当直とは?基本ルールや宿直・日直・夜勤の違い、具体的な仕事内容まで紹介

医療・介護業界では、主に日勤や夜勤などさまざまなシフトを組み合わせて現場を回しています。
その中でも「当直」という言葉は、なじみがない人も多いのではないでしょうか。
特に介護現場で働いたことのない方にとっては、仕事内容や働き方がイメージしにくいものです。
本記事では「当直とは何か」という基礎知識から、規定や具体的な仕事内容、宿直・日直・夜勤との違いまでを分かりやすく解説します。
当直の詳しい内容を理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
当直とは?
当直とは、施設や職場に常駐し、急な対応要請に備えるための勤務形態です。
医療・介護業界をはじめ、24時間体制で運営される現場では欠かせない働き方の一つといえるでしょう。
ここでは、当直の基本的な考え方から業務内容、さらに宿直・日直・夜勤との違いについて順に解説します。
当直は当番制の勤務形態のこと
当直とは、通常のシフト勤務とは区別され、担当者が持ち回りで対応する勤務を指します。
日勤や夜勤などの決まった業務を行うのではなく、トラブル時の対応に備えるスタッフとして待機するのが主な役割となります。
所定の勤務時間とは区別して扱われるため、日常的な業務は原則として行わないとされています。
勤務先によっては、宿直や夜勤をまとめて当直と表現することもありますが、本来であれば働く時間帯を示す言葉ではありません。
また、当直業務には2つの形態があり、昼間に配置されるものを「日直」、夜の時間帯を受け持つものを「宿直」と呼び、これらを総称して「宿日直(日当直)」としています。
当直業務のある仕事
当直業務のある職種はいくつかあり、具体的には以下が挙げられます。
● 医師 ● 警察官 ● 自衛官 ● 消防士 ● 薬剤師 ● 介護職 ● 警備員 |
このように、当直のある仕事は多岐にわたります。
また、役割や仕事内容もそれぞれ異なってくるのが特徴です。
宿直・日直・夜勤との違い
宿直・日直・夜勤は、業務内容や働く時間帯が異なります。
それぞれの異なる点は、次のとおりです。
宿直は夜間の緊急時に備えて待機する勤務形態
宿直は、夜間帯に行われる当直のことです。
夜間帯の急な対応要請に備えることが大きな役割で、トラブルがあった際の対応や見回り、電話対応などを行います。
病院や介護施設に宿泊する勤務形態ですが、夜勤業務を行うことは許されていません。
しかし、何らかの理由により宿直業務外の勤務が発生した場合は、仕事内容や支払われる給与が変わってくる可能性があります。
日直は日勤帯の緊急時に備えて待機する勤務形態
昼間の勤務時間に行われる当直を、日直と呼ぶのが一般的です。
宿直は、夜間帯のトラブルにすぐに対応できるよう準備を整えておくことが大きな役割であるのに対し、日直は日勤帯のトラブルに備えて待機するのが大きな役目となります。
宿直とは異なり宿泊を伴う勤務形態ではなく、勤務時間は日勤帯、もしくは宿直までのつなぎとして勤務します。
通常、夜間帯よりも日勤帯のほうが勤務人数が多いことから、宿直よりも日直のほうがトラブル時の対応は少ない傾向です。
夜勤は夜間に労働すること
夜勤とは、夜の時間帯を中心に業務を行い、深夜時間(おおむね22時から翌5時)に就労が含まれる勤務形態です。
当直が不測の事態が起こった際の待機スタッフであるのに対し、夜勤は通常業務を行うことが大きな違いです。
時間外対応として位置づけられる当直に対し、夜勤は法令上の労働時間に含まれる点も異なります。
当直に関する基本ルール
当直には、働く時間や仕事内容、手当の支給など、あらかじめ定められた基本ルールがあります。
特に、労働時間に該当するかどうかや、どこまでの業務が許されているのかは、現場で誤解されやすいポイントです。
ここでは、当直に関する労働時間の考え方や届出の有無、業務範囲、手当などの押さえておきたいポイントを解説します。
労働時間
労働基準法では、労働時間の上限が「1日8時間・週40時間」と定められており、これを超える労働は原則として禁止されています。
ただし、例外として当直は、管轄の労働基準監督署長から許可を受けている場合に限り、通常の労働時間規制の枠外として扱うことが認められているのです。
