要介護4とは?利用できるサービスや介護施設、事業所の選び方を解説

「要介護4はどのような状態なのか知りたい」「どんなサービスを受けられる?」このように悩まれていませんか?
要介護4の認定を受け、自分自身もしくは家族がこれからどうなるのか、どのように生活を送るべきか、多くの不安や悩みを抱えていることでしょう。
そこで今回は、要介護4の状態や利用できる介護保険サービスをご紹介します。
本記事を読むことで、利用できる保険サービスの内容や利用対象者、福祉補助用具や介護リフォームの補助金、介護施設・サービスの選び方について知ることができますので、ぜひ参考にしてください。
要介護4はどんな状態?
ここでは、要介護度4がどのような状態でどのような介助が必要となるのか、認定される基準、要介護3や5との違い、在宅介護や一人暮らしの可能性について解説します。
要介護4|ほとんどの日常動作で手助けが必要な状態
要介護4とは、ほとんどの日常動作で手助けを要する状態です。
具体的には、一人で立ち上がったり歩いたりすることができず、寝たきりに近い状態がこのレベルに含まれます。
認知症の症状が重度に進行しているケースも多く、徘徊や不潔行為などが見受けられるようになります。
常に何かしらの動作に対するサポートが必要です。
4のレベルまで上がる原因には、認知症に加えてパーキンソン病や糖尿病の合併症の発症などがあります。
これらは、手足の機能や目の機能などを著しく低下させる原因です。
よって、全面的なサポートが必要となり、要介護4と認定されやすい傾向があります。
【認定される基準】
要介護度は、介護にかかる時間と介護の量で決まります。
なお、要介護4は「90分以上110分未満」です。
要介護度は、一次判定と二次判定の2段階で慎重に決定されます。
一次判定では、AIが「要介護認定等基準時間」を算出します。
これは、一日に必要な介護時間のことです。
AIに、介護認定調査の結果と主治医の意見書の情報を提供し、計算してもらいます。
二次判定では、コンピューターの判断が適切であるかを、保健・医療・福祉の専門家で話し合い、要介護度を決定します。
要介護3との違い|全面的な介助は必要ではあるが立つ・座るの動作が可能
要介護3は、4とは異なり寝たきりに近い状態ではありません。
ただし、日常動作では全面的な介助を要します。
具体的には、食事を口元に運ぶことが難しかったり、お風呂に一人で入ることが難しかったりする状態です。
要介護5との違い|寝たきり・意思疎通が困難な状態
要介護5は、4のレベルとは異なり、多くが寝たきり状態に加えて意思疎通が困難な状態です。
例えば、重度の認知症により、話しかけても無反応な状態・昏睡状態のように眠っている状態が増えている・失語を発症しているなどの場合、要介護5に認定されます。
在宅介護は困難?
要介護4レベルでの在宅介護の難易度は高いといえます。
介護に関する専門的な知識があったり、体力に自信があったりする方でなければ難しい状態です。
認知症であれば、深夜や早朝に徘徊して外に出てしまうなどの問題行動も見られ、介護者の心身の負担が非常に大きくなるでしょう。
このような状態から、仕事を長期的に休んだり辞めたりする方も多くいます。
可能なら、在宅ワークに切り替えさせてもらうことも検討する必要があるでしょう。
もし在宅介護を選択するのであれば、訪問サービスや通所サービスをうまく活用する必要があります。
心身が疲れ果てて、自分の心や体を壊してしまうおそれがあるためです。
息抜きする時間をつくりながら、介護しましょう。
一人暮らしはできる?
支援なしの一人暮らしは不可能でしょう。
もし、介護士や家族のサポートなく暮らそうとすれば、徘徊による外出で行方が分からなくなったり、日常動作がうまくできずケガをしたりするおそれがあります。
自宅での生活を要介護者本人が希望しているものの、家族が遠方であったり、いなかったりする方は、訪問サービスを利用しましょう。
もし自宅でなくてもよいのであれば、高齢者向けの有料住宅や施設への入所を検討することをおすすめします。
要介護4の方が利用できる在宅・訪問サービス
ここでは、要介護4の方が利用できる在宅・訪問サービスを2つご紹介します。
- 訪問介護(ホームヘルパー)
- 訪問看護・リハビリ
在宅・訪問サービスの特徴や、施設ごとのサービス内容、利用条件も解説しているので、参考にしてください。
在宅・訪問サービスとは?
