50代女性に適した仕事とは?仕事選びのポイントや注意点を解説

50代を迎え「今の仕事を続けていけるのか」「新しく働きたいけど、何が向いているのか」と悩む女性は少なくありません。
体力や家庭の事情、これまでの経験など、働き方を考える上で優先順位も変化してくる時期です。
本記事では50代女性に適した仕事の特徴や選び方のポイント、働く際に気を付けたい点について詳しく解説します。
無理なく長く続けられる仕事を見つけるために、ぜひ参考にしてください。
50代からでも就職できる?
50代でも転職や再就職を目指す方は、実は少なくありません。
ただし、事前にご自身の体力面やスキル、ライフプランについて見つめ直しておくことが大切です。
求人の多くは募集要件に年齢の制限は設けていないものの、企業によってはミドル層の採用に慎重な姿勢をとっている場合もあります。
まずは、50代女性を取り巻く就職市場の現状を理解しておきましょう。
50代の就職が難しいといわれる理由
人生100年といわれる時代において、50歳はちょうど折り返しといったところです。
しかし、企業側にとっては50代の就職はあまり望まれない現状もあります。
その背景には、若い世代を育てることを重視していたり、50代では定年までが短いことから長期での採用が困難と考えられていたりすることがあるからです。
こういった要因を理解しておくことが、50代からの就職活動には大切です。
労働力ニーズは増加している
一方で、多くの業種では人手不足が問題視されています。
帝国データバンクが公表している「人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業は全体の51.4%にのぼり、近年高止まりの傾向です。
特に医療や介護、飲食店などでは慢性的な人手不足で、年齢に関係なく採用を進めているケースも少なくありません。
そのため、業種によっては50代からの就職も十分に現実的といえるでしょう。
参照:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)」
50代女性も働いている業界
50代女性でも比較的就職しやすいのは医療や介護、IT、清掃や調理スタッフ、人材派遣などでしょう。
これらの業種は人材不足が顕著であることや、定年がないことなどから、50代でも多くの方が就労しています。
また、同世代の方が多く働いていることで、安心して仕事に取り組めるのも魅力の一つです。
ただし、IT業界は即戦力を求める傾向が強く、未経験からの就職は難しい場合もあるため注意が必要です。
女性が50代から働き始める理由
ライフプランの後半を計画する中で、新たに仕事探しをする方は珍しくありません。
これまで専業主婦であった方にとっては、子育てを終えて自由な時間ができたことで、今までにできなかったことや将来の蓄えのために仕事を始めたいと思う方もいるでしょう。
ここでは、50代で仕事を探す主な理由について見ていきます。
老後の資金目的
総務省統計局が公表している「家計調査報告〔家計収支編〕2024年平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月の年金を含めた実収入の平均は月252,818円です。
しかし消費支出は256,521円となっており、収入よりも消費のほうが上回っていることが分かります。
各世帯で収入や支出の金額は異なるため、一概にはいえませんが、多くの世帯では年金だけで老後の生活費を賄うのは難しいと考えられます。
また、近年の物価上昇も、貯蓄を阻む要因となっていることでしょう。
このような背景から、老後の資金目的で50代から仕事を始める女性が増えています。
参照:家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2024年(令和6年)平均結果の概要
社会とのつながり
働く上では、給料の金額だけでなくやりがいも大切です。
例えば、長い間専業主婦として家庭を支えてきた方も、働き始めることで新たな人間関係を築いたり、社会の一員として活躍したりすることが可能になります。
自由な時間を使って社会に貢献できる仕事をすることで、人生がより豊かに感じられることでしょう。
