特養の給料事情を徹底解説!平均給与・仕事内容・高収入に繋げる方法まとめ

特養(特別養護老人ホーム)への就職・転職を検討している場合、給料に関する部分も気になるポイントとなるのではないでしょうか。
そこで本記事では、特養で働く際の平均給与や仕事内容、給料アップに繋がる具体的な方法などを詳しく解説していきます。
高給与が得られる施設の特徴や求人情報のチェックポイントも解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
特養(特別養護老人ホーム)とは?
特養(特別養護老人ホーム)は、主に要介護3以上の高齢者が入所し、24時間体制で生活支援や介護サービスを受けられる介護施設です。
主な運営機関は地方自治体や社会福祉法人などで、看取りケアも行います。
特養で働くメリットは2つ
特養で働く代表的なメリットは以下の2つです。
- 介護スキルがしっかり身につく
- 安定した福利厚生を受けられる
特養は入所者の介護度が高い傾向にあるため、日々の実務を通じて高い介護スキルを身に付けることが可能です。
自治体や社会福祉法人が運営しているケースが多く、福利厚生が比較的充実している点も働くメリットのひとつと言えます。
特養の給与水準は高い
特養で働く場合の給料は、他の介護施設と比べてやや高めの傾向があります。
給料に関する詳しいデータは後述しますが、理由として業務に高いスキルが必要になることや夜勤が存在することなどが挙げられます。
勤務内容によってさまざまな手当が支給される点も、特養の給与水準を押し上げている要因のひとつです。
特養の給料に関するデータ
ここからは、特養で働く介護職員の平均給与や時給、ほかの介護施設との比較、資格や職種による違いなど、具体的な給料データを紹介していきます。
介護職員の平均給与
厚生労働省の調査によれば、特養で働く介護職員の平均月給は、以下のとおりです。
- 常勤の者:36万1,860円
- 非常勤の者:25万7,620円
また、時給による給与体系では以下のようなデータが出ています。
- 常勤の者:24万4,520円(平均時給1,100円)
- 非常勤の者:15万7,140円(平均時給1,130円)
なお、介護職員全体の平均月給は、以下のとおりです。
- 常勤の者:33万8,200円
- 非常勤の者:19万6,060円
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
ほかの介護施設との比較
ほかの介護施設と特養の給料を比較した場合は、以下のとおりです。
施設名 | 平均給与(月給・常勤の者) | 差額 |
特別養護老人ホーム(特養) | 36万1,860円 | |
介護老人保健施設 | 35万2,900円 | マイナス8,960円 |
訪問介護事業所 | 34万9,740円 | マイナス1万2,120円 |
通所介護事業所(デイサービス) | 29万4,440円 | マイナス6万7,420円 |
認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム) | 30万2,010円 | マイナス5万9,850円 |
この比較表からも、特養の給料が高い傾向にあることが分かります。
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
資格の有無による給与比較
特養で働く場合の給料は、資格の有無でも変わります。
介護分野の代表的な資格を保持している場合、無資格と比較して以下のような差が生まれる傾向にあります。
資格名 | 平均給与(月給・常勤の者) |
無資格 | 30万3,410円 |
介護職員初任者研修 | 34万8,060円 |
介護福祉士実務者研修 | 34万8,210円 |
介護福祉士 | 37万2,960円 |
社会福祉士 | 40万490円 |
介護支援専門員 | 41万6,060円 |
なお、資格保持者全体の平均給与は、36万5,020円です。
資格を保持していると基本給や手当が増え、将来的にはリーダー職へのキャリアアップにも繋がります。
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結」
職種別による給与比較
最後に、介護職員、看護師、栄養士など、特養で働く各職種の給与比較データを以下に記載します。
職種名 | 平均給与(月給・常勤) | 平均給与(月給・非常勤) |
介護職員 | 33万8,200円 | 19万6,060円 |
