腰椎の圧迫骨折で高齢者の入院期間は?症状や日常生活の注意点も解説

腰椎の圧迫骨折で高齢者の入院期間は?症状や日常生活の注意点も解説
近年、高齢者の間で腰椎の圧迫骨折が増加しており、悪化すると寝たきりの生活につながる可能性もあるため、十分な注意が必要です。
本記事では、腰椎圧迫骨折の原因や症状、治療法について詳しく解説するとともに、再発を防ぐために日常生活で気を付けたいポイントも紹介します。
また、完治後も後遺症に悩まされるケースがあることから、未然に防ぐための生活習慣の見直しも重要です。
予防のヒントとして、ぜひ参考にしてください。
腰椎の圧迫骨折とは
腰椎の圧迫骨折は、背骨に外部からの圧力がかかることで、つぶれるように骨折する状態のことをいいます。
どのようにして圧力がかかるのか、原因について解説します。
また、腰椎圧迫骨折が起きている状態で、歩くことが可能かどうかも見ていきましょう。
腰椎の圧迫骨折が起こる原因
腰椎の圧迫骨折が起こる原因は、大きく分けると以下の2つです。
- 骨粗しょう症
- ホルモンバランス
それぞれの原因について、以下で詳しく解説します。
【骨粗しょう症】
高齢者に起こる腰椎の圧迫骨折は、多くは骨粗しょう症が原因となっています。
骨の内側には骨梁という網目状の構造があり、網目より内側が押しつぶされたり曲がったりすることが腰椎圧迫骨折が起こる原因です。
骨粗しょう症の人は腰椎圧迫骨折が起こるリスクが高く、くしゃみをするなど、わずかな力が加わるだけで骨折することがあります。
【ホルモンバランス】
ホルモンバランスが崩れると、腰椎の圧迫骨折が起こりやすい状態になります。
これは、ホルモンバランスの崩れにより、骨粗しょう症になりやすいためです。
骨粗しょう症は加齢によって起こるといわれていますが、閉経後の女性はホルモンバランスが崩れやすく、骨粗しょう症になるリスクが高いとされています。
腰を骨折して歩ける?
腰椎の圧迫骨折は、腰の骨が「潰れる」ように変形するタイプの骨折であり、必ずしも完全に折れてずれるわけではありません。
そのため、神経を損傷していない場合や骨折の程度が軽い場合は、痛みがあっても歩行が可能なことがあります。
ただし、無理な動きは症状を悪化させる原因になるため、医師の指導のもとで安静やコルセットによる固定など適切な治療を受けることが大切です。
腰椎の圧迫骨折の症状
腰椎圧迫骨折の症状は、痛みや違和感など個人差が大きいですが、一般的な症状について解説します。
当てはまる症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
初期の違和感
骨折というと、激しい痛みがあり動けないイメージが大きいです。
腰椎の圧迫骨折は腰を骨折している状態ですが、折れたばかりの初期には腰の奥に違和感を覚える程度であるケースも見られます。
急に腰にだるさを感じるようになったり、立ちあがるときに痛みを感じたりする場合は、医療機関を受診することがおすすめです。
痛み
腰椎圧迫骨折の特徴的な症状として、横になっている状態から起き上がろうとしたときに、瞬間的な激しい痛みがあります。
しかし、起き上がってしまえば痛みは軽減され、歩くことも可能です。
骨折後の数日間は急性期と呼ばれ、この時期は特に痛みが強く出やすい傾向があります。
