介護福祉士の人材登録制度ってご存知ですか??

介護分野において一番の問題となっているのは、人材不足。
その解消のために、国が用意していた施策がどうやら不発に終わった、というニュースのご紹介です。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180731-OYTET50039/
記事によると、子の登録制度、というのは、「仕事を辞めた介護福祉士を登録し、求人情報を提供して復職を促す仕組み」とのこと。
改正社会福祉法に基づき、2017年4月に始まった制度とのことで、離職した介護福祉士は、連絡先や希望する勤務条件を各地の社会福祉協議会が運営する「福祉人材センター」に届け出ることが努力義務、となっているそうです。
制度の現状
この制度、実際どの程度活用されているのでしょうか?
記事は、年間10万人ほど離職者がいると予想されているなか、登録は5700人しかいないので、登録者は1割以下に留まっている、と書いています。
数字の通りであれば、1割以下どころか5%ちょい、といった登録者数しかない状況です。
また、確かに制度が始まってまだ1年、というところではあるため、年間の離職者を母数として考えるのは正しくはありますが、現状現場で働いていない介護福祉士の数は60万人ほどいます。
そう考えると、要は現場で働いていない介護福祉士のうち、この登録制度を利用している人は1%以下、という現実が見えてきます。
登録者には求人情報のほか、介護に関する研修など、再就職に向けた情報がメールなどで提供される、という仕組になっているようですが、この状況では研修も開けない状況、とのこと。
制度の問題点
なぜこの制度、登録者数が伸びないのでしょうか。
国は、
- 給与の引き上げや社会的地位の向上にも取り組む必要がある
- 嫌気がさして辞めた人を登録させるのは難しい
と結論づけているようなのですが、果たしてそれだけでしょうか?
実際、介護業界からドロップアウトしてしまう離職者というのは、離職者全体からしても多数を占めているわけではなく、介護職から介護職に転職する介護福祉士は非常に多いです。
業界の待遇面を改善する必要はもちろんありますが、それ以外に国がやれるべきことがあるだろう!と思ってしまいます。
まず一つ目の理由としては、認知度が足りないこと、でしょう。
そもそも、この制度、介護福祉士をお持ちの皆さんはご存知でしたか?
お恥ずかしい話ですが、私自身、この記事を見て初めてこの制度を知りました。
もしかすると介護福祉士資格をお持ちの方には何らかの方法で告知しているのかもしれませんが、それ以外の人にもある程度告知すべき内容だと思います。
認知度を上げるためには、それこそ新聞やテレビなどのメディアにお金を投下すべきだと思います。確かに数億円単位の投資にはなると思うので、パッと見ると凄まじい金額に思えますが、よくわからないイベント協賛などの広告宣伝費に何十億円もかけていることを考えると、大した話ではありません。
国は、制度の告知がいつも下手くそ、という印象があります。実際、介護に限らずこちらから調べてみないとわからないお得な助成金などの制度が、この日本にはたくさんあるのが現状です。
まずは、この制度を何より知ってもらうこと、これが重要だと思います。
二つ目の理由としては、登録するメリットが感じられない、という点でしょう。
努力義務、という位置づけなので、「登録するのが望ましい」「登録すべき」ということではあるのでしょうが、基本的に制度において「努力義務」というのは、強制力は皆無です。
そうなると、登録した際のメリットが多くないといけないのですが、正直民間の会社に劣るレベルの転職情報提供や研修では、正直魅力的とは言えないでしょう。
あまり望ましいことではないかもしれませんが、登録すると金銭的なメリットを生じさせる、というのはどうでしょうか?単純に登録したらxx円、というだけでなく、例えばケアマネを受ける際の費用や研修費を安くする、など・・・
あるいは、努力義務ではなく義務化してしまう、という方法もあるかもしれません。
ただ、薬剤師も2年に一度現況報告をする義務があるのですが、正直離職中の薬剤師はこの義務を怠っている人間も多いのが現状なので、実際には効果は薄いかもしれません・・・
そしてそもそもの話ですが、制度設計した段階で誰か登録者が伸びない可能性に気づかなかったものでしょうか?本当にこの制度でみんなが登録する!と担当者は思っていたのでしょうか?
正直この制度を見たら、誰も登録しないだろうなー、と事前に予想できそうなものです。そういった、現場感や想像力の欠如、という根本的な問題が、役所・国にはあるように感じます。