menu

褥瘡(じょくそう)とは?原因や予防方法、できてしまったときの対応方法まで詳しく紹介

褥瘡(じょくそう)とは?原因や予防方法、できてしまったときの対応方法まで詳しく紹介

高齢者や麻痺を患う方に多い「褥瘡(じょくそう)」。

褥瘡とは、同じ部位が長時間圧迫されることで血流が悪くなり、皮膚や組織が傷ついてしまう状態を指します。

初期は赤み程度でも、重症化すると感染や壊死につながるおそれがあり、適切な理解と早めの対応が欠かせません。

本記事では、褥瘡とは何かという基本から、起こる原因、日常でできる予防方法、そして万が一できてしまった場合の正しい対応までを分かりやすく解説します。

「褥瘡という言葉を初めて聞いた」「何に気をつければいいか分からない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

褥瘡とは?

 

褥瘡とは、同じ姿勢が続くことで体の一部が圧迫され、皮膚やその下の組織にダメージが生じる状態のことです。

一見すると小さな皮膚トラブルに見えても、発生の背景には血流障害や栄養状態、体の状態など、さまざまな要因が関係しています。

まずは褥瘡がどのような仕組みで起こるのかを理解し、原因やなりやすい人の特徴、似た症状との違いについて順に解説します。

圧迫と血流障害が引き起こす皮膚トラブル

 

日本褥瘡学会では、褥瘡のことを以下のように説明しています。

 

褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。

一般的に「床ずれ」ともいわれています。

 

通常、体に一定時間の圧力がかかり続けると、酸素不足や痛みを感じて無意識に寝返りを打ちます。

この動作によって圧力が分散されるため、健康な状態であれば皮膚トラブルにまで発展することはありません。

しかし、疾患や障害によって自力で体を動かせない方は、特定の部位が長時間圧迫され続け、血流障害を招きます。

その結果、皮膚組織が壊死して床ずれ(褥瘡)の発症へとつながってしまいます。

引用:日本褥瘡学会「褥瘡について

褥瘡ができる原因

 

褥瘡の主な原因は、体の特定の部位に長時間の圧迫が加わることです。

しかし、実際には圧力だけではなく、以下のような身体的・環境的な要因が重なって発症します。

 

  • 体のずれ
  • シーツとの摩擦
  • 汗や失禁などにより皮膚が湿った状態
  • 皮膚が弱っている
  • 骨の突出
  • 関節が動かない

 

これらの要因が重なるほど、褥瘡が発生するリスクが高まります。

単に圧力を分散させるだけでなく、栄養状態の改善や皮膚の清潔保持など、多角的な視点から予防に取り組むことが重要です。

低栄養や血行障害も原因の一つ

 

体への一定時間の圧迫や皮膚状態が悪いことが原因といわれる褥瘡ですが、栄養不足や血行障害といった内的要因も原因の一つです。

栄養や水分が不足すると、皮膚に必要な栄養素が足りなくなります。

本来であれば一定の圧力への耐性や傷の修復ができるところを、皮膚の再生力が低下するので、圧迫によるダメージを受けやすくなるのです。

また、何らかの疾患が理由の血流障害やむくみなどにより、皮膚バリアが低下することも褥瘡の原因です。

褥瘡になりやすい人

 

褥瘡になりやすい人は、以下の方が挙げられます。

 

  • 痛みに鈍感な方
  • 麻痺があって体を動かせない方
  • 衰弱により体を動かせない方
  • 手術の麻酔などで体を動かせない方
  • 栄養不足の方
  • 褥瘡になりやすい病気をお持ちの方

 

これらに当てはまる方は、特に注意する必要があるでしょう。

なお、褥瘡になりやすい病気は以下のとおりです。

 

●    うっ血性心不全

●    骨盤骨折

●    脊髄損傷

●    糖尿病

●    脳血管疾患

●    慢性閉塞性肺疾患

 

そのほかにもアルツハイマー病やパーキンソン病なども、褥瘡予備軍に挙げられます。

褥瘡になりやすい体の部位

 

褥瘡は体のどの部分にも発生するのではなく、なりやすい部位があります。

以下に挙げられる箇所は、特にできやすいといわれています。

 

  • 後頭部
  • 肩甲部
  • 仙骨部
  • 背部
  • 坐骨
  • 尾骨
  • かかと
  • ひじ
  • 腸骨
  • ひざ
  • くるぶし

 

上記に当てはまる箇所は、体の中でも特に圧迫を受けやすい部位のため、褥瘡ができやすくなります。

褥瘡と表皮剥離の違い

 

褥瘡と間違われやすいものの一つに「表皮剥離」と呼ばれる疾患があります。

表皮剥離とは、皮膚の表面(表皮)が摩擦や外力によって、部分的または広範囲に剥がれる状態のことで、特に高齢者に多い皮膚損傷です。

2つの違いは、褥瘡が長期間の圧迫による内部からの影響が原因であることに対し、表皮剥離は外部からの影響だけが原因となります。

褥瘡と発赤(はっせき)の違い

 

