トイレ介助の適切な方法をシーン別に詳しく解説!配慮ポイントやよくある悩みも紹介

トイレ介助は、高齢者の方や障がい者の方が快適に過ごすために欠かせない重要なスキルです。
しかし、利用者の方に配慮しつつ介助するには、適切な方法や注意点を知る必要があります。
記事では、トイレ介助の基本手順をはじめ、シーン別の介助方法や負担を軽減するコツを詳しく解説します。
よくある悩みを解決するポイントも紹介していますので、参考にしていただけると幸いです。
トイレ介助(排泄介助)とは?必要なシーンは?
介護におけるトイレ介助とは、身体機能の低下により自ら排泄行為ができない方を補助することです。
しかし、その目的や種類などを知らない方も多いのではないでしょうか。
まずは、トイレ介助の目的や種類を確認していきましょう。
トイレ介助の目的
トイレ介助には、身体的・心理的・社会的な3つの目的があります。
まず、身体的な目的として、不要な老廃物を排出し、体内に毒素が溜まるのを防ぐ役割があります。
排泄がスムーズに行えることで、健康を維持し、身体の負担を軽減することが可能です。
心理的な目的では、失禁を防ぐことで、利用者が感じる恥ずかしさや情けなさといった精神的な負担を軽減できます。
これにより、要介護者の方の日々の安心感にもつながるでしょう。
さらに、排泄がうまくできるようになることで、外出の機会が増え、人との関わりやコミュニケーションの幅が広がります。
社会参加が可能になることで、生活の質(QOL)も向上し、生きがいを感じられるようになるでしょう。
トイレ介助の種類
トイレ介助には、次の3つの種類があります。
【ポータブルトイレ介助】
こちらの方法は、ポータブルトイレと呼ばれる持ち運び可能な簡易トイレを使用して行われます。
ポータブルトイレは少しのスペースがあれば、どこでも設置できるので、自らトイレに行くことが難しい場合に使用されるのです。
いくつか種類があり、高さ調整が可能なタイプや肘置きが備えられたタイプなどがあります。
【ベッド上の差込便器・尿器の介助】
こちらの方法は、寝たきりの方などベッドに横になった状態で、差込便器や尿器を使用して行われます。
主に、尿意や便意を感じられたり伝えられたりできるが、立位や座位が保ちにくい場合に使用されます。
なお、尿器は男性用と女性用で受け口の形が異なります。
【おむつ交換】
こちらは、尿意や便意を感じにくかったり伝えるのが難しかったりする方に行う方法です。
定期的なタイミングでおむつをチェックし、排泄されていれば交換するという流れです。
また、交換する際は陰部の拭き取りや洗浄も同時に行います。
なお、おむつには「履くタイプ」と「テープタイプ」の2つの種類があります。
【シーン別】トイレ介助(排泄介助)の具体的な手順
トイレ介助は要介護者の方にとって非常にデリケートで、身体的にも心理的にも負担の大きい介助です。
そのため、適切な準備や手順が欠かせません。
ここでは、シーン別のトイレ介助の具体的な手順や気をつけるべき点を紹介していきます。
トイレ介助する前に準備するもの
トイレ介助をする前に、いくつかの物品を事前に準備しておくことが大切です。
具体的には以下のものを用意しましょう。
- トイレットペーパーやお尻ふき
- 使い捨て手袋
- 新しいおむつや尿取りパッド(状況に応じて)
- 陰部洗浄ボトル
- お尻洗い(状況に応じて)
- 保湿剤(状況に応じて)
基本的には、どのトイレ介助でも上記のものを準備しましょう。
車椅子の方へのトイレ介助
ここからは、車椅子を使用している方へのトイレ介助について説明します。
全介助と一部介助に分けていますので、身体状況に合わせた方法を実践してください。
【全介助の場合】
全介助の場合は以下の手順で行います。
- 車椅子を便器に対して90度の角度に設置する ※狭いトイレでは車椅子を便座と向かい合わせに停める
- フットサポートを外し、床に足をつけてもらう
- 体に密着しながら肩甲骨と腰を支え、臀部を上げつつずらすように前方に移動する ※この時点でベルトやファスナーを外しておくと、あとの負担を減らせます。
- そのまま前傾姿勢にしつつ立ち上がる ※同時に手すりに掴まってもらう
- 立ち上がった状態で便座の方に身体を回転させる
- ズボンと下着を下げる
- 再び体に密着しながら肩甲骨と腰を支え、要介護者の方の高さに合わせたままゆっくり座る
- 体勢が安定しているか確認する
- プライバシーに配慮しつつ見守る
- 排泄が終われば清拭する
- 手すりに掴まってもらう
- 体に密着しながら肩甲骨と腰を支えた状態で要介護者の方の高さに合わせたままゆっくり立ち上がる
