同行援護でやってはいけないことは何がある?できることも含めて詳しく紹介

同行援護とは、視覚障がいのある方が安心して外出できるようサポートする福祉サービスです。
しかし「同行援護で何ができて、何がやってはいけないのか」を明確に理解していない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、同行援護で禁止されている行為・認められている行為を具体的に紹介し、現場で迷わず対応するためのポイントを解説します。
同行援護とは?
同行援護とは、移動や外出が困難な視覚障がいをお持ちの方に向けて、援助を行う福祉サービスです。
具体的には、通院や買い物、役所での手続きといった外出の付き添いを行い、交通機関の利用をサポートしたり、周囲の状況を言葉で伝えたりします。
単なる同行ではなく、安心して移動できるよう配慮しながら、利用者の自立した暮らしを支える役割を担っているのが特徴です。
同行援護の対象者や利用条件
同行援護の対象者は、基本的に視覚障がいをお持ちの方で、移動や外出が難しい方です。
そして、利用条件は以下の2つを満たす必要があります。
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出典:厚生労働省「障害福祉サービスについて」
これら2つの条件を満たし、ご本人に支援・援助が必要と判断された場合に利用できます。
また、身体介護を伴う場合は、以下の条件を満たす必要があります。
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このように、視覚障がいと身体障がいのどちらにも該当する場合は、利用条件が少し異なってきます。
行動援護との違い
障害福祉のなかには、「行動援護」と呼ばれるサービスもあります。
同行援護と行動援護の具体的な違いは、対象者とサービス内容です。
同行援護は先述したとおり、視覚障がいをお持ちの方が対象者となり、外出における視覚面でのサポートや情報補助が主な仕事です。
一方、行動援護は、知的障がいや精神障がいをお持ちの方が対象者となります。
外出する際の支援や援助といった内容はほとんど同じですが、行動する際の危険の回避や予防的対応、身体対応などが仕事に含まれます。
移動支援との違い
同行援護と移動支援は、対象者とサービスの範囲、そして管轄が異なります。
移動支援は、知的・精神・身体・視覚といった障がいをお持ちの方が対象です。
サービス内容は、主に外出に必要な移動の援助や支援のみですが、個別支援やグループ支援といった人数も異なります。
また、同行援護とは管轄が異なり、同行援護は国で、移動支援は市区町村です。
国が管轄の場合は、住む場所に関わらず利用条件やサービス内容に変わりはありませんが、市区町村が管轄する場合は、地域によって異なってきます。
【同行援護のサービス内容】できること・やってはいけないこと
同行援護は、視覚に障がいをお持ちの方が安心して外出できるよう支えるサービスですが、提供できる支援の範囲と、行うことが認められていないサービスが明確に定められています。
ここでは、同行援護で実際に行えること、そして禁止されていることを整理し、サービスの具体的な内容を分かりやすく解説していきます。
同行援護でできること
同行援護の主な仕事は、視覚に関する援助や支援、移動する際の援護、排泄や食事などの援助です。
以下でそれぞれ詳しく紹介しますので、参考にしてください。
視覚に関する支援
視覚支援は、出先や移動中に必要な情報を利用者に分かりやすく伝えることです。
具体的には、以下が挙げられます。
- スーパーで食品の場所や値段、賞味期限などを伝える
- スポーツ観戦時に状況を伝える
- 銀行や役所での代筆や代読サポート
場合によっては、正確な情報や状況を伝える必要があるため、相手にとって分かりやすく、誤解のない言葉で説明することが求められます。
移動援護
移動援護は、安心して移動できるように周囲の状況を正確に伝える業務です。
視覚障がいをお持ちの方は、移動する際に周囲の障害物に気づかなかったり、標識を見落としたりする可能性が非常に高くなります。
また、建物の入り口が分からず、1人だと見つけられないケースも少なくありません。
同行援護ヘルパーは、一緒に移動しながら段差や階段、車道との境目、信号機の有無などが周辺にあることを正確に伝えながら、安心して移動できるように支援します。
排泄や食事の援助
排泄や食事の援助も同行援護ヘルパーが行う業務の一つです。
具体的には、以下が挙げられます。
- トイレの場所までの移動
- 鍵の位置や流すボタンの場所を伝える
- お箸がある場所や食事内容を伝える
また、身体障がいを伴う方の場合は、おむつ交換や食事介助なども含まれます。
なお、身体障がいを伴う支援や介助は、事業所によって行っていないところもあるようです。
