高齢者のための筋肉をつける食事メニュー5選!とるべき栄養素や食事のポイントも紹介

高齢になると筋力が低下し、転倒やケガのリスクが高まります。
筋肉をつけるには運動だけでなく、適切な食事も欠かせません。
しかし「どのような食事を用意すれば、高齢の家族の筋力向上に役立つの?」と、悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、高齢者が筋肉をつけるために必要な栄養素や、手軽に作れるおすすめの食事メニュー5選を紹介していきます。
食事を見直せば、筋力維持だけでなく健康寿命を長くすることも期待できるため、ぜひ参考にしてください。
なぜ高齢者には筋肉をつける食事が必要なのか?
年齢を重ねるごとに筋肉が減っていくのは自然なことのため、高齢者は意識して筋肉をつける必要があります。
運動はもちろん食事にも気を配る必要がありますが、なぜ筋肉をつける食事が必要なのでしょうか。
その理由を4つに分けて解説していきます。
サルコペニアやフレイルの予防になる
高齢者が筋肉をつけることは、サルコペニアやフレイルの予防につながります。
サルコペニアとは、加齢や疾患が原因で筋力や身体機能が低下した状態のことをいいます。
この状態が続くと、生活の質が下がってしまうことに加えて、寝たきり状態になる可能性があるため注意しなければなりません。
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階のことで、放っておくと要介護状態になってしまう可能性が高いです。
サルコペニアやフレイルを予防するためには、筋肉をつけることが重要です。
健康維持や生活習慣病対策になる
高齢者が筋肉をつけるためには日頃の運動や食事習慣が重要ですが、これらに気を付けることで健康維持や生活習慣病の予防につながります。
日頃の運動や正しい食事習慣は、糖代謝や脂質代謝を正常にしてくれるため、体重増加や糖尿病といった疾患の予防効果が期待できるでしょう。
また、血圧の柔軟性の改善にもなるので、心筋梗塞や脳梗塞などの病気のリスクも減らせます。
さまざまなトラブルの改善につながる
高齢者が筋肉をつける食事を心がけることで、健康維持や生活習慣病の予防以外にも、さまざまなトラブルの改善が期待できます。
主にタンパク質が不足することで起こり得る症状を紹介していくため、予防するためにも確認していきましょう。
【髪や肌のツヤが不足する】
適切な食事習慣ができていない高齢者の方は、タンパク質不足であることが非常に多いです。
タンパク質が不足すると、肌のうるおいやツヤを保つために必要なコラーゲンやケラチンなどが生成されにくくなります。
この状態が続くと髪や肌のツヤがなくなったり、シワが増えたりするため、老化の進行が早まる可能性があります。
【思考力が落ちる】
タンパク質不足は、思考力の低下にも関係してきます。
タンパク質には、神経伝達物質の生成に関係している栄養素が含まれており、不足すると物事を考える力が低下するといわれています。
また、気分の落ち込みや睡眠に関係する栄養素も含まれているので、うつ病や不眠などの疾患を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
【免疫力が落ちる】
タンパク質は免疫細胞にも関係しており、不足するとかぜを引きやすくなったり、体調不良が長く続いたりします。
予防するためには肉や魚、卵などの良質なタンパク質を摂取する必要があります。
【疲れやすくなる】
タンパク質には豊富なアミノ酸が含まれており、アミノ酸が不足すると疲れやすくなります。
疲労がたまった状態が続くと、行動力の低下とともに思考力の低下にもつながります。
また「慢性疲労症候群」を引き起こす可能性があり、なかなか疲れが取れない状態が続くようになるため注意が必要です。
精神的安定に役立つ
高齢者が筋肉をつけるにはタンパク質が欠かせませんが、タンパク質に含まれるトリプトファンは、精神を安定させる働きがある「セロトニン」の材料にもなります。
