。

被害妄想の主な原因は、次のとおりです。

  • 脳機能の低下
  • 認知症に対する不安
  • 性格や周囲の環境

被害妄想の症状が発生する背景について、詳しく解説します。

脳機能の低下

 

認知症により妄想が起きる原因として、脳機能の低下による記憶障害や見当識障害があげられます。

認知症の記憶障害は、単なる物忘れではありません。

財布を自分でしまったという事実そのものを忘れてしまうため、盗まれたという妄想に結びついてしまうのです。

見当識障害は、時間や季節、場所や人物を忘れてしまう状態のことです。

自分がいる場所が分からず「帰りたい」と訴えたり、聴力の低下による聞き間違いから「悪口を言われている」という被害妄想に発展することがあります。

認知症に対する不安

 

認知症の症状に対する不安や焦り、寂しさなどの後ろ向きな気持ちも、被害妄想が起こるきっかけになっていると考えられています。

家族へ負担をかけることを負い目に感じたり、できないことが増えて自尊心を傷つけられたりするストレスから自分を守るために、頭の中で作り上げた話を信じてしまうのかもしれません。

悲しみや寂しさなどの感情が複雑に絡み合うことにより、さまざまな妄想が認知症の症状として現れてしまうのでしょう。

性格や周囲の環境

 

認知症を患った方のもともとの性格や、周囲の環境が被害妄想の発症にかかわっているケースも少なくありません。

例えば、臆病な性格の方に後から声をかけると、不安や混乱に陥った結果、防御反応で怒鳴ってくることがあります。

怖がりな性格にストレスが加わることにより「背後から襲われる」「知らない人がいる」と認知してしまうからです。

認知症の方は周囲の環境にも敏感になります。

家族の方が認知症の方の行動に対して落ち込んでしまうと、認知症の方も不安定になって被害妄想が膨らみ、急に暴れたり暴言を吐いたりするという悪循環が生まれてしまうでしょう。

認知症による被害妄想の状況別の対応

認知症による被害妄想に対する適切な対応を、状況別に解説します。

物盗られ妄想

 

指輪や財布などの大切な物を、誰かに盗まれたと思い込んでしまうのが物盗られ妄想です。

この妄想はしまったことや置いた場所を忘れてしまう記憶障害が原因で引き起こされます。

物盗られ妄想は介護者である家族を犯人だと思い込んでしまうケースが多いので、犯人扱いされてしまう介護者にとってはとても辛い状況です。

物盗られ妄想の正しい対応は、否定をしないことになります。

違うと否定すると、ますます興奮して妄想がヒートアップしてしまう可能性が高いでしょう。

「一緒に探そう」と声をかけ、見つけた場合は本人が見つけやすい場所に置き、自分で発見できるような配慮をしましょう。

見捨てられ妄想

 

「家族に邪魔だと思われているから施設に入れられる」と思い込んでしまうのが、見捨てられ妄想です。

認知機能の低下により、不安や孤独感が増えることが原因で引き起こされます。

見捨てられ妄想は些細なことがきっかけで孤独感が強まってしまうため、本人の前でため息をついたり、疲れた表情を見せたりしないほうがよいでしょう。

見捨てられ妄想の正しい対応は、安心できる声がけを継続することになります。

手を握る、背中をさするといった身体的な接触も有効です。

自尊心を保つためにお願い事をしたり、コミュニケーションを積極的にとったりしましょう。

危害・迫害妄想

 

他者から悪口を言われたり、危害を加えられたりしていると思い込んでしまうのが、危害・迫害妄想です。

周囲の状況が認識できなくなる見当識障害や、聴力の低下が原因で引き起こされます。

危害妄想や迫害妄想の正しい対応は、まずは否定せずに本人の話を受け止めることです。

「辛かったですね」と共感しながら、「そばにいるから大丈夫ですよ」と、安心させる声がけをすることが大切になります。

ただし、暴力や暴言が激しい場合は、介護者に危険が及ぶ可能性があるので、無理に対応してはいけません。

できるだけすみやかに専門機関に相談しましょう。

幻覚や見間違いによる妄想

 

見えないものが見えたり、壁の模様を虫だと思い込んでしまったりするのが、幻覚や見間違いによる妄想です。

脳の認知機能の低下や、周囲の環境が原因で引き起こされます。

幻覚や見間違いによる妄想への正しい対応は、周囲の人には見えていなくても本人には見えていると受け入れることです。

一緒に近づいたり、触ってみたりするのもよいでしょう。

見間違いを引き起こす原因を作らないように、壁紙や家具、寝具はできるだけシンプルなものに変えることも効果的です。

嫉妬による妄想

 

