意外と知らない介護保険制度 – 保険制度や介護認定の仕組みまで詳しく解説!

介護離職、いまだにこの言葉が世間をにぎわせることも多く、政府の掲げた介護離職ゼロ、の目標はなかなか果たされていません。

総務省の発表した「平成29年就業構造基本調査」の結果によると、過去1年間で、介護・もしくは看護のために仕事を辞めた人は約9万9千人で5年前の調査と比べても変わっていません。
そして、介護離職をした人のうち、およそ8割が女性という現状も未だに改善は見られない状況です。

そして、「私にはまだ関係がない」「両親や配偶者はまだ元気だから大丈夫」と思っていても、いつ・どのタイミングで介護が必要になるかはわかりません。

ですので、いざというときのために、事前に介護についての知識を持っておくことは、全国民にとって非常に重要なこと、と言えるでしょう。適切な知識があれば、何が起きてもあせらずにしっかり対応することができるはずです。

今回は、これから介護を必要とする可能性のある全ての方に向けて、介護保険制度の仕組みや受けられるサービスなど、介護にまつわる基本的な知識を詳しくご紹介します。
制度の話なので、ちょっと固い内容になっていますが、自身にとって必要なところを参照して、活用していただければと思っています。

介護保険の基礎知識編

 

介護保険制度とは

介護を必要とする人が安価にサービスを受けられるように、社会全体で支え合うことを目的とした制度です。
自立の支援や介護する側の家族の負担を軽減できるようにサポートしたりと、安心して生活できる社会を目指し、1997年12月に「介護保険法」が制定され、2000年4月から施行されました。

意外に思えますが、20世紀には存在しなかった新しい制度となっています。

    • 介護保険は、単に身の回りの世話をするだけではなく

    • 被介護者(介護を受ける人)の自立をサポートする「自立支援」
    • 被介護者が自由に選択することで介護を総合的に受けられる「利用者本位」
    • 納めた保険料に応じてサービスや給付金を受ける「社会保険方式」

の3つの柱を基本に成り立っています。

20世紀における介護の考え方は「本人ができないことを、手助けをする」というのが基本的な考え方でした。
ただその一方では、「できる能力があるにもかかわらず、それをさせずに周りがすべて助けてしまうことで、その機会を奪ってはいないか?」という事も指摘をされていました。

そうした背景から現在では、すべての高齢者が心身の障害をもつ場合でも尊厳を保ち、自立した生活を送れるように高齢期を過ごすことのできる社会を実現していくため、地域社会で支え合いながら介護サービスの充実を目指しています。

利用者本位、自立支援、総合的サービスの提供、地域主義などが介護保険制度の基本理念となっています。

介護保険の対象者


40歳以上の人が対象となっており、年齢によってに二つの区分に分けられ「65歳以上の人は第1号被保険者」「40歳~64歳は第2号被保険者」となります。
39歳以下の人は、たとえ介護が必要な状況になったとしても、介護保険を利用することはできません。(その代わり、障害認定を受け、総合支援サービスという障碍者向けのホームヘルプサービスなどを受けることになります。)

第1号被保険者は介護が必要である認定をされることで、日常生活の支援や介護サポートを受けることができます。
第2号被保険者は全部で16種類あるいずれかの特定疾病に該当し、要介護の認定を受けた人だけが介護給付を受けることができます。

特定疾病の種類

  1. 末期がん(医師が回復の見込みがない状態と判断したもの)
  2. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  3. 後縦靭帯骨化症
  4. 骨折を伴う骨粗しょう症
  5. 多系統萎縮症
  6. 初老期における認知症
  7. 脊髄小脳変性症
  8. 脊柱管狭窄症
  9. 早老症
  10. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  11. 脳血管疾患(外傷性を除く)
  12. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  13. 閉塞性動脈硬化症
  14. 関節リウマチ
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

 

介護保険制度の仕組み


介護保険は、市区町村が「保険者」となって運営し、「被保険者(介護を受ける人)」が介護サービスを提供する事業者を選択して、利用することができる制度です。

介護保険を利用すると、実際にかかる介護サービスの費用のうち1割を負担し、必要に応じてさまざまなサービスが受けられるようになっています。
介護保険の財源としては、利用者の負担する1割と、残り9割を公費と保険料で半分ずつ負担しています。9割の部分の内訳は、市区町村12.5%、都道府県12.5%、国25%、残りが40歳以上の人が納める保険料、となっています。

全ての国民は、40歳になった日の前日から支払いの義務が生じ、その日を含めた月から支払うことになります。
ちなみに、「誕生日の前日から支払いの義務」となっているため、1日が誕生日の人は前月から支払う必要がある点は注意が必要です。
具体的には4月1日が誕生日の方は4月からの支払いではなく3月になるという事です。

その後は基本的にずっと支払い続けていくこととなりますが、第1号被保険者か第2号被保険者かによって、保険料の支払い方法が異なります。

65歳以上である第1号被保険者は、市区町村から納付通知書が届き保険料を納めるか、年金から天引きされる形で保険料を支払います。保険料は住んでいる市区町村や所得によって変わります。2018〜2020年の全国平均保険料は月額5,900円程度となっておりますが、2000年から毎年65歳以上の高齢者が増加して利用者も増えている為、保険料も徐々に上がってきています。