在宅・訪問サービスとは、介護スタッフもしくは医療関係のスタッフが要介護者の居宅へ訪問し、必要なサポートやケアを行うものです。
慣れ親しんだ場所から離れることは、大きなストレスがかかるものです。
思い出が詰まった自宅であれば、よりその傾向が強いです。
そのような方が、安心して暮らせるところで生涯を過ごせるようにと創設されました。
なお、訪問介護・看護は、一日に複数のサービスを受ける場合「2時間ルール」が適用されます。
サービス内容を明確にし、不正に介護保険サービスを受けないよう、次に受けるサービスとの間に2時間の空白を設けるルールです。
訪問介護(ホームヘルパー)
訪問介護では、介護士やホームヘルパーと呼ばれる訪問介護員による介護を受けられます。
身体介護はもちろん、食事や洗濯などといった生活援助、外出のサポートも可能です。
なお、サービス内容と利用時間はケアプランにて決められますが、必要に応じてプラン変更を申し出ることも可能です。
【利用条件】
利用できるのは、要介護認定を受けた本人のみです。
健常者の同居家族は対象外となるため注意しましょう。
訪問看護・リハビリ
訪問看護は、医療措置や治療を自宅で受け続けられるサービスです。
担当するのは看護師であり、服薬管理や医療ケア、急変時の対応、食事介助や身体介護といった一部の介助を受けられます。
治療内容は医師が決め、訪問看護師に伝えます。
訪問リハビリは、リハビリを自宅で受けられるサービスです。
施設に通うことが難しい方が自宅でもリハビリを受けられるようにと創設されました。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がサービス内容に応じて訪問します。
【利用条件】
訪問看護や訪問リハビリは、医師が利用を認めれば医療保険の適用で全年齢が対象となります。
介護保険を適用する場合は、65歳以上の要支援1以上が対象です。
ただし、40~64歳の方であっても、パーキンソン病などの特定疾病により介護認定を受けた場合は介護保険で利用可能です。
訪問入浴
訪問入浴は、自宅の浴槽での入浴が困難な方のために、専門のスタッフが専用の浴槽を自宅に持ち込んで入浴介助を行うサービスです。
通常、看護師1名と介護職員2名の計3名で訪問し、入浴前後のバイタルチェック(健康確認)から、洗髪、洗体、着替えまでをすべて行います。
対象者は要介護1以上の方で、寝たきりの状態でも、分割式の浴槽を使用することで安全かつ快適に入浴することが可能です。
利用者の状態に応じて、部分浴や清拭に切り替えて対応することもあります。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションとは、以下のようなリハビリの専門家が自宅を訪れ、心身機能の維持・回復を目的とした訓練を行うサービスです。
- 理学療法士:寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行などの基本的な動作能力の訓練
- 作業療法士:食事、着替え、トイレなど、日常生活の応用的な動作の訓練
- 言語聴覚士:言葉によるコミュニケーションや、音声障害、聴覚障害、食べ物の飲み込み(嚥下)に関する訓練
対象者は要介護1以上の方で、医師がリハビリテーションの必要性を認めた場合に限ります。
通院が難しい要介護4の方でも、実際の生活環境に即したリハビリを受けられるのが訪問リハビリテーションのメリットです。
居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士などの専門家が自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行う医療系サービスです。
対象者は要介護1以上の方で、通院が困難な利用者の健康管理を目的としています。
利用者は自宅にいながらにして、病状や身体状況に合わせた専門的な管理指導を受けることが可能です。
医師は定期的な診察や健康相談、薬剤師は薬の飲み方や副作用の説明、管理栄養士は食事形態や栄養バランスに関する指導を行います。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護は、22時から6時までを含む、夜間の時間帯に特化した訪問介護サービスです。
対象者は要介護1以上の方で、サービス内容は「定期巡回」と「随時対応」の2種類があります。
「定期巡回」は、ケアプランに基づき夜間に訪問し、安否確認やおむつ交換、体位変換などを行います。
「随時対応」では、利用者宅に設置されたケアコール端末を通じて通報があった際に、オペレーターが対応し、必要に応じてヘルパーが駆けつけます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「夜間対応型訪問介護」
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中・夜間を問わず24時間体制で、「定期巡回」による訪問介護・看護と、「随時対応」による通報対応を一体的に提供するものです。
介護職員による定期的な訪問に加え、看護師による訪問もケアプランに組み込むことができ、医療ニーズの高い方でも安心して在宅生活を送ることが可能です。
急な体調変化時には、オペレーターを通じて看護師に相談したり、緊急訪問を依頼したりできます。
対象者は要介護1以上の方で、要支援の区分だとサービスを受けられません。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「夜間対応型訪問介護」
要介護4の方が利用できる通所サービス
ここでは、要介護4の方が利用できる通所サービスを5つご紹介します。
- デイサービス
- 通所リハビリサービス
- 認知症対応型通所介護
- 療養通所介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
通所サービスの特徴や施設ごとのサービス内容、利用条件も解説しているので、参考にしてください。
通所サービスとは?
