【介護コラム】その日が一日でも先であるようにー第2話ー

グループホームに住む認知症の男性とヘルパーとの実話

 

T氏の自宅はグループホームから自転車で5分ほどのところにあり、ほぼ毎日、奥様が面会に来ていた。本当は自宅で一緒に暮らしたいが、自身も高齢であり、認知症の夫の面倒を見続けることには自信が持てず、悩んだ末に施設への入居を選んだ。そのため、頻繁にT氏の顔を見に来ては、他の入居者に混じって洗濯物を畳んだりしていく姿をよく目にした。週末になると離れて暮らしている娘と一緒に来ることが多く、身近に家族の温かみを感じながら日々を過ごしていたように思う。

事実、施設に入居してしまうと、死ぬまで会いに来ない家族がいる中で、T氏は本当に家族に愛されているなと感じることが多くあった。認知症による起伏の激しい感情表見など表面的な部分に囚われ、苦手意識を持っていた私は、家族を通して病気になる前の為人を知り、T氏の気持ちを理解したいと思うようになっていった。

しばらくして、ホームで生活する上での目標や方針の更新時期が来た。先ずはご家族の意向を確認しておこうと、面会に来た奥様に話を伺った。奥様は照れくさそうに「思い出の植物園でもう一度デートがしたい」と、言った。その時の表情は年齢よりもずっとずっと若く、聞いた私もちょっとこそばゆい気持ちになった。そして、叶えたいというよりも「叶えなければ」という使命感に駆られた。

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!