介護資格の取得に順番は必要?スキルアップするための介護資格の取り方も紹介

介護の仕事は無資格でも始められますが、業務範囲を広げるためには介護資格の取得が欠かせません。
しかし「資格の取得に順番はあるの?」「どの資格を取ればいいの?」と悩む方も多いでしょう。
本記事では、資格の種類や取得順のポイント、効率的なスキルアップ方法を解説していきます。
介護資格を取得しようと思っている方、現場で活躍したい方はぜひ最後までご覧ください。
介護資格の取得に順番は決まっている?資格の必要性は?
結論から伝えると、一般的な順番はあるものの順番どおりでなくても問題ありません。
介護資格には、いくつかの条件を満たさなければ取得できない資格と、無資格・未経験から取得可能な資格があります。
そのため、条件のない資格から取得するのが一般的です。
しかし、条件のない資格にもいくつか種類があり、順番によっては研修の免除や受講時間の短縮が可能です。
介護の資格を取得する一般的な順番
紹介したように、一般的な順番は無資格・未経験から取得可能な資格を目指し、その後に条件ありの資格を取得する順番です。
具体的には、以下のような資格を順番に取得します。
【条件なしの資格】
- 認知症介護基礎研修
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修 など
【条件ありの資格】
- 介護福祉士
- 認定介護福祉士
- 社会福祉士
- 介護支援専門員 など
初めに「認知症介護基礎研修」や「介護職員初任者研修」を取得し、その後に実務経験や必要な科目を履修して「介護福祉士」や「社会福祉士」などを取得していきます。
順番どおりでなくてもよい
介護の資格の中には、決まった順番で取得しなくてもよいものもあります。
例えば、先ほど紹介した「条件なしの資格」は誰でも取得できるため、順番を気にせず取ることが可能です。
ただし、「介護職員初任者研修」を先に取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 認知症介護基礎研修が免除される
- 介護福祉士実務者研修の一部が免除され、受講時間が短縮される
知識を深めたい方は別として、効率よく資格を取得したい場合は、まず「介護職員初任者研修」を受けるのがおすすめです。
そもそも介護の仕事に資格は必要?
介護資格の取得を考えている方の中には、その必要性について疑問に感じる方も多いでしょう。
基本的には、介護の仕事は資格がなくても働くことが可能です。
しかし、次に挙げる理由から資格の取得をおすすめします。
【資格なしでも働けるができない仕事が多い】
介護の仕事にはさまざまな業務がありますが、資格がないとできない仕事も多くあります。
例えば、訪問介護は「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」などを保有していないと、働くことは認められていません。
また、身体介護に関しても有資格者の指導の下でしか行えません。
このように、資格がない方はできる仕事が限られてきます。
【入職後1年以内に認知症介護基礎研修の取得が必要】
令和3年から、介護職に就く方は「入職後1年以内に認知症介護基礎研修の取得」が義務付けられました。
そのため、入職後1年以内に最低でも認知症介護基礎研修を受講しなければ、介護職員として働けなくなります。
認知症介護基礎研修は、e-ラーニングで150分受講すれば取得可能な簡単な資格のため、入職したら忘れず取得しましょう。
もしくは「介護職員初任者研修」を修了すれば、認知症介護基礎研修が免除されるため、先にこちらを取得するのもおすすめです。
介護の資格一覧
介護の仕事はさまざまな業務がある一方で、資格も豊富にあります。
| 介護職関係 | 介護職員初任者研修 介護福祉士実務者研修 介護福祉士 認定介護福祉士 喀痰吸引等研修 柔道整復師 看護助手 レクリエーション介護士 ガイドヘルパー 介護予防運動指導員 |
| 介護職関係 | 認知症介護基礎研修 認知症介護実践者研修 認知症介護実践リーダー研修 認知症ケア専門士 認知症介助士 認知症対応型サービス事業管理者研修 |
| 相談業務関係 | 介護支援専門員(ケアマネジャー) サービス提供責任者 福祉用具専門相談員 社会福祉士 精神保健福祉士 主任介護支援専門員 社会福祉主事任用資格 相談支援専門員 サービス管理責任者 介護福祉経営士 |