看護職員 | 38万4,620円 | 22万800円 |
管理栄養士・栄養士 | 32万3,810円 | 26万4,580円 |
生活相談員・支援相談員 | 35万3,950円 | 29万2,750円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 37万5,410円 | 23万3,490円 |
事務職員 | 31万7,620円 | 16万6,590円 |
調理員 | 27万2,240円 | 12万460円 |
上記のデータは、特養以外の施設も含んだ全体的な数値です。
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
特養の仕事内容と1日の流れ
特養ではどんな仕事をするのか、1日のスケジュールはどうなっているのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、主な仕事内容や業務の流れについて、日勤・夜勤それぞれの例を交えて解説していきます。
基本的な項目は5つ
特養の介護職員が携わる基本的な仕事内容は、以下の5つに集約されます。
【身体介護】
身体介護は、入所者の身体に直接触れて行う介助サービスのことで、特養では必須の業務に分類される内容です。
入浴の準備やトイレの補助、摂食・口腔ケア、歩行時や車いすの支援などが該当します。
入浴、排泄、食事、移乗などのサポート以外に、より専門的な分野、医療行為などが含まれるケースもあります。
【生活援助】
生活援助とは、身体介護とは異なり、入所者の身体に直接触れないサービスを指します。
掃除、洗濯、衣類の整理整頓など、日常生活を送る上で必要な作業を代行する業務です。
身体介護とセットで行われるような位置づけで、専門的な知識・技術が求められることは少ない傾向にあります。
【レクリエーション】
季節行事や体操、手芸など、さまざまなレクリエーションを実施するのも介護職員の業務です。
身体機能の維持・向上や心身のリフレッシュに資する必要があり、楽しんでもらう以上の成果もできるだけ目指す必要があります。
周囲との交流や身体機能の刺激を経て、生きがいや心身の安定に繋がり、生活の質(QOL:Quality of life)の向上に期待できる点もメリットのひとつです。
【家族との連携】
入所者の状況報告や相談対応など、家族に向けたコミュニケーションも業務の一環です。
相談対応では家族からの要望を聞く以外に、介護職員から提案することもあります。
お互いの信頼関係が重要となるため、やり取りの際は誠心誠意、取り組む必要があるでしょう。
家族との連携を密にすることで、より満足度の高い介護サービスが実現できます。
【健康管理】
サービス対象が高齢者の特養では、入所者の健康管理も求められる業務のひとつです。
バイタルチェック、服薬管理、感染症対策など、その内容は多岐にわたります。
場合によっては医療機関と連携して対応する必要もあり、適切な判断が求められることも少なくありません。
特養の介護サービスには看取りケアも含まれるため、こまめな対応と家族に寄り添った動きも大切なポイントと言えます。
特養で働く際の1日の流れ
仕事内容の解説に続いて、特養で働く際の1日の流れを紹介していきます。
実際の勤務スケジュールは施設ごとで異なりますが、特養で働く流れはイメージできるでしょう。
【日勤での勤務スケジュール一例】
日勤での勤務スケジュールの一例は以下のとおりです。
時刻 | 業務内容 |
8:30 | 出勤・申し送り(夜勤者から情報の引継ぎ) |
9:30 | 入浴介助(バイタルチェック後) |
12:00 | 昼食(配膳・食事介助・服薬介助) |
13:00 | 休憩 |
14:00 | レクリエーション活動 |
15:00 | おやつ(配膳・食事介助) |
16:00 | 記録業務(入所者の様子) |
17:00 | 申し送り(夜勤者へ情報を引き継ぎ) |
17:30 | 退勤 |
日勤は入浴や食事の介助、レクリエーションが中心で、入所者と活動する機会が多くなるのが特徴です。
表には記載していませんが、トイレやおむつ交換などの排泄介助も業務に含まれます。
【夜勤での勤務スケジュール一例】
夜勤での勤務スケジュールの一例(16時間勤務)は以下のとおりです。
時刻 | 業務内容 |
16:30 | 出勤・申し送り(日勤者から情報の引継ぎ) |
18:00 | 夕食(配膳・食事介助・服薬介助) |
19:00 | 就寝介助(排泄・更衣介助) |
22:00 | 巡視 |
0:00 | 休憩 |
2:00 | 巡視 |
