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清拭の目的とは?期待される効果や注意点を紹介

清拭の目的とは?期待される効果や注意点を紹介

健やかな身体を維持するためには体をケアすることが重要ですが、医療や介護の現場において欠かせないのが清拭です。清拭とはどのような行為で、なぜおこなう必要があるのか、どのような効果が期待されるかを紹介します。

安全におこなうためにも正しい方法で実施することが非常に重要で、介護対象者にも満足してもらえるように配慮することも忘れてはなりません。

今回は、清拭の重要性や安全性にも考慮した方法、介護対象者にも配慮した清拭の実施方法を紹介しているので参考にしてください。

清拭とはどのようなもの?

清拭(せいしき)とは、身体の一部または全身をタオルで拭き体を清潔に保つケアです。清拭は自身での入浴が困難な場合や、病状が重く入浴ができない状態の介護対象者におこなうものです。

普段は健康な人でも風邪などで熱が高いときは入浴できず、体をタオルで拭いて済ませる人も多いでしょう。汗や汚れなどがなくなりすっきりとするため、気分的にも心地よく過ごせます。

このように、身も心も心地よい状態で過ごせるようになる清拭について紹介していきます。

清拭をおこなう目的とは

 

清拭をおこなうのは、以下のような目的があります。

  • 体を清潔な状態に保つ
  • ストレスを軽減する
  • 身体に異常がないか確認できる
  • 血行を促進する

 

まず、清拭は体を清潔な状態に保つために欠かせないケアです。身体や病気の状態によっては定期的にお風呂に入るのが難しい場合があります。

お風呂に入らない状態が続くと汚れが溜まったり、臭いが気になったりと介護対象者自身も不快な状態に陥ります。不衛生な状態が続くとストレスが溜まることにもつながり心身に悪影響です。

温かいタオルで体を拭くと心地よく体も心もすっきりして、ストレスの軽減にも役立ちます。また、体を拭くときは皮膚の状態などもチェックするため、いち早く異常に気づけます。

皮膚の炎症や褥瘡などの異常に早い段階で気づければ治療がすぐにおこなえるので、悪化する前に対応が可能です。また、血行促進などにもつながるため、寝たきりなどで体を動かすことが困難な人にとってもよい効果が期待できます。

清拭をおこなうことで期待される効果

 

清拭をおこなうと、さまざまなうれしい効果も期待されます。

  • 身体の不快感軽減
  • 皮膚疾患・感染症の予防
  • リラックス効果
  • 新陳代謝や血行の促進
  • コミュニケーションがはかれる

 

運動をしたり活発に体を動かさなくても睡眠をとったり、日常生活を送ったりすることで汗をかいています。そのため、数日お風呂に入らない状態が続くと汗や汚れが蓄積して痒みが出たり、体臭が気になったりと不快感を感じるように……。

そんなときでも清拭は大活躍で、しっかりと体を拭きとれば身体の不快感が軽減できます。また、身体の汚れなどをそのままにしておくと皮膚疾患や感染症などの病気を引き起こす可能性がありますが、それらも清拭で予防が叶います。

体が綺麗になれば身も心もすっきりして、リラックスした状態で過ごせるのもうれしい効果です。タオルで体を拭くとリンパを流すことにもつながり、新陳代謝が活発になったり血行が促進されたりといったメリットも。

清拭をおこなうときは、痛いところや気になるところがないかを会話しながら進めるため、コミュニケーションも活発になります。このように、体にも心にもよい影響が期待されるものなので、正しい方法を把握して介護対象者に喜ばれる清拭をマスターしましょう。

清拭をおこなうタイミングや頻度

 

清拭は季節や介護対象者の状態に合わせて、おこなうタイミングを調整するのが望ましいです。一般的には、入浴が困難な人の全身の清拭は週に2回から3回が推奨されていますが、最も重視することは介護対象者の体調です。

体調が安定していないときは、全身を拭く行為は負担となるため、無理をしないようにしましょう。夏場などの汗をかきやすい季節は頻度を増やすなど工夫することも重要です。

汚れやすい陰部や肛門などは可能であれば毎日おこない、全身は週に2回から3回など場所や体の状態に合わせてケアするように心がけましょう。

清拭は介護対象者と介護者のお互いのコミュニケーションが必要なため、介護対象者が納得した状態でないとスムーズにおこなうことが難しいことも多いです。そのため、どの部位をどれくらいの頻度でケアするかなどを事前に知らせて、どういう状態だからケアする必要があるなど説明して理解してもらうとよいです。