| 介護事務関係 | 介護事務 介護事務管理士 ケアクラーク |
| その他 | 計画作成担当者 重度訪問介護従業者 介護口腔ケア推進士 介護食に関する資格 サービス介助士 介護タクシー ユニットケア研修 |
いくつかの項目に分けて、介護の資格や研修を一覧にして表にまとめたのでご覧ください。
介護現場に便利な資格とその取得方法
前章で紹介したように、介護の資格には豊富な種類があり、現場によって活躍できる資格が異なります。
ここでは、介護現場で活躍できる資格と、その取得方法を紹介していきます。
条件なしで取得できる資格
条件なしで取得できる資格は以下の4つです。
【介護職員初任者研修】
介護職員初任者研修は、介護の仕事を行うにあたっての基礎や技術を学ぶための研修です。
取得すると、介護が必要な方へ直接介助できる「身体介護」が可能になり、さらに「訪問介護」もできるようになります。
民間の介護スクールやハローワークの職業訓練で、約130時間の講義や演習を受講します。
全課程修了後に試験に合格すると取得が可能です。
【認知症介護基礎研修】
認知症介護基礎研修は、認知症をお持ちの方への基礎的な介護方法を学ぶための研修です。
令和3年から、介護職に就くすべての方に受講が義務付けられています(一部資格保有者を除く)。
職場を介して受講申請し、e-ラーニングで150分の研修を行った後に簡単なテストに合格すると取得できます。
【介護福祉士実務者研修】
介護福祉士実務者研修は、より質の高い介護や介助方法を学ぶための研修です。
取得すると、訪問介護におけるサービス管理責任者として勤務することが可能です。
民間の介護スクールやハローワークの職業訓練で、約450時間の講義や演習を受講します。
全課程修了後に試験に合格すると取得が可能です。
なお、介護職員初任者研修を保有している方は、一部免除されるため約320時間となります。
【喀痰吸引等研修】
喀痰吸引等研修は、たんの吸引や経管栄養という医療行為を学ぶための研修です。
取得すると、口腔内や鼻腔内などのたんの吸引、胃ろうや腸ろうなどの経管栄養ができるようになります。
こちらの研修は、たん吸引のみ、もしくは経管栄養のみなど、対象の方や行為によって受講時間や科目が異なります。
都道府県知事から指定された事業所で、約50時間の基本研修と実地研修を受けると取得が可能です。
なお、介護福祉士を保有している方は、基本研修が免除されます。
条件ありで取得できる資格
条件ありで取得できる資格は、必要な科目の履修や実務経験を得てから取得が可能です。
介護現場で活躍できる資格には、次の3つが挙げられます。
【介護福祉士】
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格であり、専門的な知識と技術を持つことを証明する資格です。
取得すると介護現場で身体介助ができるだけでなく、指導やアドバイスができるようになります。
下記のいずれかを満たして、国家試験に合格できれば取得できます。
- 指定の大学・短大・専門学校を卒業
- 実務経験3年以上、実務者研修もしくは介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修を修了する
- 福祉系高校を卒業
※場合によっては9カ月の実務経験が必要
【認定介護福祉士】
認定介護福祉士は、介護現場で指導や助言を行うだけでなく、チームケアの質を高めたり、他職種との連携を強化したりする役割を持つ専門資格です。
リーダーとしてチームを引っ張っていきたい方や、キャリアアップしたい方におすすめします。
受講に必要な条件と取得方法は下記のとおりです。
- 介護福祉士を保有
- 介護福祉士取得後、5年以上の実務経験
- 介護職員を対象した100時間以上の現人研修を受講している
- 研修実施団体が実施するレポート課題や受講試験で、規定の成績基準を満たしていること
上記をすべて満たして、600時間の研修を受講すると取得できます。
【ケアマネジャー(介護支援専門員)】
ケアマネジャーは、要介護や要支援の認定を受けた方が適切なサービスを利用できるよう、事業所や市役所と連携してケアプランを作成する専門職です。
受講に必要な条件と取得方法は下記のとおりです。