セロトニンが不足すると、気分の落ち込みやうつ症状が出てきやすくなります。
適切にタンパク質を摂取することで筋力の維持だけでなく、心の健康を保つことにも効果的です。
高齢者が筋肉をつけるための食事メニューのポイント
高齢者が筋肉をつけるためには、タンパク質を中心に、必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
また、食事のタイミングや摂取量にも気を配ることで、効率的に筋力を維持・向上させられます。
ここでは、高齢者が意識すべき食事のポイントについて詳しく解説していきます。
タンパク質の摂取を意識する
筋肉をつけるためには、タンパク質の摂取が非常に大切です。
タンパク質は筋肉に必要なアミノ酸を豊富に含んでいるため、積極的に食事メニューに取り入れていきましょう。
しかし、とりすぎにも注意が必要なので、ここで適切な量を確認していきましょう。
【1日に摂取すべきタンパク質量】
高齢者のタンパク質の摂取推奨量は体格にもよりますが、一般的に男性60g/日、女性50g/日と設定されています。
1食に換算すると、1回の食事で20g前後のタンパク質の摂取が推奨されます。
参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
【筋肉をつけるために必要な栄養素と食品】
筋肉をつけるためにはタンパク質が必要ですが、具体的にはタンパク質に含まれる必須アミノ酸の摂取が重要です。
必須アミノ酸とは、身体で作ることができない9種類のアミノ酸のことであり、具体的には以下の栄養素を指します。
- ロイシン
- イソロイシン
- リジン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- スレオニン
- トリプトファン
- バリン
- ヒスチジン
また、必須アミノ酸が豊富に含まれている食品は以下のとおりです。
- 鶏肉
- マグロ
- ヨーグルト
- 納豆
- ブロッコリー
- 卵
- チーズ など
これらの食品を積極的にとるとよいでしょう。
【ロイシンは意識して摂取するのが大切】
必須アミノ酸の中でも「ロイシン」と呼ばれる栄養素は、筋肉の合成を促進する働きがあるため、積極的に取り入れたい栄養素です。
ロイシンが豊富に含まれている食品には以下のものが挙げられます。
- マグロ赤身、カツオ、サンマ
- 鶏肉、牛肉
- 卵
- 牛乳
- 凍り豆腐 など
魚やお肉はもちろんですが、乳製品や大豆などにも豊富に含まれているため、食事メニューに積極的に取り入れていきましょう。
【タンパク質のとりすぎには注意する】
1回の食事で1日分の目安量を摂取しても意味がありません。
また、タンパク質のとりすぎは「尿路結石」や「腸内環境の乱れ」を引き起こすリスクもあります。
特に腎機能が低下している方は、腎不全の発症により人工透析や腎移植が必要になる可能性もありますので、必要量の何倍もの摂取は控えるようにしましょう。
そのほかの栄養素もバランスよく摂取する
ここまで紹介してきたように、筋肉をつけるためにはタンパク質が非常に重要ですが、そのほかの栄養素もしっかりとることが大切です。
具体的には、糖質や脂質、食物繊維などを摂取しましょう。
筋肉の合成には糖質やビタミンも必要なため、バランスよく摂取するよう心がけることが大切です。
運動後にタンパク質をとる
タンパク質をとるタイミングは運動後がおすすめです。
運動後はアミノ酸の吸収がしやすくなっているといわれており、このタイミングでタンパク質を摂取すると、筋肉の合成や疲労回復に効果的です。
具体的な時間としては、運動後45分以内に摂取するとよいでしょう。
前述のとおり、筋肉の合成にはそのほかの栄養素も必要となるため、タンパク質以外の栄養素の摂取も大切です。
できる限り1日3食食べる
高齢になると食事量や食事の回数が減りがちですが、食事回数が減るとエネルギーが不足したり筋肉が分解されたりする原因になります。
