要介護度5とは?受けられるサービスや給付金制度などを解説

「要介護5はどのような状態なのか知りたい」
「どんなサービスを受けられる?」
このように思われていませんか?
要介護5は、寝たきり状態や意思疎通が困難な方と認定されていることを示します。
寝たきりや意思疎通困難な方の介護度は大変重く、介護に対して多くの不安やストレスを感じる方もいるようです。
そこで今回は、要介護5の状態や利用できる介護保険サービスをご紹介します。
本記事を読むことで、介護保険サービスとその利用対象者、介護施設・サービスの選び方などについて知ることができますので、ぜひ参考にしてください。
要介護5の状態とは?ほかの介護度との違い
ここでは、要介護5がどのような状態であるのか、またほかの介護度とはどう違うのかなどを詳しく解説します。
要介護5|寝たきり・意思疎通困難な状態
要介護5は、要介護度の中でもっとも重い状態です。
具体的には、立ち上がることや歩行が困難な状態であり、基本的に寝たきりの状態で生活を送る方が多くいます。
また、認知症が重度に進行し、意思疎通が難しいケースも少なくありません。
このような状態のため、食事やトイレ、着替え、寝返りなど、日常生活全般に介助が必要です。
加えて、理解力の低下や問題行動、感情の不安定さが見られることもあり、それらに対するケアも求められます。
5のレベルまで至ると、介護者には身体介護に加えて、認知症ケアや意思疎通困難な状態に対する専門的な知識も必要です。
そのため心身の負担は大きく、自宅での生活を続けるには、介護サービスでプロの力を借りたり、リフォームで自宅環境を整備したりすることが不可欠です。
認定される基準
要介護5の認定は、一次判定と二次判定の2段階で行われます。
一次判定では、認定調査員が行った調査の結果と主治医意見書をもとに、AIが「要介護認定等基準時間」を算出します。
要介護認定等基準時間とは、一日に必要な介護時間の目安のことです。
なお、要介護5は「110分以上またはこれに相当する状態」です。
二次判定では、コンピューターの判断が正しいかどうかを話し合います。
具体的には、保健・医療・福祉の専門家による介護認定審査会が一次判定結果を審査し、必要に応じて介護度の変更を行います。
5のレベルまで上がってしまう原因
要介護度が5まで上がってしまう主な原因は「脳卒中」と「認知症」です。
厚生労働省の調査によると、要介護5になった原因について、脳卒中が26.3%、認知症が23.1%を占めています。
脳卒中を引き起こすと、脳の血流障害によって視覚障害や手足の麻痺を引き起こし、重度の寝たきり状態になることが多い傾向です。
また、認知症の中でもアルツハイマー型は症状が進行しやすく、後期になると認知機能や運動機能、理解力が著しく低下します。
それにより意思疎通が困難になり、要介護5と認定される可能性が高まります。
参考資料:Ⅳ 介護の状況
要介護4との違い|介助次第で一部自分でできるものがある
要介護4と要介護5はどちらも介助量や介助を行う時間が多く、自宅での生活継続が難しい状態です。
大きな違いは、介護の必要度合いにあります。
要介護4は理解力が低下しているものの、介助があれば立ち上がりや歩行といった動作を自力でできる場合があります。
一方の要介護5は、自力でできることはほとんどありません。
意思疎通が困難で体を動かせないため、全般にわたる介助が必要です。
在宅介護は可能?
