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高齢者虐待防止法を分かりやすく解説!虐待の種類や通報の流れ、対策までを紹介

高齢者虐待防止法を分かりやすく解説!虐待の種類や通報の流れ、対策までを紹介

高齢者虐待防止法とは、高齢者への虐待を防ぎ、権利と利益を守ることを目的とした法律です。

養護者であるご家族はもちろん、介護従事者にも通報義務や対応責任が定められています。

しかし、実際には「これは虐待にあたるのか」「気づいたとき、どう行動すればいいのか」と不安や迷いを感じていませんか。

本記事では、高齢者虐待防止法の基本から虐待の種類、通報の流れ、現場で求められる具体的な対策までを分かりやすく解説します。

今後の介護に生かすためにも、ぜひ最後までご覧ください。

高齢者虐待防止法とは?

 

高齢者虐待防止法とは、高齢者が尊厳をもって安心して暮らせる社会を実現するための法律です。

虐待を防ぐための考え方だけでなく、発見した人が取るべき行動や、なぜ今この法律が重要視されているのかも定められています。

まずは、高齢者虐待が増えている背景や原因、そして近年強化された虐待防止の取り組みを見ていきましょう。

高齢者の命や暮らし、権利を守るための法律

 

高齢者虐待防止法は、平成18年4月に施行された「高齢者の命や暮らし、権利を守る」ための法律です。

高齢者に対する虐待を防ぎ、安心して生活できる環境を整えることを目指しています。

この法律の特徴は高齢者虐待を防止することはもちろん、加害者になる可能性のある「養護者」や「介護サービス提供者」へのサポートも含まれている点です。

介護負担やストレスなど、虐待の背景にある問題にも目を向け、再発防止につなげる仕組みが定められています。

この法律は基本的に65歳以上が対象者となりますが、一定の条件を満たした65歳未満の障がい者も高齢者とみなされます。

発見者は通報の義務・努力義務がある

 

高齢者虐待防止法では、高齢者への虐待を発見した場合、状況に応じて自治体や警察などへ通報することが定められています。

特に、高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに「通報しなければならない(通報義務)」と規定されています。一方、そこまでの危険が差し迫っていない場合であっても、早期発見と保護のために「通報するよう努めなければならない(努力義務)」とされています。

これらは国民の責務であるため、虐待の疑いを見かけた際は、一人で悩まず速やかに専門機関へ相談・通報することが大切です。

出典:e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

近年、高齢者虐待は増えつつある

 

厚生労働省が行った調査によると、高齢者虐待は年々増えつつあるという結果が出ています。

具体的な調査結果は、次のとおりです。

 

【要介護施設従事者】                            (件)

 平成

28年

平成

29年

平成

30年

令和

元年

令和

2年

令和

3年

令和

4年

令和

5年

相談・通報

件数

 

1,7231,8982,1872,2672,0972,3902,7953,441
虐待

判断件数

4525106216445957398561,123

 

 

【養護者】                                 (件)

 平成

28年

平成

29年

平成

30年

令和

元年

令和

2年

令和

3年

令和

4年

令和

5年

相談・通報

件数

 

27,94030,04032,23134,05735,77436,37838,29140,386
虐待

判断件数

16,38417,07817,24916,92817,28116,42616,66917,100

 

こちらの調査結果をみると、養護者の虐待判断件数以外は、年々増加傾向であることが分かります。

出典:厚生労働省

令和5年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果

高齢者虐待はさまざまな要因が重なって起きている

 

1つ前の調査結果からも分かるように、高齢者虐待は年々増加傾向にあります。

こういった結果が起こる背景には、さまざまな要因が重なっているといわれており、主に社会や家族といった環境的な要因や、介護に関する知識不足などが挙げられます。

【養護者による背景】

家族や社会等高齢者の状況虐待者の状況
●    老老介護、単身介護の増加

●    近隣関係の減少、社会からの孤立

●    ニーズに合わないサービス

●    介護への無関心

●    性格

●    認知症の発症

●    疾患や病気の発症

●    身体機能の低下

●    性格

●    介護ストレス

●    介護への知識不足

●    認知症への知識不足

●    経済的困窮

 

