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失見当識とはどんな症状?原因や対応方法、リハビリについても紹介

失見当識とはどんな症状?原因や対応方法、リハビリについても紹介

失見当識とは、日時や周囲の環境、人物の把握が難しくなる状態を指します。

進行すると夜間の徘徊やトイレの失敗、自宅なのに帰りたがるなど、日常生活に大きな支障をきたします。

だからこそ、早めの気づきと適切な対応、リハビリが欠かせません。

本記事では失見当識とは何かを詳しく紹介し、原因・症状・対処法・リハビリのポイントまで分かりやすく解説します。

失見当識を詳しく理解し、適切な対応方法を学びたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

失見当識(見当識障害)とは?

失見当識とは、時間や場所、人など、自身が置かれている状況の判断や理解が困難になる状態のことです。

「見当識障害」とも呼ばれ、発症すると日常生活にさまざまな障害が生じます。

まずは、失見当識の特徴や原因、診断方法、そのほかの疾患との違いを紹介していきます。

認知症の症状の1つとされている

 

失見当識は、認知症の症状の1つとされています。

認知症により脳の記憶力が低下してくることで、時間や場所、人を理解・把握することが難しくなってきます。

例えば、夜中にもかかわらず「買い物に行ってくる」と出かけようとしたり、自宅にいるにもかかわらず「帰宅したい」と言ったりといった症状が見られます。

また、親しい家族や友人などを理解できない、間違ってしまうなどの症状も見られ、日常生活に大きな影響を与えてしまうのです。

失見当識が発症する原因

 

失見当識の主な原因は認知症ですが、そのほかにも以下の疾患や薬の影響が挙げられます。

  • アルツハイマー型認知症
  • 血管性認知症
  • 脳卒中
  • 統合失調症
  • 薬の副作用 など

上記の中でもアルツハイマー型認知症は、原因となるケースが特に多いといわれています。

その理由は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質の一つが脳に蓄積され、その結果脳の萎縮が進むからです。

アミロイドβは通常であれば自然に分解・排出されるのですが、加齢や遺伝、生活習慣などの理由により、体内での処理機能が低下し、結果として脳機能の低下を引き起こします。

失見当識の診断方法

 

失見当識の診断方法は、「MMSE(Mini Mental State Examination)」や長谷川式簡易知能スケールと呼ばれる認知機能検査が用いられるのが一般的です。

どちらの検査も時間・場所・人に分けた質問をしていくところが特徴で、30点満点中いくつ正確に答えられたかを判断していきます。

例えば、時間の質問なら「今日は何年何月何日何曜日ですか?」、場所なら「私たちが現在いる場所はどこですか?」といった質問がなされます。

なお、診断は医師や看護師のほかに、介護専門職の方が行うことも可能です。

せん妄との違い

 

失見当識の症状を聞くと「せん妄」と同じと考える方もいますが、この2つには大きな違いがあります。

せん妄は、幻覚や幻視、妄想といった症状が出るところが特徴で、発症は急に現れることがほとんどです。

また症状についても、一時的な場合もあれば長期的に見られる場合もあるなど波があり、経過や持続期間も一定ではありません。

反対に、失見当識は「物忘れ」が基本で、症状の進行もゆっくりなところが特徴です。

統合失調症との違い

 

失見当識は、時間や場所、人の認識が分からなくなる状態を指しますが、統合失調症は思考や認知の仕方そのものに障害が生じる精神疾患です。

統合失調症のよくある症状としては「幻覚」や「妄想」が多い傾向ですが、中には失見当識がみられるケースもあります。

しかし、症状が出る方のほとんどが、幻覚や妄想により現実との区別がつかなくなり、それが失見当識に間違われる場合があります。

また、統合失調症の症状を抑える薬の副作用による眠気や意識のぼんやり感から、一時的に時間や場所が分かりにくくなるケースもあり、判断には専門的な知識が必要です。

失見当識の主な症状は3つある

失見当識の症状は、大きく分けて以下の3つです。

  • 「時間」の理解や把握
  • 「場所」の理解や把握
  • 「人」の認識や記憶の損失

失見当識によるこれらの症状は順番に発症するといわれており、「時間」→「場所」→「人」の順へと症状が変化していきます。

以下にそれぞれの特徴を紹介しますので、確認していきましょう。

①時間が分からなくなる

 

はじめに現れる症状が、時間の理解や把握が難しくなってくることです。

例えば、夜中なのに日中と勘違いして買い物に出かけたり、食事を食べたのにもかかわらず「ご飯はいつ?」と話したりと、24時間の中で朝昼夜の認識がつかなくなります。

また、季節の認識も低下してくるので、季節に合っていない服を着用するといった行動も見られるのが特徴です。

個々によっては、昼夜逆転するケースも見られます。

②場所が分からなくなる

 

次に現れる症状が、場所への認識や把握が難しくなってくることです。

具体的には、自分の家にいるにもかかわらず外出先だと思い込んだり、帰宅ルートを思い出せなくなったりといった様子が見られます。

また、時間に関係なく黙って自宅を出て近所を徘徊するといった行動も見られるようになります。

③人が分からなくなる

 

