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なぜ40歳から介護保険料を支払うの?計算方法や注意点を解説

なぜ40歳から介護保険料を支払うの?計算方法や注意点を解説

40歳になると給与明細に「介護保険料」と記載され、戸惑う方も多いでしょう。

収入が変わらなくても介護保険料の負担で手取りが減り、生活に影響を感じる人もいます。

しかし、介護保険料は日本の社会保障制度を支える重要な仕組みであり、支払いを拒否するとペナルティが科されることもあります。

本記事では、介護保険制度の基本的な仕組みや保険料の徴収方法、金額のシミュレーションを詳しく解説します。

後半では減免制度や民間の介護保険についても紹介するので、ぜひ本記事を参考に正しい知識を身に付けてください。

なぜ介護保険料は40歳から払うの?

厚生労働省は、40歳から介護保険料を支払う理由として「ご自身も加齢に起因する疾病により介護が必要となる可能性が高くなることに加えて、ご自身の親が高齢となり介護が必要な状態になる可能性が高まる」ことを挙げています。

日本全体の高齢化や核家族化を背景に、社会全体で介護を支えることを目的として介護保険制度は制定されました。

参照:厚生労働省「介護保険制度について (40歳になられた方へ)」

介護保険の被保険者とは

 

介護保険の被保険者は市区町村に住む40歳以上の人を対象とし、40歳以上64歳以下の医療保険加入者を第2号被保険者、65歳以上を第1号被保険者としています。

医療保険加入者とは、健康保険や国民健康保険、船員保険などの被保険者のことです。

介護保険料は健康保険に上乗せする形で徴収されることとなっています。

介護保険制度のしくみ

 

介護保険制度は、国民の共同連帯の精神に基づき、社会全体で介護にかかる費用を負担します。

ただし、40歳以上の介護を必要とするすべての人が介護保険によるサービスを受けられるわけではありません。

40歳以上64歳以下で特定疾病により介護が必要となった人、または65歳以上で要支援・要介護と認定され、介護サービスを必要としている人が対象です。

特定疾病は以下の16の疾病に限定されます。

  • 末期がん
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う)

介護保険料は何に使われる?

 

介護サービスを利用すると、利用者は介護にかかる費用の1~3割を負担します。

残りの7~9割は被保険者から集められた保険料と公費によって賄われ、介護サービスを提供した事業者に介護報酬として支払われる流れです。

事業者に支払われる介護報酬の内訳は、国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%、第1号被保険者からの介護保険料が23%、第2号被保険者からの介護保険料が27%とされており、介護保険料と公費が50%ずつとなるように設定されています。

3年おきに改定

 

介護サービスにかかる費用は、介護が必要な方の人数や介護度によって増減します。高齢化が進めば、介護にかかる費用も多くなることでしょう。

そのため、介護保険料は定期的に金額の見直しが行われます。介護保険制度は原則として、3年に一度見直しや改定が行われ、介護保険料や介護報酬が調整される仕組みです。

これによって、公費と介護保険料が50%ずつになるように維持されています。

介護保険料はいつから払う?

介護保険料は国民年金や厚生年金とは異なり、40歳を契機に支払い義務が生じます。滞納すればペナルティも発生するため注意が必要です。

介護保険の支払いが始まるタイミングや支払い方法について解説します。

介護保険料の発生時期

 

第2号被保険者の介護保険料は40歳の誕生日の前日が属する月から65歳を迎える日の前月まで発生します。

そのため、6月15日に40歳の誕生日を迎える人が、誕生日前の6月1日に特定疾病により介護が必要になった場合でも、介護保険料による介護サービスの利用が可能です。

ただし、給料から天引きされる場合、6月の勤務によって7月に給料が支給される会社であれば、介護保険料の支払いは7月に受け取る給料から引かれることとなります。

第1号被保険者は65歳になった月からとなり、基本的には年金からの天引きによる徴収です。

誕生日が1日の人は要注意

 

介護保険料の支払いは、40歳の誕生日の前日が属する月からとなるため、6月1日が誕生日であれば、その前日の属する月である5月から介護保険料が発生します。

同様に、被保険者としての受給権も5月1日から発生することとなるため、誕生日が1日の方は注意しておきましょう。

介護保険料は何歳まで払う?