一方、第2号被保険者は厚生労働省が1人当たりの介護保険料の負担率を設定し、それに基づいて計算した保険料額を、健康保険組合や共済組合などの医療保険者に知らせます。通知を受けた医療保険者が、第2号被保険者から医療保険料と一緒に介護保険料が徴収されます。

健康保険に加入している人の介護保険料額は、被保険者の給与の月額を全50等級に区分した「標準報酬月額」によって算定され、健康保険料と同じように給料から天引きされますが、被保険者と折半する形で、事業主も介護保険料を負担しています。
月額の50等級についてはこちらからご確認ください。

国民健康保険に加入している人は、医療保険料に上乗せされて請求されます。それぞれの市区町村ごとに計算方式は異なり、所得や固定資産額を考慮する場合や、それらにかかわらず、加入者1人ひとりに均等に保険料を賦課される場合があります。

詳しく知りたい方は住んでいる各市町村の公式サイトをご覧ください。

介護保険で受けられるサービス


介護保険を利用して受けられるサービスは大きく分類しますと「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類になります。

居宅サービスとは

居宅サービスとは、介護福祉士やヘルパーが利用者のお宅を訪問し日常生活の介助を行う「訪問介護」、利用者が施設に出向き、日帰りで介護サービスを受ける「通所介護(デイサービス)」など、自宅に生活の拠点を置きながら受けられるサービスのことをいいます。

他にも、入浴・排泄・食事など被介護者の体に直接触れる介護に加えて看護師や保健師などが医療行為を行う「訪問看護」、宿泊のような形で短期間施設に入居し、介護を受けることができる「短期入所生活介護(ショートステイ)」、福祉用具のレンタルサービスなどが居宅サービスとなります。

特定施設(ケアハウスなどの有料老人ホーム)内での食事や排せつの介護、リハビリやレクリエーションといったサービスも、実は制度上は居宅サービスと分類されます。

施設サービスとは

介護保険法によって施設サービスと認められているのは、「介護老人保健施設」「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護療養型医療施設(介護老人保健施設への転換に伴い廃止される予定となっていて現在は2024年3月末まで移行期間中となっています)」の3つとなります。

地域密着型サービスとは

市区町村によって指定された事業者が、そこに住む利用者を対象として行うサービスです。
その為、原則としてその地域に住民票のある人しか、利用することはできません。

要介護状態になった高齢者が、今まで通りの住み慣れた環境で、地域住民と交流を持ちながら介護サービスを受けられるようにすることを目的に2006年から新たにスタートしました。
小規模で運営される地域密着型のグループホームなどに入居できる他、24時間対応が可能な介護職員による定期巡回サービスや、認知症の高齢者だけに特化したケアなど、柔軟なサービスを受けられる点も特徴となっています。

要介護認定とは


介護サービスを受けるためには要介護認定を受ける必要があります。こ
れは介護サービスの必要度(どれ位、介護のサービスを行う必要があるか)を判断する為に行うものです。それぞれの利用者が介護を必要とする度合いに応じて適切な量のサービスを受けられるよう、保険者となる各市区町村が判定を行います。
ちなみに要介護認定には費用はかかりません。

申請をするには

住んでいる市区町村に要介護認定の申請を行います。
申請に必要なものは

  • 印鑑
  • 申請書
  • 介護保険の被保険者証
  • 健康保険の保険証(第2号被保険者の場合)
  • 主治医の意見書
  • マイナンバーの個人番号

 

が必要となります。申請は本人または家族が申請をすることができます。

また、家族が遠方に住んでいるなどの事情で窓口に出向くのことが難しい場合には、地域包括支援センターあるいは居宅介護支援事業者に申請を代行してもらえたり、病院に入院している場合にはソーシャルワーカーが自治体の介護保険窓口などに連絡して、代わりに手続きを進めることもできます。

こういったことを知っているだけでも、特に地方の親が倒れた!といった時には非常に役に立つと思います。

要介護認定の調査


申請すると認定調査が行われます。

1・訪問調査

市区町村の職員や市区町村から委託されたケアマネジャーなどが自宅を訪問し、申請をした本人の心身の状態や、日常生活、家族や住まいの環境などについて聞き取りや動作確認をします。

普段の様子をメモに取っておき、できれば認定調査時は家族も同席して、伝え漏れの無いように準備をしておきましょう。調査内容は全国共通で、74項目の基本調査と特記事項となっております。

認定調査(基本調査)74項目

1 身体機能・起居動作2 生活機能     3 認知機能     
1-01 麻痺について(5)2-01 移乗について3-01 意思伝達について
1-02 拘縮について(4)2-02 移動について3-02 毎日の日課を理解
1-03 寝返りについて2-03 えん下について3-03 生年月日をいう
1-04 起き上がりについて2-04 食事摂取について3-04 短期記憶について
1-05 座位保持について2-05 排尿について3-05 自分の名前をいう
1-06 両足立ちについて2-06 排便について3-06 今の季節を理解
1-07 歩行について2-07 口腔清潔について3-07 場所の理解
1-08 立ち上がりについて2-08 洗顔について3-08 徘徊について
1-09 片足し立ちについて2-09 整髪について3-09 外出してについて
1-10 洗身について2-10 上衣の着脱について
1-11 つめ切りについて2-11 ズボン等着脱について
1-12 視力について2-12 外出頻度について
1-13 聴力について