- 下記のどちらかを満たして、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する (介護福祉士、社会福祉士などの国家資格を取得し、実務経験5年以上かつ900日以上)
(相談・援助業務や介護サービスなどの相談援助業務を5年以上かつ900日以上)
- 「介護支援専門員実務研修」を受講する
- 受講後、3カ月以内に都道府県に登録申請を行う
- 「介護支援専門員証」が交付されれば取得完了
介護職に便利なそのほかの資格や研修
ここからは、介護職に便利なそのほかの資格や研修を紹介していきます。
相談関係
相談関係の資格は、以下の3つです。
【社会福祉士】
社会福祉士は体や精神、環境に困難を抱える人々に対して、生活の質を向上させるための支援やアドバイスを行う専門職です。
ソーシャルワーカーとも呼ばれ、対象者は高齢者以外にも障がい者や児童など、幅広い方たちへ対応できます。
下記のいずれかの条件を満たして、国家試験に合格すれば取得可能です。
- 福祉系の大学・短大・専門学校を卒業し、相談業務を0~2年経験
※指定科目を履修していない場合は短期養成施設で6カ月の受講が必要
- 老人福祉指導主事や知的障害者福祉司などの実務を4年以上経験+短期養成施設で6カ月の受講
- 一般大学・短大を卒業し、相談業務を0~2年経験+短期養成施設で1年の受講
- 相談援助業務4年経験
なお、精神保健福祉士を保有している方は、一部試験科目が免除されます。
【社会福祉主事任用資格】
社会福祉主事は、都道府県や市町村で、公務員として社会福祉に関わる仕事をするために必要な資格です。
下記のいずれかで取得可能です。
- 福祉系の大学・短大・専門学校を卒業
- 通信教育
- 指定養成機関
- 都道府県の講習
- 社会福祉士や精神保健福祉士の試験に合格
【福祉用具専門相談員】
福祉用具専門相談員は、高齢者や障害を持つ方に必要な福祉用具の選び方や、使用方法の相談ができる専門職です。
50時間の福祉用具専門相談員指定講習を受講し、修了試験に合格すると取得できます。
なお、以下の資格を保有する方は、福祉用具専門相談員として働くことが可能です。
(看護師・准看護師・保健師・介護福祉士・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・義肢装具士など)
認知症ケア関連
認知症ケア関連の資格は、以下の5つです。
【認知症介護実践者研修】
認知症介護実践者研修は、認知症の方に対してより質の高いケアを提供したり、状態を正確に把握したりするための技術を学ぶ研修です。
この研修を受けることで実践的な知識やスキルが身に付き、認知症ケアの専門性が向上します。
下記のすべてを満たし、事業所を介して研修を受講します。
- 認知症介護に携わっている介護職員であること
- 介護現場を2年以上経験
なお、研修を主催する自治体によっては、介護福祉士の保有やチームリーダーであるといった条件が必要なため、確認してから申請しましょう。
【認知症介護実践リーダー研修】
認知症介護実践リーダー研修とは、認知症の方に対して、より質の高いケアを提供すると同時に、チームリーダーとしてほかの介護職員の指導やアドバイス、チームケアができるようになるための研修です。
下記のすべてを満たし、事業所を介して研修を受講します。
- 認知症介護に携わっている介護職員であること
- 認知症介護を5年以上経験
- 認知症介護実践者研修を修了後、認知症介護を1年以上経験
- チームリーダーもしくは、指導者の立場にあること
なお、こちらも研修を主催する自治体によって、条件が異なる場合があります。
【認知症ケア専門士】
認知症ケア専門士は、認知症の方に対して専門的な知識と技術を駆使し、適切なケアを提供する資格を持つ専門職です。
こちらの資格は5年ごとの更新が必要で、学会や研修会、機関誌への論文発表など、30単位以上の取得が必要です。
そのため、認知症ケア関係の資格の中でも、エキスパートと呼べる資格となります。
受験資格は、受験年の3月31日から過去10年間に認知症ケアを3年以上経験していることです。
ただし、ボランティアや研修などは、実務経験に含まれないため注意しましょう。
【認知症ケア指導管理士】
認知症ケア指導管理士は介護現場で認知症の方と関わる職員が、質のよいケアを行えるように指導、アドバイスできるための資格です。
なお、認知症ケア指導管理士は「初級」と「上級」の2つがあります。
