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三大介護とは?内容や実施方法、注意点まで徹底解説!

三大介護とは?内容や実施方法、注意点まで徹底解説!

介護士に興味があり、「三大介護」とは何か気になる方もいるでしょう。

三大介護とは、大きく3つに分けられる身体介護をまとめた呼び名です。

本記事では、三大介護の種類やそれぞれの実施目的、注意点まで徹底解説していきます。

最後まで目を通し、三大介護の知識を習得しましょう。

「三大介護」とは基本的な身体介護の総称

三大介護とは、以下の3つを含めた総称です。

  • 排泄
  • 食事
  • 入浴

 

上記の三大介護は、生活の質を向上するために行うものではありますが、自立支援を促す必要もあります。

そのため、利用者の体の状況によって、全介助・一部介助・見守りのいずれかを決定します。

「全介助」は全面的に介助すること、「一部介助」は部分的なサポート、「見守り」は利用者が自力でできるように見守ることです。

自力でできることまで介助してしまうと、利用者の尊厳を損なったり、できていたことができなくなったりする可能性があります。

利用者ができないことをサポートし、できることは自分で行ってもらうことが介護士の役割であるという意識を忘れてはいけません。

個々のニーズや状況に応じて、適切なケア方法を選択する必要があります。

三大介護①:排泄介助

排泄介助とは、自力でトイレに行くことや排泄動作が難しい方をサポートすることです。

この介助は非常にデリケートな内容であるため、利用者の尊厳を守りつつ心に寄り添った対応が求められます。

排泄介助について、以下で詳しく解説していきます。

実施目的

 

排泄介助の主な目的は、利用者が可能な限り自立して排泄できるよう支援することです。

しかし、失禁や排泄の失敗は、利用者の自信喪失や精神的な負担につながる可能性があります。

そのため、介護者は以下の点に注意して支援を行うことが重要です。

  • 尊厳を守れる言葉がけ・介助を行う
  • 失敗を防止し自信を付けてもらう
  • 排泄への不安を解消する

 

これらを実践することで、利用者の生活の質を向上させるとともに、自立支援にもなります。

実施内容・手順

 

介助の手順は以下のように行います。

  1. トイレに促す
  2. 移動をサポートする
  3. 脱衣をサポートする
  4. 終わるのを待つ
  5. 清拭をする
  6. 着衣をサポートする

 

トイレを促す際は利用者の尊厳を守りながら、さりげなく誘導することが大切です。

声かけのタイミングを見計らい、自然な流れで伝えましょう。

移動のサポートでは、転倒しないようにしっかり支えながら安全に移動できるよう配慮します。

歩くスピードはせかさず、利用者のペースに合わせることが重要です。

脱衣をサポートする際は必ず手すりを持ってもらい、安定した状態で行います。

特に、下着やズボンを下げる際はバランスを崩しやすいため、慎重に脱衣を進めることが大切です。

排尿・排便中は、ドアの外で待機するのが基本です。

介助者が近くにいると利用者が緊張したり恥ずかしさを感じたりして、排泄がうまくいかないことがあるため、安心して排泄できる環境を整えることを心がけましょう。

終わったことを確認したら清拭を行いますが、自分でできそうであれば可能な範囲でやってもらいましょう。

清拭が完了したら下着やズボンを履かせますが、バランスを崩さないよう手すりをつかんでもらうと安心です。

安全を確保しながら、利用者の尊厳を大切にした排泄介助を心がけましょう。

3つの注意点

 

利用者が安心して排泄できるようにするために、注意しなければならないことは以下の3つです。

  • 水分摂取量が減らないように気を付ける
  • 自尊心を傷つけないよう寄り添うことを意識する
  • 排泄パターンを把握する

 

では、一つずつ解説していきます。

 

【水分摂取量が減らないように気を付ける】

高齢者は水分摂取量が減ると健康状態に悪影響を及ぼすため、注意が必要です。

排泄の回数が増えることを気にして水分を控える方もいますが、それによって便が硬くなり、排泄しにくくなる原因となります。

また、血液中の水分が不足すると、血液がドロドロになり血栓ができやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。

便秘が続くと腹痛や食欲不振を引き起こし、生活の質が低下する可能性があるため、こまめに水分をとる習慣を付けるよう支援しましょう。

 

