【介護コラム】 明日に向かって - 第1回- 成人

「これからは自分のことは自分でやりなさい」母からそう言われ、区役所に相談に行ったのが僕の20歳の誕生日当日の思い出です。
ルールも良く分からないまま、思いつく限りの希望を伝え、担当の方と一緒になって数少ないヘルパー事業所を探しました。どうにか一社見つかり、ヘルパーがいる生活が始まりました。
年が明けて迎えた成人式。会場の来賓席前に設けらた車椅子スペースにいたのは僕一人でした。
「車椅子ユーザーは公の場には来ないんだな」と強烈に感じたことを覚えています。
一方、成人を迎えて良かったことと言えば、人目をはばからず宴の場に参加できるようになったことです。
当時通っていた福祉会館では、何かにつけて飲み会が開かれていました。二次会はカラオケというのがルールで、宴席を中座しないというのが僕のこだわりでした。
僕よりも年上の方が多く、「演歌を歌え」と叱られ、兄弟船を歌ったような記憶があります。皆様曰く「周りに合わせるということを教えるための指導」だそうです。
分からないことだらけで、これから何をやっていきたいかも明確でなかった僕に転機が訪れたのも、ちょうどこの頃でした。
母校から卒業生として講演依頼が舞い込んできたのです。
前もって台本を用意しておいたのですが、家を出るときになぜか「要らない」と思い、持って行きませんでした。壇上で何をしゃべったのかは全く記憶にありません。ただその場で思いついた言葉で伝えてしまったため、台本とはかけ離れた内容になっていたことだけは間違いないです。
それでも、何も見ないで話せたという事実が嬉しくて、出来ることならこれからも人前で話をし続けたいと思うようになりました。「僕の最大の武器は口なんだ!」と確信した瞬間でした。
推奨BGM「太陽」森山直太朗(2004)