【介護コラム】近くて遠いー第9話ー

第九話

要介護5ではあるものの、すっかり元気に動けるようになっていたYさん。元来素直な性格で、介助に対しての拒否等は無く、職員の手を焼かせるような要素は見当たらない。当然、入所の許可が下りないはずは無く、早々に契約の手続が進められた。

Yさんと過ごせるのも後わずかと知り、ヘルパー全員が肩を落とした。これからは毎日がカウントダウン。一回一回の訪問が貴重な時間になる。どうしたら入所を取り消すことが出来るだろうか?という話し合いが、本気でされたりもした。

とはいえ「元気なうちに」という家族の意向も痛いほど分かる。今ならまだ新しい環境で十分に楽しく過ごせるだけの能力を持っている。その能力を存分に発揮させてくれる施設であるように願う他に出来ることは無かった。

介護のプロとして、好き嫌いでケアの質に差をつけるわけにはいかないので、挟みたくなる私情を懸命にこらえ、努めて平静を装いながらケアに当たった。

調子が上向くにつれ、やり取りの中にも活気が見られるようになったYさんは、テレビのニュースで一喜一憂したり、デイサービスで楽しかったことや腹の立ったことなど、感情豊かに沢山のことを聞かせてくれた。それが嬉しくもあり、同時に寂しくもあった。

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!