要介護2の状態とは?受けられる介護保険サービスや在宅介護のポイント

「要介護2はどのような状態なのか知りたい」
「どんなサービスを受けられる?」
このように思われていませんか?
要介護2の認定を受け、これからどうなるのか、どのように生活をすればよいのかなど、多くの不安があるでしょう。
そこで今回は、要介護2の状態や利用できる介護保険サービスをご紹介します。
本記事を読むことで、施設やサービス内容、利用対象者、利用できる福祉補助用具や介護リフォームの補助金について知ることができますので、ぜひ参考にしてください。
要介護2の状態とは?ほかの介護度との違い
ここでは、自分や家族が要介護2と認定された方に向けて、状態や認定基準、要介護1や3との違いを解説します。
併せて、疑問に思う方が多い介護保険の支給限度額についても解説していますので参考にしてください。
要介護2|一部の見守りや手助けが必要な状態
要介護2は、日常生活の動作の一部において、見守りや手助けが必要な状態です。
そもそも要支援・要介護度とは、一日の中で介護に必要な時間や量がどのくらいあるのかを表すものです。
要支援のレベルは1~2、要介護度は1~5まであり、数字が小さいほど介護にかける時間や介護の量が少ないと判断できます。
なお、自立した生活を送れる方は「自立」もしくは「非該当」に区分されます。
認定される基準と判断ポイント
要介護認定は、市区町村の調査員による聞き取り調査と、主治医の意見書、専門家で構成される介護認定審査会での審査を経て決定されます。
その際、二次判定で重要な指標となるのが、一次判定で算出される「要介護認定等基準時間」です。
要介護認定等基準時間とは
要介護認定等基準時間とは、介護の手間を「時間」という客観的な指標に置き換えたもので、算出の基準は厚生労働省によって定められています。
これは実際の介護にかかる時間を計測するものではなく、心身の状態から統計データに基づいて「これくらいの介護時間が必要だろう」と推計される値です。
要介護2は、この基準時間が「50分以上70分未満」と推計される場合に認定されます。
この時間には、以下に挙げた5つの行為が含まれます。
- 直接生活介助(入浴、排泄、食事など)
- 間接生活介助(洗濯、掃除など)
- BPSD(認知症の行動・心理症状)関連行為
- 機能訓練関連行為
- 医療関連行為
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
要介護認定等基準時間を算出する仕組み
要介護認定等基準時間を算出する仕組みは、一次判定の流れそのものです。
最初に、市区町村の認定調査員が自宅や施設などを訪問し、心身の状態や日常生活の状況について本人や家族から聞き取り調査を行います。
聞き取り調査の結果と、主治医意見書の情報をコンピューターに入力することで、客観的なデータに基づいた要介護認定等基準時間が、一次判定の結果として算出されます。
区分変更や不服申し立ても可能
認定された要介護度に納得がいかない場合や、認定後に心身の状態が大きく変化した場合には、不服を申し立てたり、区分の変更を申請したりすることが可能です。
- 不服申し立て:認定結果に不服がある場合は、各都道府県に設置されている「介護保険審査会」へ審査請求ができます。
- 区分変更申請:状態が悪化または改善した場合、いつでも市区町村の窓口に要介護度の見直しを申請できます
各都道府県に設置されている介護保険審査会への審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3カ月以内です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「 介護給付等に係る処分に関する都道府県の不服審査について」
要介護1との違い|ほとんど日常生活の動作が自立している状態
要介護度1の方は、要介護度2の方よりも自立している範囲が広い状態です。
ほとんどの日常生活で介助は必要ありませんが、立ち上がる際に介助するなど、軽度な介護を必要とします。
廊下やトイレ、玄関に手すりを付けたりすれば、自分で移動ができます。
外出に関しては、介護タクシーや付き添いがあれば、自分で買い物や行政手続きができる方も多い傾向です。
要介護3との違い|大幅な範囲で手助けが必要な状態
要介護3の方は、要介護2の方よりも自立が難しく、手助けが必要な範囲が広い状態です。
認知症の進行が見られたり、日常生活の動作に全般的に介助が必要であったりするため、一人暮らしは困難と感じる方が多い傾向です。
