相次ぐ介護事業者の倒産、業界の今後は?

介護事業者の倒産件数が、年々増えているというニュースがありました。

介護事業者の倒産件数が過去最多 理由は? (出典; 産経新聞)

倒産しているのはどんなところ?

14年は54件、15年は76件、16年は108件、そして今年は111件の倒産が報告されているようです。
このうち、訪問介護の倒産が44件、通所が44件と在宅系のサービスが多くを占めており、負債総額は150億円とのこと。

あれ?負債額が150億、というのが引っ掛かりませんか?
平均すると負債額は2億に満たない額です。一般人の抱える借金としては致命的な額ですが、一般的な企業が抱える負債額としては決して大きなものではありません。

倒産している企業には開業資金があまり必要がない在宅系が多く、負債額も小さい。
この二つからわかることは、ある程度の規模がある企業ではなく、社員数が1ケタ代の超零細企業が多く倒産している、ということ。

実際記事には、「設立5年以内の新規事業者や、従業員数5人未満の小規模事業者が多い」と書かれています。

倒産が増えている本当の原因

今回の倒産件数増大のニュースを受けて、いろいろな意見を目にしました。

競争が激化してきたため他社との差別化やサービスの質を高めなければ生き残れない、利用者から魅力を感じられない事業者は今後も淘汰される、介護報酬の削減の影響なのではないか、などなど、ごくありきたりな意見も多くありますが、もちろんそれも理由の一つではあるでしょう。

ただ、個人的には今回のニュースの本質は、「在宅系介護事業を安易に起業しても、うまくいかないマーケットになってきた」という事なのではないかと思います。

特に訪問介護をやっていると、社員が「独立しようと思ってます!」と言って同僚を連れて事業所を立ち上げる、というケースがよくあります。
何と言っても、初期費用が非常に小さく、事務所と簡単な什器、人が数人いれば始められてしまうのがその理由です。
ただ、立ち上げる人の中には事業所の管理者すら務まるか怪しい人間も多く、社内では能力不足で昇進できないから自分で立ち上げる、という驚くべき理由を挙げる人もいます。

それでも、これまでは登録社員だけ雇ってこじんまりとやっていれば、ギリギリ黒字はキープできて生き残ることができたのが実情でした。
実際、都内には訪問介護事業者は2200社くらいありますが、2事業所以上展開している会社は実に200社しかありません。

こうした会社が昨今潰れるようになったのは、人手不足が業界全体で進みマネジメント力不足や採用戦略の欠如が致命的となったこと、及び報酬の削減などが進んだからでしょう。
実際こうした超零細企業からの相談をもらったこともありますが、労基法も知らず、就業規則もなく、社保も未加入と燦燦たる状況で、上記のような差別化や魅力づくり、サービスの質といったような高尚な問題ですらないようなケースもあります。

今回のニュースの捉え方

そう考えると、しっかりと自然淘汰の仕組みが働くようになったとも言え、今回のニュースは業界全体にとってはポジティブに捉えることもできるのではないでしょうか?
なぜなら、こうした企業で働いている人は、劣悪な環境での勤務を余儀なくされていることが多いからです。自然淘汰の力がしっかり働くようになり、ちゃんとした経営をしているところのみが生き残っていくようになれば、業界全体の待遇改善などにもつながります。

また以前、各国の産業の生産性などをコンサルタントとして調査したことがあるのですが、一般的に、こうした極度にフラグメント化された業界、というのは得てして効率性が著しく低いというのがどの国にも共通して言えることでした。

倒産が多い、と聞くとつい直情的に、業界の未来が暗いなどと言い出す方もいますが、捉え方や考え方次第ではいろいろと考えを巡らせることもできるのです。

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ケアリッツマガジン運営者 Yuri
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