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介護度とは?区分や受けられるサービスの内容について解説

介護度とは?区分や受けられるサービスの内容について解説

介護サービスを利用するためには、介護度の判定を受ける必要があります。

そもそも介護度とは、何を基準にして判定されるのでしょうか。

この記事では、介護度の判定に関する基礎知識を分かりやすく解説しています。

介護度の状態の目安や利用できる介護サービスについても解説しているので、参考にしてください。

介護度に関する基礎知識

そもそも介護度は、何を示す値なのでしょうか。

要介護度の区分や種類、有効期間など、介護度に関する基礎知識について解説します。

介護度とは

 

介護度は要介護状態等区分のことで、要介護認定や要支援認定の判定により、介護の必要度を段階で示します。

介護保険制度では、介護や支援が必要になった場合に、介護度に応じた介護保険サービスを受けることができます。

介護保険サービスを利用するためには、要介護度の認定が必要です。

また、要介護認定は介護給付や予防給付が受けられるため、全国一律で定められています。

要介護度の区分

 

要介護状態等区分には、要支援と要介護の区分が設けられています。

要支援者と要介護者の特徴、それぞれの違いについて見ていきましょう。

 

<要支援者>

要支援者の認定区分は、要支援1と要支援2の2段階です。

身体や精神の障がいにより、6ヶ月間継続して日常生活の一部に支障がある状態になります。

基本的な動作はほとんど自分でできるものの、負担の大きい家事などには多少の支援が必要です。

 

<要介護者>

要介護者の認定区分は、要介護1〜要介護5の5段階です。

身体や精神の障がいにより、6ヶ月間継続して日常生活の動作に介助を必要としている状態になります。

身体機能や運動機能の低下が見られるだけでなく、思考力や理解力の低下が見られるケースも少なくありません。

 

<要支援と要介護の違い>

要支援2と要介護1は、どちらも要介護認定等基準時間が、32分以上50分未満と判定された場合に認定される区分になります。

以下のような状態に該当すると、要介護1と判定される可能性が高くなります。

 

  • 状態が安定していない
  • 理解力が低下している

 

脳梗塞や心疾患など、状態が急激に悪化しやすい病気を発症した場合は、要介護と判定されやすくなります。

認知機能が衰えている場合は、介護予防サービスを適切に理解できなくなるため、要介護1と判定される確率が高くなるでしょう。

介護度の有効期間

 

要介護認定の申請日から新規の場合は6ヶ月、継続の場合は12ヶ月が有効期限です。

自治体の条件を満たしている場合は、48ヶ月(4年間)の有効期限になります。

要介護認定は自動更新ではありません。

有効期限を過ぎてしまうと、効力が失われて、介護保険サービスが利用できなくなります。

介護サービスを継続利用したい場合は、有効期限が切れる前に申請しましょう。

なお、介護保険を更新できる期間は、有効期限満了の前日から60日前までです。

満了日を過ぎると、期限切れになります。

要支援・要介護度の状態の目安

介護度の区分は要支援と要介護の2種類で、要支援は1と2の2段階、要介護度は1〜5の5段階です。

それぞれの状態の目安を解説します。

要支援1

 

排泄や食事など、日常生活のほとんどを自分一人でこなせますが、家事や生活動作の一部に見守りや手助けが必要な状態です。

要介護状態にならないように適切な介護予防サービスを受ければ、改善の見込みがあります。

要支援1と判定される可能性があるのは、起き上がりや立ち上がりの際に、支えや手助けが必要な場合です。

掃除などの家事の一部に、見守りや手助けが必要な方が該当します。

要支援2

 

排泄や食事など、日常生活のほとんどを自分一人でこなせますが、身の回りのことに見守りや手助けが必要な状態です。

要介護状態にならないように適切な介護予防サービスを受ければ、改善の見込みがあります。

要支援2と判定される可能性があるのは、立ち上がりや歩行の際にふらつきがある場合です。

入浴時に自分で背中が洗えない、身だしなみを自分で整えることができない方が該当します。

要介護1

 

