看護助手とは？仕事内容や看護師・准看護師・介護士との違いについて解説

病院のスタッフとして働く、「看護助手」が、どのような仕事か知っていますか。

この記事では、看護助手の仕事内容について解説します。

他の職種との違いや、看護助手に向いている人の特徴について解説しているので、看護助手に興味のある方は参考にしてください。

看護助手の仕事内容

看護助手は、病院でどのような仕事を担当するのでしょうか。

仕事内容について解説します。

患者のケア

入院している患者の、身の回りのケアが看護助手の主な仕事です。

具体的には、入浴介助や着替えの手伝い、食事の配膳や介助、ベッドメイクになります。

入院患者が就寝してから看護師と一緒に体位交換を行い、床ずれを予防するのも大切な業務です。

一人で歩くのに不安がある患者の介助や車椅子の手配・操作をサポートすることもあります。

看護師のサポート

看護助手は看護師の指示のもと、次のような業務を担当します。

• 患者の呼び出し
• 診察室までの誘導
• 問診票の受け渡し
• 検体や薬剤の搬送
• 診療材料の補充

基本的に専門的な判断を行う必要はありません。

看護師の補佐的な役割を担います。

病院内の環境整備

病院内の清掃やシーツ交換、医療器具の洗浄、備品管理などの環境整備も、看護助手の仕事になります。

書類や備品の整理など、事務関係の作業を任せられることや、受付対応を任せられるケースもあるでしょう。

看護助手と他の職種の違い

看護助手と看護師、准看護師、介護士にはどのような違いがあるのでしょうか。

他の職種との違いについて解説します。

看護師

看護師になるためには、厚生労働省が管轄する国家資格が必要です。

診療の補助をできることが、保健師助産師看護師法によって定められています。

患者の治療に関しても、積極的に携われます。

また、療養上の世話や診療の補助を行うことも可能です。

さらに看護師は自分の判断で治療に関わることができるので、積極的に患者に関わることができるでしょう。

准看護師

准看護師は、都道府県知事によって発行される資格です。

医師や看護師の指示のもと、療養上の世話や診療の補助ができます。

看護師のように自分の意思で治療を行うことはできません。

看護師と仕事の内容はほぼ同じです。

ただし、看護師に確認した上でなければ、准看護師は医療行為ができません。

介護士

介護士は、国家資格の介護福祉士やキャリアアップのための資格が豊富です。

介護士という資格はありません。

介護の業務に携わる方を総称して介護士と呼んでいます。

介護施設や事業所の利用者に、身体介助や生活援助などの介護業務を行うのが仕事です。

資格の有無によって担当できる業務が異なります。

看護助手になる方法

ここでは、看護助手になる方法を解説します。

学歴や資格は不要

看護助手として働くために、特別な資格は必要ありません。

高校を卒業していれば学歴も不問です。

無資格未経験でもOKな、看護助手の求人はたくさんあります。

ただし看護助手としての経験がある場合は、就職や転職の際に有利です。

介護系の資格を取得している場合は、看護助手の仕事に役立つでしょう。

看護助手として働きたい人におすすめの資格

看護助手として働くために有利な資格を、3つ紹介します。

看護助手認定実務者試験

看護助手に必要な知識やスキルを持っていることを証明できるのが、看護助手認定実務者試験です。

医療に関する知識を身に付けたい方に向いています。

民間の資格になりますが、この資格を持っていると、看護助手として就職する際に有利です。

医療業界で働く場合でも、スキルアップに活用できます。

なお、看護助手認定実務者試験の合格率は60～80％です。

難易度はそこまで高くないので、しっかり勉強すれば合格できる可能性が高くなります。

メディカルケアワーカー検定試験

医療福祉情報実務能力協会が認定する、看護助手としては初の民間資格になるのが、メディカルケアワーカー検定試験です。

1級と2級があり、それぞれ受験資格と実施回数、試験の内容が異なります。

この資格を取得していれば、医療や福祉の現場で働く看護助手としてのスキルを証明することが可能です。

アピールポイントになるので、就職活動や転職に役立ちます。

メディカルケアワーカーの合格率は、62〜85%です。

受験者の半数以上が合格するため、合格率は高いと言えます。

介護職員初任者研修

介護の基礎知識が学べるのが、介護職員初任者研修です。

ベッドメイキングや食事、排泄介助など、介護職員として働くために大切なスキルが習得できます。

介護職員初任者研修を取得するには、決められたカリキュラムを履修した上で修了試験に合格することが必要です。