1カ月あたりの支給限度額
要介護2の方が1カ月あたりに受け取れる介護保険の支給限度額は、197,050円です。
介護保険サービスを利用すれば、自己負担額は所得に応じて1~3割にまで減額されます。
もし、197,050円を超えて介護保険サービスを利用する場合は、超過分を全額自己負担で支払う必要があります。
要介護2の方が利用できる介護サービス
ここでは、要介護2の方が利用できる介護サービスをご紹介します。
どのようなサービスに申し込めるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
訪問サービス
訪問サービスとは、スタッフが利用者の居宅にて介護ケアもしくは医療ケアを提供するサービスです。
受けられるサービスの内容は、事業所の種類によって異なります。
訪問サービスの種類には以下のようなものがあります。
- 訪問介護
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリステーション
- 訪問入浴介護 など
今回は、訪問介護と訪問看護・リハビリのサービスに絞って解説します。
●訪問介護(ホームヘルパー)
訪問介護とは、自宅や老人向け住宅などに暮らしている方の自立した生活を支えるためのサービスです。
身体介護や生活の援助、外出の介助を受けられます。
訪問介護が提供している介護ケアは以下のとおりです。
<身体介護>
- 入浴・清拭介助
- 食事介助
- 歩行介助
- 移乗介助
- 移動介助
- おむつ交換
- トイレの誘導
- 寝返りのサポート
- 着替えの介助
<生活の援助>
- 調理
- 食事の準備
- 洗い物
- 洗濯物
- 洗濯物干し
- 買い物の代行
- 掃除
<外出のサポート>
- 通院の移動サポート
- 選挙会場への移動サポート
- 銀行への移動サポート
- 薬の受け取り
- 衣類の整理
なお、これらの内容をすべて受けるわけではありません。
ケアプランの作成時に必要なサポートをピックアップし、それに沿って指定時間に指定内容のサービスを受けます。
【対象者】
このサービスを受けられるのは、要介護1以上と認められた方です。
また、要介護認定を受けていない同居者に対するサービスは認められていません。
●訪問看護・リハビリ
訪問看護とは、医療スタッフが利用者が暮らす自宅や老人向け住宅に訪問し、医療的なケアを提供するサービスです。
一方の訪問リハビリケアは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が居宅に訪問し、リハビリを行うサービスです。
訪問看護や訪問リハビリステーションでは、以下のようなサービスを受けられます。
<訪問看護のサービス内容>
- バイタルチェック
- 病状の観察
- 服薬管理
- 生活動作のリハビリ
- 歩行・着座・起立などの機能のリハビリ
- 摂食時等嚥下のリハビリ
- 言語回復のリハビリ
- 利用者・家族へのアドバイス
- 寝返りサポート
- 床ずれの処理
- 食事の介助
- 排泄の介助
- 入浴の介助
- 看取りケア
<訪問リハビリテーションのサービス内容>
- 生活動作のリハビリ
- 歩行・着座・起立などの機能のリハビリ
- 摂食時等嚥下のリハビリ
- 言語回復のリハビリ
- 福祉用具のアドバイス・相談
- 介護リフォームのアドバイス・相談
- 麻痺解消のマッサージ
- 床ずれ予防のマッサージ
- 利用者・家族へのアドバイスや指導
これらの内容は、基本的に医師の指示に沿って行われます。
【対象者】
これらのサービスを受けられるのは、要支援、要介護の認定を受けた65歳以上です。
なお、利用にあたって主治医にサービスを許可してもらう必要があります。
年齢が65歳未満であっても、特定の疾患にかかっている方は利用が認められます。
また、医療保険を適用する場合は、医師が利用を認めれば年齢関係なく利用可能です。
通所サービス
通所サービスとは、普段は自宅や老人向け住宅で過ごしながら施設に通っている利用者に、介護ケアを提供するサービスです。
介護度を進行させないためのリハビリ目的としている施設や、専門的なケアを受けられる施設があります。
通所サービスには、以下のようなものがあります。
- デイサービス
- 通所リハビリサービス
- 認知症対応型通所介護
- 療養通所介護
では、一つずつ解説します。
デイサービス
デイサービスは、高齢者が自立した生活を営めるようにリハビリを行う施設です。