排泄や食事など、日常生活のほとんどを自分一人でこなせますが、要支援2の状態よりも身体能力や思考能力の低下が見られる状態です。

介護予防サービスを利用しても、改善の見込みがないと判断されます。

要介護1と判定される可能性があるのは、入浴や排泄の際に見守りや手助けが必要な方です。

要介護2

 

排泄や食事など、日常生活で見守りや手助けを必要とすることがあり、身の回りのこと全般に介助を必要とする状態です。

要介護2と判定される可能性があるのは、自分一人で立ったり歩いたりするのが難しい場合になります。

薬を飲むことを忘れる、食事をしたことを忘れる、などの認知症初期症状や、問題行動をとる場合も要介護2に該当しやすいとされます。

要介護3

 

日常生活のほとんどを自分でこなすことができず、食事や排泄、入浴や衣服の着脱に介助が必要な状態です。

要介護3と判定される可能性があるのは、起き上がりや立ち上がり、片足での立位保持ができない場合になります。

複数の問題行動を起こしたり、理解力の低下が見られたりするケースは、要介護3に該当しやすくなります。

要介護4

 

日常生活のほとんどを自分でこなすことが無理で、身の回りのことすべてに介助が必要な状態です。

要介護4と判定される可能性があるのは、全般的な認知機能の低下が見られるとともに、認知症への対応が必要な場合になります。

それに伴う問題行動が多く、暴力や暴言、徘徊などの行動症状や幻覚、妄想、うつなどの心理症状が見られるケースは、要介護4に該当しやすくなります。

要介護5

 

日常生活のほとんどを自分でこなすことが無理で、身の回りのことすべてに最重度の介助が必要な状態です。

立位の動作や移動の動作がほとんどできません。

要介護5と判定される可能性が高いのは、会話など意思の疎通が極めて困難な場合です。

寝返りやオムツの交換が必要な場合は、要介護5に該当しやすくなります。

介護度認定を受けるまでの流れ

介護度認定を受けるまでの手順は、次のとおりです。

 

  1. 申請書を提出する
  2. 訪問調査を受ける
  3. 主治医に意見書を作成してもらう
  4. 一次判定が行われる
  5. 二次判定が行われる
  6. 結果が通知される

 

申請から結果通知までの流れを、詳しく解説します。

申請書を提出する

 

介護度認定を受けるためには、要介護認定申請書の提出が必要です。

申請書は本人または本人の家族が、市区町村の福祉課などの窓口に提出します。

次に該当する方が、代理で提出することも可能です。

 

  • 成年後見人
  • 社会保険労務士
  • 地域包括支援センター
  • 指定居宅介護支援事業者
  • 民生委員
  • 介護相談員

 

申請書の提出時に必要な書類は、次のとおりです。

 

  • 要介護認定申請書
  • 介護保険被保険者証
  • かかりつけ医の診察券
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 本人確認書類

 

40歳以上65歳未満の場合は、介護保険被保険者証ではなく、加入している医療保険の被保険者証が必要です。

必要書類は自治体によって異なるため、事前に確認しておくと申請手続きがスムーズに進みます。

訪問調査を受ける

 

市区町村の職員や市区町村から委託を受けた指定相談支援事業者が、認定調査員として申請者の自宅や入院先の病院、入所施設を訪問します。

訪問調査では、概況調査と基本調査が実施され、概況調査では、現在利用中の介護サービスや家族の状況、居住環境、日常的に使用する機器の確認が行われるでしょう。

基本調査として確認されるのは、次の項目です。

 

調査項目具体的な内容
身体機能・麻痺の有無

・関節の動く範囲

・寝返りや起き上がりができるか

・座位や立位の保持(片足、両足)

・立ち上がりや歩行ができるか

・視力や聴力

生活機能・移動や移乗ができるか

・食べ物を飲み込めるか

・排泄が可能か

・歯磨きや洗顔ができるか

・衣類の着脱ができるか

・外出頻度

認知機能・生年月日、年齢、名前が言えるか

・直前に何をしていたか

・今の季節

・今いる場所

・徘徊の有無

精神・行動障害・被害妄想や作り話の有無

・感情が不安定になるか

・ 昼夜が逆転しているか

・何度も同じ話をするか

・急に大声を出すか

・ 介護への抵抗

・物忘れがあるか

・独り言や独り笑いをするか

・自分勝手な行動の有無

社会生活への適応・薬を内服できるか

・金銭管理ができるか

・意思決定ができるか

・集団行動ができるか

・買い物ができるか

・簡単な料理ができるか

その他・過去14日間に受けた特別な医療

 