発赤とは、アレルギーや日焼け、圧迫などの刺激により、皮膚が赤くなる炎症症状の一つです。

皮膚内部の毛細血管が膨張し、血流が増えることで皮膚が赤く見えるのが原因で、圧迫を解除すると血流が再開して一時的に血行がよくなることから「反応性充血」とも呼ばれます。

褥瘡の初期症状でも発赤はみられますが、患部を押したときの反応に違いがあります。

発赤の場合は、患部を指で押すと一時的に白く退色し、離すと再び赤みが戻るのに対し、褥瘡は押しても白くならず赤みが消えません。

翌日になっても発赤が残っているようなら、褥瘡の可能性が高くなります。

褥瘡は4つのステージに分けられる

 

褥瘡は、皮膚や組織のダメージの進行度によって、以下の4つのステージに分類されます。

 

  1. 持続する発赤
  2. 表皮と真皮の部分欠損
  3. 皮膚全層欠損
  4. 筋肉や骨まで届く欠損(全層組織欠損)

 

初期の段階では見た目に大きな変化がなく、気づきにくいケースも少なくありません。

しかし、早い段階で異変に気づければ、重症化を防ぐことが可能です。

ここでは、褥瘡ができる前のサインや見分け方、注意が必要な深部損傷褥瘡について解説していきます。

褥瘡になる前触れ

 

褥瘡の初期症状は、皮膚の発赤(赤み)です。

特に肩甲部や仙骨部、後頭部、臀部といった、ベッドや椅子などの接地面と接している時間が長い部位に見られる場合は、褥瘡を疑いましょう。

この段階で適切に処置できれば、重症化を防げるかもしれません。

褥瘡かどうかのチェック方法

 

褥瘡かどうかをチェックするには、発赤との違いで紹介した、患部を圧迫する方法を試すのが一般的です。

圧迫方法には2つあり「指押し法」か「ガラス板圧診法」が用いられます。

指で押すか透明のプラスチック板で押すかの違いだけであり、どちらの方法を選んでも問題ありません。

3秒程度圧迫してみて、赤みが消えない(白くならない)場合は初期の褥瘡を疑い、医師に相談してみましょう。

深部損傷褥瘡とは

 

褥瘡のステージは4つの段階に分けられますが、そのほかにも「深部損傷褥瘡」と呼ばれる、皮膚の表面には大きな傷が見られないにも関わらず、皮下の組織がすでに損傷している状態があります。

深部損傷褥瘡は、長時間の圧迫やずれ(剪断力)によって、皮膚の下にある筋肉や脂肪組織がダメージを受けているのが特徴です。

見た目には傷がない、または赤みが少ないため軽症と思われがちですが、皮膚の色が紫色や暗い赤色、栗色に変化していることがあります。

また、触ると周囲より硬い、熱っぽい・冷たい、痛みを訴えるといった変化が見られることもあり、これらは損傷が進んでいるサインです。

適切な対応が遅れると時間の経過とともに皮膚が壊れ、急速に深い褥瘡へと進行する可能性があるため、早期発見と注意深い観察が重要です。

褥瘡を放置した場合はどうなる?

 

褥瘡が進行すると筋肉や骨までダメージを受けることは紹介しましたが、それ以上病状が進行すると重大な合併症につながり、最悪の場合は死亡するケースも出てきます。

そのため、褥瘡はできてから対応するのではなく、できる前から予防することが何よりも重要です。

日常のちょっとした観察やケアの積み重ねが、重症化を防ぐ大きなポイントとなります。

特に褥瘡を発症する可能性の高い高齢者は、合併症を予防する意味でも早い段階から意識的な予防対策が欠かせません。

褥瘡を予防するための対策

 

褥瘡は原因を理解し、適切な予防対策を日常的に行うことで防げる可能性があります。

特に、体への圧迫を減らす工夫や皮膚状態の管理、栄養や水分といった内側からのケアが重要です。

ここでは、今日から実践できる褥瘡予防の具体的な方法を解説します。

体位変換と体圧分散が基本

 

褥瘡は、体に一定時間の圧が加わることで引き起こされるので、体位変換を行い体圧を分散させることが予防の基本です。

体位変換は、体の同じ箇所に圧がかからないように、横向き(側臥位)と仰向け(仰臥位)を交互に行います。

体位変換は2時間を超えない範囲で行うのが基本です。ただし、高機能な体圧分散マットレスを使用している場合は、4時間程度まで間隔を空けられることもあります。

体圧分散マットレスや車いす用クッションなど、体にかかる圧力を緩めてくれるアイテムを使用するのもおすすめです。

皮膚の摩擦やずれにも注意する

 

褥瘡は圧力だけでなく、摩擦やずれも大きな原因です。

衣類やシーツのわずかなシワは、長時間触れ続けることで皮膚を傷つける刺激となるため、平らに整えておく必要があります。

ベッドにリクライニング機能が備えられている場合は、体を起こした際にずれが生じやすいので、一度ベッドと体を離して圧を逃がしましょう。

バランスのよい食事を心がける

 

