高齢者が誤嚥しやすい食べ物ランキングTOP10!むせやすい食品の特徴や対処法とは?

高齢者が食事しているときに、せき込んだり、むせたりされていることはありませんか?
こうした症状は、食べ物が意図せず気管内に侵入してしまう「誤嚥」の可能性があります。
誤嚥をそのままにしておくと、肺炎や窒息のリスクが高まり、命に関わることもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、高齢者が誤嚥しやすい食べ物をランキング形式でご紹介し、それぞれの特徴やリスク回避のための具体的な対策を解説します。
誤嚥しやすい食べ物を把握し、喉や気管に食べ物を詰まらせるリスクを減らしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
誤嚥とは?
誤嚥とは、本来食道に入るべき食べ物が、なんらかの理由により、意図せず気管に流れ込んでしまうことをいいます。
通常、人間は食べ物や飲み物を摂取する際、喉頭蓋が気管を塞ぐことで、食べたものが食道に送られるようになっています。
しかし、なんらかの理由により、喉頭蓋が正常に機能せず、飲み込んだ食べ物が間違って気管内に入り込む場合があります。
特に飲み込む力が弱くなった高齢者は、誤嚥が引き起こされる可能性が高く、飲食物を摂取する際に気を付ける必要があります。
高齢者に誤嚥が多い理由
高齢者の誤嚥は、「器質的要因」と「機能的要因」によって引き起こされます。
器質的要因とは、口腔内の炎症や腫瘍などが原因で、食べ物が正常に食道へ進めないことです。
一方、機能的要因は、喉や気管の筋力低下によって飲み込む機能が衰えることを指します。
高齢者はこれらの要因が重なる可能性が高いため、誤嚥のリスクが高まります。
誤飲や嚥下との違い
誤嚥を聞いたことのある方の中には、「誤飲」や「誤嚥」との違いは何なのかを知らない方も多いと思います。
誤飲とは、食べ物以外の異物を間違って飲み込んでしまうことです。
小さなお子さまや認知症のある方が、おもちゃやボタンといった物を間違って食べてしまうことが挙げられます。
一方、嚥下とは、飲食物を口に含んでから胃に運ぶまでの一連の動きのことです。
具体的には「食べ物を口に入れる→咀嚼する→飲み込めるように形成する→飲み込む→食道や胃に運ぶ」といった動作が含まれます。
どちらも食べ物や異物を口に入れて摂取するところは同じですが、気管に入らないところが異なります。
誤嚥したらどうなる?
誤嚥が発生すると、体は異物を排除しようと「咳」や「くしゃみ」などの反射を起こし、異物を排出するのが一般的です。
しかし、高齢者の場合、反射機能の低下により、異物を排出できないことで「窒息」や「誤嚥性肺炎」につながる危険性があります。
窒息や肺炎を引き起こすと、最悪の場合死に至るケースもありますので、十分な注意が必要です。
なお、以下のような症状が見られた場合は注意が必要です。
- 痰がからむ
- 声がガラガラする
- 食事に時間がかかる
- 食べ物が口の中に残る
- 食事中に鼻水が出る
- 食事量が減る
このような兆候が見られる場合は、医師や専門家に相談しましょう。
誤嚥しやすい食べ物の特徴
一般的に誤嚥が起こるときは、なんらかの飲食物を摂取しているときです。
そのため、誤嚥の可能性が高い飲食物の特徴を理解しておくことが大切です。
具体的には、以下で紹介する特徴の飲食物に注意しましょう。
サラサラしているもの
サラサラしているものは、口や喉に一気に入りやすく、スピードもあるため、誤嚥の可能性が高い食品の代表格です。
【代表的な物】
- 水
- お茶
- ジュース など
ばらつくもの
ばらつく食べ物は、口の中でかんでもまとまりにくいため、摂取するのが難しく、気管に流れ込むことが多いです。
【代表的な物】
- タケノコ
- レンコン
- こんにゃく
- そぼろ など
乾燥しているもの
乾燥しているものは、口の中の水分を取られるため、飲み込みが難しく、気管に侵入するリスクが高いです。