通所サービスは、施設に通いながら身体機能や認知機能を維持・向上するための訓練をメインとしています。
施設によっては、介護だけでなく、医療ケアも受けながら自立した生活の復帰を目指せます。
また、要介護者とその家族それぞれの心身のリフレッシュができる点もメリットです。
介護ストレスを軽減しながら、自宅療養や介護をできる環境を整えたい方にも利用が推奨されています。
なお、送迎は基本的に施設側で対応してもらえるため、移動の不安はありません。
デイサービス
デイサービスは、施設に通いながら食事介助や入浴介助、レクリエーションによる機能訓練を受けられます。
朝から夕方までその施設で過ごし、規定の時間になれば再び居宅まで送ってくれます。
食事やおやつは、利用者それぞれの体調や疾患に合わせて提供されます。
施設によっては宿泊可能なところもあります。
【利用条件】
デイサービスは65歳以上で要介護1以上の方を対象に提供されています。
特定疾病がある方であれば、40~64歳の方も利用可能です。
通所リハビリサービス
通所リハビリサービスでは、施設に通ってリハビリを受けられます。
麻痺を予防するためのマッサージや、歩行困難者のリハビリ、手腕を動かすリハビリなどを行い、機能回復を図ります。
利用時間は基本的に6~8時間程度が一般的ですが、1~2時間と短いところもあるため、ご自身に合った利用時間のところを見つけましょう。
また、バリアフリーのためのリフォームも相談に乗ってもらえる点も魅力です。
【利用条件】
65歳以上で要介護認定を受けた方が利用できます。
ただし、特定疾病がある方であれば、40~64歳の方も受け入れています。
認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は、認知症の方に限定したデイサービスです。
サービス内容は基本的には通常のデイサービスと変わりません。
違う点は、スタッフ全員が認知症の専門知識を身に付けている点です。
【利用条件】
認知症対応型通所介護の対象は、要介護認定を受けた認知症の方です。
認知症であっても要支援の認定を受けた方は「介護予防認知症対応型通所介護サービス」を利用します。
療養通所介護
療養通所介護は、医療をメインに介護を行うサービスです。
難病や末期がんなどで、常に介護や医療ケアが必要な方のサポートを行いつつ、その家族にリフレッシュの機会を設ける役割があります。
【利用条件】
療養通所介護は、看護ケアを必要とする重度の要介護者が利用できます。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護は、病気で入院し退院した後も自宅で暮らしたい方の自立をサポートするサービスです。
医療と介護の両方のケアを受けられます。
利用できるサービスを複合化(デイサービス・訪問介護・訪問看護・ショートステイ)させられる点がメリットです。
【利用条件】
看護小規模多機能型居宅介護は、要介護認定を受け、利用先の事業所と同じ市区町村に住んでいる方に提供されます。
要介護4の方が利用できる入所サービス
ここでは、要介護4の方が利用できる入所サービスを4つご紹介します。
- 特別養護老人ホーム
- 老人保健施設(介護老人保健施設)
- グループホーム
- 介護医療院
入所サービスの特徴や、施設ごとのサービス内容、利用条件も解説しているので、参考にしてください。
入所サービスとは?