最後に、人への認識や記憶の損失が見られるようになります。

家族や友人の名前を忘れることはもちろん、自分のパートナー(夫や妻、配偶者)を親と勘違いして呼ぶといった症状が見られます。

場合によっては、先ほどまで認識していたのに突然「あなた誰!?」「早く出ていって!」など、親しい間柄なのに攻撃的になるケースも見られます。

対応するご家族や介護者は、突然のことで驚くかもしれませんが、症状を理解することで冷静に対応できるようになります。

失見当識による日常生活での影響

失見当識の症状が出てくると、時間や場所の感覚があいまいになり、これまで当たり前にできていた行動が難しくなります。

ここでは、失見当識による日常生活への具体的な影響を紹介していきます。

約束の時間が守れなくなる

 

失見当識により時間の感覚や場所の理解が難しくなると、約束の時間が守れなくなり、遅刻や待ち合わせ場所に現れないといった影響が起こります。

また、約束自体を忘れることも少なくありません。

その結果、家族や周囲との信頼関係に影響が出たり、外出や支援の調整が難しくなったりする場合があります。

昼夜を問わず外出や電話をかけることがみられる

 

失見当識は、時間や場所の把握が難しくなるので、昼夜を問わず外出や電話をかけるといった症状も見られるようになります。

時には、面識のない方のご自宅のインターホンを鳴らし、近所迷惑になることもよくあるケースです。

また、夜中に「今から行く」「迎えに来てほしい」と電話をかけるなど、周囲を混乱させてしまうこともあります。

迷子になる

 

場所の認識に関わる失見当識が進むと、道に迷う行動が起こりやすくなります。

例えば、目的地は分かっているのに、徒歩では行けないところを歩いて行こうとしたり、途中で目的地が分からなくなったりします。

途中で迷子になり警察に保護されるケースも少なくありません。

【シーン別】失見当識を患っている方の対応方法と気をつけたいポイント

失見当識による行動は、本人にとっても周囲にとっても負担になりやすいものです。

突然の出来事に戸惑い、どう対応すればいいか悩む方も少なくありません。

ここでは、日常生活で起こりやすいシーン別に、適切な対応方法と安心につなげるためのポイントを解説していきます。

シーン①:夜間に外出してしまうケース

 

夜間に外出してしまうケースでは、まずどこに向かうのか、外出の理由を確認・理解することが大切です。

理解した上で、ご本人が落ち着いている様子なら外出する必要がないことを、理由を交えて優しくお伝えします。

その際、拒否が見られる場合もありますが、無理して止めるのではなく、「一緒に行きましょう」と伝えて、1人にさせないことが大切です。

また、季節によっては気温や脱水などの危険もあるため、日頃から対策しておくことも重要です。

玄関にセンサーを取りつけたり、GPSを装着したりするといった、迷子にならないための対策も有効でしょう。

シーン②:トイレの場所を間違えてしまうケース

 

失見当識の症状がある方は、トイレの場所を間違えてしまうケースも少なくありません。

対策としては、ベッドからトイレまでの道順が記載された自宅内の地図や道順を示した矢印の作成がおすすめです。

場所を間違えてしまうケースでは、介護者が眠っている間にトイレに向かうことも多いのですが、トイレマークが記載された矢印を辿れば1人で行けるケースもあります。

もちろん、はじめは失敗するケースがあるため、介護者と一緒に向かうほうがよいとされていますが、続けていくと改善される可能性があります。

シーン③:家にいるのに「帰りたい」と訴えるケース

 

ご自宅にいるのに「帰りたい」と訴えるケースでは、とにかく傾聴を意識することが大切です。

場合によっては単純に帰りたいわけではなく、「帰って◯◯ちゃんに会いたい」と話してくれるケースもあります。

その際もご本人の気持ちに寄り添いながら、「◯◯ちゃんにお会いしたいんですね~」と傾聴を意識し、時には一度近所を散歩したのち再び自宅に帰るといった対応も必要です。

「ここが家だよ!」と強い口調で返答するのは、ご本人が辛い思いをするだけですので、絶対にやめておきましょう。

優しく安心してもらうことが基本

 

ここまで、失見当識を患っている方の対応方法を紹介してきましたが、どのケースでも「優しく安心してもらう」ことが基本です。

そのためには、ご本人のことを否定する対応を避け、理解しようとする姿勢が大切です。

介護者はご本人が考えている状況を理解しつつ、怒らず冷静な対応を心がけましょう。

ご本人が安心することで、こちらからの声掛けも聞いてもらいやすくなります。

周囲の方へ相談することも大切

 

介護者といっても1人の人間ですので、1人だけで対応すると負担が大きくなります。

介護者の心身の健康を保つためにも、1人で頑張ろうとせず、周囲の方へ相談することも大切です。

例えば、友人に現状を話したり、自治体の支援グループや介護コミュニティを活用したりするのがよいでしょう。

不安や悩みを共有できる相手がいるだけでも、介護への向き合い方が楽になるでしょう。

対応が難しい場合は介護サービスを検討する

 