【代表的な物】
- パン
- いも類
- ゆで卵 など
水分が多すぎるもの
水分が多すぎるものも、口や喉に一気に入りやすくなるため、よくありません。
特に、水分が多い果物や野菜は注意が必要です。
【代表的な物】
- 高野豆腐
- トマト
- イチゴ
- ぶどう
- グレープフルーツ など
固形と液体が一緒になっているもの
固形と液体が一緒になっているものは、口や喉に一気に入りやすく、加えてまとまりにくい特徴を持っているため、気管に入ることが多いです。
【代表的な物】
- ラーメン
- みそ汁
- スープ など
酸っぱいもの
酸っぱいものは、むせることが多いため、誤嚥が発生する可能性が高いです。
【代表的な物】
- 酢の物
- 柑橘系のフルーツ
- ところてん など
硬いもの
硬いものは、咀嚼してもかみ砕きにくく、そのまま飲み込んでしまうと窒息の危険性があります。
また、口の中でまとまりにくく、飲み込む力も必要となることも誤嚥になる理由です。
【代表的な物】
- ナッツ類
- 大豆 など
誤嚥しやすい食べ物ランキング
誤嚥しやすい食べ物には、硬さや形状、水分量などが関係しています。
ここでは、誤嚥のリスクが高い食品をランキング形式で紹介し、それぞれの特徴や注意点について解説します。
1位:お茶、ジュース、牛乳など
お茶やジュース、牛乳などは、サラサラしているものに分類されます。
さらさらしたものは、液体という形を成さない特徴から口や喉に一気に入りやすく、特に誤嚥を引き起こしやすい飲食物です。
摂取する際は、ゆっくり少量ずつ飲む、適度なとろみを付ける、姿勢を整えるなどの工夫を行うと、飲み込みやすさが改善します。
2位:きな粉、抹茶、ココアパウダー
きな粉や抹茶、ココアパウダーなどは、ばらつきやすく、加えて水分が少ない特徴から誤嚥のリスクが高い食材の一つです。
また、口に含んだ際に息を吸うと、そのまま気管に入りやすく、反射機能が落ちている方は誤嚥性肺炎も併発するため注意が必要です。
摂取する際は、水分を含ませてまとまりをよくすると、飲み込みやすさが改善します。
3位:スープや汁物
スープや汁物は、サラサラしているもの、固形と液体が一緒になっているものに分類されます。
スープは、とろみの程度によって飲みやすくなりますが、サラサラしすぎるスープは水やお茶と同じく、形を保たず一気に流れるため気を付ける必要があります。
また、汁物は固形と液体が一緒になっており、摂取したものがまとまりにくい特徴を持っているため、こちらも誤嚥を引き起こす可能性が高いでしょう。
スープや汁物は、適度にとろみを加え、固体と液体をまとめることで、飲み込みが改善されます。
4位:水分が多めの果物
水分が多めの果物は、かむと水分が出てきて、口や喉に一気に流れ込むので、こちらも気を付けるべき食品です。
また、咀嚼機能が低下している方は、液体と固体が別れたままの状態の摂取となるので、より誤嚥する可能性が高いです。
摂取する際は、一度刻んで適度なとろみを付けるとよいでしょう。
5位:パンやクッキー、カステラ
パンやクッキー、カステラは、水分が少ないものに分類されます。
水分が少ないものは、口の中でパサつき、飲み込みづらいため注意すべき食べ物です。
摂取する際は、少量の水分を含ませると飲み込みが改善されます。
6位:ナッツ類
ナッツ類は、硬すぎる食べ物に分類されます。
硬すぎる食べ物は、咀嚼してもかみ砕けず、口の中でもまとまりにくいため、注意すべき食品となります。
特にピーナッツやアーモンドなどのナッツ類は、硬くて小さいため、かみ切りづらく誤嚥の可能性が高いです。
摂取する際は、細かく刻んだ後、とろみを付けると飲み込みがスムーズになります。
7位:イカやタコ
イカやタコは、ばらつくもの、硬すぎるものに分類されます。
硬すぎるものは、咀嚼しても硬さが残りやすく、口の中でもまとまりにくいため、誤嚥が起こる可能性が高いです。