病院内での支援も可能
同行援護は、病院内での支援も可能となっています。
具体的には、以下の支援を行います。
- 院内の移動援護
- 受付・会計・処方箋・薬の受け取りの援助
なお、問診票の記入といったプライバシーに関わることは、基本的に病院のスタッフが代筆しますが、利用者さんが了承すれば同行援護ヘルパーでも可能です。
現地集合、現地解散もできるが注意が必要
利用者さんの希望によって現地集合・現地解散も可能です。
ただし、基本的には「移動を伴う支援」が前提のため、病院やカフェで集合して、その場で解散といった利用はできません。
移動を含む形であれば、ショッピングモールの最寄り駅で集合して一緒に用事を済ませ、帰りは駅で解散する、といった方法は可能です。
このルールについては判断が難しい場合も多いので、必ず上司や同僚に相談するようにしましょう。
同行援護でやってはいけないこと
厚生労働省によると、次の3つは禁止されています。
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出典:厚生労働省「同行援護に係る報酬・基準について」
基本的には、仕事や通勤といった報酬を得る場合や利用時間を超える場合は、利用不可となっています。
また、社会的に不適切とされるギャンブルや飲酒、風俗のための外出も認められていません。
そのほかにも次に当てはまるケースも認められていません。
移動を伴わない外出
先述しましたが、同行支援は基本的に「移動を伴う支援」が前提となるため、移動を伴わない外出は認められていません。
そのため、目的地に集合して、その場で解散といったケースでは利用不可となります。
しかし、目的地近くの駅や喫茶店に集合し、ヘルパーと一緒に目的地へ向かうといった方法なら、移動が伴うため利用可能です。
ヘルパーが車を運転しての移動
移動が生じるサービスであれば基本的には利用できますが、ヘルパーが車を運転しての移動は不可となります。
同行援護は、原則として交通機関の利用を前提としたサービスのため、徒歩以外では電車やバスなどが移動手段となります。
なお、利用する事業所が介護タクシーや福祉有償運送の許認可を受けている場合は、同行支援と併せて利用できるところもあります。
居宅における代筆や代読
外出時における代筆や代読はサポートしてもよいとされていますが、居宅における場合は援助できません。
その理由は、居宅におけるサービスは「居宅介護」に該当するからです。
居宅介護は、同行援護と同様に障がい福祉サービスの一つに当たりますが、対象者とサービスを提供する場所が異なります。
基本的には在宅でのサービスとなりますので、自宅内における援助や支援は、同行支援では受けられません。
しかし、ケースによっては居宅介護と同行支援の両方を利用できる場合があり、その場合では利用可能となります。
同行援護の一日の流れ
同行援護のサービスは、一日の中でどのように支援が行われるかを把握しておくことも大切です。
参考として、以下に同行援護の一日の流れを紹介します。
| 時間 | サービス内容 |
| 10:00 | 利用者さんのご自宅や喫茶店といった集合場所に行く。 目的地まで一緒に徒歩や公共交通機関を使って向かう。 |
| 10:30 | 目的地に到着。 利用者さんは用事を済ます。ヘルパーは必要に応じて援助・支援する。 |
| 12:00 | 昼食のためレストランに移動。 ヘルパーは必要に応じて食事支援を行う。 |
| 13:00 | 利用者さんのご自宅まで一緒に向かう。 |
| 13:30 | 利用者さんのご自宅に到着後、サービス終了。 |
こちらは参考として例を挙げましたが、ケースによっては利用時間が延びたり短くなったりする場合もあります。
同行援護ヘルパーとして働くための資格要件と取得方法
同行援護のヘルパーとして働くためには、資格を取得する必要があります。
具体的には、以下の5つです。
- 同行援護従事者養成研修(一般課程)
- 居宅介護職員初任者研修
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
なお、こちらの資格の中でも、同行援護従事者養成研修(一般課程)以外は、視覚に障がいを持つ方への実務経験が1年以上求められます。
それぞれの資格の特徴や取得方法を詳しく紹介していきます。
同行援護従事者養成研修(一般課程)
同行援護従事者養成研修は、同行援護ヘルパーとして働くために、視覚障がいの特徴や外出支援を学べる資格です。
紹介する資格の中でも、こちらの資格以外は「視覚障がいのある方の直接処遇経験1年以上が必須」となるため、同行援護のヘルパーとして働きたい方にもっとも取得しやすい資格です。
同行援護従事者養成研修には、「一般課程」と「応用課程」の2種類がありますが、一般課程が基礎を学ぶのに対し、応用課程ではより高度なスキルや個別支援計画などが学べます。
