ターミナルケアとは?ケア内容や看取りとの違い、料金などを解説

「ターミナルケアとはどのようなことをするの?」「緩和ケアや看取りケアとは何が違う?」このように疑問を持っていませんか?
家族が余命を宣告され、終末期について考えなくてはならないという心苦しい状況の中、どのようなケアをしていくのか考えなくてはなりません。
しかし、突然必要だといわれても、あまり理解していないため考えられず、混乱している方も多いのではないでしょうか。
ターミナルケアは身体的ケア・精神的ケア・社会的ケアに分類される内容を受けられます。
利用者が自分らしく最後まで生きるために何が必要なのかを考え、利用者に合ったケアを行うことが重要です。
本記事では、ケア内容の詳細に加えて、利用者の心境、そのほかの類似ケアとの違い、料金やよく取り入れられている療法などを解説します。
ぜひ参考にして、利用者が穏やかに生きられる環境を作るための準備を進めていきましょう。
ターミナルケアとは
「ターミナルケア」の言葉を聞いたことはあっても、詳しく知らない方に向けて概要を解説します。
どのようなケアが受けられるのか、開始時期、利用者の心境について詳しく触れているため、これからの利用者との向き合い方を考えるきっかけにしてください。
「ターミナルケア」の意味とは?
ターミナルケアとは「終末期医療」とも呼ばれている、死期が近い利用者に行うケアのことです。
延命するためのケアではなく、利用者の死に向き合い、少しでも痛みや不安を緩和するためのケアや医療を提供します。
つまり、天寿を全うすることに焦点を当てて行うケアです。
サービスを受ける条件は問わず、寿命によるものから病気によるものまでケアを提供しています。
老衰により死期が近い方も、例えばガンで治療ができない状況になり数ヶ月以内の余命宣告を受けた方も対象です。
ケアに入る時期
ケアに入る時期に決まりはありません。
ただ一般的には、数ヶ月以内の余命宣告を受けたタイミングや、経口摂取が難しい状態になったタイミングで開始します。
ターミナルケアの実施には、ご家族の意思の反映と治療方針の反映が必要です。
ご家族がどのように死期が近い利用者と過ごしたいのか、本人にはどのように過ごしてほしいのかといった意思を伺います。
その上で、医師が必要なケアを考え、話し合いで擦り合わせを行って実施に至ります。
ターミナルケアが決まったときの利用者の心境
意識が薄らいでいる状態の場合、ターミナルケアに移行することになっても理解ができていない可能性があります。
しかし、まだ意識があり思考ができる状態で移行する場合は、以下のような心理になるといわれています。
利用者の心境は、5段階に変化するのが一般的です。
- 否認:死に向き合えず受け入れられない状態
- 怒り:「なぜ自分が死ぬんだ」といった怒りに変化する
- 取引:寿命を伸ばすためにできることはないかと考える
- 抑うつ:死に対する恐怖や不安でいっぱいになり、絶望する
- 受容:死を受け入れて、心や身の回りの準備を始める
ターミナルケアでは、利用者の身体的な苦痛だけでなく、精神的な苦痛を緩和することも重要です。
このような心境の変化があることを理解し、各段階に合わせて寄り添ったケアを心がけましょう。
ターミナルケアと緩和・ホスピス・看取りケアの違い
ここでは、ターミナルケアとよく似たケアについて解説します。
違いを知ることで、利用者に適切なケアを選択できるようになります。
緩和ケアとの違い
緩和ケアとの違いは「目的」と「対象者」です。
緩和ケアは、どのような生き方をするのか、どう生きたいのかに焦点を当てて実施します。
天寿を全うするまでの期間の生き方を考え、利用者の希望に沿った医療ケアや介護ケアを行うのが特徴です。
例えば、がんが骨に転移すると激しい痛みを伴います。
その痛みを緩和して生きている間のQOLを向上させることが、緩和ケアの目的です。
加えて、生きるためもしくは延命するための治療を並行して行うこともあります。
一方で、ターミナルケアは最後をどのように迎えるのかに焦点を当てて実施するケアです。
病を治すための治療はせず、心穏やかに最後を迎えるための準備をしていくことを重視します。
ケアを受ける対象者にも違いがあり、緩和ケアではがん患者などの重病患者やその家族を対象としている一方、ターミナルケアは病気の有無に関係なく寿命が近い方が対象です。
<緩和ケア内容の詳細>
緩和ケアでは、身体的な苦痛と精神的な苦痛を緩和するためのケアを提供します。