この許可がある場合、当直時間は日中の通常業務のような労働時間としてはカウントされず、別途定められた宿日直手当の支払いで対応します。
届出
当直を行う事業所は、労働基準監督署へ届出を行い、許可を受けなければなりません。
その際、以下の内容を申請書に細かく記載する必要があります。
● 事業所の基本情報 ● 宿日直をする人の数 ● 1回の宿日直人数 ● 宿日直勤務の開始・終了時刻 ● 一定期間における一人の宿日直回数 ● 手当の金額 ● 就寝設備の内容(宿直の場合) ● 勤務の態様 |
なお、医療法第16条により医師の宿直が義務づけられている病院であっても、労働基準法上の労働時間規制の枠外とするためには、労働基準監督署への申請と許可が必須となります。
出典:厚生労働省「医療機関における宿日直許可~申請の前に~」
出典:厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ(2024年8月6日ver.)」
業務内容
当直の業務内容は、基本的にトラブルや急な呼び出し、設備不具合などの緊急時の対応を行うことです。
そのため、日勤や夜勤などの通常業務は行ってはいけません。
これは労働基準法にも記載されており「定期的な施設の見回り、緊急の連絡が入った場合の対応、トラブルに備えて待機することを目的とするもの」と制限されています。
つまり、常に業務を行うのではなく、必要なときに対応する待機型の勤務と位置づけられています。
手当
当直は、時間外や休日出勤として賃金が支払われると思われがちですが、それとは別に「宿日直手当(深夜割増賃金を含む)」として支給されます。
具体的な金額は、宿直や日直の勤務に就く予定の同種の労働者1人あたりの1日平均額(所定内賃金ベース)の3分の1以上と決まっています。
具体的な計算方法は、以下のとおりです。
宿日直勤務総員数の1カ月所定内賃金額合計 ÷ (「1カ月所定労働日数」× 「宿日直勤務総員数×3」) =宿日直手当の最低額 |
日直と宿直の両方を行う事業所に関しては、それぞれ別で計算し、金額が決定されます。
出典:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
睡眠設備の有無(仮眠・休憩)
当直を行う事業所で宿直がある場合は、就寝可能な設備の用意が義務づけられています。
そのため、事業所側は宿直者がしっかりと休めるよう、ベッドや布団などの寝具を備えた環境を整える必要があります。
ソファや簡易椅子などは、就寝可能な設備として不十分と判断されやすいため注意が必要です。休憩時間については明確な規定はなく、緊急対応が可能な状態で待機できていれば、休憩のタイミングは自由とされています。
頻度や上限回数
頻度や上限回数に関しては、原則として宿直は週1回、日直は月1回が限度とされています。
しかし、以下の条件を満たす場合は勤務回数を増やすことが可能です。
● 人員不足であり宿日直に就ける全職員が宿日直を行っている ● 一定時間内の業務量が少ない場合 |
これらを満たすと、宿直・日直ともに上限を超えて許可される場合があります。
出典:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
宿直明けは基本的には非番になる
宿直業務を行った場合、その翌日は勤務を入れずに休みとする運用が一般的です。
この宿直明けの休みは労働基準法上の「休日(公休)」ではなく、あくまで非番として扱われます。
非番は勤務時間が終わった後の休息を指すため、事業所はこれとは別に法律で定められた法定休日を確保しなければなりません。
当直の具体的な仕事内容
当直の仕事内容は、勤務する施設や業種によって異なりますが、基本となる考え方は共通しています。
日勤や夜勤とは異なり、通常は待機しつつ急なトラブルがあった際に対応することが当直の役割です。
ここでは、業務の基本を押さえた上で、介護施設・障害者福祉施設・病院それぞれの具体的な仕事内容を見ていきましょう。
緊急時の対応が基本
当直の主な業務内容には、以下が挙げられます。
- 患者や利用者の緊急時の対応や補助
- 事故発生時の初動対応
- 病院や施設内でのトラブル対応
- 緊急時の問い合わせ対応
- 定期的な施設の見回り