特に咀嚼機能が低下している方は、飲み込んだ際に窒息を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。
摂取する際は、細かく刻み、適度なとろみを付けると飲み込みがスムーズになります。
8位:生野菜
生野菜は、硬いもの、ばらつくものに分類されます。
特に葉物野菜の硬い部分は、かみ切りづらく、口の中でまとまりにくいため注意が必要です。
また、レタスやキャベツなど、ペラペラした野菜は、喉に張り付く可能性があるため、こちらも気を付けましょう。
摂取する際は、細かく刻み、適度なとろみを付けるとよいでしょう。
9位:そぼろやひじき
そぼろやひじきは、ばらつきやすい食べ物に分類され、口の中でかんでもまとまりにくいため、誤嚥を発生させやすいです。
摂取する際は、まとまりやすくするために、とろみをしっかり付けてから食べるとよいでしょう。
10位:お餅や焼き海苔
お餅や焼き海苔は、ベタベタする食べ物に分類されます。
ベタベタしたものは、咽頭に張り付きやすく、窒息する可能性が高まりますので、唾液の量が減っている高齢者には特に注意が必要です。
摂取する際は、少量ずつ食べたり、あえて水分を少し含ませたりするとよいでしょう。
誤嚥を防ぐための工夫
誤嚥を防ぐためには、誤嚥しにくい食べ物を選ぶことが重要ですが、高齢者もできれば好きなものを食べたいのが本音でしょう。
ここでは、誤嚥を防ぐための工夫を紹介していきます。
とろみを付ける
誤嚥を防ぐためにもっとも取り入れられているのが、とろみを付けることです。
とろみは、食べ物や飲み物をまとまりやすくし、加えて喉に入るスピードを遅らせるため、気管に入るリスクを防いでくれます。
とろみには、専用のとろみ剤以外にも片栗粉や小麦粉などがありますが、種類によってとろみ具合が異なるため、その方に合ったものを選ぶことが大切です。
また、とろみの加減は人それぞれ異なるため、専門家に相談しながら、その人に合った加減に調整することが大切です。
ある程度歯ごたえを残す
咀嚼機能がある程度高い方なら、あえて歯ごたえを残すことも有効です。
歯ごたえがあると、咀嚼の回数が増えて唾液も出てくるため、飲み込みがスムーズになります。
一方で咀嚼機能が低下している方は、舌で潰せる程度の硬さに調節したり、ピューレ状にしたりするとよいでしょう。
誤嚥しにくい姿勢をとる
誤嚥を防ぐためには、食べる姿勢も大切です。
具体的には、以下に注意しましょう。
【椅子での食事の場合】
- あごを軽く引き、やや前かがみで
- 背は90度に保つ
- 足は床に着ける
- 体とテーブルの間は握り拳1つ程度開ける
- 椅子の高さはひざが90度に曲がる程度
- テーブルの高さは腕を乗せてひじが90度に曲がる程度
【ベッドでの食事の場合】
- オーバーテーブルの利用
- 背の角度を食べやすくなるよう調整
- 頭に枕などを当てて、やや前屈みで
- 腰はベッドの折り目に合わせる
- 膝は軽く曲げる(膝下にクッションを当てる)
- 足がずり下がらないように足の裏にクッションを当てる
ベッドや車椅子での食事の場合は、リクライニングを使いながら、頭やお尻の位置を調整しましょう。
口腔内を潤わせる
口の中が乾燥していることも、誤嚥が起こる原因の一つです。
食事の前は飲み物を摂取するなど、ある程度湿らせてから食事をとるとよいでしょう。
また、口の中に細菌が繁殖した状態で誤嚥を起こすと、誤嚥性肺炎を併発する可能性が高まりますので、定期的な口腔チェックも忘れず行うことも大切です。
咀嚼や飲み込む様子を確認する
食事の際は、咀嚼や飲み込みの状況も確認しましょう。
咀嚼が長すぎるときは、口の中で食べ物がまとまっていない可能性があります。
反対に咀嚼が短すぎる場合は、よくかんでいないため窒息するリスクが高まります。
どちらの場合もとろみ具合や、刻み状況が合っていない可能性がありますので調整が必要です。
話し方の違和感に気を配る
食事中は、話し方の違和感にも気を配りましょう。
