【介護コラム】その日が一日でも先であるようにー第6話ー

グループホームに住む認知症の男性とヘルパーとの実話

勤めていたグループホームは、社長が医師、ホーム長が看護師という、医療体制の面では大変恵まれた環境であったため、今までにも看取りまで対応した事例はあった。その点も含め、先ずはご家族の意向を伺うための席が設けられた。ご家族の回答は管だらけになって最期を迎えることは望まない、何かあっても延命はせず、ホームで看取りをして欲しいとのことだった。T氏のプランに、緊急の場合でも延命処置は望まないと追記した後、私は、本人の意向もきちんと確認したいという強い想いに駆られた。
それから毎日、これからどんな風に暮らして行きたいですか?という問いかけを繰り返した。しかし、T氏からは「お元気そうですなあ」や「晴れましたな」という返事ばかりだった。
その間も体調の変動は続いており、焦りから半ば諦めかけていたが、二週間ほど経ったある日の入浴時、懲りずに質問をすると「良い人に恵まれ、穏やかに過ごしていきたいですな」と初めて意向らしい返事を聞くことが出来た。あまりの嬉しさに、はやる気持ちを抑えながら、先ずは無事に入浴を終わらせ、急いで本人の言葉通りをプランに書き加えた。私の頭の中のもやもやがすっきりと晴れた気がした。プランは出来た。後は家族への説明と合意である。

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!