配偶者が浮気をしているなどと思い込んでしまうのが、嫉妬による妄想です。

本人のもともとの性格や、認知症を患ったことによる不安や寂しさが原因で引き起こされます。

嫉妬による被害妄想への正しい対応は、日頃からコミュニケーションをしっかり取ることです。

こまめな声がけや身体的な接触を行うことで、本人に安心感を与えましょう。

認知症による被害妄想がひどくなってきた場合は

被害妄想による暴言や暴力に対し、介護者が限界を感じた場合はどうすればいいのでしょうか。

認知症による被害妄想の症状が強くなった場合の対処法を解説します。

専門家に相談する

 

介護者の負担が大きくなってきた場合は、一人で解決しようとせずに、かかりつけ医や精神科・心療内科の医師に相談してください。

認知症の専門医に相談すれば、症状を改善させる方法が見つかるかもしれません。

症状の度合いに応じて、薬物療法が実施される可能性もあります。

暮らしやすい生活環境や、認知症患者への正しい対応を学ぶこともできるので、一人で悩まずに専門家に頼りましょう。

病院を受診する

 

高齢者の被害妄想に困っている場合は、もの忘れ外来や認知症外来を受診してください。

認知症でない場合は、精神疾患の可能性もあるので、精神科や心療内科の受診も検討が必要です。

被害妄想で受診を検討する目安は、次のとおりになります。

  • 自傷行為がある
  • 食事を拒否している
  • 生活に支障がある
  • 介護できない

このような症状が見られる場合は、早めに病院を受診しましょう。

入院治療を受ける

 

社会生活や日常生活に著しく支障をきたしている場合は、通院ではなく入院治療が必要な場合もあります。

本人のためにも、医師の判断に従って入院治療を受けましょう。

施設に入所する

 

暴力や暴言により、自宅での介護が困難な場合は、施設への入所を検討する段階です。

いずれにせよ認知症が進行すると在宅での介護が無理になるため、なるべく早めに施設を探しておきましょう。

認知症の高齢者が入所できる施設の種類は、次のとおりです。

  • グループホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅

施設選びのポイントは、認知症ケアの実績があることや、専門性の高いスタッフが在籍していることになります。

施設によって費用やサービスも異なるので、しっかりと比較してから決めましょう。

認知症の被害妄想に悩む家族が利用できるサービス

認知症で被害妄想の症状がある方の介護の負担は大きいでしょう。

家族の負担を軽減できるサービスを紹介します。

介護保険サービス

 

介護保険を使用して、介護保険サービスを受けることができます。

訪問介護や訪問看護、訪問入浴などの介護保険サービスを利用すれば、在宅で介護を担当している家族の負担を軽減することが可能です。

介護保険サービスの対象者は、65歳以上の方か、40~64歳までの医療保険加入者になります。

利用するためには、要介護認定が必要です。

地域密着型の介護保険サービスの中には、認知症の方に特化した認知症対応型通所介護や、認知症対応型共同生活介護があります。

これらは認知症を患っている要介護者が、自宅で生活できるように提供されているサービスです。

精神科デイケア

 

精神科デイケアとは、精神疾患があるが入院の必要はなく、主治医の同意が得られている方が利用できる通所型のリハビリテーションです。

精神疾患を持つ方が、安定した日常生活を送ることを目標としています。

国制度に則って運用されるため、定員や開催時間が決められているのが特徴です。

食事や入浴が中心のデイケアとは異なり、身体機能や精神機能の維持や向上を目的としたリハビリが行われます。

認知症家族のコミュニティ

 

最初の見出しでも解説しましたが、認知症の方が発する暴言に悩む家族を対象とした、疾患コミュニティサイトもあります。

このようなサイトでは、同じ悩みや情報を持ったユーザー同士がコミュニケーションをとり、つながりを作ることが可能です。

介護は長く続いていくものですので、一人で悩んだりせずコミュニティを活用してみましょう。

被害妄想の原因が認知症以外の可能性もある

認知症でない場合は、ほかの病気が被害妄想の原因かもしれません。

被害妄想の症状がある認知症以外の疾患を紹介します。

老人性精神病

 