認定調査の一般的な所要時間は、30分〜1時間くらいになります。

主治医に意見書を作成してもらう

 

認定調査と同時期に、市区町村から依頼を受けたかかりつけ医の主治医が意見書を作成します。

かかりつけ医がいない場合や、複数の病院に通院していて主治医が選べない場合は、市区町村によって指定された医師から診察を受けることになるでしょう。

この意見書は、要介護度認定の判定に必要なものです。

一次判定が行われる

 

一次判定では認定調査の結果から算出される要介護認定基準時間という値を、以下の表にあてはめて要介護度を決定します。

 

介護度要介護認定基準時間
自立(非該当)25分未満
要支援125分以上32分未満
要支援232分以上50分未満
要介護132分以上50分未満
要介護250分以上70分未満
要介護370分以上90分未満
要介護490分以上110分未満
要介護5110分以上

 

要介護認定基準時間はあくまでも要介護度を決めるための値であり、実際の介護にかかる時間ではないことを覚えておきましょう。

二次判定が行われる

 

一次判定の後に、介護認定審査会が実施され審査と判定が行われます。

介護認定審査会に参加するのは、保険や医療、福祉の専門家です。

次の項目をもとに協議が行われ、最終的な要介護度を決定します。

 

  • 一次判定の結果
  • 主治医の意見書
  • 認定調査

 

二次判定では、一次判定の結果が、意見書や調査と整合性がとれているかを確認するのが基本です。

必要に応じて、要介護度を変更する場合もあります。

結果が通知される

 

要介護度の認定結果は、原則として申請から30日以内に申請者へ通知されます。

通知の方法は書面です。

通知書が届いたら、介護サービスの利用が開始できます。

介護度に応じて受けられる公的介護保険サービス

要介護度認定により受けられる介護保険サービスには、どのようなものがあるのでしょうか。

介護保険サービスの内容を、カテゴリー別に紹介します。

居宅で受けられるサービス

 

要支援や要介護認定を受けた方に、ケアマネジャーがサービスを提供します。

居宅で受けられるのは、次のような介護サービスです。

 

サービスの種類具体的なサービス内容
訪問介護ホームヘルパーによる身体介護や生活援助
訪問入浴介護看護職員や介護士による入浴介護
訪問看護医師の指示による、看護師や保健師による療養上の世話や診察の補助
訪問リハビリテーション理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による心身機能の維持回復、日常生活の自立に向けたリハビリの指導
居宅療養管理指導医師や歯科医師、薬剤師による療養上の世話や、診療の補助

 

これらの介護サービスは、すべて自宅にいる状態で受けることができます。

環境を整備できるサービス

 

利用者の環境を整えることができるのは、次のようなサービスです。

 

サービスの種類具体的なサービス内容
福祉用具貸与自立を支援するための福祉用具を、支給限度額の範囲内でレンタルできる
特定福祉用具購入費の給付レンタルになじまない福祉用具の購入費として、同一年度で10万円までの費用が介護保険から給付される
住宅改修費の給付住宅改修の費用として、同一住宅・同一人につき、20万円までの費用が介護保険から給付される

 

自立を支援する福祉用具とは、車いすや特殊寝台、移動用リフト、歩行支援具などになります。

レンタルになじまない福祉用具は、腰掛便座や入浴補助具です。

給付については、所得に応じた7〜9割が、購入費用を支払った後に払い戻されます。

特定福祉用具は、都道府県の指定する業者から購入するのが決まりです。

住宅改修費は、実施する前に市区町村に申請書を提出する必要があります。

施設への通所で受けられるサービス

 

要支援や要介護認定の方が自宅から施設や医療機関に通って受けられるサービスで、通所介護と通所リハビリテーションに分かれます。

施設で受けられる介護サービスは、次のとおりです。

 