要介護5の在宅介護は非常に困難なため、おすすめできません。
なぜなら、多くの方が寝たきりで、全般的な日常生活における介助が必要な上に意思疎通の困難があり、さらに経管栄養や酸素療法などの医療ケアを要するケースが多いためです。
このような状態の方を介護するのは容易ではなく、家族の負担が大きいため、介護ストレスにより心身の体調を崩すおそれがあります。
よって、5のレベルまで上がっているのであれば、施設への入所が推奨されます。
もし、自宅での介護を続けるのであれば、ケアマネジャーと相談しながら訪問サービスを活用し、負担を軽減するための対策が必要です。
1カ月あたりの支給限度額
1カ月あたりに支給される介護保険料の限度額は、362,170円です。
もし、この上限以上にサービスを利用する場合は、全額自己負担となります。
要介護5の方が利用できる介護保険サービスの一覧
ここでは、要介護5に認定された方が利用できる介護保険サービスをご紹介します。
サービスの一覧
要介護5の方が利用できる介護サービスの種類を紹介します。
| 訪問サービス | 通所サービス | 短期間の宿泊サービス | 地域密着型のサービス | 福祉用具の購入・レンタル |
| 訪問介護 訪問看護 訪問リハビリテーション 訪問入浴介護
| デイサービス 通所リハビリテーション 療養通所介護 認知症対応型通所介護 | ショートステイ 短期入所療養介護 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 夜間対応型訪問介護 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 グループホーム 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 福祉用具貸与 特定福祉用具販売
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訪問系サービスの特徴
ここでは、要介護5の方が利用できる訪問系サービスの特徴を紹介します。
<訪問介護>
訪問介護とは、自宅などの居宅で過ごしたいと考えている要介護者の手助けを行うサービスです。
住み慣れた場所で暮らしながら介助を受けられるため、安心かつストレスフリーな暮らしを目指せます。
受けられるサービスには、身体介護・生活の援助・外出介助があります。
| 身体介護の内容 | 生活援助の内容 | 外出サポートの内容 |
| ● 入浴・清拭介助 ● 食事介助 ● 排泄介助 ● 着替えの介助 など
| ● 食事の準備・調理・洗い物 ● 買い物 ● 洗濯・洗濯干し・収納 ● 掃除 など | ● 通院 ● 薬の受け取り ● 銀行 など |
<訪問看護>
訪問看護とは、自宅などの居宅で過ごしたい方、入院は必要ないが医療的なケアが必要な方の手助けを行うサービスです。
居宅まで看護師が訪問し、以下のような医療的ケアや措置、日常動作の介助を行います。
- バイタルチェック
- 病状の観察
- 医療措置
- 服薬管理
- リハビリ
- 相談・アドバイス
- 食事・排泄・入浴の介助
- ターミナルケア
<訪問リハビリテーション>
訪問リハビリテーションは、自宅にいながらリハビリを受けられるサービスです。
医師が必要だと判断した内容のリハビリを受けたり、日常動作に関わる相談をしたりすることが可能です。
- 身体機能に関わるリハビリ
- 日常動作に関わるリハビリ
- 言語に関わるリハビリ
- 福祉用具の相談
- 介護リフォームの相談
- 麻痺解消・床ずれ予防のマッサージ
- マッサージ
- 患者さん・家族への指導
<訪問入浴介護>
訪問入浴介護は、入浴介助に特化した訪問サービスです。
家族だけでは入浴介助ができなかったり、一人暮らしで一人での入浴が難しかったりする方をサポートします。
看護師が体調を見ながら介護士と一緒に入浴を手助けしてくれるため、安心して入浴できます。
通所サービスの特徴
ここでは、要介護5の方が利用できる通所サービスの特徴をご紹介します。
<デイサービス>
デイサービスは、要介護度認定された高齢者の自立生活の支援を行う施設です。
訓練は堅苦しい雰囲気ではなく、楽しいレクリエーションを通じて行います。
例えば、塗り絵で手先の訓練をしたり、脳の訓練を行ったり、クイズで想起力を鍛えたり、思考力を鍛えたりします。
