【介護コラム】近くて遠いー第7話ー

第七話
費用面での負担が軽くなったことと、Yさんの状態が良くなることは全く別の話である。私たちの日々は相変わらずで、とにかく一口でも多く栄養と水分を摂ってもらえるよう努力と工夫を重ねていた。
そんな折、義母の体調を案じて、娘の夫がドイツから帰国してきた。彼は日本人で、福祉にとても理解があり、訪問するたびに労いの言葉をかけてくれた。滞在期間は限られていたが、同じ屋根の下に身内がいるという安心感が認知症のYさんにも伝わったのか、徐々に調子が上向いていった。
「昨日の夜中には一人でトイレに行ったんですよ」と聞かされたときは本当に嬉しくなった。
娘婿の希望で、食事をしながらインターネットのテレビ電話でドイツにいる娘と中継を繋いだ時などは、介助とはいえパクパクとアイスなど食べ、「なんだ、お母さん元気じゃない」と言われたほどだ。パソコンの画面に向かって嬉しそうに手を振るYさんを見ながら、家族の力の大きさを再認識させられた。
食事量が増えてくると脚力も徐々に回復し、一事は室内の移動にも車椅子が必要だった状態から、見守り程度でスタスタと歩けるようになった。人間の根っこの強さを目の当たりにし、同時にチームワークの尊さを改めて体感することが出来たように思う。