 

【要介護施設従事者による背景】

組織的要因職員個人の要因利用者の要因
●    虐待を助長する雰囲気

●    職員不足

●    職員への教育不足

●    職員間の連携不足

●    情報公開に消極的

●    家族との連携不足

●    介護への知識不足

●    認知症への知識不足

●    虐待防止法への知識不足

●    身体拘束への知識不足

●    ストレス

●    カスタマーハラスメント

●    暴力

●    暴言

 

これらさまざまな要因が重なり、高齢者虐待が引き起こされます。

令和6年からは虐待防止の取り組みが義務化された

 

近年の高齢者虐待の増加を受け、令和6年4月からすべての介護サービス事業者に「高齢者虐待防止の推進」が義務づけられました。

義務化された内容は、以下のとおりです。

 

  • 定期的な委員会の開催
  • 高齢者虐待防止のための指針整備
  • 高齢者虐待に関する定期的な研修の実施
  • 虐待防止の担当者を選任

 

これらは事業所の運営基準にも追加されることになり、実施されていないことが分かると、介護報酬額が減算される可能性があります。

高齢者虐待防止法の定義と虐待の種類

 

高齢者虐待は、決して特別なケースだけで起こるものではありません。

高齢者虐待防止法は、誰が対象となり、どのような行為が虐待にあたるのかを具体的に定めています。

ここでは、対象者や加害者の範囲を確認し、身体的・心理的・経済的虐待などの種類や実際の例、さらに虐待の深刻度について確認していきましょう。

対象者・加害者の範囲

 

対象者や加害者の範囲は、次のとおりです。

 

  • 65歳以上の者
  • 一定の条件を満たす65歳未満の者
  • 高齢者を養護する者
  • 要介護施設に従事する者

 

65歳未満であっても、要介護施設に入所もしくは利用されている方に関しては「高齢者」とみなされ、規定が適用されます。

加害者の範囲は「養護者」と「養介護施設従事者」であり、高齢者本人の家族や親族、介護従事者などが挙げられます。

虐待の種類と具体的な例

 

高齢者虐待の種類には、大きく分けて以下が挙げられます。

 

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 介護放棄・ネグレクト
  • 経済的虐待
  • 性的虐待

 

それぞれ具体例を交えて紹介していきます。

身体的虐待(特に多い)

 

身体的虐待は、高齢者虐待の中でも特に多いといわれており、養介護施設従事者等による虐待は51.1%、養護者による虐待でも64.1%となっています。

【具体例】

●    つねる、殴る、蹴る

●    ものを投げたり、壊したりする

●    無理やり移動させたり食べさせたりする

●    痛みを伴うリハビリを強要する

●    ベッドに拘束する、ベッドに柵をつける

●    ご本人の了承なしにつなぎ服を着せる

●    居室の鍵をかけて外に出させない

●    家の鍵をかけて中に入れない など

 

心理的虐待

暴言を吐いたり、拒絶するような態度をとって心理的に傷つけるような行為を指します。

 

【具体例】

●    老化現象に伴う言動や行動を笑う

●    怒鳴る、ののしる、悪口を言う、無視する

●    子どものように扱う

●    ご本人の意向を無視しておむつを装着する、食事を全介助する

●    台所や洗濯機の使用を制限する

●    家族や親族との集まりに呼ばない など

 

介護放棄・ネグレクト

介護放棄やネグレクトは、その名のとおり介護が必要な方に対して、適切な介護を行わないことを指します。

 

【具体例】

●    入浴させず異臭がする

●    髪の毛や爪、身体がケアされていない

●    寝具が洗濯されておらず汚れている

●    食事や水分が与えられていない、栄養失調や脱水症状がある

●    室内にゴミが散乱しているなど、清潔さが保たれていない

●    冷暖房をつけさせない など

 

経済的虐待

高齢者の財産を不当に利用したり、処分したりすることを指します。

 

【具体例】

●    日常生活に必要なお金を使わせない、渡さない

●    ご本人の財産を勝手に使う、持ち出す

●    ご本人の自宅を勝手に売りに出す

●    年金や預貯金を勝手に使用する

●    介護に必要な費用を支払わない など

 