また、デイサービスでは、入浴介助や食事介助といった介護ケアを提供している点も大きな特徴です。
そのため、自宅での介護を行っている方の介護の負担も軽減できるメリットも兼ね備えています。
料金は全額自己負担となりますが、施設によっては宿泊できるところもあります。
宿泊中は合宿のように訓練を受けながらお泊まりができたり、介護を受けたりすることが可能です。
<通所リハビリサービス>
通所リハビリサービスは、通いながらリハビリを受けられる施設です。
施設は基本的に病院や診療所、介護老人保健施設などに併設されています。
リハビリは、医師が身体機能に沿って決めた内容を受けます。
例えば、麻痺があればマッサージを受けたり、機能回復のためのリハビリを行ったりするといった感じです。
この施設には、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士が在籍しています。
<療養通所介護>
療養通所介護は、介護と医療の両方のケアを提供している施設です。
要介護者とその家族の心身の負担を軽減したり、孤立による孤独感を軽減したりする役割を持っています。
利用回数や頻度が決められているわけではないため、都合に合わせて不定期に利用することも可能です。
仕事をしながら介護をしている方など、心身に負担がかかりやすい方の強い味方となるでしょう。
なお、送迎は施設にお任せできるため心配はありません。
<認知症対応型通所介護>
認知症対応型通所介護は、認知症の方に特化したデイサービスです。
認知症の進行を遅らせ、できるかぎり自立した生活を継続できるように訓練を行うことを目的としています。
特徴は基本的にデイサービスと変わりません。
レクリエーションで認知機能や身体機能の維持・向上を図ったり、食事介助や入浴介助、排泄介助といった介護ケアを受けたりします。
短期間の宿泊サービスの特徴
ここでは、要介護5の方が利用できる、短期間型の宿泊サービスをご紹介します。
<短期入所生活介護>
ショートステイは、短期的に宿泊訓練を行い、自分である程度生活できる状態をキープすることを目的としたサービスです。
介護に特化した訓練を受けることができ、身体機能の維持や向上を目指します。
なお、連続で30日までなら利用可能です。
<短期入所療養介護>
短期入所療養介護は、短期的に宿泊訓練を受け、現在の病状が進行したり、身体機能が低下したりすることを予防するためのサービスです。
また、介護者である家族が心身をリフレッシュできる期間づくりや、出張などで自宅にいない期間に介護ケアを任せるといった役割も果たしています。
医療スタッフやリハビリスタッフ、介護スタッフが付き添い、必要に応じて医療的ケアも提供するため、安心して宿泊できます。
地域密着型のサービスの特徴
ここでは、要介護5の方が利用できる地域密着型のサービスをご紹介します。
<定期巡回・随時対応型訪問介護看護>
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、大幅な介護を必要としながらも自宅で過ごしたいという方を支援するサービスです。
自分の力で生活できることは見守りつつ、手助けが必要な部分は介助を行い、必要な医療措置があれば行い、安心して自宅で暮らせるようにすることが目的です。
24時間365日、自分にとって必要なときに必要な介助を依頼できます。
<夜間対応型訪問介護>
夜間対応型訪問介護は、通常の訪問介護では難しい夜間や深夜の時間もサービスを受けられる点が特徴です。
寝たきりで定期的に介護が必要な方、急変や緊急時備えておきたいと考える方に寄り添ったサービスを受けられます。
安否確認のために定期巡回もしてもらえるため、安心して過ごせるでしょう。
<小規模多機能型居宅介護>
小規模多機能型居宅介護は、デイサービスをメインにショートステイや訪問介護を並行して利用できる点が特徴です。
要介護度が高くても、暮らし慣れた自宅や高齢者向け住宅に居たいという方を支援することが目的です。
具体的には、介護や機能訓練を提供し、日常動作のサポートや身体・認知機能の維持や向上を目指します。
<看護小規模多機能型居宅介護>
看護小規模多機能型居宅介護は、「訪問サービス」「短期型宿泊サービス」「通所サービス」を並行して受けられる点が特徴です。
日常動作を支える介護と医療的なケア、ターミナルケアを受けたい方に向いています。
<グループホーム>