下記を満たして、試験に合格すれば取得可能です。
- 初級は資格や経験を問わず受験可能
- 上級は初級合格後、介護現場を1年以上経験
また、医療や介護に関するいずれかの資格を保有している方であれば、初級と上級を同時に受験することも可能です。
【認知症ライフパートナー】
認知症ライフパートナーは、認知症の方がその人らしい生活を送れるように支援したり、そのご家族をサポートしたりするためにできた民間資格です。
1~3級があり、難易度が異なります。
下記を満たして、試験に合格すれば取得可能です。
- 2・3級:資格や経験を問わず受験可能
- 1級:2級合格後、受験可能
その他
次の3つの資格も介護現場で活躍できます。
【レクリエーション介護士】
レクリエーション介護士は、介護現場で利用者の生活の質を向上させるために、適切なレクリエーション活動を企画・実施する専門職です。
この資格には1級と2級が用意されており、それぞれの取得方法は下記のとおりです。
- 2級は通信もしくは通学講座を2日間受講し、筆記試験に合格
- 1級は2級合格後、オンラインもしくは通学で必須講座を受講し、実技および筆記試験に合格
【介護予防運動指導員】
介護予防運動指導員は、高齢者が元気な状態を維持できるように、運動や体操を指導する専門職です。
以下の資格を持っているか、取得予定の方が養成講座を受けることで取得できます。
医師・看護師・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護支援専門員・健康運動指導士・柔道整復師・介護職員基礎研修課程修了者・実務者研修修了者 など
※介護職員初任者研修修了者、訪問介護員2級の方は実務経験が2年以上必要
【終末期ケア専門士】
終末期ケア専門士は、医療の改善が認められない方に、適切なケアを行うための専門職です。
以下の資格を保有し、加えて実務経験が2年以上の方が「終末期ケア専門士認定試験」に合格すれば取得可能です。
医師・看護師・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護支援専門員・歯科衛生士・管理栄養士・公認心理師・救急救命士 など
目的別のおすすめ取得順番
「資格がたくさんあって、結局どの順番で取ればいいか分からない」という方のために、おすすめの取得ルートを紹介します。
代表的な5つのキャリアプランに合わせて解説していくので、自身に当てはまりそうなケースを参考にしてみてください。
未経験から働き始めたい場合
最初に解説するのは、介護の仕事に慣れ、基礎を固めることを最優先するルートです。
具体的な取得ステップとしては、以下のような順番が挙げられます。
- 認知症介護基礎研修(一般的な取得期間は1日)
- 介護職員初任者研修(一般的な取得期間は1カ月~4カ月)
- 介護福祉士実務者研修(一般的な取得期間は6カ月~)
1.認知症介護基礎研修
認知症の方への対応に特化した基礎的な知識と技術を学ぶ研修です。
2024年4月から介護職員への受講が義務化されたため、まずはこの資格の取得を目指します。
認知症介護基礎研修に合格できたら、すぐに「介護職員初任者研修」の学習を始めるのがおすすめです。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
2.介護職員初任者研修
介護の入門資格としてもっともポピュラーなのが「介護職員初任者研修」です。
初任者研修を取得すれば、身体介護ができるようになり仕事の幅が広がります。
その後は、実務経験を積みながら、上位の「介護福祉士実務者研修」へと進んでいきましょう。
介護職員初任者研修に合格することで、認知症介護基礎研修も免除されるため、ここから挑戦するルートもおすすめです。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
3.介護福祉士実務者研修
初任者研修の上位に位置づけられる資格で、より実践的で質の高い介護技術や、医療的ケアの基礎知識を学びます。
初任者研修を修了してから実務者研修に進むと、受講科目の一部が免除される点でもおすすめの順番です。
介護福祉士実務者研修に合格することで、国家資格である「介護福祉士」への道が開けます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
施設勤務でスキルと収入を高めたい場合
