【介護コラム】その日が一日でも先であるようにー第9話ー

グループホームに住む認知症の男性とヘルパーとの実話

嫌な予感がして、急いで声の聞こえたT氏の居室へ向かった。目の前には、顔面蒼白のT氏が居た。声をかけたが反応は無く、呼吸もしていない。パニックになった私は何を思ったのか急いで血圧計を取りに行き、彼の腕に巻きつけ測定をした。E・E・E・無情に点滅するエラー表示。何度か繰り返したあとに我に返り、彼が死んだのだと理解した。
すぐに、ホーム長と家族に連絡を入れた。死亡診断を終え、エンゼルケアを行なうホーム長の手伝いをし、状況報告をした。まもなく娘様も到着し、ホームの玄関先で肩についた雨のしずくを払っているところを出迎えた。声をかけようとすると、私の顔を見て、「こんなに素晴らしいことはありません」と思ってもみない言葉が返ってきた。
困惑する私の横をすり抜け、娘様は足早にT氏の居室へ向かった。慌てて後を追い、口元にハンカチを当てながら冷たくなった父親と対面している娘様に状況をお伝えした。

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!