入浴介助や食事介助といった介護ケアも受けられます。
楽しみながら訓練を行うことを目指しており、認知機能の訓練や手先を動かす訓練などを、レクリエーションを通して行っています。
一般的に行われているようなクイズレクや塗り絵などの作業系のレクに加えて、生け花や書道、スタッフがオリジナルで考えたレクを実施するところも。
施設によっては、お泊まりが可能です。
ただし、宿泊分の料金は介護保険を適用できないため注意しましょう。
【対象者】
65歳以上の要介護認定を受けた方が利用できます。
特例として、65歳未満であっても、パーキンソン病など特定の疾患がある方であれば利用が許可されます。
通所リハビリサービス
通所リハビリサービスは、普段自宅や老人向け住宅で暮らしている方が、施設に通ってリハビリを受けられる施設です。
施設は、介護老人保健施設、病院、診療所などに併設されています。
なお、基本的に利用できるのは、骨折などの大きなケガを負った際や、脳の疾患により麻痺が生じたケース、筋力の衰えによる日常動作の困難が見られた場合です。
リハビリ内容は医師が決め、リハビリの専門家である理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が指示を受けてリハビリを実施します。
【対象者】
このサービスが利用できるのは、要支援1以上の認定を受けた方です。
認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は、認知症の方が自立した生活を受けられるよう、自宅や老人向け住宅から通って専門的ケアやリハビリを受けられる施設です。
デイサービスとほとんど変わりませんが、認知症の方に限定してサービスを提供している点が大きな違いです。
訓練は基本的にレクリエーションで実施します。
認知機能のレクリエーションのみにとどまらず、身体機能の維持・向上を目的とし、より総体的な健康を目指せる点がメリットです。
また、通常のデイサービス同様、入浴介助や排泄介助、食事介助といった介護ケアを受けることも可能です。
【対象者】
このサービスを受けられるのは、認知症と診断された要介護1以上の方です。
認知症であれば要因は問わず、脳梗塞などの疾患が要因で認知症になった方も利用の対象です。
療養通所介護
療養通所介護は、利用者とその家族の精神的な負担や身体的な負担を軽減するための施設です。
利用者が孤立することによる孤独感やうつ病のリスクを軽減したり、家族の介護ストレスを軽減したりする大切な役割を持っています。
提供しているケアは介護と医療の両方です。
24時間誰かの付き添いがなければならない難病患者や末期がんの患者、寝たきりの高齢者などが施設を利用できます。
送迎は施設側で行ってくれるため、移動の心配はないでしょう。
なお、利用回数や頻度に縛りはなく、不定期な利用もできるため、予定に合わせて利用できるのは大きなメリットです。
【対象者】
難病などの重度要介護者や末期がん患者、疾患による手術などで常に看護師の付き添いが必要な方が対象となります。
ショートステイサービス
ショートステイサービスは、最長30日の宿泊が可能なサービスです。
できるかぎり利用者が自立した生活を自宅や高齢者向け住宅で送れるように、宿泊中に訓練を行うことを目的としています。
加えて、利用者の家族にかかる介護ストレスを軽減する役割も持っています。
介護ケアや訓練が受けられる施設と医療ケアが受けられる施設に種類が分かれている点が大きな特徴です。
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
では、一つずつ解説します。
短期入所生活介護
短期入所生活介護は、要介護度が進行し自立した生活が困難になることを予防するため、短期的に宿泊訓練を行うサービスです。
このサービスは介護に特化したもので、身体機能の維持と向上を目指せます。
例えば、一人で入浴ができるようにする訓練や、誤嚥しないように嚥下力を鍛える訓練などを行います。
宿泊訓練の日数は14日間ほどの方が多いですが、連続で30日までなら宿泊可能です。
宿泊する部屋は以下があります。
- 個室:宿泊部屋は個室で、訓練は共用スペースで実施。
- 相部屋:宿泊部屋は4床以下の相部屋で、訓練は共用スペースで実施。
- ユニット型個室:1ユニット10人程度でサービスを提供。部屋は個室で、訓練は共用スペースで実施。