【自尊心を傷つけないよう寄り添うことを意識する】

排泄の介助を受けることに対し、恥ずかしさを感じる方は少なくありません。

「見られたくない」「トイレの音を聞かれるのが恥ずかしい」と思う方も多く、それが排泄の妨げになることもあります。

このような利用者の気持ちに寄り添い、安心して排泄できる環境を整えることが大切です。

例えば、便や尿の状態を確認する際はできるだけ素早く終わらせる、オムツ交換はスピーディに行う、排泄中はドアの外で待つなどの配慮をしましょう。

また、過度に同情するのではなく、自然な態度で接することも大切です。

 

【排泄パターンを把握する】

人によって排泄しやすいタイミングは異なるため、排泄パターンを把握することが重要です。

排泄のタイミングを理解することで、適切なタイミングでトイレに誘導できるようになり、失禁や便失禁のリスクを軽減できます。

例えば「外出前」「入浴前」「食事後」など、一定のサイクルで排泄しやすい方もいます。

利用者ごとの排泄パターンをメモして分析することで、より適切なサポートが実現するでしょう。

三大介護②:食事介助

食事介助は一人で食事を作ったり、食べたり、片付けたりすることが難しい方のお手伝いをすることです。

食事介助について詳しく解説していくため、確認しましょう。

実施目的

 

食事介助の目的は、利用者が食事を楽しめるようにすることです。

「歯が悪くて食べられない」「味覚が衰えておいしさを感じにくい」といった悩みを持つ方は、年齢を重ねるごとに増えていきます。

これらの問題があっても、食事が楽しく、おいしいものだと感じてもらうことが、介護士の役割の一つです。

これを実現するためにも、以下の点を意識して支援を行います。

  • 食事への意欲を高める
  • 食事に対する気持ちを高める
  • 食事がしやすい環境を整える

実施内容・手順

 

介助の手順は以下のように行います。

  1. 準備する
  2. 配膳する
  3. 食事を介助する
  4. 食後に食事量のチェック・口腔ケアを行う

 

準備段階では利用者に手洗いを促し、姿勢を整えて口腔ケアを行います。

手洗いが難しい場合はおしぼりを渡し、清潔を保てるようサポートします。

口腔ケアでは必要に応じてうがいや義歯の装着を促し、食事をスムーズに進められる状態をつくることが大切です。

また、テーブルの位置を調整して、利用者が無理なく食事をとれる環境を整えましょう。

配膳が完了したら献立の説明を行い、食事内容を伝えることで利用者の食欲を高めます。

「今日は魚がメインですよ」「温かいおみそ汁があります」など、具体的に説明することで、食事への興味を引き出せるでしょう。

食事の介助では、先に水分を摂取させることで喉を潤し、食べやすくします。

食事は利用者のペースに合わせ、一口量を調整しながら口元に運びます。

無理に食べさせるのではなく、適切な声かけを行いながら安心して食事を進められるよう配慮することが重要です。

食後は食事量をチェックして、口腔ケアを実施します。

7つの注意点

 

安全に食事を進めるためにも、以下の注意点を守りましょう。

注意点は以下の7つです。

  • 水分を多く含むものからスタートして口内を潤す
  • 一口目は少量にする
  • 食べ進めるバランスを考える
  • 食事時間を30分程度と決めておく
  • 誤嚥・窒息防止のため最後まで見守る
  • 姿勢に気を付ける
  • 状態に合わせた食事方法を考える

 

それぞれ解説していきます。

 

【水分を多く含むものからスタートして口内を潤す】

食事の際は、まずはみそ汁やスープなど、水分を多く含むものからスタートさせましょう。

食べ始めは喉のまわりの筋肉がまだ十分に動いておらず、飲み込みにくさを感じることがあるためです。

口の中や喉の粘膜を潤し、食べやすい状態をつくります。

また、水分が含まれている食べ物は誤嚥のリスクを軽減し、スムーズに飲み込むのを助けます。

スープ系がなければ、とろみの付いた煮物や柔らかい食材を選ぶとよいでしょう。

 