サービスの種類具体的なサービス内容
通所介護(デイサービス)生活支援や機能維持、向上を目的としたレクレーションに参加できる
通所リハビリテーション介護老人保健施設や医療機関で、生活支援や機能維持、回復を目的としたリハビリテーションが受けられる
短期入所生活介護家族の介護負担の軽減を目的に、利用者が短期間施設に宿泊する
短期入所療養介護介護老人保健施設や介護医療院、医療機関に短期入所し、介護や看護、機能訓練を受ける
特定施設入居者生活介護指定された特定の有料老人ホームで、日常生活の支援や介護を居住サービスとして受ける

 

施設までの移動は、家族による送迎か、事業者が送迎を行います。

地域密着型サービス

 

地域密着型のサービスは、認知症の高齢者や要介護の高齢者が、住み慣れた地域で生活を続けられるように、市町村が指定した事業者がサービスを提供します。

サービスの種類は、次の10種類です。

 

サービスの種類具体的なサービス内容
定期巡回・随時対応型訪問介護看護24時間対応の介護と看護一体的なサービス
夜間対応型訪問介護夜間対応のホームヘルパーによる介護
認知症対応型通所介護認知症と診断された高齢者が対象のデイサービス
療養通所介護医療と介護の両方のサービス
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)認知症の方が少人数で生活できる入所施設
小規模多機能型居宅介護一つの事業所と契約すれば、デイサービスとショートステイ、訪問介護を受けられる
看護小規模多機能型居宅介護小規模多機能型居宅介護に訪問看護サービスを追加
地域密着型通所介護18人以下の小規模デイサービス
地域密着型特定施設入居者生活介護定員30人未満の有料介護施設
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護定員30人未満の介護老人福祉施設

 

地域密着型のサービスを受けるためには、同一の市町村に住民票があり、居住している必要があります。

施設に入所して受けられるサービス

 

施設サービスは、要介護状態の高齢者に提供されます。

施設の種類と提供されるサービスの内容は、次のとおりです。

 

施設の種類サービスの内容
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)食事、入浴、排泄など日常生活全般の介護
介護老人保健施設日常生活全般の介護から、医療的ケア、機能回復を目的とした専門職によるリハビリテーション
介護医療院医療ケアや機能訓練、日常生活支援

 

介護医療院にはI型とII型があり、I型は長期的な医療ケアが必要になります。

II型は機能訓練や生活支援が中心の施設です。

介護保険サービスを利用する際の自己負担額

要支援や要介護認定を受けた方は、1〜3割の自己負担金を支払うことで、介護サービスを受けることが可能です。

ただし、一部現金による給付もあります。

2025年現在の区分ごとの利用限度額と自己負担額は、次のとおりです。

 

区分利用限度額自己負担額
要支援15万320円1割:5032円

2割:1万64円

3割:1万5096円

要支援210万5310円1割:1万531円

2割:2万1062円

3割:3万1593円

要介護116万7650円1割:1万6765円

2割:3万3530円

3割:5万295円

要介護219万7050円1割:1万9705円

2割:3万9410円

3割:5万9115円

要介護327万480円1割:2万7048円

2割:5万4096円

3割:8万1144円

要介護430万9380円1割:3万938円

2割:6万1876円

3割:9万2814円

要介護536万2170円1割:3万6218円

2割:7万2434円

3割:10万8651円

出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料

 

限度額の範囲内でサービスを利用した場合の自己負担額は、原則1割になります。

一定以上の所得がある場合は、2割〜3割の自己負担です。

限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担になります。

身体状況別の介護度の目安

介護度の目安を身体状況別に解説します。

寝たきり

 

脳卒中や認知症、加齢による衰弱で寝たきりになってしまった場合、自分で食事をしたり、排泄をしたりするのは難しくなります。

入浴もできないので、一人で日常生活を送ることはできません。

基本的には24時間介護が必要となるため、要介護度は最も重度な要介護5と判定されるケースが多く見られます。

ただし、寝たきりの状態であっても、会話による意思疎通が可能な場合は、要介護4と判定されることもあります。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は手足や喉、舌の筋肉が痩せて力がなくなっていく病気で、最終的には痙攣や呼吸困難、言語障がいなどの症状が発症します。