- ユニット型個室的多床室:基本的な要素はユニット型個室と同じ。部屋の形式のみが異なり、完全個室ではない点が違い。
【対象者】
利用できるのは、要支援1以上の認定を受けている方です。
加えて、利用者の心身状態や病状が悪い、もしくは家族が自宅を離れる・冠婚葬祭があるといった条件も満たす必要があります。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、現在の病状や身体状態が悪化しないように、短期的に宿泊訓練を受けられるサービスです。
普段、介護を行っている家族がしばらくの間自宅を離れたり、心身の休息が必要だったりする場合の負担の軽減も役割の一つです。
サービス内容は、介護ケアに加えて医療ケアやリハビリを受けられます。
看護師や介護士、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が在籍しているため、安心して医療ケアやリハビリを受けられる点がメリットです。
短期入所療養介護も、短期入所生活介護と同様、以下の部屋で宿泊を行います。
- 個室
- 相部屋
- ユニット型個室
- ユニット型個室的多床室
【対象者】
このサービスを利用できるのは、要介護1以上の認定を受けた方が対象です。
加えて、利用者の病状が悪化した、家族が病気や心身のリフレッシュが必要な状態といった条件も満たす必要があります。
複合サービス
複合サービスとは、介護や看護ケアを提供する訪問サービスの機能に加えて、宿泊サービスの機能などが含まれるものです。
要介護2の方は以下の2つを利用できます。
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 小規模多機能型居宅介護
では、一つずつ解説します。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護は、介護と看護のケアを提供するサービスです。
受けられるサービスには「訪問サービス」「短期型宿泊サービス」「通所サービス」があり、これらを組み合わせることも可能です。
<訪問サービス>
看護師をはじめとする医療スタッフや、介護士をはじめとする介護スタッフが居宅へ訪問し、医療・介護の観点から自立生活の支援を行います。
<宿泊サービス・通所サービス>
退院後の自立生活ができるよう移行支援として行っています。
このほか、看取りケアや、家族へのアドバイスや相談対応なども行います。
【対象者】
このサービスを受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 管轄する市区町村に在住している
- 利用する事業所の所在地に住民票がある
- 要介護1以上の認定を受けている
- 自宅療養が可能な状態である
上記一つでも満たさない項目があれば利用できないため、注意が必要です。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、中等度以上の要介護者が、自宅や高齢者向け住宅で自立した暮らしができるようサポートするサービスです。
デイサービスをメインにショートステイや訪問介護を組み合わせられます。
支援的な介護ケアに加えて機能訓練もでき、身体機能や認知機能の向上や維持を目指せます。
【対象者】
要介護1以上であり、事業所の所在地と同じ市区町村に在住していることが条件となります。
要介護2で介護サービス(自宅)を受けた場合の費用例
在宅で介護サービスを利用した場合、自己負担額はどれくらいになるのでしょうか。
ここでは、自己負担1割の場合の費用例をシミュレーションします。
利用するサービスは以下のとおりです。
- デイサービス(通常規模型・7時間以上8時間未満):週2回(月8回)
- 訪問介護(身体介護30分以上1時間未満):週2回(月8回)
- 福祉用具レンタル(車椅子):月1回
1カ月あたりの費用は以下のとおりです。
- デイサービス:8,370円/回×8回=66,960円
- 訪問介護:3,370円/回×8回=26,960円
- 福祉用具レンタル:13,770円/月
1カ月の介護サービス費用試算額は107,690円で、1割負担だと10,769円が自己負担額の目安となります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護サービス概算料金の試算」
要介護2の方が利用できる入所サービス
ここでは、要介護2の方が利用できる入所サービスをご紹介します。
入所サービスとは?