合格基準が7割程度のため、ほとんどの受験者が合格できます。

修了試験に落ちてしまった場合でも、再試験が受けられるので安心です。

看護助手の給与

看護助手は、どれくらいの給与がもらえるのでしょうか。

平均給与をカテゴリー別に紹介します。

看護助手全体

厚生労働省が公開している令和6年賃金構造基本統計調査によると、看護助手全体の所定内給与額は、22万800円です。

12ヶ月分として年収で計算すると、看護助手の年収は約264万9600円になります。

なお看護師の所定内給与額は32万9600円、准看護師は27万3700円です。

看護師は国家資格が必要なため、准看護師や看護助手よりも給与の水準が高くなっています。

出典：厚生労働省「令和6年度賃金構造基本統計調査」

雇用形態別

看護助手の平均給与は、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態によっても変動します。

それぞれの1時間あたりの賃金は、次のとおりです。

出典：厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」

正社員の一般労働者には残業代や賞与が含まれているため、パートやアルバイトの短時間労働者は、1時間あたりの平均賃金が低くなります。

夜勤の回数によって手当も支給されるため、実際に支払われる賃金は、上記の表よりも多くなる可能性があるでしょう。

年齢別

看護助手の給与は、年齢によっても変わります。

年齢別の平均給与は、次のとおりです。

出典：厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」

実務経験が浅い20代や、働き方が変わってくる50代後半以降は、給与が低い傾向にあります。

年代によって給与に違いがあるので、看護助手の給与は年齢以外の理由でも変動すると言えるでしょう。

男女別

給与は性別によっても異なります。

男女別の平均給与は、次のとおりです。

平均給与は、月給の場合で約1万円、平均年収で約9万円の差があります。

給与差はそこまで大きくありませんが、男性は正社員として働く割合が多いので、女性よりも平均給与が高くなるのでしょう。

出典：厚生労働省「令和6年度賃金基本統計調査」

都道府県別

平均給与は、住んでいる地域によっても差が発生します。

看護助手の都道府県別の平均給与は、次のとおりです。

都市部と地方では、看護助手の給与に最大8万円の差があることが分かります。

人口の多さや需要によって、年収が増減すると言えるでしょう。

出典：厚生労働省「令和6年度賃金基本統計調査」

看護助手に向いている人の特徴

看護助手に向いている人の特徴を解説します。

コミュニケーション能力が高い

看護助手は患者やその家族、看護師や医師と関わる機会があるので、コミュニケーション能力が優れていると、仕事をスムーズに進められます。

人と触れ合うことに抵抗がない方や、誰にでも優しさを持って接することができる方に向いている職業です。

看護助手に必要なコミュニケーションスキルとは、聞く力と話す力になります。

患者が理解できるように分かりやすく伝えることと、患者の話に耳を傾けて共感や質問を投げかけることにより、相手の感情を理解することが大切です。

体力に自信を持っている

看護助手は一日中テキパキと仕事をこなしていく必要があるので、フットワークの軽さや手際のよさが必要になります。

病院は基本的に24時間体制で職員が常駐するため、看護助手も夜勤のシフトをこなさなければなりません。

体力的にタフでなければ、続けることは難しいと言えるでしょう。

入浴介助や移乗介助を行う際に、中腰になることも多くなります。

体力に自信がある場合や、健康に不安がない場合は、看護助手として働く適性があると言えるでしょう。

根気強く仕事に取り組める

看護助手は医療現場で働く不安やプレッシャーに負けることなく、指示されたとおりにしっかり仕事をこなせる方に向いています。

看護師や患者との対人関係で悩むケースも少なくありません。

辛いことがあっても、途中で投げ出さずに仕事に取り組める力が必要になります。

また、患者の状態や状況により、仕事がうまく進まないこともあるでしょう。

看護助手には、相手のペースに合わせて行動できる、忍耐力と根気強さも重要になります。

人のことを考えて行動できる

看護助手は、自分本位に動くのではなく、人の立場になって行動できる方に適性があります。

患者が1日でも早く回復できるように看護師の指示に従ってサポートする仕事ですので、相手が何を考えているのか先回りして考えることができる方は、業務を効率的に進めやすくなります。