 

4 精神・行動障害5 社会生活の適応6 その他
4-01 被害的について5-01 薬の内服について特別な医療について(12)
4-02 作話について5-02 金銭の管理について
4-03 感情の起伏5-03 日常の意思決定
4-04 昼夜逆転について5-04 集団の対応について
4-05 同じ話をする5-05 買い物について
4-06 大声を出す5-06 簡単な調理について
4-07 介護に抵抗
4-08 落ち着きなし
4-09 一人で出たがる
4-10 収集癖について
4-11 物や衣類を壊す
4-12 物忘れについて
4-13 独り言・独り笑について
4-14 自分勝手に行動する
4-15 話がまとまらない

・概況調査
現在受けているサービス(在宅や施設)の有無や住所・氏名・年齢・電話番号、家族構成・傷病・既往歴など申請者の状況が詳しく記入されます。

・基本調査
身体機能・起居機能、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会性への機能、過去14日間で受けた特別な治療などを記入します。
これ以外に、調査員が特に重要と考えたものや調査項目で表せない状況・具体的な内容が必要なものは特記事項に記入されます。

2・主治医の意見書

認定調査と並行して主治医へ意見書の提出を求めます。
本人の心身の状況や介護の原因となる病気などについて、主治医意見書が作成されます。

かかりつけ医がいない場合には市区町村が紹介する医師の診断を受けることになります。この診断は更新の際にも必要になりますので、これまであまり医師にかかってこなかったという方は、年に1度は健康診断などで受診をして心身の状態を確認しましょう。

3・一次判定

一時判定はコンピュータによってまず機械的に判定されます。

基本調査において把握した申請者の「能力」「介助方法」「障害や現象(行動)の有無」の結果とこれらを5つの中間評価項目得点を併せて「状態像」といいます。この状態像を数量化し、この値とタイムスタディデータとの関連性を分析することで、認定等基準時間を推計し、要介護度が決定されます。

タイムスタディデータとは

    要介護者が「どれ位、介護サービスを行う必要があるか」を判断するために、介護老人福祉施設や介護療養型医療施設などの施設に入所・入院されている高齢者3,500人について、48時間にわたりどの様な介護をどれ位の時間行われたかを調べた結果が、タイムスタディデータ、と呼ばれるものです。

 

4・二次判定

一次判定やかかりつけ医の意見書、認定調査における特記事項をもとに保健・医療・福祉の専門家(5名ほどで構成されています)が審査を行い判定をします。

5・認定結果通知

介護認定審査会が総合的に判断し審査結果に基づいて、要介護度が認定されます。地域によって結果通知まで異なりますが、通常30日程度となります。

また、要介護認定には有効期限があり、新規の要介護認定は原則6ヶ月、更新認定の有効期間は原則12ヶ月となっていましたが、高齢化社会が進んで申請者の数が増加しています。そのため認定審査会委員や市区町村の事務処理負担軽減などを主な目的として「認定審査会の簡素化」や「認定有効期間の延長」が行われました。それによって「更新の有効期間が最長で36ヶ月」まで延長されました。

更新申請は有効期間終了の60日前から申請を行うことができます。
自治体によっては有効期限の2か月前に「お知らせ」を通知している所もありますので申請時にご確認ください。有効期限が切れてしまい、空白の期間に介護サービスを利用された場合は全額自己負担となる場合もあります。もちろん担当のケアマネジャーも声をかけてくれると思いますので、しっかり更新をしてください。

認定

要介護認定は要支援1・2、要介護1~5の7段階及び非該当に分けられこの内のいずれかに認定されます。

要支援1・2に認定されますと「介護予防サービス」が利用でき、要介護1~5に認定されますと「介護保険サービス」が利用できる様になります。
非該当となった場合でも市区町村の福祉サービスを利用できる場合があります。

要介護度別の状態区分

要支援1①居室の掃除や身の回りの世話の一部に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とすることがある。
③排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
要支援2①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。
④排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
要介護1①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。
④排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
⑤問題行動や理解低下がみられることがある。
要介護2①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話の全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とする。
④排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある。
⑤問題行動や理解低下がみられることがある。
要介護3①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話が自分ひとりでできない。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分でできないことがある。
④排泄が自分ひとりでできない。
⑤いくつかの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護4①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない。
④排泄がほとんどできない。
⑤多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護5①見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない。
②立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。
③歩行や両足での立位保持などの移動の動作がほとんどできない。
④排泄や食事がほとんどできない。
⑤多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

記載内容は平均的な状態で、必ずしも介護度と一致しない場合があります。

 

Writer
ケアリッツマガジン記者 takahashi
デザイナー。知らない場所を散策することが好きです。