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寝ている場合じゃない!②

寝ている場合じゃない!②

訪問の初回は看護師さんも同席して下さり、身体の動きや動作時のご本人のリアクションなどを丁寧に確認し、都度助言を頂きました。

さて、当の「病院っぽくないケア」はと言うと、兎にも角にも起きて頂かないことには始められませんので、先ずはベッドから車椅子へ移乗をしようということになりました。

アセスメントをして見えてきたポイントは四つ。

①ご本人はとても意欲的である、

②バルーンカテーテルが付いている、

③両下肢には全くと言っていいほど力が入らない、

④腕の力は健在。

両下肢に全く力が入らない中で他人に身をゆだねてベッドから車椅子へ乗り移るなんて、さぞ怖いだろうなと推測しながら、支える手のひらで重心の動きを感じつつ、丁寧に慎重に端座位をとってもらいました。背もたれを失ったとたん「怖い怖い」と小声でつぶやきグッと目をつぶったご本人でしたが、覚悟を問い直すと「お願いします」と力強く仰ったので、今までの経験値の全てを詰め込んだ渾身の移乗介助で「えいっ」と車椅子へ移っていただきました。

着座した瞬間「心強いっ!」とびっくりするくらい大きな声が聞こえました。あまりにも大きな声だったので、てっきり痛みの訴えかと勘違いするほどでした。「やった、起きれた、ああ、もうベッドじゃないんだ!」車椅子に腰かけてそう言ってはしゃぐ彼は、病人とは思えないくらい活き活きとしていらっしゃいました。

Illustrator/エム・コウノ