介護のプロフェッショナルとして現場で活躍し、リーダーを目指す王道のキャリアパスです。
具体的な取得ステップとしては、以下のような順番が挙げられます。
- 介護職員初任者研修(一般的な取得期間は1カ月~4カ月)
- 介護福祉士実務者研修(一般的な取得期間は6カ月~)
- 介護福祉士(取得期間は実務ルートで3年~)
- 認定介護福祉士(取得期間は介護福祉士として実務と現任研修100時間で5年)
1.介護職員初任者研修
「初任者研修」で基礎を固め、現場で働きながら「実務者研修」へのステップアップを目指します。
受験資格に制限がないので、未経験であっても挑戦しやすい資格です。
介護職員初任者研修の試験は、落とすことを目的としたものではないので、合格率は100%に近い傾向があります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
2.介護福祉士実務者研修
初任者研修から実務者研修の流れで資格取得を目指せば、介護のプロフェッショナルにふさわしい知識とスキルが段階的に得られます。
介護福祉士実務者研修には修了試験の実施に関する規定がないため、試験を行っていないケースもあります。
試験がある場合でも、課題を確実にこなしながら全日程に出席できれば、合格率は100%に近い傾向です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
3.介護福祉士
実務者研修を取得し実務経験3年を経れば、国家資格である介護福祉士の受験要件をクリアできます。
介護福祉士試験における近年の合格率は、70~80%前後で推移しています。
無事、介護福祉士を取得できれば、資格手当による収入アップや、現場のリーダーとしての役割も期待できるでしょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
4.認定介護福祉士
介護福祉士の上位資格として2015年度に創設された民間資格です。
満たすべき要件に「介護福祉士として5年以上の実務経験」が含まれているので、資格を取得する順番においても、この位置しかないでしょう。
資格を取得するための試験はなく、認定介護福祉士養成研修を受講し、全科目(22科目)の修了(単位取得)を目指します。
介護のプロフェッショナルとして、キャリアの頂点を目指す方におすすめの資格です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
将来ケアマネジャーを目指したい場合
介護サービスの計画立案を担う、ケアマネジャーを目指すためのルートです。
具体的な取得ステップとしては、以下のような順番が挙げられます。
- 介護職員初任者研修(一般的な取得期間は1カ月~4カ月)
- 介護福祉士実務者研修(一般的な取得期間は6カ月~)
- 介護福祉士(取得期間は実務ルートで3年~)
ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格を得るためには、介護福祉士や社会福祉士などの国家資格を取得後、5年以上の実務経験が必要です。
1.介護職員初任者研修
ケアマネジャーを目指すキャリアのスタートラインとして、まずは介護職員初任者研修の資格取得に取り組みましょう。
その後は、介護現場における一般的な資格取得の流れどおり、介護福祉士実務者研修へのステップアップを目指します。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護職員・介護支援専門員」
2.介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修の習得を目指しながら、介護現場で実際に使われている知識と技術を学んでいきましょう。
実務者研修から介護福祉士というステップを着実に踏むことが、ケアマネジャーへの確実な道筋の一つといえます。
訪問介護事業所でサービス提供の責任者である「サービス提供責任者(サ責)」になるための要件でもあるので、選択できる道も広がるでしょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
3.介護福祉士
介護福祉士として現場経験を十分に積むことが、利用者の状況を深く理解した質の高いケアプランの作成能力につながります。