4:00 | 巡視 |
5:00 | 起床準備・介助 |
7:00 | 朝食(配膳・食事介助・服薬介助) |
8:30 | 申し送り・記録業務(日勤者へ情報を引き継ぎ・入所者の様子を記録) |
9:30 | 退勤 |
特養の夜勤は2交代だと16時間勤務、3交代だと8時間勤務でシフトが運営されます。
夜勤の業務は、巡視・排泄介助・体位変換の介助が中心です。
ナースコールや離床センサーへの対応も行います。
特養での給料アップに繋がる具体的な方法5選
特養で働く場合も、一般的な職業と同様に給料をアップさせる方法があります。
ここからは、実際に特養で給料を上げるための具体策を5つ紹介していきましょう。
①夜勤を増やす
最初に挙げる方法は、可能な範囲で夜勤を増やすことです。
夜勤手当は1回あたり5,000円〜8,000円程度が相場ですので、月に数回でも確実な収入アップに繋がります。
夜勤のみに勤務する「夜勤専従」の働き方を選べば、生活リズムを一定に保ったままで給料を上げることが可能です。
給料アップ以外に日中の時間を有効活用できるメリットもあるため、体力的に問題なければ検討してみましょう。
②資格取得を目指す
次に挙げられるのは、資格を取得して給料アップに繋げる方法です。
資格の有無による給与比較はすでに解説したとおりで、介護職に役立ちつつ給料アップに期待するのであれば、以下のような資格を狙ってみましょう。
【介護福祉士】
介護福祉士は国家資格のひとつで、介護業界での給与・信頼をともにアップさせることが可能な資格です。
専門性の高い資格であるため、取得していればリーダーとして活躍できる機会も増えます。
介護福祉士の受験資格を得る主要なルートは以下のとおりです。
- 養成施設ルート:指定された養成施設で2年以上学び卒業
- 福祉系高校ルート:福祉系高校で規定の科目・単位を取得し卒業
- 実務経験ルート:3年以上の実務経験と実務者研修の修了
介護福祉士国家試験における近年の合格率は約70%〜84%で推移しており、直近となる令和7年の試験では78.3%でした。
【介護支援専門員】
介護支援専門員(ケアマネジャー)とは、要介護者の状況に応じたケアプランの作成や、市町村・サービス事業者・施設などとの連絡調整を担う人員です。
介護支援専門員は、介護に関する高い知識と技術を有する「介護支援専門員証」の交付を受けた人でもあり、特養で働くにあたっても高い給与を得られる傾向にあります。
介護支援専門員の資格を得るためのハードルは高く、具体的には以下のような条件をクリアしなければなりません。
- 保健医療福祉分野での実務経験(社会福祉士、介護福祉士など)5年以上
- 介護支援専門員実務研修受講試験に合格
- 介護支援専門員実務研修の課程を修了
特養で働く介護支援専門員の主な仕事内容としては、施設全体のサービス計画作成業務が挙げられます。
【実務者研修】
実務者研修は、介護福祉士の受験要件となっているもので、正式名称は「介護福祉士実務者研修」です。
実務経験や特定の資格がなくても修了が可能で、資格取得のために必要な本試験もありません。
ですが、既定のカリキュラムを履修するにはスクールを利用する必要があり、理解度を測るために課題を提出し合格点を取らなければならない場合もあります。
スクールによっては修了試験も実施されますが、学んだ内容を理解できているか確認するもので、しっかりと授業を受けていれば難しくないレベルです。
【介護職員初任者研修】
介護職員初任者研修は、介護に携わりたい方が最初に取得すべき基本資格で、介護の基礎から応用までを学べるものです。
資格を取得するにはスクールで講義と演習を含むカリキュラムを約130時間受講し、最後の修了試験に合格する必要があります。
修了試験は筆記形式で、授業をしっかり受けていれば高い確率で合格できると言われている内容です。
介護職員初任者研修を取得できれば介護職として働く幅が広がり、全国で就職・転職活動が可能になります。
③各種手当を増やす
介護職として働く場合、条件によってさまざまな手当が支給されます。
単純な残業代のほか、管理職に昇格することで得られる役職手当も給料をアップさせるひとつの方法です。
管理職による給料の違いは、以下のようになっています。
介護職員の平均給与(月給・常勤) | |
介護老人福祉施設の管理職 | 43万6,850円 |
管理職でない | 35万4,900円 |
令和6年度では約8万円もの差があり、年収換算だとかなりの額になります。
管理職を目指すには相応の経験とスキルが必要になりますが、給料アップの方法として確実な効果が見込めるでしょう。
