【介護コラム】その日が一日でも先であるようにー第7話ー

グループホームに住む認知症の男性とヘルパーとの実話

T氏の書類関係のことは全て娘様が取り仕切っていた。私が夜勤明けの日の午前中に説明を行うことになった。わかりやすく説明するために、夜勤の合間で何度もプランを読み返し、説明する順序を考え、自分の中での台本を練り上げた。夜勤明けの睡魔と闘いながら娘様の到着を待ち、ホーム長同席のもとプランの説明を行なった。結局、台本まで考えたにも関わらず、経験の浅い私は寝不足の頭で説明していたので、後から振り返っても何をどう伝えたのか思い出せない。だが、本人の意向を引き出せたことについての経緯や喜びをとにかく必死に話したことだけは覚えていた。
それからどれくらいの日数が経ったかは覚えていないが、T氏はホームで最後の時を迎えた。T氏が亡くなった日、私は夜勤の入り日で、夕方に出勤しいつもと変わらない段取りで日中の申し送りを受け、入居者たちと一緒に夕飯の支度をした。その様子をソファから眺めていたT氏を食卓へ案内し、その隣に私が腰掛け、夕食が始まった。その日のT氏は、食事ということが認識できておらず、小鉢の中身を汁椀に入れようとしたり、手づかみで食べようしたり、それを見ていた他の入居者たちの表情が徐々に曇り、嫌そうな素振りを見せ始めた。

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!