がんになると、痛みや倦怠感、薬の副作用、精神的ストレスといったさまざまな苦痛を伴います。
日本ではがん医療が進み、致死率100%と呼ばれるほどの病気ではなくなりました。
それであっても亡くなる方は少なくないため「がん=亡くなる」のイメージは払拭しきれていないのが現実です。
このような恐怖や不安を抱えて治療を行うため、がんのステージは問わず治療と並行して行われます。
治療の初期段階から治療完了後まで、日常生活がよりよいものとなるよう医療的ケアでがん患者を支えるケアを実施します。
ホスピスケアとの違い
ホスピスケアとの違いは、以下の4点です。
- 対象年齢
- 対象疾患
- ケアの開始時期
- 目的
双方、実施対象年齢に決まりはありません。
ただ、ホスピスケアは幅広い年齢層で実施されており、若年層から高齢層まで多様です。
一方のターミナルケアは、高齢者に実施する傾向にあります。
対象疾患でも違いがみられ、主にホスピスケアではエイズ患者やがん患者をメインに実施しています。
一方のターミナルケアは疾患の種類や疾患の有無は問いません。
ケアを開始する時期も異なり、ホスピスケアは治療中から実施され、終末期を迎えても希望があればそのまま実施できます。
対してターミナルケアでは、治療をしても回復が見込めないと判断されたタイミングでの開始となります。
実施目的においては、ホスピスケアはQOLを上げるのが目的ですが、ターミナルケアは最後の迎え方を穏やかなものにすることが目的です。
<ホスピスケア内容の詳細>
ホスピスケアはイギリスで発祥し、患者・家族・医師・看護師といった専門家とチームでケアをするのが特徴です。
近年では訪問介護・看護でもニーズが高まり、取り入れている事業所が増えてきました。
ホスピスケアでは、緩和ケアに加えて、歩行訓練や自宅への外泊などのサービスを提供しています。
また「エンゼルケア」といって、本人が亡くなったあとに体を清めたり整えたりするケアも受けられます。
看取りケアとの違い
看取りケアとの違いは「考え方」と「ケアの内容」です。
実施目的は、どちらも穏やかな死を迎えるためのサポートをすることです。
共通点も多くほぼ同義語として用いられる言葉ではありますが、死の瞬間まで本人の尊厳を守る支援を行うこと、死を迎えるまでの向き合い方を考えることで違いがあります。
看取りケアは天寿を全うする瞬間まで生活をサポートするためのケアを行います。
亡くなる過程の見守り、本人の人生観や価値観、思いや理想などを尊重し、それを実現するための支援を受けられるのが特徴です。
それにより、医療的ケアだけでなく介護的ケアも提供しています。
一方のターミナルケアは、利用者の苦痛を和らげ、穏やかに天寿を全うするための医療的ケアが基本です。
このような違いから、ケアの提供場所も異なります。
看取りケアでは介護施設や自宅、ターミナルケアでは病院や自宅が一般的です。
<看取りケア内容の詳細>
看取りケアの実施内容は、身体的ケア・精神的ケアを本人に提供することに加えて、家族の心のケアも受けられます。
身体的ケアは、日常生活を送る上で欠かせない、入浴や歯磨き、排泄などといった介助の依頼が可能です。
精神的ケアは、死が近くなり不安や恐怖がある方に対して、恐怖や孤独感などを緩和させるためのケアです。
例えば、よく会話をして寄り添ったり、好きな音楽を流したりします。
家族へのケアは、本人が亡くなった後のサポートがメインです。
家族の死を受け入れて前に進むためのケア(グリーフケア)を受けられます。
ターミナルケアは3つのケアで構成
ターミナルケアのサービス内容は3つのケアで構成されています。
身体的ケア
身体的ケアとは、直接利用者の身体に触れて行う介助のことです。
ケアプランに沿ってサービス内容は異なりますが、以下のようなケアが該当します。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 更衣介助
- 体位変換
食事介助では、嚥下機能の様子をみながら刻み食やミキサー食などといった食事方法を考え、介護従事者が食事を用意します。
自分で食事をとることが難しい場合は、食べ物を口に運ぶ介助も依頼が可能です。
排泄介助では、オムツ交換やトイレ誘導の介護ケアを依頼できます。
ターミナルケアでは基本的に寝たきりの状態であるため、オムツ交換が基本です。
入浴介助では、身体状況や疾患状況によって入浴介助や陰部洗浄・清拭を実施します。