性的虐待

わいせつな行為をすること、させること、また性的苦痛や性的羞恥心を与えることを指します。

 

【具体例】

●    排泄を失敗した際に裸または下着のまま放置する

●    人前で排泄行為やおむつ交換を行う

●    性器を写真に撮る

●    キスをしたり性器を触ったりする

●    セックスを強要する

●    わいせつな写真や映像を見せる

●    自慰行為を見せる など

 

虐待の深刻度の定義

虐待の深刻度の定義は、以下の4段階に分けられています。

 

深刻度内容
1(軽度)医療機関や福祉サービスなど、専門的な支援を受ける必要性が高い状況
2(中度)不適切な行為が何度も行われており、高齢者の心や体、日常生活に悪影響が及んでいる状況
3(重度)身体的・精神的な健康に重大な問題が生じ、日常生活の維持が困難なため、保護の必要性が高い状況
4(最重度)命に関わる危険が差し迫っており、心身や生活が極めて深刻な状態にあるため、早急な保護が必要

 

これらの深刻度によって、求められる対応方法が異なってきます。

出典:厚生労働省

令和5年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況調査等に関する調査結果について(報告)

高齢者に虐待があった際の通報先・通報の流れ

 

高齢者虐待に気づいた、または疑いを持った場合、適切な通報と迅速な対応が高齢者を守る大きな一歩となります。

しかし「どこに連絡すればいいのか」「通報後はどう進むのか」と迷う方も少なくありません。

ここでは、具体的な通報先や通報の流れに加え、虐待の深刻度に応じた介入方法、通報者の個人情報の取り扱いを解説します。

通報先

 

高齢者虐待を発見した場合の通報先は、以下のとおりです。

 

●    市区町村

●    地域包括支援センターの虐待担当窓口

●    警察

 

虐待が疑われるケースや緊急性の低い場合は、市区町村や地域包括支援センターに通報します。

反対に緊急性が高いと判断できる場合は、警察に連絡し早急に対応してもらう必要があります。

判断が難しい場合は、まず自治体に連絡し指示を仰ぐとよいでしょう。

通報の流れ

 

高齢者への虐待を発見した場合の通報の流れは、次のとおりです。

 

  1. 虐待の発見
  2. 発見者もしくは高齢者本人が通報する
  3. 市区町村の担当部署、もしくは自治体が介入する

※緊急性が高い場合は保護を早急に行う

  1. 制度に基づいた措置や立ち入り調査を行う
  2. 養護者や施設従事者に対して必要なサポートが行われる

 

通報を受けたら虐待に関する事実確認を行い、施設や自宅に訪問します。

その後、虐待状況に合わせて今後の方針が決定され、必要なサポートが行われます。

通報時に緊急性が高い場合は保護を最優先に行い、必要に応じて病院や保護施設への緊急入院(入所)が行われるのが一般的です。

深刻度によって介入方法が異なる

 

通報を受けた市区町村や自治体が行う介入は、虐待の深刻度によって異なり、大きく「緊急事態」「要介入」「要見守り・支援」の3つに分けられます。

緊急事態と判断されるケースでは、ご本人の保護が最優先に行われます。

要介入は、緊急性は高くないが、放置しておくと重大な虐待につながる可能性のある状態です。

この場合は、専門職が介入しサポートがなされます。

要見守り・支援に該当する場合は、ご本人への影響がほとんどない、もしくは一部影響がある状態です。

介護への知識不足や負担の増加から適切なケアがなされていない場合が多く、サービス提供の検討や支援がなされます。

通報者の個人情報は適切に保護される

 

通報する方の中には「話したことが加害者に知られてしまうのでは?」「仕事をしづらくなるのでは?」と心配される方もいます。

しかし、法律により通報を受理した行政機関や包括支援センターの職員に秘密を守る責任が課されているため、伝えた内容が第三者に知られることはありません。

関係者が入手した情報が漏えいした場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。

出典:厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

高齢者虐待防止法による罰則はある?

