menu

【介護コラム】 明日に向かって - 第2回- 迷走①

【介護コラム】 明日に向かって - 第2回- 迷走①

二十代の半ばくらいまでは、身体的には大きな変化はなく過ぎていきました。一番積極的に外出していた時期で、飲み会に参加することもしばしば。沢山の人との交流を図って過ごしていました。

この頃、ちょっとしたご縁から絵本製作の話が舞い込んできました。雪だるまを主人公にした物語で、プロジェクトチームまで組まれ、沢山の助言を頂きながら進めていきました。ようやく出版に至るとちょっとした話題になり、テレビや新聞の取材を受けたりと、何かと周囲がちやほやしてくれました。

続編を期待する声もあがり、まだ具体的に何をやりたいのかが明確ではなかった僕は、周囲が勧めるままに絵本の続編に取り組むことにしたのですが、今度は求められている内容には沿わず、完全なオリジナルストーリーのものを自分で思うように書くということを条件に引き受けました。
そうして出来上がった絵本は、達成感とは裏腹にほとんど売れることはなく、絵本作家の道を辞めるきっかけになりました。

当時よく言われていたのが「自分の意見がない」ということです。

絵本にしても取材にしても、障害があることが前提で周囲が持ち上げてくれていたことだと気付いたのは後になってからのことで、ただただ勧められるがままにその話に乗り、いざ自分を全面に出してみたら思うような結果にならない。

「結局のところ僕という人間は何者なのだろうか・・・・・・」と迷走する毎日が続いていました。

推奨BGM

「ナキムシのうた」風味堂(2005年)

コラム原案/安部隼人
障害者の目線から、社内での研修講師をしたり、啓蒙活動のためのレポート作成等を担当しています。
晩酌のお供はカニカマ派です。
Illustrator/エム・コウノ