寝返りを打つときには腰の奥に響くような痛みや、物を取ろうとすると腰に大きな負荷がかかり、動きが制限されてしまうことがあります。
急性期が過ぎると痛みが軽減されますが、長時間歩いたり立っていたりすると痛みが戻ってしまうこともあり、注意が必要です。
そのほかの症状
違和感や痛みのほかに、背中が丸まってしまうなどの症状が見られます。
骨折した後、骨が癒合していない状態でいろいろな動作を行うと、骨が変形しやすくなるのです。
また、背中が丸まることで身長が低下したり、姿勢が変化したり、呼吸が浅くなったりする症状も見られるようになります。
腰椎の圧迫骨折の後遺症
腰椎の圧迫骨折が起きると、治療をしても後遺症が残るケースがあります。
日常生活に支障がある後遺症もあり、手術や日常的な介護が必要になることもあるため、どのような後遺症が起こり得るのかを理解しておくことが大切です。
腰椎圧迫骨折の後遺症について解説します。
背骨の曲がりやゆがみ
腰椎の圧迫骨折では椎体がつぶれることがあり、これにより背骨の曲がりやゆがみが見られるようになります。
背骨が横へ曲がると脊椎側弯症に、後ろへ曲がると脊椎後弯症などが起こります。
後ろへ曲がることで起こる脊椎後弯症は、背骨周辺の痛みや神経痛が起きることもあり、特に注意が必要です。
歩行などの動作によって激しい痛みが起きるため、日常生活にもさまざまな困難が出てきます。
背骨の曲がりやゆがみは、骨折を治療しないで放置した場合にも症状が出ることがあり、早めの受診が大切です。
歩行障害
腰椎圧迫骨折の後遺症には、歩行障害があります。
骨が潰れることで神経が圧迫され、痛みやしびれ、神経麻痺などの神経症状を起こすことがあり、悪化すると歩行障害につながるのです。
歩行障害が起きると、歩行の際に杖が必要になるなど、日常生活に支障をきたすことが考えられます。
神経麻痺の症状が現れる時期はさまざまで、すぐに見られないこともあります。
症状がなければ、腰椎圧迫骨折の後遺症であることに気づかない可能性が高いですが、症状が重度になれば手術しなければならないため、注意が必要です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、腰椎圧迫骨折の後遺症の一つです。
背骨が曲がったままの状態で骨折が治ると、腹部が圧迫されることが原因となり、逆流性食道炎を引き起こすことがあります。
腹部が圧迫されると食べられる量が減るため、体力や骨密度まで低下してしまいます。
食生活を改善することで症状の緩和が期待できますが、場合によっては食道がんなど重篤な病気に進行するリスクもあるため、適切な治療が必要です。
膀胱直腸障害
腰椎の圧迫骨折によって、排尿や排泄に関する神経が圧迫されると、膀胱直腸障害が後遺症として起こる可能性があります。
これは、神経を圧迫されることで尿意や便意を感じにくくなるために、頻尿や失禁、便秘などを引き起こすことが原因です。
膀胱直腸障害は、手術で神経の圧迫を取り除いたり、変形した脊椎を矯正したりすることが必要になることも考えられます。
また、症状のレベルにより、治療やリハビリを長期間にわたって行わなければならないこともあり、日常生活に支障をきたしてしまうでしょう。
腰椎の圧迫骨折はどのように検査・診断される?