 

国民年金の保険料は原則として60歳まで、厚生年金は70歳までですが、介護保険料には支払いの期限がありません。

一生涯支払うこととなり、被保険者としての受給権も一生続きます。

介護保険料の納付通知が来ない?保険料の徴収方法

 

国民年金の場合、20歳になると日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」が届きます。しかし、介護保険は40歳になっても通知が来ることはありません。

介護保険料の支払い方法は、会社員や自営業、年金受給者によって異なりますが、基本的には医療保険に上乗せされる形で支払うこととなります。

会社員の場合、医療保険は給料から天引きされていますが、勤めている会社によっては給与明細に「介護保険料」と分けて明記されていないこともあり、気づかないうちに支払っていたという方もいらっしゃるかもしれません。

自営業の方は、国民健康保険を現金納付や口座振替などで支払っていれば、介護保険料も納付していることになります。

年金受給者も同様に年金から天引きされていますが、年金額が年間18万円未満の場合は普通徴収となるため、納付書もしくは口座振替などでの支払いが必要です。

介護保険料を払い忘れるとどうなる?

 

介護保険制度は、被保険者の保険料によって維持されており、本人が支払えない場合、必要に応じて家族が支援を求められることもあります。

また、滞納が1年以上続けば、介護サービスにかかる費用の10割を支払うことになり、所定の手続きを行わなければ、本来支給される7~9割が返還されません。

1年半以上続くと、7~9割の費用が返還されず、介護保険料の滞納分と相殺され、2年以上続けば、介護サービスの利用負担割合が引き上げられ、高額介護サービス費制度の使用も認められなくなります。

40歳からの介護保険料はいくら払う?ケース別シミュレーション

介護保険料が実際にいくらになるのかは、ご自身の収入や住んでいる地域によって異なるため、一概にはいえません。

しかし、突然の天引きに驚かないよう、シミュレーションを通じて目安を知っておくことは重要です。

ここでは、会社員や自営業、年金生活者といった立場別に、具体的な事例をもとに介護保険料の計算例を紹介します。

ご自身の状況と照らし合わせながら、将来の家計の見通しに役立ててください。

介護保険料の金額はなにで決まる?

 

介護保険料はいくつかの要因によって決まります。

一つは、本人の前年の所得や4月1日時点での課税状況です。

所得が多いほど保険料は高く、低所得者や非課税世帯は安くなります。

また、第1号、第2号ともに、それぞれの保険者となる自治体や健康保険団体の規定により、保険料に差が生じることもあります。

40歳以上64歳以下のサラリーマンの場合

 

サラリーマンであれば、会社経由で全国健康保険協会(協会けんぽ)などの健康保険に加入していることでしょう。

この場合の保険者は健康保険の組合です。

標準報酬月額と標準賞与額のそれぞれに、組合独自の「介護保険料率」をかけ、被保険者と勤務先とで折半したものが実際に被保険者が支払っている介護保険料になります。

標準報酬月額とは、4~6月の給与額を平均した金額を「標準報酬月額表」に照らし合わせ、5万8000円から139万円の全50等級に区分されたものです。

標準賞与額は1000円未満の端数を切り捨てた金額となります。

全国健康保険協会では都道府県ごとに介護保険料率が異なっており、ここでは仮に、東京都に住む標準報酬月額30万円、全国健康保険協会加入者の介護保険料を計算します。

全国健康保険協会の令和6年度における東京都の介護保険料率は1.60%でしたので、計算式は以下のとおりです。

300,000×0.0160÷2=2,400

介護保険料率の1.6%をかけ、勤務先と折半した金額の2,400円が被保険者が納めている介護保険料です。

厳密には、医療保険料率と介護保険料率を合算したものと標準報酬月額をかけ、端数を切り捨てたのち、医療保険分を差し引いた分が介護保険料となるため、先程の計算とわずかに誤差が出る場合もあります。

参考:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」

40歳以上64歳以下の自営業・フリーランスの場合

 

第2号被保険者で自営業やフリーランス、無職の方の場合、国民健康保険の支払いに上乗せされた形で支払います。

介護保険料の計算は、所得割・均等割・平等割・資産割の中から、市区町村が独自に組み合わせて算出しているため、詳しく知りたい方はお住まいの市区町村の医療保険課や、介護保険課に問い合わせるとよいでしょう。

  • 所得割額:世帯ごとの前年の所得に介護保険料率をかけて算出される金額。所得は収入から必要経費と基礎控除額を引いたもの。
  • 均等割額:国民健康保険の加入者の人数に応じて算出される金額。未就学児の子どもは5割減額。
  • 平等割額:世帯の人数に限らず、1世帯ごとに定額で支払う金額。
  • 資産割額:所有する土地や家屋といった固定資産に応じて算出される金額。