清拭する前に把握しておくべきこと

清拭をおこなうときは、実践する前に把握しておくべきことがあります。清拭をおこなう前に事前の準備が必要なものがあるので、しっかり準備ができてから対応するようにしましょう。

また、無駄なくスムーズに進めるには手順や正しいケア方法を把握しておくことが不可欠です。安心して身体を委ねてもらえるように、適切な方法や知識を身につけておきましょう。

事前に準備しておくべきもの

 

清拭は温かいタオルで体を拭いていくため、冷めないうちに手際よくおこなうことが重要です。スムーズに進めるためには、清拭を始める前に必要なものを一式揃えてからおこないます。

清拭に必要な事前に準備しておくべきものは、以下のとおり。

  • タオル:7枚前後
  • バスタオル:3枚程度
  • 洗面器
  • バケツ
  • お湯:45℃前後
  • 着替え
  • 石鹸
  • 使い捨てタイプの手袋
  • 保湿剤や塗り薬

 

部位によってタオルは交換するため、余裕をもって用意しておくとよいです。タオルは部位ごとに身体を拭くものと、身体を拭いたあとに拭き上げるものが必要と覚えておきましょう。

お湯は時間が経過すると冷めるため通常のお風呂よりも熱めの温度を用意しますが、熱すぎると火傷などの危険性もあるため心地よいと感じられる温度か拭く前に確認しましょう。

また、コミュニケーションをとりながら清拭を全身おこなうには時間がかかることも珍しくないため、事前にトイレなどを済ませておくとよいです。体勢を変えながらおこなうため、クッションなどがあればよりリラックスしてもらえるでしょう。

手順や部位別の正しい方法

 

全身の清拭は上半身から下半身に向かっておこなうとスムーズです。近い部分を順番に拭きとると拭き忘れを防げて、衣類などの着脱も上半身ごとや下半身ごとに分けられるため要介護者が寒さを感じる時間も少なくて済みます。

清拭をスムーズにおこなえる手順や、部位ごとの注意点は以下のとおり。

  1. 顔・耳・首  :やわらかめの生地がおすすめ
  2. 手・腕    :血流を流すことも意識する
  3. 胸・お腹   :円を描くように優しく拭きとる
  4. 背中・腰・お尻:寝た状態で拭くときは横向きになってもらう
  5. 足      :かかとはやさしく触れる程度の力で拭く
  6. 陰部・肛門  :専用のタオルを用意する

 

部位ごとに気をつけるべきことは異なるので、しっかり把握しておくことが必要です。

 

【顔・耳・首】

顔の皮膚はほかの部位と比べてもデリケートなため、タオルはやわらかめの生地のものを用意するとよいです。目・鼻・口・額・頬・耳・首の順に拭いていくのがおすすめです。

目はより優しく目尻に向かって拭き、左右でタオルの拭く場所は変えます。目ヤニなどが取りづらい場合は無理に拭きとるのではなく、蒸しタオルを少し置いた状態でやわらかくしてから取り除きましょう。

鼻は上から下方向に向かって、口は唇に沿って拭きとります。額は外側に向かい生え際まで拭きとり、耳は内側と外側の両方を拭きとりましょう。

首はシワをのばしてから汚れがしっかりと拭きとれる状態を意識します。とくに、小鼻や耳は汚れが溜まりやすい場所なので念入りに拭きとるとよいです。

 

【手・腕】

手や腕を拭くときは手首を持っておこないますが、このとき手首を持っている手に力が入らないようにします。血行を促進することも意識して指の間を拭き、手首から腕に向かって拭きとります。

肘の内側が拭けたら脇の下もしっかり丁寧に。指の間や肘の内側、脇は汚れやすい場所なので念入りに拭きとるとよいです。

 

【胸・お腹】

鎖骨に沿って拭いたら、胸は片方ずつ円を描くように拭いていきます。お腹は“の”の字を描くようにおへそ周りを優しく動かすことで、腸の動きも活発になります。

お腹の側面は上下に動かし、拭き残しがないようにしましょう。女性は胸の下に汚れが溜まりやすいため、意識して拭きとるとよいです。

 

【背中・腰・お尻】

ここからは上半身の背面へと移るため、体位の変更が必要です。背面を拭くために体位を変えることを伝えてから、背面が拭ける体位に変えてもらいます。

寝た状態で体位を変える場合は、呼吸がしやすいように横向きになってもらいましょう。首から肩に向かって拭けたら、背中は下から上、内側から外側に向かって拭いていきます。