また、一般的な企業では定年が定められているので、引退後の居場所づくりとして定年のない新たな仕事や、誰かの役に立てる仕事に挑戦する方もいます。
50代以降の仕事探しには金銭面だけでなく、社会とのつながりややりがいを目的とすることも、重要な条件の一つです。
雇用側から見た50代のメリット
50代という年齢は就職に不向きともいわれていますが、雇用側にもいくつかのメリットがあります。
面接では自身の経歴とともに、以下のような強みをしっかりアピールすることが大切です。
若年層より離職率が低い
50代ではほかの世代と比べて離職率が低いという傾向があります。
厚生労働省が公表している「令和5年雇用動向調査結果」によると、19歳以下を除くと25~29歳の離職率がもっとも高く、男性が15.6%・女性は19.1%です。
しかし、50~54歳、55~59歳の離職率を見ると、男性ではそれぞれ5.6%、6.6%、女性でも9.0%、7.6%となっており、ほかの世代と比較しても低い数値となっています。
離職が少ないということは、企業側からすると採用コストの削減につながり、長期的な戦力として期待できるため、50代という年齢は就職活動において不利になることばかりではありません。
面接では長く働き続ける意思があることをしっかりと伝えることで、採用されるケースも多くなるでしょう。
参照:厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
時間的な余裕がある
50代女性はほかの世代と比べて子育てがひと段落している方も多く、比較的時間的な余裕を持って働ける場合が多く見られます。
学生や小さな子どもを育てる世代が対応しづらい平日の日中や夜間のシフトにも柔軟に対応できることは、企業にとって大きな魅力です。
急な欠勤やシフトの調整が必要な場面でも協力しやすい人材は、職場の安定運営にとって欠かせない存在となります。
こうした柔軟な勤務が可能な50代は、雇用側からのニーズも高まりやすいといえるでしょう。
コミュニケーション経験が豊富にある
人生経験が豊富な50代女性は、幅広い世代とコミュニケーションをとってきた経験があります。
すでに基本的な礼儀やマナーが身に付いており、顧客対応や社内の人間関係にも柔軟な対応ができると期待されやすいでしょう。
雇用側にとってもマナー研修などの必要がなく、即戦力として活用できることは大きなメリットになります。
50代女性が仕事を始める前に考えておくこと
仕事を始めるにあたって、まずはご自身の希望や条件を明確にしておきましょう。
職種によっては資格の取得が必要になる場合もあり、そのための時間をどれくらい確保できるのか、あらかじめ見通しをつけておくと安心です。
ハローワークやキャリアコンサルタントに仲介を依頼する場合にも、条件がはっきりしていると仕事の紹介をスムーズに進められるため、最初に考えておきましょう。
稼ぎたい金額
老後の資産形成のためであれば、将来の年金額からいくら足りないのかを計算しておく必要があります。
日本年金機構から届く「ねんきん定期便」には将来の年金見込額が記載されているので、確認しておきましょう。
月3万円足りないと想定すると、年間36万円、65歳から95歳までの30年で1,080万円が必要になります。
退職金やお持ちの金融資産で補えない分は、貯蓄で賄わなければなりません。
さらに50代以降は家の修繕費や病気の治療費、両親の介護費用などが必要になることもあり、急な出費で資産計画が崩れないように余裕を持って準備しておくことが大切です。
勤務形態
配偶者の給料などで生活資金が比較的安定している場合は、正社員にこだわらず、派遣社員、パートやアルバイト、業務委託なども選択肢の一つです。
正社員に比べて勤務時間や勤務日数が柔軟に選べるため、私生活への負担も大きくありません。
派遣社員は有期雇用になりますが、仕事探しから就職後まで派遣会社のサポートが受けられ安心です。
パートやアルバイトでも、職場によっては一定の条件で社会保険の加入が可能ですので、面接時に聞いてみましょう。
業務委託を選んだ場合は社会保険には入れず、年末調整や確定申告もご自身で行う必要がありますが、柔軟な働き方が可能です。
配偶者の扶養内で働きたい場合は、収入が一定額を超えないように事前に確認し、面接の際にもはっきり伝えておきましょう。
リスキリングのための時間
職種によっては、資格の取得が必要になることもあります。