ただし、医師や看護師などの場合、一部業務が認められます。
また、介護施設や障害者支援施設では、短時間かつ軽度の介助に限り認められる場合があります。
介護施設の場合
介護施設では、介護職員や看護師を中心に、夜勤者の補助やトラブルの際の対応を行います。
具体的な業務内容は、次のとおりです。
● 定期的な巡回 ● 入所者の体調急変時の対応 ● 軽度の介助業務(1~2回10分程度) など |
軽度の介助業務とは、おむつ交換の補助など身体的負担が比較的小さい対応のことです。
トイレ介助や移乗といった、利用者を抱えるような業務は範囲外となるため注意しましょう。
障害者福祉施設の場合
障害者福祉施設では、生活支援員や看護師を中心に当直業務を行います。
主な仕事内容は、緊急時の対応に加えて以下の業務を行います。
● 定期的な巡回 ● 入所者の体調急変時の対応 ● おむつ交換 ● 軽度の介助業務(1~2回10分程度) など |
業務内容は介護施設とほとんど同じですが、対象者が異なります。
また、失禁や失便した際のシャワー浴や拭き取り、着替え対応といった業務は対象外となるため覚えておきましょう。
病院の場合
病院の場合は、医師や看護師が中心となって業務を行いますが、そのほかに以下の職種が行う場合があります。
● 薬剤師 ● 臨床検査技師 ● 診療放射線技師 ● 医療事務 |
主な仕事内容は、以下のとおりです。
● 入院患者の急変時の対応や処置 ● 緊急外来を受診する方への診察や処置への対応 ● 医師・看護師間での指示伝達や状況確認 ● 注意が必要な患者の脈拍測定や検温 ● 軽度の介助業務(1~2回10分程度) ● 定期的な巡回 など |
通常勤務に近い業務が含まれる場合もありますが、基本的には急変時の対応や少数の患者対応が主な業務となります。
当直の働き方
当直の働き方は一つではなく、雇用形態や勤務頻度によってさまざまなパターンがあります。
正社員として通常勤務を行いながら入るケースもあれば、当直のみを担当する働き方もあります。
ここでは代表的な働き方として、正社員の場合、アルバイト・パート、単発求人について見ていきましょう。
正社員+月1回の当直
正社員として働く場合は、通常の業務に加えて一定の頻度で当直を担当するケースがあります。
例えば、以下のスケジュールが考えられます。
月:通常勤務 火:通常勤務終了後に当直 水:休み 木:通常勤務 金:通常勤務 土:休み 日:通常勤務 |
月に1回程度は、上記のようなスケジュールが組まれると考えられます。
なお、正社員は日常業務に加えて当直を担当する形が一般的ですが、当直専従として配置されるケースもあります。
当直アルバイト・パート
アルバイトやパートの場合は、当直業務を中心に担当する場合があります。
求人では宿直勤務として募集されることが多く、日中勤務を伴わない場合もあります。
当直中は基本的に待機が中心となり、トラブルや緊急時が発生した際に対応します。
体力的な負担が比較的少ないことから、ブランクのある方でも始めやすい働き方といえるでしょう。
単発OKの求人もある
当直の働き方の中には、単発OKの求人も存在します。
単発OKの求人は施設の巡回が主な業務内容で、事業所によっては非常時対応の頻度が低いケースもあります。
ただし、緊急時対応がある求人と比べると、給与は低めに設定される傾向です。
当直(宿直)と夜勤の具体的な違い
ここまで詳しく紹介しましたが、当直(宿直)と夜勤の違いについて分かりにくい方も多いかもしれません。
そこで、重要なポイントを表にまとめてみました。
| 当直(宿直) | 夜勤 | |
| 労働時間や頻度 | 法定労働時間外 | 法定労働時間内 |
| 届出 | 必要 | なし |
| 業務内容 | 緊急時の対応や簡単な介助など | 通常業務 |
| 手当 | 宿日直手当 | 深夜手当(夜勤手当) |
| 睡眠設備の有無 | 必要 | 不要 |
| 回数制限 | 宿直は週1回・日直は月1回 | なし |
当直のメリット・デメリット
当直は突然のトラブルに備える待機や軽度の介助が中心となるため、比較的負担が軽い業務と思われがちですが、注意点もあります。
以下に、メリット・デメリットに分けて紹介しますので参考にしてください。
メリット
当直のメリットは次のとおりです。