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
④勤続年数による給料アップを狙う
継続勤務で昇給できる施設も多く見られるため、勤続年数による給料アップを狙うことも可能です。
実際に、勤続年数による給料アップの傾向が以下のように確認できます。
介護老人福祉施設における介護職員の平均給与(月給・常勤) | |
1年(勤続1年~1年11か月) | 31万1,630円 |
5年(勤続5年~5年11か月) | 34万6,170円 |
10年(勤続10年~10年11か月) | 36万5,230円 |
20年以上 | 41万7,770円 |
長期にわたって働き続けることで各種手当を得る機会にも期待できるため、給料アップのメリットは比較的大きいと言えます。
参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
⑤転職を検討してみる
どうしても給料アップが難しい場合、給与水準の高い法人・地域への転職を検討してみましょう。
特養の給料に関するデータで紹介したとおり、介護職員の平均給与はさまざまな条件によって変動します。
自身の経験や資格をより活かせる場所であれば、転職による給料アップにも期待できるでしょう。
高給与を得られる施設の特徴
特養の中でも、より高い給与を得られる施設には共通した特徴があります。
収入面で有利な職場を見つけるためにチェックすべきポイントを解説していきますので、参考にしてみてください。
都市部に施設・拠点がある
都市部に施設・拠点がある場合、給与水準も高い傾向にあります。
なぜなら都市部と過疎地では、最低賃金に明確な差があるからです。
最低賃金が異なるほど、給与水準にも顕著な違いが生まれます。
より高い給料を狙っている中で勤務地にこだわりがなければ、都市部の施設を選択肢に入れてみましょう。
稼働率が高い
稼働率の高さは入所率の高さも示しています。
入所率が高い施設は安定的な収益があり、職員の処遇もより良くすることが可能です。
稼働率を公開している施設はあまり見られませんが、問い合わせること自体は可能ですので、気になる場合は生活相談員やケアマネジャーに聞いてみましょう。
介護職員処遇改善加算を取得
介護職員処遇改善加算を取得済みの施設も、給料が高い傾向にあります。
介護職員処遇改善加算とは国が出している補助金のひとつで、介護職員の給与に還元する目的で支給されるものです。
令和7年4月以降の介護職員処遇改善加算は4つの区分(Ⅰ〜Ⅳ)に分かれており、Ⅰがもっとも高い加算率に設定されています。
介護職員処遇改善加算を取得済みかチェックすることで、より給料の高い施設を選択することが可能です。
特養の求人情報でチェックしたい3つのポイント
特養の求人情報には、給料や待遇に関するヒントが詰まっています。
特養の求人情報を見るときに注目してほしい3つの項目について解説していくので、高給与を得られる施設の特徴と併せてチェックしてみてください。
①賞与実績
ここまで解説してきたとおり、特養で支払われる給料はさまざまな要因で変化します。
求人情報に記載されている月給だけでは分かりにくいものもあり、そのひとつが賞与実績と呼ばれるものです。
支給される回数や金額は施設によって異なるため、しっかりと確認しておくことをおすすめします。
②夜勤手当
特養での給料アップに繋がる具体的な方法でも触れましたが、夜勤手当の額も施設ごとで異なります。
夜勤の回数によっても1か月あたりの給料は変化するため、雇用条件とともに勤務シフトの内容についても理解しておく必要があるでしょう。
③資格取得支援の有無
特養の求人票でチェックしておきたい項目として最後に挙げるのは、研修費補助や資格取得奨励制度の有無です。
こういった要件を持つ施設であれば、資格取得へのハードルも若干下がることになり、最終的な給料アップにも期待できます。
支援や制度が充実しているほどキャリアアップにも有利となるので、条件に当てはまる施設は選択肢に入れておくのがおすすめです。
まとめ
特養は介護施設の中でも給与水準が高めで、安定した環境のもとで介護スキルを磨くことができます。
未経験からでもスタートしやすく、資格取得や夜勤などを通じてしっかり収入を増やすことも可能です。
介護業界の給与水準は待遇改善の施策によって上昇傾向にあるため、特養の給料もさらなるアップが期待できます。
就職・転職を検討している方は、求人票の細かい条件をチェックしつつ、長期的なキャリア形成を意識して施設選びを進めてみましょう。