 

高齢者虐待防止法について調べる中で「違反した場合に罰則はあるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。

実際には行為の内容によっては刑罰が科される場合や、対応次第で罰則の対象となるケースもあります。

ここでは虐待行為と刑罰の関係、さらに調査拒否や虚偽の説明に対する罰則を解説します。

罰則はないが犯罪行為による刑罰が科せられる

 

高齢者虐待防止法による罰則はありませんが、虐待は犯罪行為となり、行った虐待行為に応じた刑罰が科せられます。

具体的に適用される刑罰は、次のとおりです。

 

虐待行為該当する犯罪刑罰
身体的虐待暴行罪・傷害罪暴行罪:2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金等

傷害罪:15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

心理的虐待侮辱罪1年以下の拘禁刑

30万円以下の罰金

介護放棄・ネグレクト保護責任者遺棄罪3カ月以上5年以下の拘禁刑
経済的虐待横領罪・窃盗罪単純横領罪:5年以下の拘禁刑

窃盗罪:10年以下の拘禁刑

または50万円以下の罰金

性的虐待不同意わいせつ罪

不同意性交等罪 など

不同意わいせつ罪:

6カ月以上10年以下の拘禁刑

不同意性交等罪:

5年以上20年以下の有期拘禁刑

 

調査拒否や虚偽の説明は罰則が科される

 

高齢者虐待防止法による虐待への罰則はありませんが、調査拒否や虚偽の説明をした場合は、罰則が科せられます。

具体的には、30万円以下の罰金が科せられることになります。

出典:e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

高齢者虐待が疑われるサインと防止するための対策

 

高齢者虐待は気づかないうちに起きてしまうこともあり「もっと早く気づけたのでは」と後悔するケースもあります。

だからこそ、日常の中で見逃してはいけないサインを知り、未然に防ぐ工夫が大切です。

ここでは、虐待が疑われる具体的なサインと、介護者の負担軽減やストレス解消方法、地域で支え合う取り組みなど、実践しやすい防止策を解説します。

虐待が疑われるサイン

 

虐待が疑われるサインには、次のケースが挙げられます。

 

  • 説明のつかない傷やあざが確認できる
  • 怖がっているような態度や表情が見られる
  • 着替えが行われていない様子で、強い不快臭がする
  • 長期間、入浴していないと思われる状態が続いている
  • 姿を見かけることがほとんどなくなった
  • 体重が減少しているように見える
  • 性器周辺に傷や出血が見られる
  • 通院や介護サービスを受けている様子がない

 

これらすべてが確実に虐待であるというわけではありませんが、発見した際は注意深く観察する必要があります。

判断が難しい場合は一人で悩まず、地域包括支援センターの虐待窓口や市区町村に相談することをおすすめします。

虐待を防止するための対策

 

虐待を未然に防ぐには、早期の気づきと継続的な支援がポイントです。

以下で介護者の負担軽減や地域との連携など、具体的な防止策を紹介します。

介護者やサービス従事者の介護負担の軽減

 

介護は長期間にわたることが多く、心身の疲労が蓄積しやすい状況です。

負担を一人で抱え込まず、介護保険サービスや地域資源を活用することが重要です。

訪問介護やデイサービス、短期間の施設利用などを組み合わせることで、休息の時間を確保できます。

無理のない介護体制を整えることが、虐待の予防につながります。

ストレス発散方法を見つけておく

 

ストレスが蓄積すると、対応が雑になったり感情的になったりするリスクが高まります。

日常の行動や体調の変化を振り返り、無理をしていないかを確認しましょう。

職場で相談しやすい環境を整えることも、ストレス軽減につながります。

高齢者が安心して暮らせる地域づくり

 

高齢者虐待を防ぐには、家庭を孤立させない地域の見守りが欠かせません。

様子が違うと感じたときに声をかけ合える関係性が、虐待の早期発見と予防につながります。

日常的なあいさつや声かけ、ちょっとした変化への気づきが、大きな問題を防ぐきっかけになります。

関係機関が協力して対応

 