グループホームは、認知症の方が共同生活を送りながら介護を受ける施設です。
自尊心を保ちながら心身ともに健やかかつ穏やかに過ごすために、任せられる家事はスタッフと一緒に行ったりもします。
施設にはミニ施設型、民家型、アパート型などがあります。
<地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護>
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は、少人数制で入居し、必要な介護を受けながら過ごせる老人ホーム施設です。
一人暮らしによる孤独感や孤独死の不安がなく、同居者と関わりながら自立した生活を目指せる点もメリットです。
<地域密着型特定施設入居者生活介護>
地域密着型特定施設入居者生活介護は、厚生労働省が認めた施設で、自立した生活を目指しながら介護や機能訓練などを受けられるものです。
バイタルチェックで健康管理をしてもらえたり、レクリエーションで楽しみながら機能訓練できたりするため、心身ともに健康に過ごすための生活を目指せる点がメリットです。
福祉用具のレンタル・購入について
ここでは、介護保険を使用してレンタルや購入ができる福祉用具を紹介します。
介護保険を利用したレンタル・購入は、自己負担1~3割で利用可能です。
ただし、購入については、年間10万円までという決まりがあるため、優先順位を考える必要があるでしょう。
| 介護保険でレンタル可能な福祉用具 | 介護保険適用の料金で購入できる福祉用具 |
| ● 歩行器 ● 車椅子 ● 車椅子の付属品 ● 移動用リフト(つり具なし) ● 自動排泄処理装置 ● 特殊寝台付属品 ● 床ずれ防止用具 ● 体位変換器 ● スロープ ● 認知症老人徘徊感知機器 | ● 単点杖 ● 多点杖 ● 歩行器 ● 固定用スロープ ● 入浴補助用具 ● 簡易浴槽 ● 移動用リフトのつり具部分 ● 腰かけ便座 ● ポータブルトイレ ● 自動排泄処理装置の交換可能部品 |
要介護5の方が活用できる給付金・助成制度
ここでは、要介護5と認定された方が活用できる主な給付金や助成制度をまとめてご紹介します。
介護費用の軽減や生活支援に役立つ制度が多く、知っておくことで家計の負担を大きく減らせる可能性があります。
- 特定入所者介護サービス費
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 医療費控除
- 障害者控除
- 福祉用具、住宅改修費用
- 自治体による給付金・助成制度
それぞれの内容や利用条件について、以下で詳しく解説していきます。
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、介護施設に入居する方を対象にした給付制度です。
具体的には、申請すると食費と居住費の一部を介護保険から給付してもらえます。
この制度は、利用者の所得によって3段階に区分され、支給限度額がそれぞれで異なります。
この給付を受けるためには、市区町村で「負担限度額認定」を受けてください。
介護保険負担限度額認定証が交付された後に、利用先の施設に提示すると適用されます。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、介護保険を利用する際に、1カ月に支払った自己負担額の合計が上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
所得に応じた負担上限額は世帯ごとに異なるため、あらかじめ確認しておきまましょう。
なお、この制度の対象には、老人ホームなどの居住費や食費、ベッド代、生活費などは含まれないため注意が必要です。
加えて、在宅介護サービス利用時の福祉用具の購入費や住宅改修費も支給対象外となる点も、念頭に置いておきましょう。
この制度は市区町村が実施しているため、利用する場合は各自治体への申請が必要です。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、1年間の合計が所得区分ごとの上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
医療費と介護費の両方が高額になる世帯の負担を軽減することを目的としています。
なお、70歳以上の世帯は限度額が低く設定されており、少しでも負担が軽減される仕組みになっています。