どうしても対応が難しいと感じた場合は、介護サービスを検討するのがよいでしょう。

介護サービスには、デイサービスやショートステイ、訪問介護など、症状や生活状況に応じて選べる支援があります。

また、入所施設を利用することで、24時間体制で見守りを受けられる環境を整えることも可能です。

介護者が無理をしすぎないためにも、早めに選択肢として検討しておくことが大切です。

失見当識のリハビリ方法

失見当識は、完全に治すことは難しい症状です。

特に原因が認知症である場合は、進行性であることから完治はできません。

しかし、リハビリや環境を整えることで、症状の緩和が見られることもよくあるケースです。

ここでは、失見当識の具体的なリハビリ方法を紹介していきます。

リアリティ・オリエンテーション

 

失見当識のよくあるリハビリ方法が、リアリティ・オリエンテーションと呼ばれる方法です。

この方法は以下の2種類があります。

  • 24時間リアリティ・オリエンテーション
  • クラスルームリアリティ・オリエンテーション

どちらも場所や時間、人への認識や理解を維持するために繰り返し行われます。

 

<24時間リアリティ・オリエンテーション>

 

24時間リアリティ・オリエンテーションは、日々行われるコミュニケーションの中で、いくつかの質問を繰り返し行う方法です。

例えば、「自分は誰なのか」「現在いる場所はどこなのか」「現在の日時、時間、曜日は?」といった質問を繰り返し行います。

また、季節に応じた花の名前や料理に使われている食材を言い当てるなど、ご本人が興味のあることに対しても質問していき、記憶を維持する補助を行っていきます。

 

<クラスルームリアリティ・オリエンテーション>

 

クラスルームリアリティ・オリエンテーションは、3~8人程度のグループで行われる手法です。

24時間リアリティ・オリエンテーションが個別で行われるのに対し、こちらの方法は複数人で行われます。

質問の内容は、24時間リアリティ・オリエンテーションとほとんど同じですが、1日数回10分程度と頻度が異なります。

また、お互いを認識しやすいように自己紹介を中心に行われることが多く、加えて名前をすぐ確認できるように名札をつけて行われることも効果的とされています。

日々の会話の中で時間や場所を伝えることも大切

 

失見当識のリハビリは、日常の中でも実施しやすいものが多くあります。

例えば、会話の中で時間や場所をさりげなく伝えたり、季節の花の名前を伝えて季節を感じてもらったりするのがよいでしょう。

普段の会話の中で、「桜が咲く時期になりましたね~」「7時になったので朝食の準備をしましょう」など、具体的に伝えると分かりやすくなります。

手掛かりとなるものを置いておくのも有効

 

失見当識の症状が見られる方は、手掛かりとなるアイテムを活用するのもおすすめです。

具体的には、時計やカレンダー、地図といった時間や場所が分かるものを設置する方法が挙げられます。

また、季節を感じられる花を置いたり、新聞やニュースを一緒に見たりするのも、言葉だけで伝えるよりも理解しやすくなるでしょう。

記憶を思い出すサポートをする

 

失見当識は、場所や時間のほかに人の認識も難しくなる症状があり、家族や友達といった親しい間柄の方を忘れるのは、ご本人も相手も悲しい気持ちになります。

そこでおすすめなのが、家族の写真やアルバムなどを用いて、会話してみることです。

介護者から「これは誰ですか?」「どこの写真ですか?」などを聞きながら会話すると、楽しい思い出がよみがえり、言葉が出てきやすくなります。

また、自分の歴史が書かれた自分史を一緒に作成すれば、自分のことはもちろん、家族や友人の記憶を思い出すきっかけにもなるでしょう。

薬物療法もあるが根本的な治療にはならない

 

失見当識には、リハビリ以外に薬物療法も用いられます。

ただし、効果があるのは早期発見できた場合といわれており、症状の緩和や進行を遅らせられる可能性があるだけです。

そのため、根本的な治療にはならないことを覚えておきましょう。

また、個々によっては副作用が出る場合もあるため、必ず医師やご本人と相談した上で判断しましょう。

予防も大切

 

失見当識はリハビリも重要ですが、日頃から脳の健康を意識した生活を送ることも同様に大切です。

予防するためには、以下の方法を意識するとよいといわれています。

  • 生活リズムを整える
  • 適度な運動を実施する
  • バランスのよい食事を摂る
  • 社会活動に積極的に参加する
  • 趣味を楽しむ

ただし、失見当識の原因の一つである認知症は、遺伝的な要素もあるため、これらを守っていれば発症しないわけではないことを覚えておきましょう。

まとめ

本記事では、失見当識とは何かを解説し、主な症状や日常生活への影響、シーン別の対応方法、そしてリハビリ方法についても解説しました。

失見当識は、ご本人の努力不足ではなく、病気や脳の変化によって起こる症状です。

周囲が正そうとするのではなく、不安な気持ちに寄り添い、安心できる関わりを続けることが何より大切です。

無理に抱え込まず、必要に応じて周囲や専門職、介護サービスを頼りながら、本人と介護者の双方が安心して過ごせる環境づくりを心がけていきましょう。

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