- 衣類を上げる
- 便座に座る際と反対の手順で車椅子に移乗する
【一部介助の場合】
一部介助の場合は、できるところは要介護者の方に行ってもらいます。
手順は以下の通りです。
- 車椅子を便器に対して90度の角度に設置する ※狭いトイレでは車椅子を便座と向かい合わせに停める
- フットサポートを外し、床に足をつけてもらう
- 車椅子の前方へ少し移動してもらう ※この時点でベルトやファスナーを外しておく
- 手すりに掴まってもらい立ち上がりを促す ※介助者は転倒を避けるために上半身や腰あたりを補助しましょう
- 立ち上がったらお尻が便座に向くように体勢を変えてもらう
- ズボンと下着を下げる
- 便座に座ってもらう ※転倒しそうな場合は補助しましょう
- 体勢が安定しているか確認する ※終わったら声掛けするよう伝え、1度退出する
- 排泄が終わったら拭くよう促す、もしくは介助者が清拭する
- 手すりに掴まってもらい立ち上がりを促す ※このときも転倒を避けるために上半身や腰あたりを補助しましょう
- 衣類を上げる
- 便座に座る際と反対の手順で車椅子に移乗する
歩行可能な方へのトイレ介助
歩行可能な方への介助は、以下の手順で行います。
- 手引きや寄り添いをしながらトイレへ誘導する ※進行方向に障害物や段差がないか確認しつつ、要介護者の方のペースに合わせて誘導しましょう
- 便座に背中を向ける形で立ってもらい手すりに掴まってもらう
- ズボンと下着を下げてもらう
- 難しい場合は介助者が行いましょう
- 手すりを使いながら座ってもらう ※不安定な方は上半身を補助する
- 体勢が安定しているか確認する
- 安定している場合は1度トイレから退出する ※安定していない場合はプライバシーに配慮しつつ見守る
- 排泄が終わったら拭くよう促す、もしくは介助者が清拭する
- 手すりを使いながら立ってもらい衣類を上げる
できる部分は自分で行ってもらいつつ、本人のペースに合わせて介助しましょう。
ポータブルトイレでのトイレ介助
ポータブルトイレでの介助は、以下の手順で行います。
- ポータブルトイレの近くに座ってもらう ※ベッドからの起き上がりが難しい場合は補助する
- ベッドに浅く座るよう促し、足も引いてもらう
- 要介護者の方の腰と肩甲骨を支えながら前傾姿勢になってもらう
- 前傾姿勢になりながら立ち上がる
- そのままの状態でポータブルトイレに背中を向ける形で身体を回転させる
- 介助者の肩に手を置いてもらい立位が保持できたらズボンと下着を下げる
- 要介護者の方の腰と肩甲骨を支えながらゆっくり座る
- 肘置きや手すりがある場合は掴んでもらう
- 体勢が安定しているか確認する
- 安定している場合は1度その場を離れる ※排泄が終わったら知らせるよう促す ※安定していない場合はプライバシーに配慮しつつ見守る
- 排泄が終わったら拭き取りを促す
- 拭き取りが難しい場合は介助者が行う
- 便座に座るのとは逆の手順でベッドに移乗する
- ポータブルトイレの中身を片付ける
排泄が終わったら排泄物の処理を忘れず行いましょう。
ベッド上でのトイレ介助
ベッド上でのトイレ介助は、次の3つがあります。
【差込便器を使う場合】
差込便器を使う場合は以下の手順で行います。
- ベッドに防水パッドを敷いておく
- お腹から太ももあたりが隠れる程度のバスタオルを用意し、要介護者の方の下半身を覆う
- ズボンと下着を脱ぐよう促す ※難しい場合は介助者が行う
- 腰を上げるよう促し、便器が肛門の中心に位置するようにセットする ※このとき要介護者の方に声掛けすることを忘れずに行いましょう。また、女性の場合は尿の飛び散りを防ぐため、陰部にトイレットペーパーを当てておきます。
- ベッドがリクライニングできる場合は上半身を上げる ※上半身を上げることで排泄しやすい姿勢にできます。ない場合はクッションなどを活用すると良いです。
- バスタオルで陰部が隠れているか、姿勢が安定しているかを確認する
- 排泄が終わったら知らせるよう声掛けし、1度その場を離れる
- 排泄が終われば清拭する
- 陰部を洗浄する場合は、陰部洗浄ボトル(お湯)とお尻ふきで洗う
- 腰を上げるよう促し、衣類を上げる
腰を上げるのが難しい場合は、1度横になってもらい便器を当てた状態で再び仰向けになる手順となります。
【尿器を使う場合】
尿器を使う場合は以下の手順で行います。
- 介助する前にベッドに防水パッドを準備します
- 腰を上げてもらうよう促し、ズボンと下着を下げます
- 尿器を陰部にあてて準備ができたことを知らせます ※男性は横向き、女性は仰向けの状態の方が排尿しやすいです