ほかにもPCのスキルや専門知識が求められることもあり、働き始めるまでにリスキリングのための時間をどれくらい確保できるかを考えておきましょう。
過去に経験のある仕事でも、業務内容や使うツールが大きく変わっていることもあるため、仕事の内容を確認しておくことが必要です。
体力
50代では、若い頃に比べるとどうしても体力の低下を感じやすくなります。
働き始めたことで体を壊してしまうのは避けたいところです。
足腰に不安がある場合は重労働や立ち仕事は避け、デスクワークが主体の仕事や短時間の勤務を検討しましょう。
50代から仕事を始める際の注意点
50代での就職はメリットも多い一方で、よいことばかりではありません。
予想されるトラブルをあらかじめ理解し、事前に対策を整えておけば未然に防ぐこともできるでしょう。
50代から仕事を始める際に注意しておくべきことを紹介します。
上司が年下
50代で就職すると、年下の上司のもとで働くことは少なくありません。
年下の上司から指摘や指導を受けたことでプライドが傷つき、無益な衝突が起こってしまうと、お互いにストレスを抱くばかりか業務にも悪影響です。
上司からしても年上の部下はやりにくいと感じている可能性を理解し、感情的な対応は控え、上司を陰で支えられるように立ち回りましょう。
新しい機器の使い方が分からない
多くの職場でDX(デジタル化)が進められており、過去に経験のある仕事であっても、見たことがないITツールが多数取り入れられていることがあります。
「使い方が分からないと言ったらバカにされそう」と心配して、誰にも聞かずにやり過ごそうとするかもしれませんが、疑問がある場合は遠慮せずに質問することも必要です。
インターネットで調べたり、若い社員に使い方を教えてもらったりしましょう。
メモを取るなどして、何度も聞かなくても済むように心がけることも大切です。
若い世代の話に入れない
50代で新しい職場に入ると、新しい人間関係の構築やコミュニケーションのギャップに戸惑ってしまうことも多くあります。
自分以外が若い世代ばかりだと、なかなか話に入っていけずに孤立してしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし、趣味や日常の些細な話題など、若い世代とも何かしらの共通点を見つけることが話題を広げるカギになります。
ただし「昔はこんなに大変だった」「今の若い人は楽でいい」といった発言は、距離を近づけるどころか、むしろ世代間の溝をつくってしまうことになるため控えましょう。
50代の女性が仕事を探す際のポイント
仕事を探す際には、ご自身のライフスタイルや将来設計が実現できるように、勤務の希望や条件が一致しているかを確認しておかなければなりません。
同じ職種でも職場によって規定が異なる場合があります。
想像と違ったということがないように、事前の確認と準備は怠らないようにしましょう。
業界の事前調査
仕事を始める上で、その業界の情報収集は欠かせません。
せっかく資格を取得したのに「思っていた仕事内容と違った」「資格で得た知識が使えなかった」ということもあります。
インターネットで調べるほかに、可能であれば実際にその業界で働いている人の話を聞いたり、口コミ情報を参考にしたりすることで、より理解が深まるでしょう。
定年がないこと
50代で働き始める場合、定年の有無は重要です。
自身が60歳以降も働きたいと思っている場合は、それに合った就業規則の職場でないといけません。
正社員を定年した後も、嘱託社員として働けるかも確認しておきましょう。
雇用側にとっても長く働いてもらえる人材は歓迎されやすいので、自身の希望をしっかりと伝えることが大切です。
優先順位
50代からの就職は20代に比べると選択肢が限られ、希望どおりの働き方や職場がすぐに見つからないこともあります。
焦らずじっくりと探す姿勢は大切ですが、希望する条件には優先順位をつけて、ある程度の妥協は仕方ないと判断することも必要です。
すべての条件を満たす理想の職場がすぐに見つからなくても、まずは経験を積みながら次のチャンスを広げていく考え方も有効です。
自分の強みや得意なことを生かせる職場で働くうちに、新たな可能性が見えてくることもあるでしょう。
楽しさややりがい