正式な診断名ではありませんが、認知症でない高齢者に幻覚や妄想などの精神症状が見られる場合を総称して、老人性(老年期)精神病と呼んでいます。

妄想の種類は被害妄想が多く、幻覚は幻聴の症状が多いのが特徴です。

発症に男女差があり、女性に多く見られます。

治療方法は、抗精神病薬による薬物療法が中心です。

対応は頭ごなしに否定しない、同調もしないのが基本となるので、認知症の対応と同じで問題ありません。

統合失調症

 

統合失調症はうつ病や不安障害と同じ精神障害の一種で、100人に一人の割合で発症するといわれています。

これは、脳の機能障害が発症の原因です。

統合失調症で出現しやすい妄想は、被害妄想や関係妄想、誇大妄想、微小妄想などがあります。

早めに専門医の適切な治療を受ければ、社会復帰も可能です。

せん妄

 

せん妄は、病気によって引き起こされる意識障害のことです。

症状として認知障害や幻覚、妄想が発現することがあるため、認知症と間違えられてしまうケースがあります。

高齢者に多く、もともと認知症を患っている方も発症しやすいとされています。

せん妄では注意障害がみられ、幻覚や妄想が伴うこともあります。

健康な人が突然せん妄になることはありません。

認知症や全身の病気、アルコールや薬が引き金になって発症するのが一般的です。

妄想性障害

 

妄想性障害は、誤った思い込みや妄想が1カ月以上続くことにより、日常生活に支障が生じる病気です。

高齢者には抑うつや幻覚、イライラや不機嫌と言った症状もみられます。

妄想が主な症状のため、それ以外の行動の変化はありません。

本人は病気と認識できないため、社会的に孤立しやすいといえます。

治療のためには、家族の理解やサポートが必須になります。

認知症の被害妄想に関するよくある質問

最後に、認知症の被害妄想に関するよくある質問に答えます。

症状はいつまで続くの?

 

認知症の被害妄想が発現してから、収束するまでは長い時間を要します。

そのため、介護に携わる方は精神的な負担を強いられるでしょう。

介護サービスや専門家の助けを借りながら、日々の介護ストレスを軽減することが大切です。

終わりを待つよりも、過ごしやすい環境づくりに力を入れましょう。

治療薬はある?

 

認知症の被害妄想に対しては、抗認知症薬や抗精神病薬、漢方薬などが使用されることがあります。

被害妄想のほか、イライラや不眠、介護への抵抗を抑えることができる興奮抑制系の薬も処方されます。

 

抗認知症薬抗精神病薬・漢方薬など
●     レミニール(ガランタミン)

●     メマリー(メマンチン)

●     イクセロン・リバスタッチパッチ

●     アリセプト(塩酸ドネペジル)

●     チアプリド

●     クロルプロマジン

●     抑肝散

 

症状として不安感が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬が検討されることもあるでしょう。

治療薬を服用すれば症状を緩和させることができますが、根本的な解決にはなりません。

かかりつけ医と相談しながら、環境を整えることが大切です。

悪化する原因は?

 

認知症による被害妄想は、社会生活や家庭生活のストレス、治療の中断により悪化してしまうおそれがあります。

悪化により家庭での介護が困難になった場合は、入院治療を余儀なくされるでしょう。

悪化を防ぐためには、家庭でのサポートが必須です。

病院で適切な治療を受けている場合は、継続していくための適切な支援が必要になります。

治療薬の注意点は?

 

認知症の治療薬には副作用があるため、服用する際は以下の注意点を守る必要があります。

  • 医師の指示した用量を守る
  • 服用は少量から始める
  • 状態の変化を注視する

認知症の薬は神経に作用する薬が中心のため、飲み忘れたり飲みすぎたりしてしまうと、認知症患者の精神に影響を及ぼす可能性があるとされています。

認知症が悪化したり、合併症を引き起こしたりする危険性があるので、認知症の薬を飲み始めるときは、少量からスタートさせることが重要になります。

認知症患者は、心身の状態を正確に訴えることが難しいとされます。

介護を担当する家族がメモなどに状態を記入し、医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。

まとめ

今回は、認知症によって発症する被害妄想の原因と適切な対応について解説しました。

認知症の被害妄想は、主に脳機能の低下によって引き起こされます。

加えてもともとの性格や周囲の環境が関係しているケースも少なくありません。

認知症による被害妄想が発現した場合は、否定しないことがもっとも適切な対応になります。

被害妄想の症状に耐えきれなくなった場合は、一人で悩まずに距離を置き、誰かに相談してください。

認知症の介護は家族にとって精神的な負担が大きくなります。

介護保険サービスを活用したり専門家に相談したりしながら、負担を軽減しましょう。