衛生を守ること、気分転換してもらうことを目的に実施します。
ターミナルケアにおける更衣介助は、洗顔や下着の交換が基本です。
外出は難しい状態であっても、清潔な身体状態を保つために必要に応じて着替えを行います。
ターミナルケアを要する利用者は寝たきりのため、床ずれのリスクが高くなります。
そのため、体位変換で血流を促し、床ずれによる痛みや感染症を防止します。
精神的ケア
精神的ケアでは、不安定な心情になりやすい利用者をサポートします。
死が近いため利用者は不安や恐怖を感じているケースが多くあります。
それに伴い、睡眠不足になる方も少なくありません。
少しでも不安や恐怖を和らげ、快適に生活できるよう以下のようなケアでサポートを行います。
- 話を聞く
- 睡眠環境を整える
- セラピーを実施する
人は気持ちを吐き出すことで楽になることもあります。
今利用者はどのように思っているのか、その声に耳を傾けることも大切です。
施設によっては、公認心理士や臨床心理士、カウンセラー、セラピストがセラピーケアをすることもあります。
セラピーには精神的苦痛やストレスを緩和する効果があり、実施することで利用者が過ごしやすくなる可能性があります。
社会的ケア
社会的ケアでは、ターミナルケアを受けるのにかかる費用、亡くなった後の相続問題などに対する不安を解消するためのサポートを受けられます。
お金の問題は精神的に大きな苦痛を与えるものです。
特に、身寄りのご家族がいない、身寄りの家族も高齢化している場合、利用者やそのご家族が抱える不安は大きいものです。
お金が手配できなければ生活はままならなくなる上に、ターミナルケアの継続も難しくなります。
そのため、対処方法のアドバイス・制度に関するアドバイスを受けられたり、手続きをサポートしてもらえたりします。
相続問題や葬儀など、利用者が亡くなった後の手続きも相談が可能です。
相続問題は、利用者もしくはそのご家族に専門の弁護士を紹介しています。
葬儀の準備については、葬儀社の紹介や手続きのサポートを依頼できます。
ターミナルケアで取り入れられる療法
ターミナルケアでは、終末期に入った利用者の苦痛を緩和させるために、以下のような療法が取り入れられる場合があります。
アロマテラピー
アロマテラピーとは、植物から抽出した香り成分であるエッセンシャルオイルを用いた自然療法です。
香りは、健康や美容によい影響をもたらすとされており、心や身体に働きかけます。
具体的には、以下のような効能があると定義されています。
- リフレッシュ効果
- 心身の健康をキープ
- 心身のバランスを整える
- 鎮静
- 食欲増進 など
アロマテラピーのエッセンシャルオイルには「花由来」「木由来」「フルーツ由来」があり、香りの種類によって効能が異なります。
| 香りの種類 | 効能 |
| カモミール・ラベンダー、サンダルウッドなど | 鎮静させ心身をリラックスさせる |
| イランイラン、ベルガモット、オレンジ・スイートなど | 不安を緩和する |
| レモン、オレンジ・スイート、グレープフルーツなど | 消化を促進させて食欲を増進させる |
アロマテラピーの楽しみ方には、アロママッサージや芳香浴、沐浴法などがあります。
ターミナルケアでは、血流を促しながらアロマの効能を得られる「アロママッサージ」がおすすめです。
音楽療法
音楽療法とは、音楽を聞いたり楽器演奏をしたり、音楽に触れることで心身の健康をサポートするものです。
ルネッサンス時代やバロック時代では、治療の方法に音楽と医療を組み合わせて行うのが基本だったほど、大きな存在でした。
現代においては、医療現場だけでなく、介護・福祉現場でも音楽療法が取り入れられています。
ターミナルケアも例外ではありません。
利用者やご家族のストレスを緩和したり、不安感を和らげたりするために音楽療法が活用されるケースがあるのです。
音楽療法には感情を引き出す効果、記憶を引き出す効果もあるため、利用者の意思を知る際に音楽療法が活用できます。
ただし、音楽療法には問題点もあるため注意が必要です。
良い思い出や気持ちを引き出すだけなら問題ありませんが、辛い思い出や気持ちを引き出してしまう場合もあります。
音楽療法を実施する際は、十分に配慮して行いましょう。
ターミナルケアを受けられる場所
受けられる場所は大きく分けて「自宅」「介護施設」「医療機関」の3つがあります。