- 陰部が隠れるようにバスタオルをかける
- プライバシーに配慮しつつ見守る
- 排尿が終わったら拭き取りをする
- 腰を上げてもらい衣類を上げる
【寝たきりの方のおむつ交換する場合】
寝たきりの方のおむつ交換する場合は、以下の手順で行います。
- 腰を上げてもらい衣類を下げます ※難しい場合は1度横になってもらうとスムーズに下げられます
- 排泄されているか確認する
- テープタイプの場合はおむつを開き、履くタイプの場合は横部分を手で切って広げる ※このとき、ある程度の汚れを取り除いておけば、後の負担が減らせます
- 残った汚れをお尻ふきで拭き取ります ※拭き取りが難しい場合は、1度横向きにするとお尻全体が拭き取りできます。また、水分を残さないようにしっかり拭き取りましょう。
- 皮膚トラブルがないか確認し、必要に応じて保湿剤を塗布する
- 要介護者の方の身体を横向きにし背中側からおむつをあてる
- 再び仰向けになってもらいおむつをテープでとめる
- 腰を上げてもらい衣類を上げる
立位保持が困難な方のトイレ介助
立位保持が困難な方のトイレ介助は基本的に2人で行います。
しかし、何かに掴まれば立位できる場合は、1人で行う場合もあります。
【2人で行う場合】
2人で行う場合は、1人が身体を支えて立位保持し、もう1人が衣類の上げ下げや拭き取りを行います。
このとき、どちらがどの介助をするのかは、要介護者の方の体の大きさや体重、室内の広さを考慮して決めることが大切です。
また、介助者によっては腰を痛めやすい方もいますので、よく相談してから役割分担しましょう。
【1人で行う場合】
手すりや壁などに掴まることで立位を保てる場合は、1人で介助が可能です。
要介護者の方には手すりや壁に掴まってもらい、その間に介助者がズボンや下着の上げ下げ、そして拭き取りを行います。
必要に応じて、便座に座る際のサポートも行い、利用者の安全を確保しながら介助を進めます。
トイレ介助(排泄介助)を行う際の配慮や注意ポイント
トイレ介助は、要介護者の方にとって非常にデリケートなことですので、介助者はプライバシーに配慮する必要があります。
ここからは、トイレ介助する際の配慮や注意ポイントを紹介します。
トイレ周辺の環境を整える
トイレ介助はトイレの中はもちろん、周辺環境を整えておく必要があります。
具体的には以下のポイントを整えましょう。
- トイレや廊下、足元の照明
- 廊下やトイレの手すり
- 段差をなくす
- 開けやすいドアノブ
- 介助しやすい空間
上記のほかにも排泄中はなるべく1人になれるような配慮も必要です。
プライバシーに配慮する
排泄中に誰かに見られていると、うまくできないことは普通のことです。
座位が維持できる場合は外で待機し、座位が難しい場合は介助しつつも目線や姿勢は要介護者の方とは反対の方向に向けておくといった配慮が必要です。
また、ポータブルトイレや差込便器や尿器を使う場合も、タオルで陰部を隠すなどして対応しましょう。
声掛けは積極的に行う
要介護者の方は、介助を受けているときに声掛けがないと、とても不安になってしまいます。
そのため、動作をするタイミングで「立ちますね」「ズボンを下ろしますね」といった声掛けは積極的に行いましょう。
また、自分でトイレを知らせるのが恥ずかしい方もいます。
トイレに誘うときは周りに配慮しながら声掛けしましょう。
排泄のタイミングを把握する
排泄のタイミングを把握しておけば、トイレ誘導がしやすくなり、加えて失禁の心配を減らすこともできます。
タイミングは個々によって異なるかもしれませんが、毎日同じタイミングでトイレ誘導すれば、排泄パターンを把握しやすくなります。
できる部分は自分でしてもらう
手順で紹介したように、トイレ介助といってもいくつかのステップに分けられます。
立ち上がりや衣類の上げ下げ、陰部の拭き取りなど、できる部分は自分でしていただくことも大切です。
自分で行ってもらえれば、リハビリにもつながり、運動機能の維持も期待できます。
急かすことは絶対にしない
要介護者の方は、できるだけ自分で排泄したいと思っています。
そのため、急かしてしまうと申し訳ない気持ちになり、排泄介助のお願いができなくなったり、トイレを我慢したりするようになります。
介助者側の発言には十分注意し、急かしたり失敗を責めたりせず、本人のペースに任せるようにしましょう。
寝たきりの方の場合は排泄しやすい方法を模索する
寝たきりの方は、もともとはトイレで排泄していたのが、急にベッド上で排泄するようになります。