このサービスは、施設で必要なケアを受けながら暮らせる点が大きな特徴です。
施設によって受けられるサービスが異なり、介護のみ、介護・医療の両方を受けられるところがあります。
よって、どのようなサービスが要介護者に必要なのかをピックアップし、それに合致する施設を選ばなくてはなりません。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、一人暮らしが難しい高齢者や自立した生活が難しい高齢者が入所できる施設です。
身体介護を受けられるほか、施設によっては看取りにも対応しており、生涯にわたって暮らせるところもあります。
基本的に介護度が高い方が利用しており、障がいのある方から認知症の方まで幅広い方が入所しています。
【利用条件】
利用できるのは、要介護3以上と認定された65歳以上の高齢者です。
なお、特定疾病を患っている場合は、40~64歳の方も受け入れています。
老人保健施設(介護老人保健施設)
老人保健施設は、退院後すぐに自立した生活を送ることが難しい方を対象に、在宅での暮らしに復帰できるようにサポートする施設です。
短期的に入所し、リハビリや介護、医療ケアを受けます。
なお、入所可能期間は原則3~6カ月と決まっています。
【利用条件】
この施設に入所できる方は、65歳以上で要介護1以上の認定を受けた方です。
ただし特例として、40歳~64歳の方でも、特定疾病により要介護1以上の認定を受けている方は受け入れています。
グループホーム
グループホームは、認知症の方が複数人で一緒に生活を送りながら介護を受けられる、少人数制の施設です。
機能訓練も兼ねて、任せられる家事はスタッフと一緒に行います。
施設のタイプにはミニ施設型、民家型、アパート型などがあり、自宅に近いところがよければアパート型がおすすめです。
【利用条件】
入所条件は、認知症を持った65歳以上の方で、なおかつ要介護1以上の認定を受けていることです。
ただし、自立支援を目的とした施設であるため、寝たきりの方や認知症が重度まで進行している方は対象外となる傾向があります。
介護医療院
介護医療院は、「長期的な医療」と「日常的な介護」の両方を一体的に提供する、比較的新しいタイプの施設です。
医療施設と介護施設の両方の機能を兼ね備えており、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な方や、看取り期にある方などを受け入れています。
要介護1以上の方が利用できる施設で、医師や看護師が常駐し、手厚い医療体制が整っているのが最大の特徴です。
「住まい」としての機能も重視されており、プライバシーに配慮した療養環境が提供されます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護医療院とは」
有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
有料老人ホームは、民間企業が運営する高齢者向けの居住施設で、介護に適したタイプであれば「介護付き」と「住宅型」があります。
| 介護付き有料老人ホーム | ・24時間介護スタッフが常駐し、食事、入浴、排泄介助など包括的なケアを受けられます。 ・「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、介護サービス費は要介護度に応じた定額制です。 |
| 住宅型有料老人ホーム | ・主に見守りや生活相談サービスを提供します。 ・介護が必要になった場合は、外部の訪問介護やデイサービスといった事業者と個別に契約して利用します。 |
| 健康型 | ・自立した健康な高齢者向けの住まいです。 |
要介護4の方であれば、24時間体制で手厚いケアを受けられる「介護付き」が適している場合が多いでしょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「有料老人ホームの類型」
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、主に自立~軽度の要介護状態の高齢者を対象とした賃貸住宅を指します。
安否確認と生活相談サービスが義務付けられており、バリアフリー構造になっているのが特徴です。
基本的な位置づけは「住宅」であるため、介護が必要な場合は、住宅型有料老人ホームと同様に、外部の介護サービス事業者と別途契約する必要があります。
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている介護型のサ高住であれば、施設のスタッフによる24時間体制の介護サービスを受けることが可能です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅の概要」
要介護4の方が利用できる短期入所型サービス
ここでは、要介護4の方が利用できる短期入所型サービスを2つご紹介します。
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
ショートステイサービスの特徴やサービス内容や利用条件を解説しているので、参考にしてください。
ショートステイサービスとは?
