廃業原因からわかる社会保障費削減の鍵 = 経営の大規模化?

これまでも財務省などが社会保障費の削減を目指し、自己負担割合の変更や生活援助の切り捨て、といった施策を打ち出し、業界からも批判の声が上がっていました。

しかし、社会保障費を削減するということがどういうことなのかよく考えてみると、「介護業界における生産性改善」に他なりません。

生産性というのは、アウトプット(どれだけの成果を上げたか)/インプット(いくら時間や資本を注入したか)という指標です。つまり、アウトプットを落とさずに生産性を上げるということが、即ちインプットの減少=社会保障費の削減、と言えるわけです。

生産性を向上させるには?

以前、こんな記事をご紹介しました。

相次ぐ介護事業者の倒産、その理由と対応策は??

この記事で取り上げたニュースによると、倒産している介護企業のうち、従業員が5人未満のところが全体の60.9%、10人未満のところが80.0%。負債額は1億円未満が80.9%を占めているとのこと。
そして、39.1%は2012年度以降に設立された比較的新しい事業者で、訪問介護事業が40.9%、通所・短期入所介護事業が38.3%で、こうした比較的起業がしやすい在宅系が8割弱を占めている、とのこと。

まあ、簡単に言えば、小さな訪問・通所が乱立し、すぐに倒産しているという事実が見て取れます。

倒産する、ということは、結局その会社の生産性に問題があるわけですので、全体で見た時に、「小さな会社が異常に多いことが、業界の生産性を著しく下げている」と言えるのではないでしょうか?

小さな会社ごとに、バラバラのやり方で事務をやるよりも、大きな会社で中央で事務処理をまとめて行う方が、事務処理にかかるコストは小さくなります。
そして、当然必要な物品・什器なども、大きな会社の方が安く仕入れられますし、10人入れるオフィスを10借りるより、100人は入れるオフィスを1つ借りる方が当然家賃は安い、など・・・

個別の事象でみても、小さな会社が乱立している状態の方が、余計なコストがかかっていることがわかります。

我々の会社も、なぜここまで規模の拡大にこだわるか、というと、それにより従業員の労働環境が改善できたり、給与を上げられたり、余計な業務を減らすことが出来るからなのです。

介護経営の大規模化?

そんな中でこのようなニュースがありました。

介護経営の大規模化、自民特命委も提言 ケアプラン作成は「給付のあり方を検討」(出典; joint介護)

実は以前にも経団連が、介護の業界においてもスケールメリットは有効、という意見を出していたのですが、このニュースによると、どうやら本当にこの方針が政府の骨太の方針に組み込まれていく、という方向になりそうです。

介護分野の具体策では、経営の大規模化・協働化を進めて人材や資源を有効に活用していくよう要請、というのがその内容。ちなみに他は、これまで通り財務省の主張する、単純な保障費削減案のトレースとなっています。

大規模化を進めるためには?

具体的に、大規模化を進めたいと国が考えた場合、どのような方策がありうるのでしょうか?

まずひとつに、報酬による調整が考えられます。
例えば、ある一定数の社員数や利用者数を満たさない事業所については報酬減算、というようなもの。
逆に、大規模事業者については、加算要件を設ける、などが考えられます。これは、おそらくストレートにはそういった表現では行わず、よく考えると大規模事業者しかクリアできない、というようなハードルを設けて加算の条件にする、といったやり方になるでしょう(キャリアパスを作ったら加算、などもそれに類するものかもしれません。5人の会社ではキャリアパスは作れませんから・・・)

もうひとつは、開業時の規制。
人材派遣業のように、開業できる法人の規模を資産などから制限したり、といった方法があり得ます。

他にも、統廃合が行いやすいようにする方法などもあり得るでしょう。統廃合に伴う手続きや廃業手続きの簡略化、あるいは売却をしたい、事業を譲渡したいといった企業に対しての国からのサポート、などもあり得るかもしれません。

この業界における一番の問題は小さな企業の乱立にある、と常々私たちも考えてきました。だからこそ、自分たちも、リスクを取ってでも業務拡大を目指し、これまでやってきています。
今回のニュースについては、やっと国も問題の本質に気づいてくれた!という思いを正直持っています。

もちろん、小さな会社を経営している人たちにとってはたまったものではありません。
ただ彼らについても、例え倒産したとしても業界から去るのではなく、経営経験を生かして大きな会社の管理職になり、自分で経営していたときよりも良い環境・良い待遇で、働けるようになることが、業界にとって理想的なのではないでしょうか?

今後どんな施策に具体的に結びついていくかはわかりませんが、今回の方針が今後の業界に与える影響は小さくなさそうです。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。