バランスのよい食事は褥瘡ができた際の修復力はもちろん、予防にも効果的です。

本来であれば体に損傷ができても修復できますが、体に必要な栄養素が不足すると、皮膚の再生力が低下し、圧迫によるダメージを受けやすくなります。

特に以下の栄養素は、積極的に摂取することをおすすめします。

 

  • たんぱく質(肉・魚・卵など)
  • 亜鉛(牡蠣・レバー・蟹など)
  • 鉄(レバー・ひじきなど)
  • ビタミンC(果物・野菜など)

 

食事の摂取が難しいなら、医師や看護師に相談しながら栄養補助食品やサプリメントの使用も検討してみましょう。

適度な水分補給を行う

 

水分不足も褥瘡の原因となるので、少しずつでも摂取するように心がけましょう。

水分が摂りにくい場合は、ご本人が飲みやすいジュースや栄養ドリンクも検討するのがおすすめです。

その際、必ず医師や看護師に相談することを忘れないようにしましょう。

皮膚を清潔に保ち保湿ケアを行う

 

褥瘡の予防は皮膚の外部的なケアも大切です。

入浴や清拭などで体の表面を清潔にすることはもちろんですが、保湿ケアも入念に行いましょう。

高齢者の皮膚は思った以上に刺激に弱くなっている場合もあり、洗体する際はゴシゴシ擦るのではなく優しく洗い上げるのがポイントです。

毎日の皮膚チェックも大切

 

褥瘡は突然起こるものではなく、少しの赤みや違和感から発見されるケースも多いため、毎日の皮膚状態チェックも重要です。

 

  • 朝と夜に全身をチェックする
  • 体の部位で湿りやすい箇所をチェックする
  • 違和感がある場合は押してみて赤みが残るかチェックする

 

このような日々確認できる方法を見つけながら、早期発見につなげることが大切です。

褥瘡ができてしまった場合の対応方法

 

予防方法を実施していても、褥瘡ができるケースは少なくありません。

しかし、褥瘡ができてしまった場合でも、適切な対応を早期に行うことで悪化を防ぎ回復を促せます。

ここでは、褥瘡ができた際に知っておきたい基本的な対応方法を解説します。

患部の処置方法

 

褥瘡ができてしまった際の処置は、患部の深さや状態によって方法が異なります。

赤みや違和感といった症状が比較的軽度な場合は、ワセリンや皮膚保護クリームなどで皮膚を保護するか、または創傷被覆材(ドレッシング材)を用いて摩擦を防ぎます。

保護する際は、ガーゼやテープが食い込まないように注意してください。

症状が緩和されない場合は医師に相談し、診察を受けましょう。

適切な体位変換と体圧分散を検討

 

予防方法を実施しても褥瘡ができてしまった場合は、体位変換や体圧分散の方法が間違っている可能性があります。

個々によって減圧する箇所や体位変換までの時間は異なるので、医師や看護師と相談しながら進めることが大切です。

また、褥瘡ができやすい方用のマットレスやクッションなども効果的ですので、積極的に活用していきましょう。

スキンケアをしっかり行う

 

褥瘡ができた際の傷口は、汗や皮脂、細菌などで汚れています。

この状態で保湿だけ行うと、症状がさらに進行してしまいますので、先にしっかり洗浄してから保湿ケアを行うことが大切です。

洗浄する際は、生理食塩水または水道水を使用するのが基本です。

症状がよくなった場合も、できるだけ皮膚に刺激の少ない弱酸性洗浄剤を使用するのがよいでしょう。

栄養バランスがとれているかもチェックする

 

褥瘡は栄養素が少なすぎることでも引き起こされ、その状態が続くと回復も遅くなります。

積極的に摂りたい栄養素は、予防方法のところでも紹介したように「たんぱく質」「亜鉛」「鉄」「ビタミンC」の4つです。

普段の食事内容を一度見直し、必要な栄養素が十分に摂れているかを確認してみましょう。

サプリメントや栄養補助食品も検討する

 

食事のみで十分な栄養素が摂取できない場合は、サプリメントや栄養補助食品を検討するのがよいでしょう。

その際、摂取しやすいことはもちろんですが、ご本人が好きなものを選ぶことが大切です。

好きなものなら続けやすく、栄養素を体に吸収しやすくなります。

ただし、服薬やそのほかの疾患との兼ね合いもありますので、医師や看護師と相談しながら進めましょう。

まとめ

 

褥瘡とは、同じ姿勢が続くことで血流が悪くなり、皮膚や組織が傷ついてしまう状態です。

初期は赤み程度でも放置すると重症化し、命に関わる合併症につながる可能性もあります。

予防するためには体位変換や体圧分散、皮膚ケア、栄養・水分管理といった日常的な予防が重要です。

万が一できてしまった場合でも、早めに適切な対応を行うことで悪化防止が期待できます。

日常のちょっとした気づきとケアの積み重ねが、安心して過ごせる毎日につながるでしょう。