利用するには、医療保険者と介護保険者への申請に加えて、自己負担額証明書の提出が必要です。
医療費控除
医療費控除は、要介護5の利用者が支払った医療費や介護保険サービスの自己負担額が上限を超える方を対象に、控除を受けられる制度です。
所得控除を受ける際は、確定申告をしなければなりません。
また、医師の証明により6カ月以上寝たきりでおむつが必要と認められる場合、おむつ代も医療費控除の対象となります。
控除を受けるには、医師が記入した「おむつ使用証明書」を提示する必要があります。
一定の要件を満たせば「主治医意見書内容確認書」による代替も可能です。
申請の際におむつ代の領収書は必要ありませんが、領収書は5年間保管する必要があるため紛失しないようにしましょう。
障害者控除
障害者控除は、65歳以上で要介護1~5の認定を受けた方を対象としています。
なお、障害者手帳がなくても申請できます。
確定申告の際に市区町村発行の「障害者控除対象者認定書」を提出すれば、所得税から27万円、重度の場合は40万円の控除を受けられます。
なお、非課税の場合は確定申告は不要です。
福祉用具、住宅改修費用
令和6年4月から一部の福祉用具(固定用スロープ、歩行器、杖など)が、レンタルか購入かを選べるようになりました。
レンタル・購入いずれにしても介護保険の支給を受けられ、所得に応じて1~3割負担まで自己負担額が軽減されます。
住宅改修については、手すりの取り付けや段差解消など、住み慣れた自宅で安全に暮らし続けるための改修が対象です。
これらの費用は、所得に応じて介護保険から7~9割が給付されます。
また、住宅改修は20万円を上限に支給されます。
自治体による給付金・助成制度
お住まいの市区町村が独自に行っている、介護保険外の支援サービスです。
法定サービスだけではカバーしきれないニーズに応えるもので、内容は自治体によって大きく異なります。
利用するには申請が必要なため、まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。
介護手当(家族介護慰労金)
要介護4または5の方を在宅で介護した家族に対して、慰労金(年額10万円前後)を支給する制度です。
支給を受ける条件としては、以下のようなものがあります。
過去1年間、介護保険サービスを利用していない(ショートステイなど一部を除く)
介護者と要介護者が同一世帯で住民税非課税
慰労金の額や詳細な条件は自治体によって異なりますが、上記のような厳しい条件が課される傾向です。
制度名も「介護手当」「在宅介護者福祉手当」「家族介護慰労金」など統一されておらず、制度自体を実施していない自治体もあります。
おむつサービス※詳細は自治体により異なる
在宅で常時おむつを使用している方の経済的負担を軽減するための制度で、現物支給または購入費の助成が受けられます。
例えば福岡市では「おむつサービス」として、介護保険料を納めている人で要介護3~5の方を対象に、月額6,000円を上限としておむつ配送費の一部を助成しています。
おむつサービスの有無、対象者や支給上限額、申請方法は自治体によって異なるため、まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
市区町村の窓口で詳細な情報を確認してみるのもおすすめです。
移送サービス※詳細は自治体により異なる
公共交通機関を利用しての移動が困難な高齢者を対象に、病院への通院や公的機関での手続きなどを支援するサービスです。
リフト付きの福祉車両で送迎を行う形態や、タクシー料金の一部を助成する形態などがあります。
例えば福岡市では「移送タクシー利用券」として、年間4枚のチケットを給付(助成額は所得状況に応じて変動)しています。
対象者の要件(年齢、要介護度、所得など)や利用できる範囲、料金は自治体ごとに定められているので、事前に確認しておきましょう。
配食サービス※詳細は自治体により異なる
自力での調理が困難な一人暮らしの高齢者や、高齢者のみの世帯などを対象に、栄養バランスの取れた食事を定期的に自宅へ届けるサービスです。
単に食事を届けるだけでなく、配達員が手渡しする際に利用者の安否確認を行ってくれるケースもあります。
サービス自体は介護保険の対象に含まれていませんが、自治体からの補助が受けられる事例もあるため、市区町村の高齢者福祉担当窓口やケアマネジャーに確認してみてください。