声かけしたときに、しゃがれ声や咳払いなどがある場合は、誤嚥している可能性があります。
食後のケアにも気を付ける
食後、食べ物が口の中に残っていたり歯磨きを疎かにしていたりすると、細菌が繁殖するため誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
そのため、食後のケアも適切に行い、口腔内を清潔に保ちましょう。
また、喀出(かくしゅつ)機能が低下している方は、誤嚥が起こっていたとしても、食後すぐに反応がなく遅れて現れる場合もありますので、食後の様子にも気を配ることが重要です。
予防トレーニングを行う
誤嚥を防ぐためには、予防トレーニングも有効です。
具体的には、首と顎の体操を行います。
【首のストレッチ】
- ゆっくりと上を向き、その後、下を向きます。
- 首をひねって左を向き、次に右を向きます。
- ゆっくりと首を左に傾け、次に右に傾けます。
- 首を左回りに1回、右回りに1回、ゆっくり回します。
- 1~4の動きをもう一度繰り返します。
どの動作も、無理のない範囲でゆっくりと呼吸をしながら行いましょう。
【顎の体操】
- 下顎を前へ突き出します。
- 反対に、下顎を首のほうへ引き込みます。
- 下顎を左側へスライドさせます。
- 同じように、右側へスライドさせます。
- 1~4の動きをもう一度繰り返します。
顎の運動も、リラックスしながら呼吸を意識して行いましょう。
「笑う」ことも効果的
実は誤嚥の予防には、「笑う」ことも効果的といわれています。
実際に、笑うことと嚥下機能の関係についての研究も行われており、「能動的な笑いは嚥下機能に有意義な影響を与える」という研究結果も出ています。
(参考:能動的笑い発声による高齢者の嚥下機能への影響について)
つまり、家族や友人との会話や、漫才や落語を見て笑うことは、誤嚥の予防にもつながっているということです。
誤嚥してしまったときの対処法
誤嚥は、予防しようとしても防げない場合もあります。
実際に誤嚥が起こった際に、冷静に対応できるように、ここで確認しておきましょう。
顔を下に向けてもらう
まず、顔を下に向けてもらいましょう。
ポイントとしては、喉よりも口を下に上げることです。
そうすることで、重力の作用により異物が排出されやすくなるでしょう。
背中をさするまたは軽くたたく
喉に異物が詰まったときに背中をさすったり軽くたたいたりする方法は、高齢者の誤嚥時にも効果があります。
ポイントとしては、首筋から肩甲骨の間をタッピングまたは、さすることです。
また、力加減も重要で、力強く行うと逆効果になりますので、注意しましょう。
口の中に異物があれば取り除く
誤嚥が起こった際に、口の中に異物があれば取り除いてください。
そのままにしておくと、さらに窒息や誤嚥が起こる可能性があります。
この際、自分で取り除けるようなら声かけして吐き出してもらい、難しい場合は顔を横にし、口の中に手を入れて異物を取り除いてください。
口呼吸してもらう
誤嚥時は、鼻呼吸よりも口呼吸のほうが異物を取り除きやすいです。
起こった際は、口呼吸するよう促してください。
咳やくしゃみなどが出るときは、周りの迷惑にならないように、ハンカチやお手拭きなどで対応しましょう。
ゆっくり深呼吸してもらう
誤嚥が起こると、激しくせき込んだり、呼吸しにくくなったりと、焦ってしまうこともあります。
そのため、対応する方は冷静に声かけしながら、ゆっくり深呼吸するように促すことが大切です。
また背中をさする速度も、少しずつゆっくりなテンポにすることで、要介護者も落ち着きやすくなるでしょう。
まとめ
誤嚥は特に高齢者に多く見られ、場合によっては窒息や誤嚥性肺炎につながる危険性があります。
そのため、食べ物の形状や硬さに注意し、適切な食事環境を整えることが大切です。
また、嚥下機能を維持・向上させるトレーニングや姿勢の工夫も効果的です。
万が一、誤嚥が起こった場合は、適切な対処を行い、必要に応じて専門家に相談しましょう。