入所サービスとは、一人暮らしが難しい高齢者が安心して生活できるように整備された施設で暮らせるサービスです。
施設には公的施設と民間施設があり、公的施設では介護保険が適用されます。
要介護2の方が入所できる施設は以下のとおりです。
<公的施設>
- 特別養護老人ホーム
- 老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- グループホーム
<民間施設>
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
では、一つずつ解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、常時介助が必要で自立した生活が困難な高齢者に提供している入居サービスです。
入浴介助、身体介助、生活援助、看取りケアと、幅広いサービスを受けられる点が大きな特徴です。
身体機能や認知機能の維持・向上や、ストレス発散を目的としたレクリエーションにも参加できます。
部屋のタイプは以下があり、施設によって異なります。
- 多床室
- 従来型個室
- ユニット型個室
- ユニット型個室的多床室
【対象者】
原則要介護3以上と決められています。
よって、要介護2の方は以下の要件を満たす必要があります。
- 日常生活で認知症による支障や意思疎通の困難さが頻繁にあり、自宅での生活が難しい状態であること
- 知的障がいや精神障がいなどがあり、行動や意思疎通において頻繁に支障をきたし、自宅での生活が難しい状態であること
- 家族などによる深刻な虐待が疑われ、自宅での生活が難しい状態にあること
- 家族などから支援を受けることが難しく、地域での介護サービスでは不十分で、自宅での生活が難しい状態であること
上記すべてを満たす必要はなく、いずれかに該当すれば入居申請は可能です。
老人保健施設(介護老人保健施設)
老人保健施設(介護老人保健施設)は、病院から退院後に自宅での生活ができるように一時的に入居し、その間にリハビリを受けるサービスです。
身体介護などの日常生活に必要な介助を受けながら、必要に応じたリハビリを受けたり、医師もしくは看護師の医療ケアを受けたりします。
【対象者】
要介護度1以上と認められ、退院直後の在宅生活は難しいと判断された方が利用を許可されます。
ただ、医療費は施設負担なので、高額になる場合は受け入れが難しいケースもあります。
グループホーム
グループホームは、認知症を伴う要介護者が共同生活をする施設にて、介護ケアを受ける施設です。
ただ介護ケアを受けるだけではなく、調理を手伝ったり、洗濯物を畳むのを手伝ったりして機能訓練を行い、自立した生活をサポートしてもらえます。
施設は民家型、アパート型、ミニ施設型などがあり、自宅にいる感覚を大切にしたい方は、民家型やアパート型がおすすめです。
【対象者】
この施設を利用できるのは、認知症がある要介護度1以上の高齢者です。
ただし、自立支援を目指す役割の施設であるため、重度の場合は断られることもあります。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、自立した生活を送りながら、必要な介護サービスを受けられる施設です。
受ける介護サービスや入居にかかる費用はすべて有料ですが、介護サービスについては介護保険の支給を受けられます。
この施設には以下3つのタイプがあります。
- 介護付き有料老人ホーム:ケアプランの内容に応じた介護を受けられる
- 住宅型有料老人ホーム:地域の訪問サービスを利用しながら自立した生活が送れる
- 健康型有料老人ホーム:食事の提供やゴミ出し、買い物などの生活援助を受ける
なお、契約方法にも種類があります。
- 利用権方式:大半の有料老人ホームで採用されており、入居者本人と契約し、死亡により契約が終了する
- 建物賃貸方式:通常の賃貸住宅のように生活費や入居費用を支払う。賃貸料の支払いが続く限りは死亡しても契約終了にならない
- 終身建物賃貸借方式:通常の賃貸住宅のように生活費や入居費用を支払う。死亡により契約が終了する
【対象者】
入居対象者はタイプによって異なります。
- 介護付き有料老人ホーム:高齢者であれば介護を必要としない方も入居可能
- 住宅型有料老人ホーム:60歳以上または65歳以上
- 健康型有料老人ホーム:一般的には60歳以上の健康な高齢者。介護が必要になれば退去
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー設計が特徴の住宅型施設です。
介護・医療と連携したケアを提供している点が大きな特徴です。
日中にスタッフが在籍しており、その間、安否確認や食事の提供、家事の援助などのサービスが受けられます。
身体介護については、提供しているところもあれば、訪問サービスを利用する必要があるところもあり、契約前の確認が必要です。
一般的に賃貸契約となるため、初期費用と月々の家賃が発生します。
【対象者】
入居対象者は、60歳以上もしくは要介護認定を受けた40歳以上の方です。
配偶者や要支援・要介護認定を受けている親族もしくは60歳以上の親族であれば同居できます。
ただし特例として、知事が同居を認めた場合は、その方も同居可能です。