長く働き続けるためには体力的な負担が少ないだけでなく、働いていて楽しいと思えたり、やりがいを感じられたりすることも大事な要素です。
ストレスを感じる場面があっても、楽しさを実感できたり誰かに感謝されたりすることを原動力として仕事を続けている方はたくさんいます。
誰かと話をしながら進める仕事や一人でコツコツと行う仕事など、自身にとって楽しいと思えることを軸に探すことも大切です。
50代女性に適した仕事7選
50代女性が実際に多く働いている仕事をいくつかピックアップします。
これまでの経験を活用でき、かつリスキリングの必要が少ない職種もあり、未経験でも始めやすい仕事です。
介護士
介護士は、疾患や障害によって介護を必要とする高齢者や障害者の身の回りの世話を行います。
高齢化が進む現代において介護分野の需要は今後も拡大が見込まれており、就職面では売り手市場が続いています。
一部の業務は無資格でも入職が可能ですが、長く安定して働くには「介護職員初任者研修」の受講がおすすめです。
資格を取得することで業務の幅も広がり、待遇面でも有利になるケースが多いでしょう。
ナースエイド
ナースエイドは、病院内で看護師の補助として患者の身体介助や医療器具の管理、シーツ交換、病室内の清掃などを担当します。
女性が多く活躍している職種でもあり、50代女性にとっても働きやすい環境といえるでしょう。
就職時に特別な資格や経験は必要ありませんが、指示を正確に守る姿勢や責任感、幅広い年代の患者と良好なコミュニケーションを取る力が求められます。
事務職
事務職は書類作成やデータ入力、電話応対などのデスクワークを中心に、職場によってさまざまな業務を担当します。
受付業務を兼ねるケースもあり、来客対応やビジネスマナーも重要です。
事務職は正社員・パート・派遣と多様な雇用形態で求人があり、ライフスタイルに合わせた働き方を選びやすい点も魅力です。
家事代行
家事代行はお客様の自宅を訪問し、掃除・洗濯・料理などの日常的な家事を代行する仕事です。
特別な資格や経験は必要なく、50代女性にとっても始めやすい職種といえます。
多くの事業所で掃除のコツや洗剤の使い方、接客マナーなどの研修が用意されており、未経験からでも安心してスタートできます。
日常生活で培ってきた家事スキルが、そのまま仕事に生かせる点も大きな魅力です。
調理補助
調理補助は特別な資格や経験がなくても、基本的な料理の知識があればスタートできる仕事です。
勤務先は飲食店やホテルに限らず、病院や学校、介護施設など幅広い分野に広がっています。
飲食店では夕方以降の勤務が中心になることが多い一方で、学校や介護施設では早朝からの勤務が一般的です。
自分のライフスタイルや働きたい時間帯に合わせて職場を選びやすいのも、大きな魅力といえます。
家庭での料理経験を生かしやすく、50代女性にとっても挑戦しやすい職種です。
清掃
清掃スタッフはオフィスビルや学校、病院など、さまざまな場所で清掃作業を行います。
景気に左右されにくく、清掃という業務自体がなくなることはほとんどないため、長期的に安定して働ける職種といえます。
専門的な資格がなくても始めやすく、体力に自信があれば年齢を重ねても続けやすい仕事です。
決まった作業を丁寧にこなすことが求められ、コツコツと取り組める方に向いています。
保育補助・ベビーシッター
保育士として働くには保育士試験に合格する必要があり、難易度も決して低くありませんが、保育補助であれば資格がなくても始めることができます。
子どもと接することが好きな方にとっては、やりがいを感じやすい仕事です。
ベビーシッターも無資格で始められる職種ですが、民間のベビーシッター資格を取得しておくと、就職や依頼を受ける際に信頼性が高まり有利になるでしょう。
家庭や子育ての経験を生かせる点も、50代女性にとって大きな魅力です。
まとめ
50代女性が仕事を始める理由は、老後資金への備えや社会とのつながりを持ち続けたいという前向きな思いなど、さまざまです。
年齢による就職の壁もある一方で、業種や働き方を工夫すれば十分に就職のチャンスはあります。
就職活動を成功させるには、自身の体力やスキル、収入・勤務条件を整理し、現実的な優先順位をつけて職場選びを進めることが大切です。
年齢にとらわれず、自分に合った仕事を見つけることで新たな充実感や安心感が得られ、これからの人生もより豊かになるでしょう。