【一口目は少量にする】

食事の最初の一口は、少量にしましょう。

食べ始めは唾液の分泌が十分でなく、喉や口の筋肉もまだ十分に動いていない状態だからです。

もし、大きな一口を与えるとかむのに時間がかかり、飲み込みにくさから誤嚥や喉の詰まりを起こすおそれがあります。

そのため、最初はティースプーン1杯分程度を目安にし、利用者の様子を見ながら徐々に量を調整しましょう。

 

【食べ進めるバランスを考える】

高齢者は食事の栄養バランスが偏りやすいため、主食・副食・水分をバランスよく摂取できるように工夫しましょう。

主食、副食、水分を交互に口に運ぶことで、栄養バランスを調整しやすくなります。

しかし、食事を楽しんでもらうことも大切です。

もしも利用者が「好きなメニューから食べたい」と希望する場合は、その思いを尊重することも重要です。

食事の順番にこだわりすぎず、本人の意思を尊重しながらサポートしましょう。

 

【食事時間を30分程度と決めておく】

食事時間は30分程度に収めるように意識しましょう。

食事が長時間に及ぶと利用者が疲れてしまい、誤嚥のリスクが高まるためです。

特に車椅子やベッドで食事をする方は、姿勢を維持することで体力を消耗しやすい傾向があります。

さらに、長時間の食事は飲み込みが悪くなったり、満腹感や眠気によって食欲が低下したりする可能性があります。

もし食事量が少なくて心配な場合は、間食の回数を増やしたり、栄養補助食品を活用したりするのも方法の一つです。

食事以外で必要な栄養を補うことで、無理なく健康を維持できます。

 

【誤嚥・窒息防止のため最後まで見守る】

一人で食べられる方であっても、注意深く観察しながら介助を行いましょう。

嚥下能力の低下や唾液の分泌量の減少により、誤嚥や窒息のリスクが高まるためです。

誤嚥が起こると、食べ物が喉に詰まるだけでなく、誤嚥性肺炎につながるおそれもあります。

そのため、一口ずつ確実に飲み込んだかを喉の動きで確認し、口の中に食べ物が残っていないかチェックすると安心です。

もし異変があったときに備え、誤嚥や窒息時の対応方法を身に付けておきましょう。

また、緊急時に使用する医薬品や機材の準備、迅速に対応できるよう連絡体制を整えておくことも重要です。

 

【姿勢に気を付ける】

誤嚥を防ぐためにも、姿勢に注意しましょう。

正しい姿勢を保つことで、スムーズに飲み込みやすくなります。

車椅子の場合は足をしっかり床に着けて前傾姿勢を取ることで、誤嚥のリスクを軽減することが可能です。

リクライニング車いすを使用する場合は、角度を45~80度に調整すると姿勢が安定しやすくなります。

ベッド上で食事をする際は、足側を上げた後に背中を起こすことで、食事がしやすい姿勢をつくれます。

姿勢が崩れると誤嚥のリスクが高まるため、適宜調整しながら支援を行いましょう。

 

【状態に合わせた食事方法を考える】

食事介助を行う際は、利用者の状態に応じた方法で食事を提供することが大切です。

例えば、認知症の方が食べ物を認識できない場合は誤嚥のリスクが高まったり、ほかの利用者の食べ物を取ったりしてしまう場合があります。

そのため、視覚的に分かりやすい盛り付けを工夫し、食事の内容を理解しやすくすることが重要です。

また、認知症による食事拒否が見られる際も、彩りを工夫することで食欲を引き出せる場合があります。

嚥下機能が低下している場合は、刻んだりミキサーにかけたりして、食事の形態を調整することも検討しましょう。

三大介護③:入浴介助

入浴介助は一人で衣服の着脱や湯船の出入り、体を洗うことが難しい方を手助けすることです。

入浴介助について詳しく解説していきます。

実施目的

 

入浴介助を実施する目的は、リラックスしてもらうことです。

一人での入浴が難しいと不便だったり不快な気持ちが生まれたりして、リラックスできない方もいます。

すると睡眠の質が低下したり、ストレスや疲労がたまったりするため、適切なサポートが求められます。

実施内容・手順

 

介助は以下のように行います。

  1. 入浴の準備をする
  2. 衣類を着脱する
  3. 浴室の準備をする
  4. 浴槽への移動を介助する
  5. 洗身・洗髪を介助する
  6. 整容を介助する

