【介護コラム】ALS(コイツ)と戦うー第1話ー

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介護ヘルパーとALSを発症した医師との実話
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「コイツと18年戦えば、もう何があっても怖くない」

私がSさんに出会ったのは、訪問介護を始めて2年目の夏。現役で診察をしている医師であり、長年ALSについて研究を重ねてきた人物である。そんな彼が今から18年前、皮肉なことにALSを発症した。思うように動かなくなる体、昼夜を問わず襲いかかってくる幻覚、病状の進行は止めようがなく、生活のあらゆる場面で全面的な支援が必要となった。

「危ないからといって、やれることを奪うことはない」と彼は不自由な身体で歩行を続けている。介助者は歩行器に徹し、手引きしている体の形を変えず、動かさず、押しも引きもせず、彼が必死に踏み出した一歩に合わせて、同じ幅同じ角度で一歩下がる。その一連を繰り返しながらパソコンデスクから食卓へ、脱衣所から浴室へと歩みを進めていく。食卓テーブルの縁に沿って時計回りに座席へ向かう際、口癖のように「ここが一番難しいんだよ」と言いながら、真剣な中にもどこか充実感のある笑みを浮かべるのだ。

つづく

 

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!