一人で食事をするのが難しくなったり、身体を動かせなくなったりするため、症状の進行具合によって、要介護3〜5相当と判定される可能性が高くなります。

認知症

 

認知症によって日常生活に支障をきたすような症状や行動がある場合は、体が健康な場合でも要介護認定を受けることができます。

症状がどの程度出ているかによって、要介護の区分が決定されるでしょう。

理解力や判断力の低下により、一人で生活できない場合や要介護2〜3に該当する可能性が高くなります。

暴言や暴力、徘徊などの問題行動が見られる場合は、要介護4になる場合もあります。

胃ろう

 

咀嚼や嚥下機能の低下により、口から食事を摂取するのが難しくなった場合に、胃に穴を開けて器具を設置し、栄養を摂取する治療法が胃ろうです。

胃ろうは原因として脳梗塞やALS(筋萎縮性側索硬化症)がかかわっているケースが多いため、要介護4または5になることが多くなっています。

介護度が上がるメリット

介護度が上がると、何が変わるのでしょうか。

介護度が上がるメリットを解説します。

利用できる介護サービスが増える

 

介護保険サービスにはさまざまなサービスがありますが、介護度が上がれば利用できるサービスの種類が増えます。

例えば施設サービスの利用対象者は要介護1以上であることが多く、要支援の場合は特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院に入所することはできません。

施設の入所待ちをしている場合は、要介護度が高いほど入りやすくなります。

居宅サービスは要支援でも利用できますが、要介護とはサービス内容に違いがあります。

地域密着サービスは市区町村の住民であれば利用できますが、夜間対応型訪問介護など一部のサービスは要介護の方のみ利用可能です。

支給限度額が上がる

 

介護サービスの支給限度額は、要介護のレベルが高くなるにつれて上昇していきます。

要支援1は毎月5万320円が上限なのに対し、要介護5は毎月36万2170円です。

支給限度額の範囲内であれば、1〜3割の自己負担で介護保険サービスが利用できます。

介護度が上がれば、より多くのサービスを受けることができるでしょう。

介護度が上がるデメリット

介護度が上がることに、必ずしも得があるわけではありません。

介護度が上がるデメリットを解説します。

費用の負担が大きくなる場合がある

 

介護度が上がると、一部のサービスで1回あたりの利用料金が上がる場合があります。

例えばデイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)、施設サービスは、介護度が高くなるほど1回あたりの利用料金も高くなっていく仕組みです。

要支援1と要介護5の方が同じ時間だけデイサービスを利用した場合、要介護5の方が自己負担額が高くなります。

必要以上に介護度が高くなってしまうと、同じサービス内容でも費用の負担が重くなってしまう場合があるでしょう。

入所中の施設を退所しなければならない場合がある

 

介護度が上がることにより、現在入所している施設を退所しなければならないケースもあります。

住宅型有料老人ホームでは、心身状態が悪化すると、入所条件を満たせなくなってしまうのです。

介護度が上がるということは、本人の心身の状態が低下しているということです。

介護度が上がっても入所し続けられる施設もあるので、事前に調べておくことが重要になります。

正しい要介護認定を受けるためのポイント

適切な介護サービスを受けるために、状態に合った要介護認定を受けることが大切です。

正しい要介護認定を受けるためのポイントについて解説します。

認定調査に家族も立ち会う

 

認定調査員が申請者の自宅や入院先の病院、入所施設を訪問する認定調査の際には、できるだけ家族も立ち会いましょう。

認定調査では、基本調査と概況調査が実施されます。

初対面の認定調査員からいくつもの質問をされ、強がってできないことをできると答えてしまうケースも少なくはありません。

認定調査の際には家族も同席し、日常生活のどの部分にどの程度の手助けが必要なのか、詳細に伝えるようにしましょう。

主治医としっかり連携をとる

 