介護医療院
長期的な医療と介護の両方を必要とする高齢者のための施設です。
医療的ケアやリハビリ、看取りまで対応可能な「生活の場」としての機能を持っています。
療養病床の再編に伴い創設され、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは対応が難しい医療ニーズの高い方を受け入れている施設です。
対象は要介護度1以上の方で、要支援の区分に含まれる方は利用できません。
介護医療院は提供する医療のレベルに応じて「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分かれており、重篤な方はⅠ型、比較的状態が安定している方はⅡ型を対象としています。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護医療院とは」
ケアハウス
「軽費老人ホームC型」とも呼ばれ、自立した生活に不安がある60歳以上の方が、比較的低料金で利用できる施設です。
食事の提供や緊急時対応などのサービスがあり、「一般型」と「介護型」の2タイプが存在します。
介護型ケアハウスは、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設で、入所対象者は要介護1以上で65歳以上の方です。
家賃や食費などの生活費に加え、要介護度に応じた定額の介護サービス費を支払う必要があります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「養護⽼⼈ホーム・軽費⽼⼈ホームについて」
要介護2で介護付き有料老人ホームに入所した場合の費用例
施設に入所した場合の費用は、施設の種類やサービスの内容によって大きく異なります。
ここでは、介護付き有料老人ホームの費用例を見てみましょう。
必要な費用の項目は以下のとおりです。
- 入所一時金:家賃の前払い金に相当(施設により異なる)
- 居住費(月額利用料)
- 管理費(月額利用料)
- 食費(月額利用料)
- 上乗せ介護費(月額、人員を手厚く配置している場合など)
- 介護保険サービス自己負担額(要介護2の場合、約19,705円/月 )
- その他(月額、おむつ代、医療費、理美容代など)
上記はあくまで一般的な目安で、立地や施設の設備、サービス内容によって費用は大きく変動します。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説」
要介護2の方がレンタル・購入可能な福祉用具
介護保険を利用してレンタル・購入可能な福祉用具を紹介します。
レンタル可能な福祉用具
貸し出ししている福祉用具には以下のようなものがあり、これらは介護保険の支給により自己負担1~3割で利用可能です。
- 歩行器
- 車椅子
- 車椅子の付属品
- 移動用リフト(つり具なし)
- 自動排泄処理装置
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- スロープ
- 認知症老人徘徊感知機器
なお、スロープや移動用リフトについては工事が不要なタイプを貸し出ししています。
また、自動排泄処理装置は、便は対象外となっており、尿のみ吸引可能です。
購入可能な福祉用具
購入できる福祉用具には以下のようなものがあります。
- 単点杖
- 多点杖
- 歩行器
- 固定用スロープ
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトの吊り具部分
- 腰かけ便座
- ポータブルトイレ
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
上記は介護保険を適用でき、受けている介護サービスとは別に7~9割が支給されます。
ただし、支給上限が年間10万円という決まりはあるため、優先順位を考えて購入するとよいでしょう。
住宅改修費の給付要件
手すりの設置や段差の解消など、自宅の小規模な改修をする際にも介護保険が利用できます。
要介護度に関わらず、居住する住宅に対して20万円を上限に、費用の7~9割が支給される仕組みです。
対象となる工事の例は以下のとおりです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消(敷居の撤去、スロープの設置など)
- 滑りの防止、移動の円滑化等のための床材の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
原則として工事前の事前申請が必要ですので、必ずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してから進めましょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修 厚生労働省」
要介護認定を受けた方の負担軽減制度
介護サービスの利用には費用がかかりますが、利用者の負担を軽減するための公的な制度も複数用意されています。
以下に挙げた制度について理解しておくと、経済的な不安を解消できる可能性も高まるでしょう。
負担限度額認定制度