どこでケアを受けるかによって、家族の関わり方や医療サポートの内容が変わるため、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
自宅
自宅でのターミナルケアは、住み慣れた環境で家族に囲まれながら過ごせる点が特徴です。
訪問医や訪問看護師が定期的に自宅を訪れ、症状のコントロールや介護のサポートを行います。
例えば、痛みの緩和や食事の介助、入浴介助なども在宅で対応できます。
家族が介護を担う場面も多いため、負担を軽くするために訪問看護や訪問介護を併用するのがおすすめです。
「最期まで自分の家で過ごしたい」と希望する利用者には、自宅でのターミナルケアが選ばれます。
介護施設
介護施設では、日常生活の支援を受けながらターミナルケアを受けられます。
施設によって医療体制は異なりますが、看護職員が常駐している場合は、痛みや呼吸苦などのケアも可能です。
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームでは、看取りの体制を整えているところも増えています。
家族の負担を減らしつつ、安心できる環境で生活を続けられるのが特徴です。
医療機関ほどの医療対応は難しい場合があるため、事前に施設の体制を確認しておきましょう。
医療機関
医療機関でのターミナルケアは、医師や看護師が常に対応できる点が最大の特徴です。
ホスピス病棟や緩和ケア病棟では、痛みの緩和や精神的ケアが中心となります。
病状が急変したときも、すぐに処置が受けられるため安心感があるのもメリットです。
一方で、面会の制限や入院生活の制約もあるため、家族との時間をどう過ごすかを考える必要があります。
ターミナルケアの料金と内訳
ターミナルケアにかかる費用は、受ける場所や利用するサービス内容によって異なります。
経済的な負担をなるべく減らせる方法を検討したい方は、ぜひ参考にしてください。
原則1割負担になる
ターミナルケアでは、医療保険や介護保険が適用されるため、原則として自己負担は1割です。
例えば、訪問診療・訪問看護・訪問介護などを利用した場合も、ほとんどが保険の対象です。
ただし、所得が一定以上ある場合は、2割または3割負担になる場合があります。
医療保険と介護保険のどちらを利用するかによっても負担割合が変わるため、ケアマネジャーや医療機関に確認しましょう。
医療費は最大負担額が決まっている
原則70歳以上の場合、自己負担額は上限が5万7,600円(1ヶ月につき)、外来に関しては1万8,000円(1ヶ月につき)と定められています。
そのため、ターミナルケアを利用する場合であっても、自己負担額が5万7,600円を超えることはありません。
また、所得が低い方に関してはさらに上限額が下がり、負担する金額はより下がります。
ただし、ターミナルケアを医療機関で行う場合、入院にかかる部屋代や差額ベッド代などは全額自己負担となるため注意が必要です。
料金の内訳
ターミナルケアを受けるのにかかる料金の内訳項目は、医療費・介護費・生活費の3つです。
| 費用項目 | 主な内容 | 保険適用 |
| 医療費 | 訪問診療、投薬、注射など | 医療保険 |
| 介護費 | 入浴介助、食事介助、排泄介助など | 介護保険 |
| 生活費 | 居住費、食費、光熱費など | 自己負担 |
在宅ケアの場合は、訪問診療や看護の回数が増えると費用も上がり、施設や病院では食費や部屋代などの実費が追加されます。
ターミナルケアを受ける場所やサービス内容によって費用は変動するため、全体の費用を把握したい方は、利用予定の医療機関や施設に見積もりを依頼しましょう。
まとめ
ターミナルケアは、延命を目的とするのではなく、人生の最終段階を穏やかに過ごすためのケアです。
身体的な痛みを和らげることはもちろん、心の不安を軽くし、社会的な支援を受けながら「自分らしい最期」を迎えることを目的としています。
緩和ケアやホスピスケア、看取りケアとは目的や実施のタイミングに違いがありますが、いずれも利用者の尊厳を守るための支援です。
どのケアを選ぶかは、本人や家族の希望、医療体制、生活環境などを考慮して決める必要があります。
費用面では保険が適用されるため、経済的な負担を抑えながら必要なサポートを受けることが可能です。
ターミナルケアを通じて、利用者とご家族が後悔のない時間を過ごせるよう、希望に沿った環境とケア体制を考えていきましょう。