正しい要介護認定を受けるためには、主治医と連携しておくことも重要なポイントです。

主治医が作成する意見書は二次判定で使用されるため、身体状況を正確に書いてもらう必要があります。

気軽に相談ができるかかりつけ医を作っておけば、診療の際に身体の状態を詳細に伝えることができるでしょう。

普段から主治医に身体の状態を共有しておけば、意見書の特記事項を記載してもらえる可能性があります。

生活状況を細かくメモしておく

 

普段の生活状況を詳細に書き留めておくことも重要です。

認定調査は、調査員からの質問に回答する形で進行します。

認定調査の時間は限られているため、一つひとつの質問を丁寧に考えて答えることが難しくなります。

中には質問数が多くて、適当に答えてしまったことを後悔している方もいます。

事前に想定される質問に対するメモを作っておけば、伝え忘れを防げるでしょう。

質問には正直に答える

 

認定調査では、できることやできないことを正確に伝えることが大切です。

嘘をついたり、曖昧に答えたりしてしまうと、正しい要介護認定を受けられなくなります。

状況と異なる要介護度に認定されてしまうと、適切な介護サービスが受けられません。

調査員が本人の状態を正確に把握できるように協力しましょう。

過去の病気やケガを確認しておく

 

認定調査を受ける前に、今まで経験してきた病気やケガの詳細を確認してください。

病気やケガが原因で身体機能や認知機能が低下している場合、要介護認定に影響する可能性があります。

過去の病歴については、診断書やお薬手帳で確認することが可能です。

なお、現在進行形で病気やケガを患っている場合も、正確に病状を伝えましょう。

介護度の区分変更手続きについて

心身の状態に変化があれば、介護度の見直しを申し出ることが可能です。

介護度の区分変更手続きについて解説します。

区分変更とは

 

本人の心身の状態に変化があり、要介護度認定を見直したい場合に申請できるのが区分変更手続きです。

要介護度が実際よりも低いと、希望する介護サービスが利用できないこともあります。

本人の状況に変化があった場合は、できるだけ早めに区分変更手続きを行いましょう。

区分変更手続きは本人または家族が行うのが原則ですが、担当のケアマネジャーに相談することもできます。

区分変更の流れ

 

要介護認定の区分変更手続きの流れは、次のとおりです。

 

  1. ケアマネジャーのアセスメント
  2. 市区町村の窓口に必要書類を提出する
  3. 主治医に意見書を作成してもらう
  4. 認定調査員による認定調査
  5. 一次判定
  6. 二次判定
  7. 認定結果の通知

 

基本的には、要介護認定の申請と同様の流れになります。

区分変更手続きを行うためには、ケアマネジャーのアセスメントが必要です。

アセスメントとは、利用者やその家族と面談を実施し、利用者の状態や課題を抽出する作業になります。

区分変更の申請に必要なもの

 

区分変更手続きに必要なものは、次のとおりです。

 

  • 介護保険被保険者証
  • 医療保険被保険者証
  • 要介護認定変更申請書
  • 申請者の本人確認書類
  • 個人番号確認書類

 

個人番号確認書類としてマイナンバーカードを用意した場合、本人確認書類としても役割を兼ねることができます。

家族やケアマネジャーによる代理申請を行う場合は、上記に追加で委任状と印鑑、代理人の本人確認書類が必要です。

区分変更の注意点

 

要介護認定の区分変更には、次の3つの注意点があります。

 

  • 本当に区分変更するべきか十分に検討する
  • 認定調査ではありのままを伝える
  • 区分変更をすると有効期限が短くなる

 

区分変更により要介護度が上がった場合のデメリットを把握しておくことが大切です。

認定調査では、ありのままの状況を伝えることで、正しい結果が反映されやすくなります。

区分変更による認定有効期間は、原則6ヶ月です。

最大でも12ヶ月と短めに設定されていることを留意しておきましょう。

介護度について相談できる窓口

ここでは、介護度について相談可能な窓口を紹介します。

市区町村の介護保険課・高齢者福祉課

 

介護度について一番最初に相談するべきなのが、市区町村の介護保険課や高齢者福祉課です。

複雑な介護保険制度に関する手続き全般について相談できます。

自治体によって課の名称が異なる場合があるので、事前に役所へ問い合わせて相談窓口を確認しておきましょう。

地域包括支援センター

 