家族向けの助成制度
要介護状態の家族を介護しながら仕事を続ける方を支援するため、育児・介護休業法には以下のような制度が定められています。
介護休業制度
要介護状態の家族を介護するため、まとまった期間仕事を休むことができる制度です。
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得もできます。
原則として、休業開始の2週間前までに会社への申請が必要です。
休業期間中は一定の要件を満たすことで、休業開始時賃金日額×支給日数の67%が「介護休業給付金」として支給されます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
介護休暇制度
通院の付き添いやケアマネジャーとの面談、役所での手続きなど、突発的・短期的な用事のために、年次有給休暇とは別に休暇を取得できる制度です。
対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで、1日または時間単位で柔軟に取得できます。
介護休業と異なり、当日に口頭での申し出も認められているため、急な用事にも対応しやすいのが特徴です。
給与の有無は会社の規定によりますので、事前に確認しておきましょう。
※2025年9月
出典:厚生労働省「介護休暇について|介護休業制度特設サイト」
介護施設の探し方と選ぶ際のポイント
ここでは、利用者に合った施設を見つけるための具体的な方法と、選ぶ際のポイントについて解説します。
どのように選べばいいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
介護施設を探す5つの方法
介護施設を探す際は、専門家や公的なツールに頼ることで、より効率的に情報を集められます。
どうしたらいいか分からない方は、以下に挙げた5つの方法を実践してみましょう。
ケアマネジャーにアドバイスを求める
最初に挙げるのは、もっとも身近な専門家である担当ケアマネジャーに相談する方法です。
利用者の状態や必要な医療ケア、家族の希望などを熟知しているため、条件に合った施設をいくつか紹介してくれるでしょう。
すでに要介護認定を受けて、介護サービスを受けている方におすすめの方法です。
地域包括支援センターを利用する
高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターでも、施設探しの相談が可能です。
地域の介護施設情報に精通しており、公的な立場でアドバイスをもらえます。
介護サービスを初めて利用する方におすすめの相談先です。
老人ホーム紹介センターを利用する
公的機関や民間の事業者が運営する、老人ホームの紹介窓口です。
基本的に無料で相談でき、豊富な情報の中から希望に合う施設を提案してくれます。
見学の予約代行を行ってくれる施設もあり便利ですが、特定の施設グループと提携している場合もあるため、中立的な視点での情報提供かを見極める能力が必要です。
店舗で面談できる「対面型」と、webサイトより電話相談が可能な「ネット型」の2つが存在します。
介護サービス情報公表システムを利用する
厚生労働省が運営するウェブサイトで、全国の介護サービス事業所の情報を検索・比較できます。
職員体制やサービス内容、料金などが詳細に公表されており、客観的な情報を得るのにも役立つシステムです。
ケアハウスや住宅型有料老人ホームは検索対象に含まれないので、注意しておきましょう。
老人ホーム検索サイトを利用する
インターネット上にはさまざまな事業者が運営する、複数の老人ホーム検索サイトがあります。
エリアや費用、必要な医療ケアなどの条件で絞り込み検索ができ、手軽に多くの施設情報を比較検討できるのがメリットです。
無料の相談サービスを実施しているケースもあり、介護施設を探す方法としても有力な選択肢といえます。
介護施設を選ぶ際のポイント
介護施設を選ぶ際のポイントを解説していきます。
利用者にとって本当によい環境かどうかを多角的に見極めるためにも、以下の内容に注目してみましょう。
介護および医療の体制
要介護5の方の施設選びでもっとも重要なのが、介護および医療の体制です。
特に見ておきたいのが夜間のスタッフ数で、体調が急変したときにも迅速な対応が期待でき、安心感が大きく異なります。