このサービスは、短期間だけ入所し、リハビリを受けたり生活に必要な介護を受けたりして、自立をサポートすることを目的としています。
もう一つ重要な役割として、一人暮らしをしている方の心身の孤独感を軽減したり、同居する家族の介護負担を軽減したりすることも含まれています。
短期入所生活介護
短期入所生活介護は、連続で30日まで宿泊訓練に参加できるサービスです。
その期間中は、食事や入浴といった身体介護、レクリエーションによる機能訓練を受けられます。
このサービスを提供している施設は、ショートステイ専門施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームです。
【利用条件】
対象者は、65歳以上で要支援1以上の方です。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、短期入所生活介護と同様に連続で30日まで宿泊訓練に参加できるサービスです。
食事、入浴といった生活援助に加えて、投薬や喀痰吸引といった医療ケアや機能訓練を受けられます。
このサービスを提供している施設は、介護老人保健施設と介護療養型医療施設です。
【利用条件】
対象者は、65歳以上で要支援1以上の方、なおかつ医療ケアを必要とする方です。
要介護4と認定されたらできること
もし、自分や家族が要介護4と認定されれば、以下のことができます。
- 福祉用具をレンタル・購入できる
- 補助金を利用して介護リフォームを受けられる
- 補助金・助成制度を利用して介護・医療ケアを受けられる
では、一つずつ解説します。
福祉用具のレンタル・購入
ここでは、介護保険を使用してレンタルや購入ができる福祉用具を紹介します。
福祉用具は、所得に応じて自己負担1~3割でレンタル・購入が可能です。
なお、レンタルできるものと購入できるものは、それぞれ以下のとおりです。
| 介護保険でレンタル可能な福祉用具 | 介護保険適用の料金で購入できる福祉用具 |
| 歩行器 車椅子 車椅子の付属品 移動用リフト(つり具なし) 自動排泄処理装置 特殊寝台付属品 床ずれ防止用具 体位変換器 スロープ 認知症老人徘徊感知機器 | 単点杖 多点杖 歩行器 固定用スロープ 入浴補助用具 簡易浴槽 移動用リフトのつり具部分 腰掛け便座 ポータブルトイレ 自動排泄処理装置の交換可能部品 |
補助金を利用した介護リフォーム
補助金を利用すれば、リフォーム費用の最大9割を負担してもらえます。
ただし、対象となるリフォームはバリアフリーにつながるものや介護につながるものです。
耐震工事や外壁塗装などは対象になりません。
<介護リフォームに該当する内容>
- 玄関にスロープを造る
- 手すりを廊下・玄関・トイレ・階段・お風呂場に付ける
- 滑りにくい床材に変更する
- 扉を引き戸に変更する
- 和式トイレを洋式トイレに変更する
- 断熱性のある浴室に変更する
- 浴室にバスリフトを設置する など
補助金を受け取るためには、上記のような内容に該当することに加えて、介護保険と自治体の制度どちらを利用するか検討する必要があります。
なぜなら、申請方法が異なるためです。
<介護保険を利用する場合の申請方法>
介護保険を利用する場合は、要介護認定をもらった後にケアマネジャーに相談してください。
次に、施工会社を見つけ、ケアマネジャーを交えてリフォーム内容を相談します。
リフォーム内容が固まれば、契約書を交わし申請書を提出します。
工事が完了したら再び申請を出し、補助金を受け取るという流れです。
なお、介護保険での補助金の上限は自己負担額を含め20万円で、それ以上の部分については自己負担となります。
<自治体の助成制度を利用する場合の申請方法>
自治体の助成制度は、各自治体によって細かな要件が設定されているため、公式ホームページで確認する必要があります。
また、申請期限も設けられているため、利用できるかのチェックもしておかなくてはなりません。
要件を満たす場合は、事前申請を行い、許可をもらった後に工事をスタートできます。
支払い完了後は必ず領収書をもらいましょう。
領収書を提出し、金額のチェックで問題がなければ補助金を受け取れます。
利用可能な補助金・助成制度
ここからは、利用できる補助金と助成制度をご紹介します。
- 特定入所者介護サービス費
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 医療費控除
- おむつ代助成制度
では、一つずつ解説します。
【特定入所者介護サービス費】
この制度は、施設の入所で必要な費用の一部を介護保険で賄えるといったものです。
支給限度額は所得によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、この制度を利用したい場合は市区町村による「負担限度額認定」を受ける必要があります。
介護保険負担限度額認定証をもらった後に、施設に提示すると適用されます。
【高額介護サービス費】
この制度を利用すれば、介護保険を利用してサービスを利用し、上限を超えた場合に超過分を払い戻されます。