所得が低い方を対象に、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院など)やショートステイを利用した際の「食費」と「居住費(滞在費)」の負担に上限を設ける制度です。
介護保険サービス費用の自己負担は1~3割ですが、施設利用にかかる食費と居住費は原則として全額自己負担で支払います。
この制度は、それらの費用負担が過度に重くならないように、所得段階に応じた負担の上限額(限度額)を設けるものです。
制度を利用するためには、所得要件と資産要件の両方を満たす必要があります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「令和6年8月1日から変わります」
高額介護サービス費
同じ月に利用した介護サービスの自己負担額(1~3割負担分)の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
高額介護サービス費の制度があることで、介護サービスの利用が過度な負担になることを防ぎます。
要介護2であっても、サービスの利用状況によっては介護サービスの自己負担額が増加することも考えられるので、制度の概要について把握しておくと安心です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
高額療養費制度
医療機関や薬局で支払った医療費の自己負担額が、1カ月の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
直近12カ月間に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担限度額が軽減される措置も用意されています。
介護保険ではなく、医療保険(健康保険や国民健康保険など)の制度です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ」
高額介護合算療養費制度
1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)に支払った「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担額を合算し、年間の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
医療保険と介護保険の両方を利用している世帯の負担を軽減します。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」
家族で行う在宅介護のポイント
在宅で介護をする場合、介護する家族の負担をいかに軽減するかが、介護を長く続けるための近道といえます。
以下の制度を利用することが、家族で行う在宅介護のポイントです。
職場の制度を利用する
仕事と介護を両立するために、国が定めた制度を活用できます。
育児・介護休業法で定められている以下の仕組みです。
介護休業制度
要介護状態の家族を介護するために、仕事を休める制度です。
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割した形でも取得できます。
休業中は賃金の67%を「介護休業給付金」として受け取ることが可能です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
介護休暇制度
通院の付き添いや、介護サービスの手続きなどのために、年次有給休暇とは別に休暇を取得できる制度です。
対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日または時間単位で取得できます。
介護休業と異なり、当日に口頭での申し出も可能です。
休暇中の給料は支払われないのが一般的ですが、企業ごとの規定によっても異なるので、利用する予定がある場合は事前に確認しておきましょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護休暇について|介護休業制度特設サイト」
介護保険外サービスを活用する
介護保険サービスで対応できないこと(本人以外の家事、長時間の見守り、趣味の外出の付き添いなど)は、保険外のサービスを組み合わせることで補うことができます。
事業者ごとにさまざまなサービスが存在するので、自分たちのニーズに合うものを探してみましょう。
市区町村によるサービス
配食サービスや緊急通報システムの設置、おむつの支給など、各市区町村が独自に行っている高齢者支援サービスがあります。
所得制限をはじめとして、いくつかの利用条件が定められている場合もありますが、比較的安価な料金で利用できる点がメリットです。
介護サービス事業者によるサービス
訪問介護事業所などが、介護保険の枠外で家事代行や通院介助などを提供している場合があります。
さまざまな介護保険外サービスを介護サービスと並行して利用できるため、一日を通して支援の充実度を高めることが可能です。
民間企業によるサービス
家事代行、食事宅配、見守りサービス、移動支援サービスなど、民間企業が提供するサービスは多岐にわたります。
費用は全額自己負担ですが、サービスの幅が広く柔軟な対応に期待できる選択肢です。
困ったら訪れたい地域の相談窓口