人手不足の影響で、夜間の人員が1名のみというケースも見られるため、手厚いサービスを求めるなら、しっかりと介護および医療の体制を確認しておきましょう。
食事内容
食事は日々の生活における大きな楽しみであり、健康を支える基本です。
利用者のかむ力や飲み込む力(嚥下機能)に合わせて、介護食にきめ細かく対応できるかを確認しましょう。
味付けや温かさへ配慮し、栄養バランスの取れた献立を作成しているかどうかも、ケアの専門性を測る指標です。
また、糖尿病や腎臓病などの持病に対応した治療食の提供が可能かどうかも、施設選びの重要なポイントといえるでしょう。
レクリエーション活動
レクリエーションやイベントは、単なる娯楽ではなく、身体機能の維持、認知機能の活性化、他者との交流を通じたQOL(生活の質)の向上という重要な目的を持っています。
要介護5の方の場合、ベッドサイドでも参加できる音楽鑑賞会や、訪問理美容、季節の飾りつけといった活動があるかを確認しましょう。
活動への参加が任意かどうかも大切なポイントで、本人の意欲やその日の体調に合わせて無理なく参加できる環境が望ましいです。
面会と外泊ルール
家族とのつながりを維持することは、利用者の精神的な安定につながります。
面会時間や曜日の制限、1回で面会できる人数などのルールを、具体的に把握しておきましょう。
感染症対策でルールが変更されることもあるため、最新の状況を問い合わせておくことが重要です。
要介護5での外泊は現実的ではないかもしれませんが、ルールや費用についても確認しておくと安心できるでしょう。
居室のタイプ
居室には、プライバシーを確保しやすい「個室」と、費用を抑えられる「多床室(相部屋)」があります。
個室は家族が気兼ねなく面会でき、利用者のペースで過ごせるメリットがありますが、費用は高くなる傾向です。
一方、多床室はほかの入所者の気配を感じられるため孤独感が和らぐという利点もありますが、プライバシーの確保は難しくなります。
それぞれのメリット・デメリットを考慮しつつ、利用者の性格や予算に合わせて選びましょう。
共用設備
食堂や談話室、機能訓練室といった共有スペースが、清潔で明るく、過ごしやすい空間であるかを確認しましょう。
特に浴室は、一般的な大浴槽や個浴のほかに、車椅子や寝たきりの状態でも安全に入浴できる特殊浴槽の有無がポイントです。
廊下の幅や手すりの設置など、バリアフリー設計が徹底されているかも、施設全体の安全性を測る上で重要でしょう。
入所に必要な金額
費用については、入所時に支払う「入所一時金」と、毎月支払う「月額利用料」の2つを正確に把握する必要があります。
高額な入所一時金は、償却期間や途中退居時の返還金について契約前に必ず確認しておきましょう。
月々に支払う費用の総額がいくらになるのか、予算内に収まる値なのか、具体的なシミュレーションを提示してもらい、しっかりと判断する必要があります。
介護施設の見学で見ておきたいポイント
候補となる施設が見つかったら、必ず見学に行きましょう。
書類だけでは分からない、施設の「生きた情報」を得るためにも、以下のポイントを確認してみてください。
施設のスタッフや利用者の雰囲気
スタッフの対応や入所者の表情は、施設全体の質を反映しています。
スタッフがすれ違う際に自然な笑顔で挨拶をしてくれるか、入所者と話す際に目線を合わせているか、丁寧な言葉遣いを徹底しているかを確認しましょう。
スタッフ同士が円滑に情報共有している様子が見られれば、チームワークのよい職場であると推測できます。
入所者の方々の表情が穏やかで、身だしなみが清潔に保たれているかも重要な観察ポイントです。
周辺環境と交通の便
ご家族が面会に通いやすいかどうかは、入所後の関係性を維持する上で非常に重要です。
自宅から施設までの具体的な所要時間や、公共交通機関(電車・バス)の利便性、最寄り駅からの距離などを実際に確認しましょう。
施設の周辺環境も大切で、幹線道路や線路に近く騒音が気になる場所でないか、逆に静かすぎて孤立した場所でないかなどをチェックします。
散歩ができる公園や、ちょっとした買い物ができる店が近くにあるかなど、利用者や家族にとって快適な環境かどうかの視点で確認することが大切です。
設備の衛生管理
清潔さは快適な生活の基本であり、感染症対策への意識レベルを示す指標でもあります。
においがこもりやすいトイレや浴室、脱衣所などが清潔に保たれ、不快なにおいがしないかは必ず確認しましょう。