一般課程の取得方法は、都道府県や市区町村が指定した機関、介護スクールなどで、合計20時間の講義や演習といったカリキュラムを修了すれば取得できます。
居宅介護職員初任者研修
居宅介護職員初任者研修は、居宅における介護の知識やスキルを習得できる資格です。
取得することで、居宅介護や重度訪問介護といった、障がい福祉サービスに従事することが可能です。
取得方法は、合計130時間の講義を受講し、修了試験に合格すれば取得できます。
なお、同行援護ヘルパーとして働くためには、こちらの資格取得後に視覚障がいのある方の直接処遇経験が1年以上必須です。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、介護の仕事に関する基礎的な知識や技術を習得するための資格です。
取得することで、利用者さんへの直接介護(身体介助)や、訪問介護の仕事に従事できます。
取得方法は、民間の介護スクールやハローワークの職業訓練などで、合計130時間の講義や演習を修了し、試験に合格すれば取得可能です。
なお、こちらの資格も同行援護ヘルパーとして従事するためには、取得後に視覚障がいのある方の直接処遇経験が1年以上必要です。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修とは、国家資格である「介護福祉士」を受験するために必須の資格で、より高度なスキルや知識を習得できます。
取得すると、介護福祉士の受験資格が得られ、また訪問介護におけるサービス提供責任者として勤務することが可能です。
取得方法は、以下のとおりです。
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介護福祉士実務者研修は、介護サービスを含む福祉サービスの実務経験が3年以上必要です。
また、こちらの資格も同行援護ヘルパーとして働くためには、視覚障がいのある方の直接処遇経験が1年以上必要です。
介護福祉士
介護福祉士は、介護福祉に関する知識やスキルを習得したことを証明できる国家資格です。
取得すれば、業務範囲が広がるだけでなく、スタッフへのアドバイスや指導なども行えるようになります。
取得方法は、以下のいずれかを満たして、国家試験に合格する必要があります。
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こちらの資格も同行援護ヘルパーとして従事するためには、取得後に視覚障がいのある方の直接処遇経験が1年以上必要です。
同行援護ヘルパーとして働ける職場
同行援護は基本的にヘルパーとして外出などを行うため、訪問介護系の事業所が働ける職場となります。
同行援護のみを行っている事業所は少なく、そのほかの介護サービスも含めたサービスを提供しているところがほとんどです。
そのため、「訪問介護」や「居宅介護」といった、訪問に関する事業所を調べると見つかりやすいでしょう。
同行援護ヘルパーの平均給料
同行援護の給料についても確認していきましょう。
厚生労働省の「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査 調査結果報告書」によると、以下の結果が出ています。
| 平均給与 | |
| 介護職員全体(常勤) | 327,720円 |
| 介護職員全体(非常勤) | 107,720円 |
| 同行援護(常勤) | 319,880円 |
| 同行援護(非常勤) | 104,260円 |
同行援護の平均給与は、介護職員全体と比較しても数千円程度少ない金額となっています。
同行援護ヘルパーに向いている人
同行援護ヘルパーとして働きたい方の中には、自分が向いているのか知りたい方も多いと思います。
ここで、向いている人を3つ紹介しますので、参考にしてください。
臨機応変な対応ができる人
同行援護ヘルパーとして働いていると、予期せぬ出来事やトラブルが発生することがあります。
例えば、バスに乗っている際に渋滞に巻き込まれたり、電車が止まってしまったりすると、利用者さんに負担がかかる可能性があります。
そのため、素早い判断や対応が必要になってくる場面も多く、臨機応変に対応できる人は、向いているといえるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
同行援護は、利用者さんとスタッフの1対1で行動することが基本です。
コミュニケーションをとるのが苦手だからといって会話がないと、利用者さんも不安になってしまいます。
そのため、積極的な会話や気遣いができる人は、向いているといえるでしょう。
方向感覚が優れている人
同行援護は移動を伴うサービスのため、方向感覚が高い人が求められます。
利用者さんは目が不自由な方ばかりですので、迷子になってしまうと体力的にも精神的にも負担を感じやすくなります。