突然環境が変わることになりますので、排泄がうまくいかなくなるのは当たり前のことです。
排泄時には、ベッド上での姿勢を工夫するなど、排泄しやすい方法を模索しましょう。
拭き方にも配慮する
拭き取りをする際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 尿道から肛門に向かって拭く
- 粘膜部分は優しく拭く
- ガシガシ拭きすぎない
また、陰部はとてもデリケートな部分となりますので、素早く終わらせることが大切です。
陰部洗浄は1日1回以上行う
陰部はとても蒸れやすく、清潔にしておかないと尿路感染が起こりやすいです。
そのため、陰部洗浄は1日1回以上行うことが大切です。
特に排便時は清潔さを保つためにも、確実にやることをおすすめします。
水分摂取は積極的に
排泄で失敗させたくないために、水分摂取を制限するのは絶対にやめましょう。
高齢者は若い方と比べて脱水症状を起こしやすく、脳梗塞などの病気のリスクが高くなります。
また、便秘にもなりやすくなるので、体にとって負担になる可能性が非常に高いです。
そのため、適切な水分摂取を積極的に行うよう心掛けましょう。
気になることはすぐに相談する
トイレ介助では、排泄物も確認する必要があります。
排泄物は、その方の身体の状態を知る上で非常に大切なものです。
場合によっては薬の服用が必要なケースもありますので、気になったことはすぐに相談し、適切な処置を検討しましょう。
事故の対策を講じる
トイレ介助は、足元が不安定な方の介助となりますので、事故が発生しやすいです。
要介護者の方を傷つけないためにも、事故の対策はしっかり行っておきましょう。
具体的には、室内で倒れても開けられるドアにしたり、段差を解消したりといった環境整備はもちろん、トイレ内の温度調整ができるように整備することも挙げられます。
トイレ介助(排泄介助)のよくある悩みと対応方法
介助する側は要介護者の方が排泄しやすいように、さまざまな工夫をしていますが、それでも上手くいかないことは数多くあります。
ここでは、トイレ介助をする際のよくある悩みと対応方法を紹介していきます。
トイレ時間が長くなる
トイレが長くなる場合の原因と対応方法は以下の通りです。
原因 | 対応方法 |
姿勢 | 猫背の姿勢は排便が出にくくなります。 両肘を太ももの上に置くような前傾姿勢になると排便しやすくなります。 |
環境 | 介助が必要であっても見られすぎていると出にくくなります。 視線や身体の向きを別のところに向けるなど、なるべく1人で排泄できる環境作りが大切です。 |
内服薬の副作用 | 服薬している薬の副作用も排便できない原因です。 ドクターや看護師に相談しながら、必要であれば排便を促してくれる薬を処方してもらいましょう。 |
頻尿や残尿がある
頻尿や残尿が見られる場合、その原因として蓄尿障害や排出障害、加齢による影響が挙げられることが多いです。
これらの症状は、「骨盤底筋群」や「尿道括約筋」、「肛門括約筋」の機能が低下することで引き起こされる場合があります。
対策としては、トレーニングを継続することで、予防や改善が期待できるケースがあります。
トレーニング方法については、後ほど詳しくご紹介しますので、そちらをご参照ください。
失禁してしまう
失禁してしまう場合の原因と対応方法は以下の通りです。
原因 | 対応方法 |
蓄尿障害 | 決まった時間にトイレ誘導しましょう。 また、肛門や膣を5秒強く締めて緩めるトレーニングを1日50〜100回程度行います。 |
加齢 | |
認知機能の低下 | 尿意を感じたらすぐに教えてもらい、上手くできたら褒めたり喜んだりしましょう。 |
トイレ環境が狭い
トイレ環境が狭く、介助しにくい場合は以下の対応方法を試してみましょう。
- 車椅子を使用している場合は、使わないときは折りたたむ
- 介助する際は、前方からは屈んだ姿勢、それ以外は後方もしくは横から介助できるように訓練しておく
上記を試しても介助しにくいときは、トイレのレイアウトや設備そのものを見直すことも検討しましょう。
また、要介護者の方が了承してくれるならポータブルトイレを使用するのも良いでしょう。
まとめ
本記事では、トイレ介助の適切な方法をシーン別に詳しく解説し、配慮ポイントやよくある悩みも紹介しました。
トイレ介助は、身体的負担を軽減するだけでなく、介助を受ける方の快適な生活を支える大切なケアの1つです。
環境整備や適切な声掛けを心掛けることで、介助がスムーズになるだけでなく、心理的な負担の軽減にもつながります。
本記事で紹介した方法やポイントを活用し、安全で快適なトイレ介助を目指してください。