運動で筋肉をつけようとしても、必要な栄養素が不足していると効果が十分に得られません。
そのため、1日3食をしっかりと摂取し、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
食事で摂取しにくい場合はプロテインを検討する
食事を1日3食食べられなかったり、必要な量を摂取できなかったりする場合は、プロテインや栄養補助食品、サプリメントなどを取り入れてみるのもおすすめです。
プロテインや栄養補助食品は、水と混ぜるだけで簡単に摂取できるので、間食として取り入れるのもよいでしょう。
ただし、プロテインやサプリメントは腎臓に負担をかける可能性があるため、腎機能が落ちている方は、医師と相談してから取り入れましょう。
加工品でタンパク質をとるのはおすすめしない
ソーセージやハムなどの加工品は手軽にタンパク質を摂取できますが、あまりおすすめできません。
これらの加工食品には塩分や食品添加物が多く含まれており、過剰に摂取すると高血圧の原因になる可能性があります。
また、保存料や発色剤などの添加物が含まれることもあり、健康面への影響も懸念されます。
タンパク質をとる際は、魚や大豆製品、卵、鶏肉など、より自然な食品から摂取することが望ましいでしょう。
高齢者が筋肉をつけるためにおすすめの食事メニュー5選
高齢者が筋肉をつけるためには、タンパク質を中心とした栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
また、高齢者でも食べやすくするような工夫も重要です。
ここでは、高齢者が筋肉をつけるためにおすすめの食事メニューを5選紹介するので、参考にしてください。
豆腐ハンバーグ
【材料(2人分)】
- 豆腐:半丁程度
- 玉ねぎ:1/2個
- 鶏ひき肉:120g
- 卵:1個
- 片栗粉:大さじ1/2
- 塩:適量
- 油:小さじ1
【作り方】
- 玉ねぎをみじん切りにしてあめ色になるまで炒め、粗熱を取っておく
- 豆腐をキッチンペーパーで包んで水気を切る
- 炒めた玉ねぎ・鶏ひき肉・豆腐・片栗粉を混ぜて塩で味付けする
- タネをハンバーグ型に形成して、フライパンで焼く
玉ねぎはあめ色になるまで炒めることで、口の中に玉ねぎが残りにくくなります。
お好みで大根おろしとポン酢を混ぜたソースを掛けると、味の変化を楽しめます。
レンジで作るよだれ鶏
【材料(2人分)】
- 鶏胸肉:1枚
- きゅうり:1本
- 長ねぎ:5cm
- パクチー:適量
- 【A】:砂糖小さじ2、塩小さじ1/2、サラダ油大さじ1
- 【B】:鶏の蒸し汁大さじ3、砂糖小さじ1.5、醤油大さじ2、酢大さじ2、ラー油大さじ1~
【作り方】
- 鶏胸肉の厚みを均一にするため、厚い部分に切り込みを入れる
- フォークで数カ所穴を開けたら、【A】の調味料と一緒に耐熱容器に入れる
- 耐熱容器にふんわりとラップを掛け、電子レンジ(600W)で4分加熱
- 加熱後は取り出して、そのまま余熱でしっかり火を通す
- 長ねぎはみじん切り、きゅうりは細切り、パクチーはざく切りにする
- みじん切りにした長ねぎと【B】の調味料を混ぜ合わせタレを作る
- お皿に細切りにしたきゅうりと、食べやすい大きさに切った鶏肉を盛り付け、4のタレを掛ける
- 最後にパクチーを散らして完成
調理方法を工夫することでパサつきを抑えられ、高齢者でも食べやすくなります。
白身魚のあんかけ
【材料(2人分)】
- タラ:1切れ
- しめじ:適量
- 玉ねぎ:半分
- 枝豆:少々
- にんじん:半分
- 片栗粉:小さじ1/3
- 醤油:小さじ1/3
- 砂糖:小さじ1
- だし:小さじ1/4
- 油:小さじ1
【作り方】
- フライパンに油を熱し、タラを両面焼く
- 焼き上がったタラは、一度取り出しておく
- 同じフライパンに野菜を入れて軽く炒める
- 調味料を加えて具材に火が通るまで煮込む
- 水溶き片栗粉を加え、とろみをつける
- 取り出しておいたタラを戻し、あんをしっかり絡めたら完成