対象となるのは1カ月ごとの合計自己負担額であり、各市区町村に申請すれば利用できます。
なお、老人ホームや高齢者向け住宅などの居住費や食費、生活費、ベッド代などは対象外となるため注意しましょう。
加えて、福祉用具の購入費やリフォーム費用も支給対象外です。
【高額医療・高額介護合算療養費制度】
この制度を利用できれば、医療保険と介護保険の自己負担額が上限を超えた場合、超過分の払い戻しを受けられます。
なお、対象となるのは、1年間の合計負担額です。
上限額は所得区分ごとで異なるため、確認しましょう。
なお、70歳以上の世帯は限度額が低く設定されています。
この制度を利用するには、医療保険者と介護保険者への申請、自己負担額証明書の提出が条件となります。
【医療費控除】
医療費控除は、確定申告を行うと医療費や介護保険サービスの自己負担額分が所得から控除される制度です。
医療費控除の対象となるのは、介護医療院や介護療養型医療施設、介護老人保健施設の介護費や居住費です。
領収書を発行してもらって保管しておき、確定申告時に医療控除の項目で支払った金額を記入すると、所得税の控除を受けられます。
【おむつ代助成制度】
おむつ代の助成制度は自治体が実施しています。
初めて控除を受ける方は、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。
要件を満たせば、自治体が交付する「おむつ代の医療費控除に係る主治医意見書内容確認書」で代用することも可能です。
おむつ代の領収書は、5年間保管してください。
なお、自治体によってはほかの要件を設けている場合もあるため、各自治体サイトを確認しましょう。
要介護4の方が受け取れる支給限度額とケアプランの例
ここでは、要介護4の方が受け取れる1カ月あたりの支給限度額、ケアプランの例をお伝えします。
1カ月あたりの支給限度額
要介護4に認定された場合、介護保険の1カ月あたり309,380円を上限として受け取れます。
なお、自己負担額は原則1割ですが、一定以上の所得があれば2~3割になります。
もし、一月の合計利用額がこの上限を超えた場合、超過分は自己負担となります。
訪問サービスのケアプラン例
今回は、一人暮らしで介護保険に基づく訪問サービスを受ける場合のケアプランの例をご紹介します。
なお、自己負担額が1割である場合、309,380円までに納められるプラン内容は例えば以下のとおりです。
- ショートステイ×月10回=10,270円
- 訪問介護×月30回=9,510円
- デイサービス×月10回=15,600円
合計30,340円
上記のように、全面的にサポートが必要であるため、1カ月の半分以上サービスを利用する必要があります。
とはいえ、1カ月で上記のような金額で利用できるため、309,380円以下で十分に収められます。
施設・入所系の費用内訳
介護施設に入所する場合の月額費用は、以下のようなさまざまな費目で構成されます。
何にいくらかかっているのかを理解することが重要です。
施設介護サービス費用
施設介護サービス費用は、施設で提供される食事や入浴の介助、機能訓練といった介護サービスに対して支払う費用です。
これは介護保険が適用されるため、利用者は所得に応じて費用の1割から3割を自己負担します。
費用は国が定めた単位に基づいており、要介護度が高いほど、また施設の体制が手厚いほど高くなる仕組みです。
居住費
居住費は、施設内の居室を利用するための費用で、いわば家賃に相当するものです。
介護保険の適用外であり、原則として全額自己負担で支払います。
費用は、施設の立地(都心部か郊外か)や、居室のタイプ(個室、多床室、相部屋など)、広さ、設備の充実度によって変動するのが一般的です。
プライバシーが確保される個室は、相部屋や多床室に比べて高額な傾向があります。
食費
食費は、施設で提供される1日3食の食事にかかる費用です。
居住費と同様に介護保険の適用外で、原則として全額を自己負担で支払います。
糖尿病食や減塩食といった療養食、あるいは嚥下状態に合わせた刻み食やミキサー食など、個別の対応には追加料金がかかる場合もあるので、事前の確認が必要です。
居住費と合わせて、所得の低い方は「負担限度額認定制度」による負担軽減が受けられます。
管理費
管理費は、主に有料老人ホームなどの民間施設で必要となる費用で、施設の共用部分を維持・管理するために使われます。
リビングや食堂、浴室といった共用スペースの光熱水費や清掃費、設備のメンテナンス費用、事務や管理部門スタッフの人件費などが含まれます。
具体的にどの項目が管理費に含まれるのかは、施設によっても異なるので、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。
サービス加算
サービス加算は、国が定める基準以上の手厚い人員配置や、専門的なケアを提供している施設が、基本的な報酬に追加して請求できる費用です。
事業所の運営体制やサービスの質向上を目的として設けられており、現在数十種類の加算が存在します。
主要な加算の種類としては、以下のようなものが挙げられます。