腰椎圧迫骨折の検査・診断は、まず問診や触診で痛みの場所や程度を確認することから始まります。
その後、レントゲン検査を実施しますが、圧迫骨折の多くは骨粗しょう症が原因であるため、骨密度の測定も一般的に行われます。
ただし、初期の腰椎圧迫骨折はレントゲンだけでは診断が難しい場合があり、その際にはCTやMRIといったより詳細な画像検査で調べます。
これらの検査・診断について、さらに詳しく解説していきます。
問診・触診
最初に行われる診察は、問診と触診です。
触診では、腰や背中の痛みを感じる部位を詳しく確認します。
問診では、痛みがいつから始まったのか、痛みの程度や発症の経緯など、症状の詳細について丁寧に聞かれます。
また、痛み以外に気になる症状がないかも確認し、腰椎圧迫骨折の可能性だけでなく、ほかの疾患の有無についても慎重に見極めていきます。
レントゲン・骨密度検査
腰椎の圧迫骨折は、レントゲンで診断ができます。
しかし、レントゲンで診断できるのは椎骨が潰れたり、変形したりしている状態のため、初期の腰椎圧迫骨折では診断できないケースがあり、この場合はCTやMRI検査が必要です。
変形が見つかっても、今回の痛みの原因となる変形なのか、過去に骨折して現在は治っている腰椎圧迫骨折による変形なのかが診断できない場合も、CTなどで診断します。
骨粗しょう症と腰椎圧迫骨折は大きく関係しているため、骨粗しょう症の検査を行い、医療機関によっては血液検査も行います。
CT・MRI検査
レントゲン検査では、骨折による骨の変形が進んだ状態でないと診断が難しいことがあります。
そのため、レントゲンで異常が確認できない場合には、MRI検査が必要となります。
MRIは、新たに発生した骨折か、古い骨折かを判断することができ、骨の状態を詳しく把握できます。
また、手術などの外科的治療を検討する場合には、骨の詳しい構造を確認するためにCT検査が行われます。
腰椎の圧迫骨折の治療方法
腰椎の圧迫骨折の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。
ほとんどの場合は、体への負担が少ない保存療法が選ばれます。
保存療法は、体への負担が軽いため、多くの患者さんが希望する治療法です。
しかし、痛みが強く長期間続き、痛みに耐えることが体力的に難しい場合は、痛みを早く緩和できる手術療法が提案されることもあります。
治療を進めるにあたっては、保存療法と手術療法の両方を理解した上で選択することが望ましいため、以下でそれぞれの治療法について詳しく解説します。
保存療法
保存療法は痛みを緩和しながら、ギプスやコルセットで固定して骨が固まるのを待つ治療です。
保存療法が適用できるかどうかは、骨折の程度や麻酔の可否を踏まえて判断されます。
たとえ痛みが強くても、骨折の状態が軽度であれば、体への負担が少ない保存療法が優先されることが多いです。
患部を固定して安静に過ごすと痛みが軽減されるだけでなく、骨の変形を防ぐことができます。
保存療法で安静にした場合に痛みが和らぐまでの期間は、早ければ1週間から2週間、一般的には1カ月から数カ月程度です。
個人差があるので、必ずしもこのとおりとは限りません。
痛みが強い場合は内服薬や湿布が処方されるので、炎症を抑える効果が期待できます。
手術療法
保存療法を行っても症状が改善しない場合や、脊椎に変形が見られる場合、また腫瘍性の圧迫骨折がある場合には手術療法が必要となります。
手術にはいくつかの方法がありますが、代表的なのが「バルーン椎体形成術(BKP)」です。
これは体への負担が少ない手術として知られています。
バルーン椎体形成術は全身麻酔のもと、約1時間で行われます。
この手術により早期に痛みを和らげることができるため、高齢者でも体への負担を抑えつつ日常生活に復帰しやすくなります。
また、骨粗しょう症の治療も並行して行うことが重要です。
治療内容には、定期的な骨密度検査や内服薬の投与、さらに静脈注射や皮下注射などがあります。
腰椎圧迫骨折はどのくらいで治る?