実務経験が5年以上かつ900日以上に達すれば、都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修受講試験」に挑戦できます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護に関する資格等について」
認知症ケアの専門性を高めたい場合
今後ますます需要が高まる認知症ケアの分野で、専門家として活躍するためのルートです。
具体的な取得ステップとしては、以下のような順番が挙げられます。
- 認知症介護基礎研修(一般的な取得期間は1日)
- 認知症介護実践者研修(一般的な取得期間は約2カ月~3カ月)
- 認知症介護実践リーダー研修(取得期間は実務経験5年以上)
- 認知症ケア専門士(一般的な取得期間は約3カ月)
1.認知症介護基礎研修
義務化された「基礎研修」からスタートし、実務経験2年を経て「実践者研修」に進みます。
介護未経験の方でも、すぐに学習を始められる資格です。
eラーニングでの受講が中心で、約150分(2.5時間)の講義を受け、簡単な確認テストに合格すれば修了できます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「認知症介護基礎研修受講義務付けの効果に関する調査研究事業」
2.認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修を取得することで、認知症の方へのアセスメントやケア計画の立案など、現場で中心的な役割を担うための実践的スキルを学べます。
合格を目指す試験はなく、必要なカリキュラムを修了すれば資格取得が可能です。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護保険最新情報」
3.認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修は、認知症介護実践者研修の上位に位置づけられる資格です。
チーム全体のケアの質を向上させる、指導者となれることを意味します。
受講要件の一つに、認知症介護の実務経験5年以上が含まれます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「介護保険最新情報」
4.認知症ケア専門士
認知症ケア専門士の合格率は50%前後で、取得条件に認知症ケアの実務経験3年以上が含まれますが、このルートであればすでに満たしています。
ルートの最後に本資格を取得できれば、専門家としての信頼性をより強固なものにできるでしょう。
すでに解説していますが、認知症ケア専門士は5年ごとの資格更新が義務付けられており、学会への参加や論文発表などで単位を取得する必要があるので注意しましょう。
※2025年9月時点
出典:日本認知症ケア学会「認知症ケア専門士|公式サイト」
医療的ケアに強くなりたい場合
医療ニーズの高い利用者を支えることができる、市場価値の高い介護職を目指すルートです。
具体的な取得ステップとしては、以下のような順番が挙げられます。
- 介護職員初任者研修(一般的な取得期間は1カ月~4カ月)
- 介護福祉士実務者研修(一般的な取得期間は6カ月~)
- 喀痰吸引等研修(一般的な取得期間は第3号研修で2日程度、実地研修は10日程度)
1.介護職員初任者研修
まずは「初任者研修」と「実務者研修」で、介護の基本と医療的ケアの基礎を学びます。
2.介護福祉士実務者研修
実務者研修のカリキュラムにも医療的ケアは含まれますが、実際にケアを実施するためには次のステップである「喀痰吸引等研修」に進む必要があります。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「実務者研修の指定基準について」
3.喀痰吸引等研修
この資格を持つことで、痰の吸引や経管栄養が必要な利用者に対応できるため、特別養護老人ホームや医療施設、訪問看護ステーションなど、活躍の場が大きく広がります。
初任者研修のみでも取得は可能ですが、実務者研修まで合格しておくと、喀痰吸引等研修の第1号研修・第2号研修が免除されるので、この順番がおすすめです。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「喀痰吸引等研修」
介護の資格を取得するメリットは?