居室や食堂といった共有スペースの清掃が行き届いているか、整理整頓されているかも重要なチェックポイントです。
日当たりや風通しがよく、明るく衛生的な環境であれば、心身の健康にもよい影響を与えてくれます。
重要事項説明書の内容と確認ポイント
入所したい施設が決まったら、契約の前に「重要事項説明書」を用いて詳細な説明を受けます。
後々のトラブルを防ぐためにも重要なプロセスですので、これから解説するポイントは確実に把握しておきましょう。
重要事項説明書とは
介護サービスに伴う重要事項説明書は、事業者の概要、提供されるサービス内容、職員体制、利用料金、契約解除の条件など、契約に関する特に重要な事柄をまとめた書類です。
介護保険法に基づき、事業者は契約前にこの書類を交付し、内容を説明することが義務付けられています。
重要事項説明書に記載される内容
記載される内容は多岐にわたりますが、主に以下のような項目が含まれます。
・事業者・事業所の基本情報(事業所の概要、事業の目的、運営方針など)
・サービス提供に関する事項(営業日や営業時間、サービスの詳細など)
・従業者の体制(職種ごとの人数、勤務形態など)
・料金に関する事項(利用料金とその算定方法など)
・安全管理・緊急対応(事故発生時の対応方法、緊急時の連絡体制など)
・相談・苦情対応(窓口の開設時間、相談方法など)
・個人情報・秘密保持(秘密保持に関する方針や個人情報の取扱いなど)
・そのほかの重要事項(契約解除に関する事項、衛生管理・感染症対策など)
なお、令和7年度(2025年度)から、重要事項説明書の内容を事業所のWebサイトまたは情報公表システム上に掲載・公表することが義務化されています。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「「介護サービス情報の公表」制度の施行について」
重要事項説明書で特に確認しておきたいポイント
重要事項説明書の中から、特に注意深く確認すべきポイントを解説します。
不明な点はその場で質問し、納得できるまで説明を求めましょう。
医療連携の内容
「協力医療機関」として名前が挙がっている診療科目と、具体的にどのような連携が取られているのかを確認します。
対応可能な診療科目はできるだけ多いほうが望ましいです。付き添いや送迎、訪問診療や訪問介護の内容についても、確認しておいてください。
入所後の居室変更
入所後に心身の状態が変化した場合に、居室を移動(例:一般居室から介護専用居室へ)する可能性があるか、その際の条件や費用について確認します。
退居要件
どのような状態になったら施設側から契約を解除され、退居を求められる可能性があるのかを詳細に確認します。
例えば「長期の入院」や「医療依存度が高まり、施設での対応が困難になった場合」などが挙げられますが、その基準があいまいでないか、具体的に確認することが重要です。
職員体制
介護保険法で定められた基準(例:要介護者3人に対し職員1人以上)を満たしているかはもちろん、夜間の最少職員数(夜勤人数)も必ず確認しましょう。
利用者と職員の比率を参考に、手厚いサービスが受けられるのかを判断しましょう。
職員の状況
職員の平均勤続年数や離職率も、施設の安定性やケアの質を測る上で参考になる情報です。
勤続年数の長い職員が多く在籍する施設は、働きやすい環境であり、質の高いケアにも期待できる傾向にあります。
利用料金のプラン
月額利用料のほかに、どのようなサービスが「オプション(別途料金)」となるのかを詳細に確認します。
通院の付き添い費用、理美容代、個別の買い物代行など、想定外の出費が生まれないようリストアップしておきましょう。
前払金の受領
入所費の一部を「入所一時金」として前払いした場合、初期償却率と償却期間を確認しておく必要があります。
償却の仕組みとしては、入所時に「初期償却」として一部が、残りは「償却期間」をかけて月々償却されるのが一般的です。
入所後90日以内に退居した場合は「短期解約特例制度(90日ルール)」により初期償却分も含めて原則全額が返還されます。
90日を超えて退居した場合は、初期償却分(多くの施設は40%以内)は返還されず、残りの未償却分のみが返還されます。
まとめ
要介護度が5の方は、介護する内容が多く、また介護に費やす時間も多いため、介護保険サービスをうまく活用することが大切です。
費用に不安があれば、給付金や控除が受けられる場合もあるため、自治体に相談してみましょう。





