【介護コラム】ALS(コイツ)と戦うー第3話ー

——————————— 
介護ヘルパーとALSを発症した医師との実話
———————————

Sさんの楽しみの一つが入浴であり、その手伝いをするのが最初の仕事だった。
当然、初見でどうこうできる内容ではない。取ったメモはA4用紙にびっしり4枚分。湯気と汗でしわしわになったそのメモをいつも片隅に置き、ミリ単位で展開されていくケアに向き合い続けた。

最初にぶつかった壁は「両足で立つこと」

これが出来なければ全ての工程が成立しない。
先ず、座位から軽く前傾姿勢をとった彼の正面に立ち、両脇の下に後ろ側から自分の手の側面が挟まるように手を差し込み、掛け声に合わせて上体を前方向に引き寄せる。彼は真上に向かってのみ両脚に力を入れることができるため、「真上+前方向=斜め前方」に体を持っていくことで立ち上がることができる。

次に、立った姿勢のままバランスを保てるポジションを探る。まるで一枚の紙を倒れないように立てるような感覚で体を支えながら、彼が「ん」とOKを意味する合図を出してくれるのを待つ。

無事に姿勢が安定すると、「お互いのベクトルを意識することが大切」とよく彼は、決め台詞のように言っていた。

つづく

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!