腰椎圧迫骨折の治療期間は、一般的には数週間から数カ月かかることが多いです。
手術療法を受ける場合、骨折や痛みは手術で改善できますが、術後はリハビリが必要なため完治までには時間を要します。
治るまでの期間は個人差が大きく、どの程度の骨折なのか、患者の体力や合併症の有無によって大きく違いがあります。
再発や慢性化することを防ぐためにも、医師と相談して計画的に治療を進めていきましょう。
腰椎の圧迫骨折による高齢者の入院期間
腰椎の圧迫骨折で手術を行う高齢者の入院期間は、個人差がありますが、バルーン椎体形成術の場合は1週間程度です。
バルーン椎体形成術は切開が小さくて済むため手術時間が短く、体への負担が抑えられる手術方法ですが、まれに合併症を引き起こすことがあります。
合併症が起きた場合には、合併症の治療も必要なため、その分入院期間が長くなります。
再発を防ぐため、退院後も定期的に手術後の状態を診てもらうために通院が必要です。
特に骨粗しょう症が原因となっている場合には、予防と治療が欠かせません。
また、手術後に痛みなどを感じるなど、異変を感じた場合にはすぐに担当医師へ相談しましょう。
腰椎の圧迫骨折を予防する日常生活での注意点
腰椎の圧迫骨折を予防するためには、日々の生活で気を付けるべきポイントがあります。
これらは圧迫骨折の予防だけでなく、健康的な暮らしを維持する上でも非常に重要なことばかりです。
ぜひ積極的に取り入れていきましょう。
腰椎の圧迫骨折を経験した方はもちろん、まだ発症していない方も、予防を意識することが大切です。
バランスのよい食生活
腰椎の圧迫骨折を予防するには、骨粗しょう症を防ぐことが重要です。
特に、カルシウムに加え、ビタミンDやビタミンKなどの栄養素をしっかりとって、骨を丈夫に保ちましょう。
以下の表は、骨を強くするために必要な栄養素と、それらを多く含むおすすめの食品です。
栄養素 | おすすめの食品 |
カルシウム (骨や歯を形成する) | ・ 牛乳やチーズ、ヨーグルトなど乳製品 豆腐や納豆などの大豆製品・ 野菜・ 海藻類 |
ビタミンD (カルシウムの吸収を促す) | ・ サケやイワシなど魚類 ・ シイタケやキクラゲなどのキノコ類 |
ビタミンK (カルシウムを取り込み骨を強くする) | l ほうれん草や小松菜など野菜類 ・ 鶏もも肉 ・ 海藻類 ・ 納豆 など |
適度な運動
適度な運動は、骨粗しょう症の予防に役立ちます。
高齢になるほど体の回復力が低下しがちなため、ウォーキングなど無理なく継続できる運動を続けていくことがポイントです。
普段あまり体を動かす習慣がない人は、息切れを起こすような運動ではなく、心地よい疲労感が感じられる程度がよいでしょう。
適度な運動を、長期間にわたって継続することが大切です。
転倒に注意
転倒は、腰椎圧迫骨折につながりやすい原因の一つです。
住み慣れた自宅でも小さな段差につまずいたり、スリッパを履いていて滑ったりと、転倒して圧迫骨折を引き起こす可能性があります。
家の中の段差を解消することや、床の滑り止めや夜間照明の設置など住環境を整えることで、腰椎圧迫骨折が起こるリスクを大幅に減らせます。
外出の際には杖や手すりを活用し、無理のない速度や歩幅で安全に歩きましょう。
日光浴
日光浴は大切ですが、日光浴が直接腰椎圧迫骨折を予防するわけではありません。
腰椎圧迫骨折を起こさないために気を付けたいことの一つが、骨粗しょう症の予防です。
骨を丈夫に保つには、骨を形成するカルシウムを摂取すると同時に、カルシウムの吸収を助ける役割を持つビタミンDの摂取が効果的です。
日光浴は骨粗しょう症予防に効果的で、太陽の光を浴びると体内でビタミンDが作り出されます。
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、カルシウムの摂取と並行して意識するのがおすすめです。
まとめ
この記事では、腰椎の圧迫骨折について、原因や症状、治療方法、そして予防のポイントまで解説しました。
高齢者に多く見られる腰椎圧迫骨折は、悪化すると寝たきりになったり、後遺症が残ったりするおそれがあります。
そのため、日頃から骨折を予防する意識を持つことがとても重要です。
特に、骨粗しょう症が圧迫骨折の主な原因であるため、適度な運動や栄養バランスの取れた食事を心がけ、骨を丈夫に保つ生活習慣を意識しましょう。
また、腰に痛みや違和感を覚えた際は自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。