【介護コラム】近くて遠いー第10話ー

第十話
入所の日まで残り2週間ほどとなり、荷造りや身辺整理をするためにドイツから娘婿が一時帰国をした。
福祉にはとても理解はあるものの、義母の身体的な介護は出来ないため、ケアは通常どおりのスケジュールで行われた。
ケアの合間でドイツの福祉事情など聞かせてくれたが、日本ほどは充実していないそうだ。純粋なドイツ人で介護の仕事をしようという人は少なく、ヘルパーといえば仕事を求めて故郷を離れてきた発展途上の国の方が大半。
技術面でも認知症等への理解の面でもまだまだ課題が多いという。そんな状況を見ていて、自分の義母は本当に恵まれていると、いつも労いと感謝の言葉を掛けてくれた。
直接的な介護には手は出さないものの、好物を常に買い揃えておいてくれたり、夜間の様子を細かく観察し、便座の汚れから排便の周期を把握してその情報を共有してくれたりと、頼もしい限りであった。
Yさんのことを、まるで本当の母親のように想っていることが伝わってきて、彼との交流もYさん宅訪問の楽しみの一つになっていた。