● 業務がなければ自由な時間として活用できる ● 宿直業務の翌日が休日になる ● 宿日直手当がつく ● 対応がなければ一定の休息や仮眠を取れる場合がある |
緊急対応がなければ、待機時間を比較的自由に過ごせる点がメリットです。
また、宿日直手当がつくので収入アップも期待できるでしょう。
デメリット
当直のデメリットは次のとおりです。
● 緊急対応が必要になったときは忙しくなる ● 拘束時間が長い ● 睡眠不足や生活リズムが崩れる可能性がある |
当直のデメリットは、緊急対応が必要になった場合、忙しくなったり睡眠時間が少なくなったりする可能性があることです。
また、拘束時間が長くなる傾向があるため、身体的・精神的負担につながるかもしれません。
当直がある職場へ就職する際の注意点
当直のある職場で働く場合、事前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
内容を理解せずに入職すると「想像していたのと違った」と感じてしまうことも少なくありません。
ここでは、当直がある職場へ就職する前に知っておきたい注意点を、具体的に解説します。
緊急時の対応方法を理解しておく
当直の主な仕事内容は、緊急時の対応です。
そのため、トラブルや対応が必要になったときに慌てないためにも、実際の動きを事前に確認しておく必要があります。
具体的には、事業所が作成した「よくある緊急時の対応やマニュアル」や「緊急連絡先」などを頭に入れておき、念のためスタッフにも確認をとるとよいでしょう。
当直明けにそのまま勤務になる職場もある
宿直勤務を行う事業所の場合、人員不足によりそのまま勤務になるケースもあります。
しかし近年は労働基準法に基づく働き方の見直しが進み、当直明けに通常勤務が組まれるケースは減少傾向にあります。
医師など一部の職種では当直後の勤務が行われる場合もありますが、働き方改革以降は明確な休息時間や勤務間インターバルの確保が求められています。
ただし、ゼロになったとはいえませんので、就職する前に細かく確認することをおすすめします。
当直手当が少ないケースがある
当直業務は、通常業務と比べて比較的簡単な業務が中心であるため、夜勤手当と比較して受け取れる手当は少ないこともあります。
また、職種や事業所によっては緊急時の対応が多かったり、通常業務と混在していたりする場合もあるため、割に合わないと感じるケースもあります。
心配な方は実際の業務内容や緊急時の回数など、細かく確認することをおすすめします。
当直(宿直)でありながら夜勤と同程度の業務が発生する場合
1つ前の章でも紹介したように、職種や事業所によっては夜勤と同程度の業務が発生するケースも少なくありません。
場合によっては通常業務に支障が出たり、手当の少なさから「割に合わない」と感じたりすることもあります。
ここでは、当直業務が負担に感じた際に行いたい3つの対策を紹介します。
上司に相談・確認する
まずは、当直業務がきついことを上司に相談してみましょう。
相談内容は、ただきついことを伝えるだけではなく、どの部分がきついのか、業務内容の改善ができないかなど、具体的に伝える必要があります。
通常業務が混在している場合も、業務内容を整理してもらうよう相談してみましょう。
労働基準監督署に申告をする
上司に相談・確認しても改善がみられない場合は、労働基準監督署に申告するのも検討しましょう。
少し勇気がいるかもしれませんが、事実を伝えることで改善の指導が行われる可能性があります。
申告する際は事実関係を正確に伝えることが重要であり、虚偽の申告は行わないよう注意が必要です。
転職する
当直業務を負担に感じるものの、改善されない場合は転職をおすすめします。
無理をして業務を続けるよりも、自分の身体や心が健康であることが一番大切です。
自分に合った働き方ができる職場を前向きに探してみましょう。
まとめ
当直は日勤や夜勤とは異なり、主に緊急時対応を目的とした待機型の勤務です。
労働時間の扱いや業務範囲、手当の支給などには法律上のルールがあり、職場ごとに内容も異なります。
そのため、仕事内容や頻度を事前に確認することが重要です。
負担が大きい場合は、無理をせず相談や環境の見直しを行い、自分の心身を守りながら働ける職場を選ぶ視点も忘れないようにしましょう。