 

入浴前には必要な着替えを準備し、利用者に声をかけて入浴を促します。

また、衣服の着脱時に皮膚状態を観察したり、バイタルをチェックしたりすることも忘れてはいけません。

脱衣所と浴室はヒートショックを防ぐためにも、脱衣所を温かく保ちましょう。

一般的に浴室はお湯の温度を40℃前後に設定しますが、心臓病や高血圧の方は温度を少し低めに設定してください。

利用者を湯船に移動させる際は、転倒しないように慎重に見守る、もしくは声かけを行いながら介助します。

移動が困難な場合は、機械浴や浴用リフトを活用しましょう。

体を洗う順番は基本的に髪から顔、上半身、下半身ですが、利用者の希望を尊重して問題ありません。

なお、触れられたくない部分は事前に聞いておきましょう。

入浴後は髪をドライヤーで乾かしたり、保湿ケアをしたりします。

6つの注意点

 

安全に入浴を済ませるためにも、以下の6つに注意しましょう。

  • 転倒・溺れ防止のためしっかりと見守る
  • 空腹時や食後の入浴を避ける
  • 湯あたりやヒートショックの防止に努める
  • 入浴前後にバイタルチェックを欠かさず行う
  • 入浴前後に水分を摂取してもらう
  • 麻痺がある方は入念に準備する

 

では、一つずつ解説します。

 

【転倒・溺れ防止のためしっかりと見守る】

介助時は、転倒・溺れ防止のため、常に注意を払いましょう。

入浴中は転倒や溺れるリスクが高く、特に移動時は足元の安全を確認することが大切です。

浴槽への出入りでは、床の湿り具合や利用者のバランスに気を配りましょう。

意識障害や体調の変化による事故を防ぐため、常に様子を観察しながら入浴をサポートします。

 

【空腹時や食後の入浴を避ける】

空腹時や食後の入浴は避けましょう。

入浴により血流が体表に集まり、胃腸の血流が悪化して消化不良を引き起こす可能性があります。

また、空腹時やインスリン注射後の入浴は、低血糖のリスクを高めるため注意が必要です。

安全なタイミングを見計らい、適切な時間帯に入浴を促しましょう。

 

【のぼせやヒートショックの防止に努める】

のぼせやヒートショックを防ぐため、入浴前に浴室や脱衣所の温度を調整して寒暖差を少なくしましょう。

お湯の温度は41℃以下に設定し、半身浴から始めると心臓への負担を減らせます。

食後や飲酒後の入浴、長時間の入浴もリスクを高めるため避けることが大切です。

 

【入浴前後にバイタルチェックを欠かさず行う】

入浴前後にはバイタルチェックを行い、健康状態を確認しましょう。

体温・血圧・脈拍を測定し、異常がないかを確認することが重要です。

もしも異常が見られた場合は入浴を中止し、全身清拭や陰部洗浄などの代替手段を検討します。

体調不良や疲労がある際も無理に入浴させず、安全を最優先に考えましょう。

 

【入浴前後に水分を摂取してもらう】

脱水を防ぐため、入浴前後には必ず水分補給を促しましょう。

入浴中は発汗が増えて肌や粘膜からも水分が失われるため、注意が必要です。

水分が不足すると血液が濃縮され、脳の血流量が減少するリスクがあります。

また、脱水症状や熱中症を引き起こす可能性もあるため、こまめな水分補給を心がけましょう。

 

【麻痺がある方は入念に準備する】

麻痺がある方は体を支えるのが難しいため、安全な入浴のために十分な準備が必要です。

特に、機械浴やリフト浴を使用する場合は事前に使い方を確認し、スムーズに進められるよう準備を整えましょう。

機械浴は転倒リスクを減らし安全な入浴を可能にしますが、利用者が不安を感じることもあります。

表情を観察しながら適切な声かけを行い、安心感を与えることが大切です。

まとめ

三大介護はデリケートな内容を含むため、利用者の様子を確認しながら慎重かつ丁寧に対応することが求められます。

また、利用者の状態に合わせて要望やニーズを聞き入れ、気持ちに寄り添うことも大切です。

介護士を目指す方は特徴や注意点をしっかり覚え、利用者が安全で安心して暮らせるよう支援しましょう。