介護資格を取得すると技術やスキルが向上するだけでなく、さまざまなメリットがあります。
ここでは、その中から4つのメリットを紹介していきます。
業務の幅が広がる
冒頭でも紹介しましたが、介護の仕事は資格を保有していないとできない業務が多数あります。
言い換えれば、資格を取得すれば、できる業務の幅を広げられます。
興味はあるが資格未取得のため業務ができないと思っている方は、ぜひ資格取得にチャレンジしましょう。
資格手当が付き収入アップにつながる
資格によっては収入アップも期待できます。
特に国家資格は、月に5,000~10,000円程度アップしてくれる施設もあり、給料が少ないといわれている介護職にとってはうれしいポイントです。
また、キャリアアップを目指す上でも大きなメリットでしょう。
転職する際に有利になる
資格は、身に付けた知識やスキルを証明する際にも有効です。
特に、国家資格や即戦力が期待できる資格を持っている方は、未経験や無資格の方と比べても採用されやすいでしょう。
また、上位資格であればあるほど施設や事業所側に求められる傾向があるため、働ける場所の選択肢も広げられるでしょう。
介助する際の悩みの解消になる
介護現場での介助方法や関わり方の悩みなどを解消するには、資格の取得が一番の近道です。
例えば、車椅子への移乗が難しいと感じたり、体への負担が心配だったりする場合、資格取得で知識やスキルを向上させることができます。
また、現場で一緒に働くスタッフの意見と合わせながら行うと、チームケアの質も向上するでしょう。
介護関係の資格取得に役立つ支援制度
資格を複数取得していくことを考えると、ある程度の費用も用意しなければなりません。
「資格は取りたいけれど、費用が心配…」という方は、国や自治体、事業所が提供するさまざまな支援制度を活用することで、負担を軽減できます。
以下に挙げた、介護関係の資格取得に役立つ支援制度をチェックしてみてください。
教育訓練給付制度
雇用保険の被保険者(または元被保険者)が、厚生労働大臣の指定する講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部がハローワークから支給される制度です。
給付額や対象講座によって「一般」「特定一般」「専門実践」の3種類があり、介護職員初任者研修から専門的な介護福祉士養成課程まで幅広くカバーしています。
在職中、または離職後1年以内の方が対象です。
利用には一定の雇用保険加入期間が必要となるため、事前に自身の状況を確認しておきましょう。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「雇用・労働教育訓練給付金」
一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、比較的短期間で取得できる資格講座が対象となる制度です。
雇用保険の加入期間が通算3年以上(初回利用時は1年)あれば、受講費用の20%(上限10万円、4,000円未満は支給なし)が支給されます。
介護の分野では、介護技術講習会が支給対象です。
申請は、講座を修了した日の翌日から1カ月以内に、受講したスクールが発行する修了証明書などの必要書類をそろえ、お住まいの地域を管轄するハローワークで行います。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「雇用・労働教育訓練給付金」
特定一般教育訓練給付金
特定一般教育訓練給付金は、速やかな再就職やキャリアアップにつながる専門的な資格が対象です。
雇用保険の加入期間が通算3年以上(初回利用時は1年)あれば、受講費用の40%(上限20万円、4,000円未満は支給なし)が支給されます。
資格取得と就職を両方達成すると、受講費用の10%(上限5万円)を追加給付として申請できます。
介護の分野では、以下の資格が支給対象です。
|
制度を利用するには、受講開始前1年以内にハローワークでキャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成する事前手続きが必須です。
講座を修了した日の翌日から1カ月以内に、以下の書類を住居所管轄のハローワークに提出します。
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練修了証明書
- 受給資格確認通知書
- その他必要書類
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「雇用・労働教育訓練給付金」
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、中長期的なキャリア形成に役立つ、より専門性の高い資格が対象です。
雇用保険の加入期間が通算3年以上(初回利用時は2年)あれば、受講費用の50%(6カ月ごと、年間上限40万円)が支給されます。
資格取得後1年以内に就職が決まれば、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給され、合計で最大70%の給付が受けられます。