- 特定事業所加算(常勤ヘルパーの配置割合や24時間対応体制の確保など)
- サービス提供体制強化加算(介護職員の勤続年数や資格保有状況など)
- 個別機能訓練加算(身体機能維持のために機能訓練を実施)など
上乗せ介護費
上乗せ介護費は、一部の介護付き有料老人ホームで、法律で定められた人員配置基準(要介護者3名に対し介護・看護職員1名以上)を上回る手厚い体制に対して発生する費用です。
介護施設の資料では、要介護者3名に対し介護・看護職員1名以上を「3:1」と表記します。
「2.5:1」「2:1」「1.5:1」などと表記されている場合、基準の3:1より手厚い体制を示しており、上乗せ介護費が発生する可能性があります。
サービス加算とは異なり、施設が独自に設定するもので、より質の高いサービスを求める場合に見ておきたいポイントといえるでしょう。
医療費
医療費は、施設の月額利用料とは別に、個人で負担する必要がある費用です。
施設に常駐または提携している医師による往診や健康診断、あるいは外部の病院へ通院した際の診察費や治療費、入院費などがこれに当たります。
また、持病などで日常的に服用している薬の代金も自己負担です。
付き添いや送迎によって医療費が増減する場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
日常生活費
日常生活費は、月額の基本料金には含まれない、個人の生活スタイルや希望に応じて発生する費用です。
施設が企画する特別なレクリエーションやイベントの費用もここに含まれることがあり、すべて実費で自己負担する必要があります。
介護施設・サービスの探し方・選び方
ここでは、失敗しないための介護施設・サービスの探し方・選び方をお伝えします。
介護施設の探し方
介護施設を探す際は、専門家や公的な情報を活用することで、効率的に適切な施設を見つけることができます。
手がかりがまったくないという方は、以下の方法を実践してみましょう。
ケアマネジャーに相談する
すでに介護サービスを利用している場合、担当のケアマネジャーに相談する方法がおすすめです。
担当のケアマネジャーは、利用者の心身の状態や性格、経済状況を深く理解しています。
そういった情報を加味した上で、地域にある施設の空き状況や評判など、具体的な情報を提供してくれるでしょう。
地域包括支援センターを利用する
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを総合的に支えるための公的な相談窓口です。
市区町村ごとに設置されており、介護に関するあらゆる相談に対応してくれます。
地域の介護施設やサービスに関する情報提供はもちろん、介護保険制度そのものについての説明も受けられます。
介護が始まる初期段階や、ケアマネジャーが決まっていない場合におすすめです。
老人ホーム紹介センターを利用する
老人ホーム紹介センターは、公的機関や民間企業が運営するサービスで、無料で希望に合った老人ホームを探して紹介してくれます。
全国の幅広い施設情報を持っており、公的機関では検索できない情報や、すぐに入所できる施設の情報を得られるのが強みです。
介護サービス情報公表システムを利用する
厚生労働省が運営するサイトで、全国の介護サービス事業所の情報を検索・比較できます。
事業所ごとの基本情報、職員体制、サービス内容、利用料金などが詳細に記載されており、客観的な情報に基づいて比較・検討する際に便利です。
見学したい施設が見つかったら、このシステムで事前に詳細情報を確認しておくとよいでしょう。
老人ホーム検索サイトを利用する
インターネット上には、さまざまな事業者が運営する老人ホーム検索サイトが多数あります。
エリア、予算、施設の種類、医療体制などの条件で絞り込んで検索でき、手軽に情報を集められるのがメリットです。
各施設の写真やパンフレットも閲覧できるため、施設の雰囲気をつかむのに役立ちます。
介護施設の選び方
介護施設を選ぶ際は、以下のことに着目しましょう。
- 施設のスタッフや利用者が明るい
- 金額の負担が少ない
- カラオケ・温泉など要介護者が好む設備があるか
- 食事を見学時に試食できるか
- 看取りケアが可能か
- 介護と医療ケアを受けられるか
上記の要素は快適かつ安心して施設を利用するために大切なことです。
優先順位を付けながらニーズに合う要素をピックアップし、合致する施設を見つけましょう。
介護サービスの選び方
介護サービスを選ぶ際は、以下のことに着目しましょう。
- 夜間や緊急時の対応が充実している
- 安否確認をしてもらえる
- 看取りケアも対応できる
- 担当スタッフと良好な関係が築ける
- 要介護者にとって必要なケアがそろっている
上記は、サービスを提供している会社のWebサイトで確認するか、ケアマネジャーに相談するのがおすすめです。
要介護者に合うサービスを提案してもらえるでしょう。
在宅介護の負担を軽減する方法
要介護4の方の在宅介護は、家族の負担も大きくなりがちです。
一人で抱え込まず、以下のような利用できる制度・サービスを積極的に活用しましょう。
介護休業を申請する