肩甲骨は肩甲骨に沿って拭き、お尻は片方ずつ円を描くように拭きとります。

 

【足】

次は下半身の拭きとりに移るので、上半身は衣類を着せてから下半身の衣類を脱がせるようにしましょう。足の指先が拭けたら、足裏と足の甲を足首に向かって拭きとります。

かかとやくるぶしは力加減に注意してやさしく拭き、足首から膝方向に向かい拭きます。このとき、拭く方の足を立てると拭きやすいです。

膝裏や太ももも忘れずに拭きとりましょう。足は下から上方向に向かって拭きとると覚えておくとよいです。

指の間や甲、膝裏は汚れが溜まりやすい部分なので、より丁寧に時間をかけて拭きとりましょう。

 

【陰部・肛門】

専用のタオルを使い、拭く場所を変えるごとに使っていない面で拭きとるようにします。デリケートな部分なので可能であれば自身で拭いてもらうのが望ましいです。

介助をおこなう人が陰部を拭く場合は、性別によって介助の手順が異なります。

男性の場合は、陰茎・陰嚢・肛門の順番で優しく拭いていきましょう。

女性の場合は、恥骨から肛門に向かって一方向に拭きます。男性は陰茎のしわになっている部分、女性は大陰唇や小陰唇が汚れが溜まりやすいため、しっかり拭きとるようにしましょう。

清拭をおこなうときに確認することや注意点

清拭をおこなうときは確認することや注意点があります。これらをしっかり把握していないと思わぬ怪我やトラブルに発展する危険性もあるので、しっかり押さえておきましょう。

コミュニケーションをとりながらおこなう

 

清拭をおこなうときはコミュニケーションが不可欠です。いきなり衣服の着脱をしたり、体勢を変えたりすると驚いてしまう可能性があるため、声かけを徹底しましょう。

痛いところや痒いところなどを確認できればトラブルに即対応できたり、より心地よい時間を過ごしてもらえたりとメリットも多いです。

体調の確認を徹底する

 

清拭は身体の清潔な状態を保つために重要なケアですが、まずは体調を優先すべきです。体調がよくないときは無理しておこなわないようにしましょう。

始めるときは体調に問題がなくても、途中で体調が悪くなることも考えられます。そのため、定期的に体調の変化がないか確認しながらおこなうようにしましょう。

プライバシーを考慮する

 

清拭をおこなうときはプライバシーを考慮することも重要です。衣服を脱いだ状態でおこなうため、周りから見えないようにカーテンやドアを閉めるなどして配慮するようにします。

始める段階で全身衣服を脱ぐ必要はなく、上半身を拭くときは下半身の衣服は着けた状態でおこないます。また、衣服を脱いでいてもほかの部位を対応しているときは、タオルなどで覆うとプライバシー保護も体温管理も同時に対応可能です。

清拭が苦手なものにならないような心配りができるとよいです。

皮膚トラブルに備える

 

場所によってはデリケートな部分もあります。前述しましたがそのようなデリケートな部分を拭くときは、よりやわらかい素材のタオルを使うなど皮膚トラブルに備えるとよいです。

前提として優しく拭くことは必須ですが、デリケートな部位や皮膚トラブルなどがある場所は細心の注意を払って対応しましょう。汚れがあるからといって強い力で拭きとることはしてはいけません。

蒸しタオルで汚れを浮き上がらせてから拭きとるなど工夫しましょう。また、皮膚の状態によっては保湿ケアなどをおこなうのもおすすめです。

怪我や事故が起こらないように周囲を確認する

 

清拭ではお湯などを扱ったり、タオルを絞ったりして水が飛び散ることがあるため転倒などの危険性もあります。そのような怪我や事故を起こさないために、道具の置き場所などには注意しましょう。

スムーズに安全に対応できるように、必要なものを置くスペースを十分に確保することが重要です。

まとめ

介護対象者にとって清拭は、健康維持や身体を清潔に保つために欠かせない重要なものです。長時間になると身体への負担も大きくなるため、スムーズに対応できるように手順や注意点などを把握してからおこないましょう。

プライバシーを考慮したり、体調を気遣ったりと介護対象者が心地よい時間を過ごせるようにコミュニケーションをとりながら、正しい方法や手順でおこなうことが重要です。