令和6年10月より、訓練修了後の賃金が5%以上上昇した場合、受講費用の10%(年間上限8万円)が追加支給される制度も新設されました。
介護の分野で、支給対象となる資格は以下のとおりです。
|
特定一般教育訓練給付金と同様に、受講開始の1カ月前までにキャリアコンサルティングを受け、受給資格確認の手続きが必要です。
講座を修了した日の翌日から1カ月以内に、以下の書類を住居所管轄のハローワークに提出します。
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練給付金受給資格者証
- 専門実践教育訓練修了証明書
- 領収書
- 教育訓練経費等確認書
- 専門実践教育訓練給付最終受給時報告
- 専門実践教育訓練給付追加給付申請時報告(追加給付を受ける場合)
- 資格取得等を証明する書類(追加給付を受ける場合)
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「雇用・労働教育訓練給付金」
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金とは、上記の「専門実践教育訓練給付金」を利用する方で、一定の条件を満たす場合に、訓練中の生活費を支援するために支給される制度です。
受講開始時に45歳未満で離職中であることなどが条件となり、訓練を受けている期間中、原則として離職前の給与(基本手当)の約80%に相当する額が2カ月ごとに支給されます。
基本手当の日額は、離職前6カ月間の平均賃金から算出されます。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内」
ハロートレーニング(ハローワーク)
仕事を探している方が、就職に必要なスキルや知識を習得するための公的な職業訓練制度です。
受講料が原則無料(テキスト代などは自己負担)で、介護分野の講座も豊富に用意されています。
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「ハロートレーニング」
訓練の種類と給付条件
ハロートレーニングには、主に雇用保険を受給している方向けの「公共職業訓練」と、雇用保険を受給できない方向けの「求職者支援訓練」の2種類があります。
後者の「求職者支援訓練」では、以下の要件を満たすことで、訓練期間中に月額10万円の「職業訓練受講給付金」と通所手当を受けながら訓練に参加できます。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現住居以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日すべてに出席すること
- 世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない
- 過去3年以内に不正受給をしていない
- 過去6年以内に職業訓練受講給付金の支給を受けていない
※2025年9月時点
出典:厚生労働省「職業支援・給付金などについて知る|ハロトレ特設サイト」
申請方法
ハロートレーニングの申し込みは、お住まいの地域を管轄するハローワークの窓口で行います。
申込書を提出し、面接や筆記試験などの選考を経て受講が決定する流れが一般的です。
コースごとに募集期間や開講時期が異なるので、早めの情報確認をおすすめします。
それぞれの事業所による支援制度
国の公的制度に加え、多くの介護事業所が人材確保と定着を目的に、独自の「資格取得支援制度」を設けています。
代表的な支援内容として挙げられるのは、費用補助、研修や講座の実施、資格手当などです。
費用補助
資格取得にかかる受講費用を法人が負担してくれるケースです。
全額を負担してくれる場合もあれば、半額など一部を補助してくれる場合もあります。
介護の分野で対象としてよく見られるのは、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などです。
何かしらの条件が付く場合もあるため、制度を利用する前に規定をしっかりと確認しておきましょう。
研修や講座の実施
法人自体が研修機関となり、事業所内で講座を開講しているケースです。
職員は外部のスクールに通う必要がなく、仕事の合間や勤務後に、慣れた職場で研修を受けられます。
費用も無料または格安であることが多く、時間的・経済的な負担を大きく軽減できるのがメリットです。
資格手当
資格を取得した後に、毎月の給与に上乗せして支給される手当も、それぞれの事業所による支援制度といえます。
資格取得の直接的な費用支援ではありませんが、長期的に見れば収入アップにつながり、学習意欲の向上にもなるでしょう。
まとめ
本記事では介護資格の取得の順番や必要性、介護現場に役立つ資格や取得方法を紹介しました。
介護の仕事は資格によってできる業務が広がり、収入アップやキャリアアップにもつながります。
自分の目標や働き方に合わせて効率よく資格を取得し、スキルを高めていきましょう。