患者の細やかなニーズに気が付き、細やかな配慮ができれば、感謝の気持ちを伝えられることもあります。

人の気持ちを考えることは、質の高い医療を提供することにつながるでしょう。

看護助手になるメリット

ここでは、看護助手になるメリットを解説します。

人の役に立てる

病気やけがで苦しむ患者の回復を助ける仕事であるため、医療スタッフの一員として貢献していることが実感できます。

身の回りのサポートをしていると、感謝の言葉をかけてもらえることもあるでしょう。

看護助手は、回復した患者の笑顔を間近で見られるので、人の役に立っていることが実感できます。

社会的な意義が強い仕事であり、常にやりがいを感じながら仕事に取り組めるでしょう。

専門知識が習得できる

看護助手は、業務をこなしながら医療や介護に関する専門知識を得ることが可能です。

医療用語や器具の名前を覚えたり、身体介助や環境整備などの介護スキルを磨いたりできます。

これらの知識は、資格を取得するときにも役立つので、覚えておいて損はありません。

医療現場で看護師の指導を受けながら経験が積めることは、今後のキャリアプランを考えるきっかけにもなるでしょう。

無資格・未経験でも医療現場で働ける

看護助手は、資格や経験がなくても、医療スタッフの一員として病院で働くことができます。

医療業界で働きたいと考えている、無資格未経験の方におすすめの仕事です。

将来的に資格を取得したい場合や、専門職に就きたい場合も、スキルや知識を身に付けながら働くことができます。

医師や看護師の仕事を実際に見て学ぶことができるので、キャリアの第一歩にもなるでしょう。

キャリアアップも可能

働きながらキャリアアップできることも、看護助手として働く大きなメリットになります。

看護助手が目指せるキャリアアップは、准看護師や看護師、介護士です。

資格を取って専門性を高めることも可能ですが、コミュニケーション能力や医療現場での仕事を生かして医療事務や介護事務など、他の職種への転職を考えることもできます。

看護助手としての実務経験が役立つのは、看護学校への受験や学習、介護系職種への就職や転職をするときです。

キャリアアップを目指すことで、患者や周りの看護師からの評価も高められるでしょう。

看護助手に関するQ＆A

最後に、看護助手に関するよくある質問に回答します。

看護助手の働く場所は？

看護助手として働ける場所は、次のとおりです。

• 総合病院
• 個人医院
• 大学病院
• 診療所
• クリニック

看護助手もシフト制で働くケースが多く、看護師と一緒に夜勤も担当します。

入院病棟がない場合は、夜勤がなく日勤のみのシフトとなるでしょう。

また、配属先は一般病棟や外来、療養型病棟と多岐にわたります。

医療機関に併設された介護施設や、訪問介護ステーションに配属されることもあるので、必ずしも医療機関で働けるわけではありません。

勤務形態は？

看護助手の勤務形態は、二交代制や三交代制、シフト制のいずれかであることがほとんどです。

二交代制は日勤と夜勤で、日勤の場合は約8時間、夜勤の場合は約16時間勤務します。

三交代制の場合は日勤と夜勤の間に準夜勤が入る勤務形態のため、午後から深夜までの8時間労働です。

シフト制の場合は、早番や日勤、準夜勤や夜勤などの勤務形態を組み合わせた働き方になります。

また、夜勤のみで働く夜勤専従という働き方も選択可能です。

夜勤専従の場合はアルバイトやパートなどの非正規雇用が多く、体力的な負担も大きくなります。

看護助手として働く職場を選ぶときは、勤務形態が自分のライフスタイルに合っているかを確認しましょう。

1日の仕事の流れは？

日勤で働く看護助手の仕事の流れを、一例として紹介します。

看護助手は医療行為ができないので、患者の容体が急変しても緊急対応はできません。

看護師の特別な指示がない限り、基本的に毎日同じ業務の流れです。

日勤の場合は、夜勤のスタッフに引継ぎをしてから退勤となります。

働く職場が人手不足の場合は、残業を依頼されることもあるでしょう。

雇用形態は？

厚生労働科学特別研究データベースが公表している「看護師と看護補助者の協働の推進に向けた実態調査研究」によると、看護助手の雇用形態は、以下のようになっています。

出典：厚生労働科学特別研究データベース「看護師と看護補助者の協働の推進に向けた実態調査研究」

また、看護助手の正規職員のうち52.2%の人が、夜勤に従事していることが分かりました。

非正規社員の場合は、11.8%です。

看護助手としてアルバイトやパートで働く人は、ライフスタイルに合った働き方をしていると言えるでしょう。

まとめ

今回は、看護助手の役割や仕事内容について詳しく解説しました。

看護助手は、病院で患者の身の回りのサポートや、看護師の指示に従って動くことがメインの仕事です。

看護助手として働くために特別な資格や試験を受ける必要はありませんが、看護や介護に関する資格を持っていると、就職や転職の際に有利に働きます。

看護助手は大変な仕事ですが、やりがいもあります。

看護助手として、医学や看護の知識を実践的に学び、将来的にはキャリアアップも目指しましょう。