あんかけにすることで野菜を食べやすくなり、必要な栄養素を摂取できます。
ミルク風味の味噌汁
【材料(2人分)】
- しめじ:1袋
- ツナ缶:1缶
- にんじん:40g
- 油あげ:30g
- ウインナー:2本
- 水:1.5カップ
- 顆粒だし:小さじ1
- 味噌:大さじ1
- こしょう:少々
- 牛乳:200cc
【作り方】
- しめじは小房に分け、にんじんは5mm幅のいちょう切り、ウインナーと油あげは1cm幅にカットする
- 鍋に水・顆粒だし・しめじ・にんじんを入れて火にかける
- しめじとにんじんが柔らかくなったらツナ缶・ウインナー・油あげを加え、さらに3~4分ほど加熱する
- 牛乳を加えて沸騰したら味噌を溶かし入れる
- 最後にこしょうで味を調整する
タンパク質が豊富にとれるメニューで、一風変わった味噌汁を味わえます。
厚揚げチーズ焼き
【材料(2人分)】
- 厚揚げ:1枚
- ピザ用チーズ:20g
- ★酒:小さじ1
- ★醤油:小さじ2
- 油:小さじ2
- マヨネーズ:大さじ2
- 青ねぎ:お好みの量
【作り方】
- 厚揚げは横半分に切って3~5cm幅にカットし、青ねぎは小口切りにする
- フライパンに油を熱して厚揚げを焼く
- 焼き色が付いたら★の調味料を加え、厚揚げによく絡める
- 火を止めてから厚揚げにマヨネーズを塗り、その上にチーズを掛ける
- 蓋をして弱火で加熱し、チーズが溶けるまで蒸らす
- チーズが溶けたら器に盛り、青ねぎを散らす
好みに合わせて七味を掛けると、よいアクセントになります。
高齢者が食事以外で筋肉をつけるポイントと注意点
高齢者が筋肉をつけるためには運動も必要です。
ここでは、高齢者が筋肉をつけるために意識すべき運動のポイントと、注意点について解説していきます。
週3回・1日30分以上の運動を行う
高齢者が筋肉をつけるためには、週3回・1日30分以上の運動が推奨されています。
ゆっくりと大きく体を動かすことがポイントで、無理をするとケガするおそれがあるため、自分のペースで行いましょう。
運動は継続が重要であり、負担が大きすぎると長続きしないため、楽しみながらできる運動を見つけましょう。
複数の運動を行う
同じ運動ばかりを続けるのではなく、複数の種類を組み合わせることで、より効果的に筋力を維持できます。
例えば上半身の運動を行った次の日は、下半身の運動を行うといった続け方がおすすめです。
激しすぎる運動は逆効果になる
急激な運動は心臓や血管に負担がかかり、狭心症や心筋梗塞のリスクを高める可能性があります。
また、転倒による骨折やケガのリスクも高まるため、無理な運動は避けるべきです。
運動習慣がなかった方は、まずは散歩やウォーキング、軽いストレッチなどから始めるとよいでしょう。
自分に合ったトレーニングを継続することが、健康維持のカギとなります。
空腹で運動するのも逆効果になる
空腹で運動を行うと運動に必要なエネルギーが不足することにより、筋肉の分解が進みやすくなります。
せっかく筋肉をつけるために運動しても、かえって筋肉量が減少してしまう可能性があります。
運動を行う際は糖質やアミノ酸など、筋肉の合成に必要な食事をとり、食後30分~1時間程度経ってから行うようにしましょう。
なお、運動前の食事は軽食程度でもかまいません。
水分摂取にも気を配る
運動をする際は水分摂取もしっかり行いましょう。
水分を体にためる「貯水庫」の役割を果たしているのが「筋肉」といわれており、筋肉の約75%が水分からできています。
運動する前に摂取することで、柔軟性の向上やコリの解消にもつながるため、意識して水分をとりましょう。
まとめ
本記事では、高齢者が筋肉をつける必要性や食事メニューのポイント、おすすめの食事メニューを紹介しました。
食事をする際は、タンパク質を意識した食事やバランスの取れた栄養摂取が、健康的な筋力維持につながります。
また、無理のない範囲で運動を取り入れることで、より効果的に筋肉をつけることができます。
ぜひ本記事を参考に、健康的な体づくりを目指しましょう。