介護休業は、要介護状態にある家族を介護するために、仕事を長期間休むことができる制度です。
「育児・介護休業法」に基づき、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得できます。
休業中は、雇用保険から「介護休業給付金」(原則として休業開始時賃金の67%)が支給されるため、収入面の不安を軽減しながら介護に専念することが可能です。
介護体制を整える初期段階での利用に有効な制度です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
介護休暇を申請する
介護休暇は、介護休業よりも短い単位で取得できる休暇です。
家族の通院の付き添いや、ケアマネジャーとの面談、役所の手続きなど、突発的な用事のために、1時間単位で休暇を取得できます。
対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日まで取得可能です。
有給か無給かは会社の規定によりますが、仕事と介護の両立につながる重要な制度です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護休暇について|介護休業制度特設サイト」
レスパイトケアを取り入れる
レスパイト(respite)とは、「休息」「息抜き」を意味する言葉です。
レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から解放され、心身をリフレッシュするための支援を指します。
具体的には、ショートステイやデイサービスを利用して、介護者が休息時間を確保することです。
長期的な在宅介護を可能にするために、必要不可欠な考え方だといえます。
施設への入所を検討する
在宅介護が限界に近づいていると感じたら、無理をせずに施設への入所を検討することも必要です。
在宅介護に固執するあまり、介護者が心身を壊してしまい、十分なケアができず利用者の状態が悪化してしまうケースも想定できます。
専門的なケアを受けられる施設で安全に暮らすことが、利用者と家族の双方にとって最善の道となる場合も少なくありません。
介護保険外サービスを活用する
介護保険サービスは、あくまで利用者の自立支援を目的としており、提供できる内容には限りがあります。
介護保険ではカバーできない部分を補うために、民間企業が提供する自費の「介護保険外サービス」を活用する方法も有効です。
家事代行、通院の付き添い、話し相手、見守りサービスなどの多様なサービスがあり、うまく活用できれば生活の質を向上させることにつながります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」
介護の相談ができる窓口
介護に関する悩みや不安は、一人で抱え込まずに専門の窓口に相談することが大切です。
無料で相談できる公的な窓口を、以下で紹介します。
地域包括支援センター
高齢者の保健・医療・福祉に関する総合相談窓口です。
社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、介護保険の申請方法から適切なサービスの紹介まで、高齢者に関するあらゆる相談に応じてくれます。
「どこに相談したらいいか分からない」という場合に、まず訪れたい場所です。
自治体の介護・福祉担当課
お住まいの市区町村の役所にある、介護保険や高齢者福祉を担当する課にも相談が可能です。
介護保険制度全般に関する質問や、要介護認定の申請、各種助成制度の手続きなどを行うことができます。
公的な制度に関する相談に適しています。
居宅介護支援事業所
すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーをはじめとした居宅介護支援事業所がもっとも身近な相談相手です。
ケアプランの作成や見直しはもちろん、日々の介護生活の中で生まれる小さな悩みや愚痴を聞いてもらうだけで、精神的な支えを感じられます。
医療機関
かかりつけの病院やクリニックも重要な相談先です。
病状や医療的ケアに関する相談はもちろんのこと、規模の大きい医療機関には「医療ソーシャルワーカー」を通して、退院後の生活や利用できる社会制度について相談できます。
訪問看護や訪問リハビリの利用には主治医の指示書が必要となるため、その点においても連携は不可欠です。
民生委員
民生委員は、厚生労働大臣から委嘱された民間のボランティアで、地域住民の身近な相談相手としての役割を担っています。
フォーマルな窓口には相談しにくいことでも、親身に話を聞いてくれる存在です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「民生委員・児童委員について」
まとめ
要介護4の方を介護する際は、心身や費用の負担が大きいため周りの方を頼ったり、介護保険サービスを利用したり、制度を利用したりしましょう。
介護する側も介護を必要とする側も安心して過ごすために、これらは大切なことです。
まずはケアマネジャーに相談し、どのようにケアしていくか考えるとよいでしょう。