虐待の背景には、健康、経済、家族関係など複数の課題が重なっていることが多くあります。

医療、介護、福祉などが情報を共有し、それぞれの専門性を生かすことで、切れ目のない支援が可能になります。

また、より適切な支援にもつなげられるでしょう。

虐待に関する定期的な学習や積極的な支援の実施

 

知識不足や誤った認識は、無意識のうちに不適切な対応を生む原因になります。

介護や認知症への理解を深める研修や学習を定期的に行い、支援制度の活用を促すことで、介護者の負担軽減にもつながります。

継続的な学習を通じて理解を深めるとともに、必要な支援につなげる体制を整えることが重要です。

定期的にケアのセルフチェックを行う

 

日々のケアを振り返ることは、不適切な対応を防ぐために重要です。

定期的に自身のケアを見直し、利用者の立場に立った対応ができているかを確認することが大切です。

言葉遣いや態度、介助の方法が尊厳を損なっていないかを確認し、改善につなげていきましょう。

身体拘束は高齢者虐待になるの?

 

「危ないから仕方がない」「昔からやっている」といった理由で行われがちな身体拘束ですが、実際には虐待にあたる可能性がある行為です。

ここでは、身体拘束が原則として認められない理由や、例外的に実施が検討される場面、実施時に必要な対応について解説します。

基本的にはNG

 

医療・介護現場における身体拘束は、基本的には許されていません。

身体拘束の事例としては、以下が挙げられます。

 

  • ベッドに拘束する
  • ベッドに柵をつける
  • 車椅子に安全ベルトを装着する
  • ミトンの装着
  • つなぎ服を着せる など

 

こういった身体拘束の背景には「深夜に外出して、近所徘徊してしまう」「車椅子から転倒しないため」「おむついじりを防ぐため」といった理由があります。

ご本人を思ってのことで問題にならないと思われがちですが、介護者が独断で行うと虐待行為とみなされる場合があります。

緊急時にやむを得ず行う場合はある

 

高齢者の介護を行う方は、安全を優先してやむを得ず身体拘束しないといけない状況もあります。

例外的に拘束できるのは、以下の3つの条件が当てはまる場合のみです。

 

  • 「切迫性」:危険性が高いか
  • 「非代替性」:代わりになる方法はないか
  • 「一時性」:一時的な対応方法のみ

 

これらがすべて当てはまれば、身体拘束が許されます。

なお、要件の中には「ご家族の同意」は含まれません。

身体拘束を行うにあたって、基本的には必ずご本人やご家族の同意が必要になりますが、暴力行為が見られるなどの緊急性がある場合は、例外的に認められるケースがあります。

事情により拘束する場合は記録に残す

 

やむを得ない状況により拘束が必要になった場合は、その行為を細かく残しておかなければいけません。

記録に関しては、以下の項目は必ず控えておきましょう。

 

  • 実施日時や時間
  • 拘束を解いた時間
  • 拘束の内容
  • 緊急性や理由
  • ご本人の様子

 

ケースによってはご家族から苦情が出る場合があるので、そういった状況に備えて、しっかり記録は残しておきましょう。

当たり前に行うのはよくない

 

身体拘束する上でもっともよくないとされるのが、当たり前になることです。

例えば、深夜帯に黙って外出される認知症を患う方がいたとき「対応できない」「仕方がない」といった理由だけで、それが当たり前になるのはよくありません。

また、薬を飲んでくれないからお茶に混ぜているといったケースでも、不適切なケアが常態化しやすくなります。

大切なのは、やむを得ず身体拘束を行う一方で、ほかにどのような対応が可能かを模索し続けることです。

現在行っている対応方法は適切か、ご本人が問題行動を起こす理由などを、定期的に探る必要があります。

まとめ

 

高齢者虐待防止法は、高齢者の尊厳と安全な暮らしを守るために定められた重要な法律です。

虐待の種類や深刻度、通報の流れを正しく理解することで、早期発見と適切な対応につながります。

虐待は特別な家庭や施設だけの問題ではなく、誰の身近でも起こり得ます。

日頃から小さな変化に気づき、支援制度や地域の力を活用しながら、高齢者と介護者の双方を支える姿勢が大切です。