東京都新宿区に住む自営業の夫婦2人の世帯で、前年度の所得が300万円だったと仮定して介護保険料を計算してみましょう。

新宿区の場合、所得割額と均等割額の合計が保険料となります。

令和7年においては所得割額の保険料率が2.25%、均等割額は16,600円です。

  • (所得割額)3,000,000×0.0225=67,500
  • (均等割額)16,600×2=33,200

所得割額+均等割額=100,700円(1年間に支払う介護保険料)

以上の計算から、1年間に支払う介護保険料は100,700円となります。

参照:新宿区「保険料の計算方法について」

65歳以上の場合

 

第1号被保険者となる65歳以上の保険料は、本人または世帯の所得を、市区町村ごとに定める基準額に照らし合わせて決定されます。

例えば、新宿区では所得に応じて18段階に分けられています。

お住まいの自治体の保険料を確認してみるとよいでしょう。

参照:新宿区「 介護保険料の決まり方」

主婦やパートの場合

 

被保険者の扶養となっている主婦やパートの方に関しては、被保険者の介護保険に加入している扱いとなり、介護保険料は原則発生しません。

ただし、加入している健康保険組合の規定によっては、夫が65歳、妻が64歳以下の場合、第2号被保険者となる妻の保険料が発生することがあります。

知っておきたい介護保険料の減免や全額免除の制度

さまざまな事情により、介護保険料の支払いが困難になる場合があります。

いくつかのケースでは介護保険料の減免や全額免除を受けることが可能です。

所定の手続きが必要となるものもありますので、一度確認しておきましょう。

介護保険料の支払いのない人は?

 

介護保険料の支払いが全額免除されるケースは大きく分けて3つあります。

産前産後休業や育児休業中は一時的に保険料が免除されます。

また、生活保護受給者は医療保険からも外れることから、介護保険料の支払いがありません(65歳を過ぎて第1号被保険者となった場合も、全額が生活扶助で賄われるため、本人の実質負担額はゼロとなります)。

生活保護受給者が介護サービスを利用する場合、公的扶助の中の介護扶助によって利用料の全額が事業所に支払われます。

上記の2例と異なり、海外居住者や短期滞在している外国人には、保険者資格そのものがないため、保険料は発生しません。

介護保険への加入は、日本国内に住所を有していることが条件です。

介護保険料が減免される対象は?

 

一時的または継続的な低収入により、介護保険料の支払いが困難になる場合もあります。

しかし、以下のような場合には手続きをすることで、保険料の減免を受けることが可能です。

 

【収入が著しく減少した人】

生計を維持していた人の死亡や重篤な障害、長期入院、倒産や失業によって収入が大きく減少した場合、減免の対象となる可能性があります。

減免の額や条件は各市区町村で異なるため確認が必要です。

また、住民税非課税世帯に該当する場合は、全額免除になることもあります。

 

【災害の被害に見舞われた人】

地震などの大きな災害によって、甚大な被害を受けた人は、保険料の減免や全額免除、または猶予される可能性があります。

減免は前年の所得と被害規模の程度によって決定されます。

そのため、減免申請書と併せて、被災証明書や損害の程度や割合が確認できる資料の提出が必要です。

 

【低所得者で生活が困難な人】

所得が低いことから、生活が困難と認められる場合も介護保険料の減免対象となります。

ただし、減免が認められる所得の基準は各市区町村によって異なるため、確認が必要です。

また、活用できる資産がある場合や扶養できる家族や親族がいる、介護保険料を滞納しているといった場合は減免の対象から外れることもあります。

自治体独自の減免制度

 

上記のほかにも、自治体独自の減免制度を設けている場合があります。

例えば、干ばつなどによって農作物が不作となった、台風で不漁が続いたといった理由でも減免措置を受けられることがあるため、収入が大幅に下がったときは一度お住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。

世帯同一の場合の控除

 

介護保険料は本来被保険者本人が支払うものですが、生計を一にする家族の介護保険料を世帯主が全額支払うことによって、世帯主は支払った介護保険料を社会保険料控除とすることが可能です。

これを利用すれば、両親と世帯を同一にし、親の介護保険料を支払うことで自身の節税につなげることができます。

ただし、世帯を分けていれば両親は非課税世帯として高額療養費や介護サービスの自己負担割合が下がっていたものが、世帯を同一にしたことで上限額が上昇してしまうというデメリットもあるため、注意が必要です。

民間の介護保険は必要?