要望によっては、知らない場所へ向かうケースもあるため、移動手段をはじめ地図の把握も必須となります。
同行援護ヘルパーとして働く際に気を付けるべき8つのポイント
同行援護ヘルパーは、単に移動をサポートするだけでなく、利用者の状況に合わせた配慮や、トラブルを防ぐための注意点を理解しておくことが欠かせません。
ここでは、同行援護の現場で特に気を付けたい8つのポイントを取り上げますので、実際の支援の参考にしてください。
利用者ごとに見え方が違うと理解する
視覚障がいと言っても、視力や視野は個々によって異なり、また、その日の天候や利用者さんの体調次第でも見え方が変わってきます。
ヘルパーが利用者さんの目になってどこまで見えるかを確認することはできませんが、関わりの中で理解しようとすることは、安心して移動するための必要事項となります。
安全確保を最優先に支援する
同行援護は、利用者さんを安心安全に目的地まで導き、無事に到着できるよう支援することが目的です。
サポートする場所によっては、交通量が多かったり路面の状況が悪かったりする場合があるため、細心の注意が必要です。
例えば、車道側をヘルパーが歩く、交通量の多い道は避ける、段差や階段がある場所はゆっくり進むといった配慮が必要となります。
白杖を携帯してもらう
視覚障がいをお持ちの方が外出する際は、白杖を使用しなければなりません。
場合によっては「ヘルパーがいるから大丈夫」と思って持ってこない方もいますが、これは道路交通法により違反となります。
もし事故が起こった際に、白杖を持っていなかったことが分かると、ヘルパー側にも過失がつく場合がありますので、必ず携帯してもらいましょう。
緊急時の連絡先を確認しておく
サービス利用時に、事故や病気といった思いがけないトラブルが発生したときは、事業所へ連絡すると同時に、利用者さんのご家族に連絡する必要があります。
そのため、緊急時の連絡先は前もって確認しておきましょう。
また、利用者さんがお持ちの別の疾患や服薬状況、かかりつけの病院なども確認しておくと、処置がスムーズにできるので安心できます。
利用者が安心できる対応を意識する
基本的に利用者さんは目が見えない、もしくはほとんど見えていない状況で、ヘルパーの声と動きを頼りに移動するため、安心できる対応を意識することが大切です。
ポイントとしては、以下を意識しましょう。
- 利用者さんの話を丁寧に聞き取る
- 適切な誘導を意識する
- 体に触れる前に声をかける
- 歩行中は白杖に触れない
- 伝える内容は正確で具体的にする
- 最終的な選択は利用者さんに任せる
- ヘルパーがそばを離れる場合はイスに座ってもらう
18歳未満は必ず保護者に引き継ぐ
利用者さんの中には18歳未満の方もおり、その場合は必ず保護者に引き継いでからサービスを終了しましょう。
ご家族は、サービス中の様子を知りたい方がほとんどです。また、ヘルパーが様子を伝えることで、ご家族の安心にもつながります。
ヘルパーがご家族に様子を伝えることは、サービスの一つとなりますので、忘れず行いましょう。
なお、引き継ぎの際に保護者がいない場合は、未成年の方をそのままにはできませんので、まずは事業所に連絡し指示を仰いでください。
動きやすい服装で支援する
サービス提供する際は、動きやすい服装を選びましょう。
サービス中に思いがけないトラブルが発生した際に、動きやすい服装であれば臨機応変に対応しやすくなります。
また、利用者さんが肩や肘に手を置く場合も多いため、腕が厚すぎるジャケットやツルツルした素材の服は避けましょう。
2時間ルールに気を付ける
同行援護をはじめとする福祉サービスには、「2時間ルール」と呼ばれる決まりがあります。
2時間ルールとは、介護報酬の計算方法に関するルールで、同じ利用者に対して提供する複数のサービスの間隔が2時間未満の場合は、1回分としてまとめて計算されることを指します。
例えば、2時間以内に2つのサービスを行った場合は報酬は1回分として扱われ、逆に2時間以上間隔を空けて実施すれば、それぞれ別のサービスとして報酬が算定されます。
つまり、サービスを連続して行うと報酬が減る可能性があるため、スケジュールの組み方には注意が必要ということです。
まとめ
本記事では、同行援護とは何かを解説し、提供できる支援の範囲と禁止されていることを紹介しました。
また、働くための資格要件や取得方法、働く際に気を付けるべきポイントなども併せて紹介しました。
同行援護は、視覚に障がいを持つ方が安心して外出できるように支える大切な福祉サービスです。
具体的にできること、できないことは制度上しっかり定められていますので、本記事を参考にルールを正しく理解し、安心してサービスを利用・提供できるよう役立ててください。
本記事が、同行援護についての理解を深める一助となれば幸いです。