高齢者の生活を支える地域の拠点となっているのが、地域包括支援センターです。

介護費用のことや利用できる介護サービス、要介護認定の代理申請のことについて相談できます。

地域内の関係機関と連携しているので、本人やその家族の悩みに対し、必要なサービスや制度につなげるのが役割です。

民生委員

 

対象地域に居住する方であれば誰でも気軽に相談できるのが、厚生労働大臣から委託された相談員の民生委員です。

地域のことを知り尽くしているので、介護に限らず子育てや福祉などのさまざまな悩みの相談相手になってくれます。

見守り支援もしてくれるので、一人暮らしの高齢者におすすめの相談先です。

社会福祉協議会

 

社会福祉協議会は、福祉の相談窓口として各都道府県や市区町村に設置されています。

対応できる相談内容は、介護や育児などの日常生活支援や福祉サービスの提供、高齢者向けサロンなど幅広く展開しています。

地域によって業務に違いはありますが、ボランティア団体の支援などを行っているケースもあるため、福祉の総合窓口として扱われています。

医療機関

 

医療機関では病気やケガの受診・相談だけでなく、退院後の生活への不安や介護保険についての相談にも対応しています。

医療ソーシャルワーカーが在籍しているので、入院中の相談に乗ってもらうことも可能です。

身体の状況に応じて適切なアドバイスをしてくれるだけでなく、関係機関と連携して、退院後も安定した生活が送れるように支援してくれます。

介護度に関するQ&A

最後に介護度に関するよくある質問に回答します。

介護度が認定されるまでにかかる期間は?

 

要介護認定申請書の提出から、原則として30日以内に市区町村から結果が通知されます。

ただし、申請書類に不備があったり、意見書の提出が遅れてしまったりした場合はさらに日数がかかるので注意が必要です。

30日を過ぎた場合は、市区町村に問い合わせてみましょう。

非該当(自立)の場合は?

 

要介護認定の結果が、要支援や要介護に当てはまらないと判断された状態は、非該当(自立)になります。

非該当の場合、原則介護保険サービスの利用はできません。

ただし要支援や要介護になる恐れがある場合は、介護予防や日常生活支援などのサービスが利用できます。

地域包括支援センターに相談してみましょう。

介護度認定の結果に納得できない場合は?

 

結果に納得できない場合は、介護保険認定の再申請を行うことも可能です。

役所で認定理由を聞くこともできます。

認定結果ではなく、審査のプロセスに問題があると感じた場合は、各都道府県にある介護保険審査会に不服を申し立てることも可能です。

心身の状態に変化があった場合は、介護度の変更を申請することもできます。

介護度が下がった場合の対処法は?

 

更新により以前よりも介護度が下がったときは、情報開示請求や不服の申し立て、区分変更の申請ができます。

納得がいかなかった場合と対応は同じです。

ただし、次の更新時期を待ってから更新した方が、労力が少なく済みます。

有効期限が長くなるのも大きなメリットでしょう。

心身の状況に著しい変化が起こった場合のみ、区分変更の申請をしましょう。

一人暮らしを継続できる介護度はどこまで?

 

介護サービスを利用しながら一人で暮らせるのは、要介護2の状態までと言われています。

理由としては、日常生活のほとんどで介助が必要な介護度だからです。

要介護3以上の方が一人暮らしをするのは、ある程度サポートが受けられる状態でも難しいと言えます。

要支援や要介護認定を受けていない高齢者で、現在一人暮らしをしている場合は、将来安心して暮らすために介護施設への入所を検討しておきましょう。

まとめ

今回は、介護度について詳しく解説しました。

要介護度認定は、介護サービスを利用したい人に欠かせない制度です。

介護度には要支援や要介護などの区分が設けられていて、区分に応じて利用できる介護サービスや利用限度額が異なります。

適切な介護サービスを受けるためにも、正しい要介護度認定を受けることが大切です。

心身の状態に変化があった場合は、区分変更手続きを申し出ることができます。

介護や支援の必要性を感じた場合は、介護の専門機関に相談しましょう。