介護保険制度は介護サービス利用時の負担を1~3割に抑えることができ、所得に応じた負担限度額も設定されています。

しかし、介護は数年から時には10年以上にも及ぶこともあるため、かなりの費用負担になることもあるでしょう。

将来の介護費用負担に不安を感じる場合は、公的介護保険だけでなく民間の介護保険を契約することも選択肢の一つです。

ライフプランの設計の際に、視野に入れてみてはいかがでしょうか。

公的介護保険だけで足りる?

 

介護は長期化することが多く、公益財団法人生命保険文化センターの「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間は平均で61.1カ月と、5年以上に及んでいます。

介護保険サービスには上限があり、最大まで利用した場合の利用者負担は以下のとおりです。

居宅サービスにおける一カ月あたりの利用限度額と負担額(1単位10円で計算)

利用限度額自己負担割合

1割の場合

自己負担割合

2割の場合

自己負担割合

3割の場合

要支援150,320円5,032円10,064円15,096円
要支援2105,310円10,531円21,062円31,593円
要介護1167,650円16,765円33,530円50,295円
要介護2197,050円19,705円39,410円59,115円
要介護3274,80円27,048円54,096円81,144円
要介護4309,380円30,938円61,876円92,814円
要介護5362,170円36,217円72,434円108,651円

 

要介護1でサービスを上限まで利用し、利用者負担割合が1割の場合、毎月16,765円の費用が発生します。

さらに在宅であれば、住居改修費や車椅子などの福祉用具貸与費、リクライニングベッドや紙おむつといった生活まわりの費用も必要です。

施設入所でも、介護サービス費に食費や住居費が追加され、月に10万円を超える出費も珍しくありません。

参照:生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」

民間介護保険の役割と契約時のポイント

 

民間保険の特徴は、公的保険のような現物給付ではなく、金銭給付であることです。

そのため、公的保険の支払いにも利用でき、上限以上に充実したサービスを受けることも可能になります。

契約は任意になりますが、もしも将来における十分な貯蓄がなく、ご自身の介護を頼める人もいない場合は、若いうちに民間保険に入ることも選択肢の一つです。

注意点としては、保険会社の契約によっては介護認定を受けるだけでは保険金が支払われないこともあるため、よく説明を聞いてしっかり吟味してから契約しましょう。

介護保険料における注意点

介護保険料は一度納め始めると、一生涯にわたって支払いが続くものです。

保険料の額は自身の収入や住んでいる地域によって変わるため、転職や引っ越しの際に金額が変動することもあります。

また、扶養関係や健康保険の種類によっても保険料発生のタイミングや支払い方法が異なるため、制度を正しく理解しておくことが重要です。

40歳未満でも介護保険料が発生するケースはある?

 

本来は、被保険者が40歳未満であれば扶養されている配偶者が40歳以上であっても介護保険に加入することができず、保険料の支払いも発生しません。

しかし、健康保険組合には「特定被保険者制度」が認められており、40歳未満の被保険者に40歳以上の被扶養者がいる場合、健康保険組合の規定により、介護保険料が発生することがあります。

また、特定被保険者制度が適用されていると、65歳以上の被保険者に65歳未満の被扶養者がいる場合も、被扶養者が第2号被保険者として保険料が発生する場合もあるため注意が必要です。

転職や引っ越し時も要注意!介護保険料の変更と手続き

 

転職すると、加入する健康保険組合が変わるため、介護保険料の額や徴収方法も変わる可能性があります。

特に協会けんぽと組合健保では介護保険料率が異なるため、思わぬ増減が生じることもあるので注意が必要です。

また、引っ越しによって国民健康保険に加入している場合は、住民票の異動とともに新しい自治体での保険料が再計算されます。

いずれの場合も、必要な届け出や切り替えの手続きを早めに行い、保険料の未納を防ぐことが大切です。

まとめ

40歳から始まる介護保険料の支払いは、多くの人にとって突然の負担に感じられるかもしれません。

しかし、介護保険制度は将来の自分や家族のための重要な社会保障制度です。

仕組みを理解し、納付のタイミングや金額を把握しておくことで、不安や混乱を減らすことができます。

また、収入が減少した際の減免制度や民間保険の活用など、ご自身に合った備えを考えることも大切です。