介護に関する悩みや疑問は、家族だけで抱え込まずに、専門知識を持つ機関に相談することが大切です。
公的な相談窓口は無料で利用できる場合が多く、適切なアドバイスや必要なサービスへの橋渡しをしてくれます。
問題に直面した際は、以下のような相談窓口を訪れてみてください。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域で支えるための総合相談窓口です。
市区町村や委託された社会福祉法人などが運営しており、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職がチームを組んで対応してくれます。
介護保険の申請方法といった具体的な相談はもちろん、漠然とした不安から、権利擁護、虐待防止まで、高齢者に関するあらゆる相談が可能です。
どこに相談すればいいか迷ったときは、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに連絡することをおすすめします。
自治体の介護・福祉担当課
お住まいの市区町村の役所にある「介護保険課」や「高齢福祉課」といった部署は、介護保険制度の運営主体であり、各種手続きを行う公的な窓口です。
要介護認定の新規申請や更新、区分変更の手続き、介護保険被保険者証の交付・再発行なども行います。
自治体で行っている福祉サービスや、公的な制度・手続きに関する疑問がある場合の相談先としておすすめです。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、要介護認定を受けた方が在宅で介護サービスを利用する際の拠点となる場所です。
介護の専門家であるケアマネジャー(介護支援専門員)が在籍しています。
介護に関するあらゆる相談が可能で、在宅での介護が円滑に進むよう総合的にサポートしてくれる存在です。
介護認定が要支援だと、管轄は居宅介護支援事業所ではなく、地域包括支援センターになる点を理解しておきましょう。
医療機関
病気やケガの治療と並行して介護が必要な場合、医療機関も重要な相談先の一つです。
日頃からお世話になっているかかりつけ医は、本人の病状や健康状態をもっともよく理解しており、医学的な観点から介護上の注意点についてアドバイスしてもらえるでしょう。
また、規模の大きな病院には「医療連携室」や「患者相談窓口」といった専門の相談室が設置されており、そこには医療ソーシャルワーカーが在籍しています。
退院後の生活に対する不安、在宅医療や訪問看護の導入、医療費の心配など、医療と介護が複雑に絡み合う問題について相談が可能です。
民生委員
民生委員とは、厚生労働大臣から委託され、地域住民の身近な相談相手として活動しているボランティアです。
担当地域内に住む高齢者や障害のある方、子育て世帯などからの相談に応じ、必要な支援が受けられるよう行政や専門機関へつなぐ「橋渡し役」を担っています。
専門機関に直接連絡するのは抵抗があると感じる場合に、まず気軽に相談できる、もっとも身近な相談窓口といえるでしょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「民生委員・児童委員について」
在宅介護の負担を軽減する方法
在宅介護は、終わりが見えないことへの不安や、24時間体制での対応による心身の疲労、介護離職による経済的な問題など、介護者や家族に多大な負担がかかります。
介護者自身の心と体の健康を守るためにも、以下に挙げた負担軽減の方法を理解しておきましょう。
ケアマネジャーへの相談
ケアマネジャーは、介護を行う家族の味方であり、専門的な視点から負担軽減につながる具体的な方法を一緒に考えてくれるパートナーです。
身体的な悩みや精神的なつらさも、遠慮なく率直に話してみましょう。
些細なことでも相談すれば、現状に即したケアプランの見直しを提案してくれます。
レスパイトケアの実施
レスパイトとは「一時的中断、休息」を意味します。
レスパイトケアとは、ショートステイやデイサービスなどを計画的に利用し、介護者が一時的に介護の役割から解放され、心身をリフレッシュするための時間をつくることです。
「介護を休むことに罪悪感を覚える」と感じる方も少なくありませんが、介護者が休息を取らずに疲弊してしまうと、かえって関係性を悪化させることになりかねません。
自分の趣味の時間を持つ、友人と会う、あるいはただゆっくり眠るなど、意識的に介護から離れる時間をつくることが、在宅介護を長く続けるための重要な要素です。
施設への入所
在宅介護が困難になった場合や、介護者の負担が限界に達した場合は、施設への入所を検討してみましょう。
「最期まで家で」という思いに固執するあまり、介護者が心身を壊してしまってはマイナスにしかなりません。
いざというときに慌てないためにも、早めに情報収集や施設見学を始めておくことをおすすめします。
まとめ
要介護2の方は、介助を受けながらであれば自宅で生活することは可能です。
もし、一人暮らしをしなければならない際は、訪問サービスや通所サービスなどをうまく活用していきましょう。
介護サービスであれば、利用料は介護保険から支給されます。
基本的に1割負担で利用可能なため、検討してみてはいかがでしょうか。






